ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
第1部   いま,世界の中で
第2章  主要国の科学技術政策動向(各国編)
第4節  旧ソ連,中・東欧諸国
2.  中・東欧諸国


ロシアと同様,旧体制の崩壊後,市場経済への移行という政治的・経済的改革の中で混迷の続く中・東欧諸国においては,科学技術をとりまく現状は厳しいものとなっている。


(1) 科学技術をとりまく現状

(主要経済指標)

はじめに経済指標により各国の状況を概観すると,国内総生産は,ポーランドが1992年から実質増加に転じ,また実質減少が続いている国でも1992年に入り減少率が弱まる傾向にあり,回復のきざしがみられはじめてはいるが,依然として実質減少の続いている国が多い。消費者物価の上昇についてみると,ルーマニアを除いてはやや鎮静化の方向に向かいつつあるものの,依然として高い状態が続いている。また,失業率についても増加傾向にあり,1993年に入ってからも,チェコを除いて10%以上の高率が続いている( 第1-2‐東1表 )。

第1‐2‐東1表 中・東欧諸国の主要経済指標

(研究開発人材)

中・東欧諸国についても,ロシア同様,研究者の大幅な減少がみられている。

チェコ共和国教育青年スポーツ省「チェコ共和国の科学技術政策:主な課題と問題点」(1993年)によれば,チェコでは科学技術関係雇用者が1989年に14万人であったものが1993年には6万5千人と半数以下に減少し,ルーマニアでも,ルーマニア政府「ルーマニアの科学技術の現状についての概観」(1993年)によれば,1989年に28万7千人であったものが1990年末には14万8千人と半数近くに減少した。

ハンガリーでは研究者が1989年に2万人であったものが1990年には1万8千人と対前年比で14.1%減少,スロバキアでは1989年に3万4千人であったものが1991年には2万1千人と2年間で36.1%減少,またブルガリアでも1989年の2万5千人から1991年の2万3千人と2年間で9.5%減少した。ポーランドにおいては,1992年までの時点で研究者数はほほ横ばいとなっているが,他の中・東欧諸国においては,1989年末の旧体制の崩壊を境として,研究者もしくは研究開発関連の雇用者が大幅に減少している( 第1-2‐東2表 )。

第1-2‐東2表 中・東欧諸国の研究者数


(2) 各国の科学技術政策

中・東欧諸国においても,政府が取り組むべき最優先課題は経済の再建であるが,科学技術政策についても,研究開発予算の配分,あるいは関連省庁間の調整等を行う行政機関が設置される等の動きが各国にみられる。この中で,生産回復等の明るい面がみられる様になっているポーランドとOECDの科学技術政策レビューを受けたハンガリーについて紹介する。

(ポーランド)

ポーランドにおいては,1991年1月,経済再建と調和した研究資金の支給,科学技術政策の実施に当たっての研究者の役割の強化等を目指した組織として,国家科学研究委員会(KBN)が設立されるなど科学技術行政体制の整備が進められている。

‐科学技術行政組織‐

国家科学研究委員会は本委員会,基礎研究委員会,応用研究委員会及び事務局から構成される。本委員会は国会で指名される議長,首相が指名する事務局長,大臣会議の構成員の中から首相によって指名された委員(5名),及び研究者によって選ばれた委員(12名)からなる。また,基礎研究委員会(33名),応用研究委員会(42名)はともに,研究者によって選ばれた委員から構成され,分野ごとの分科会に別れて活動する。また事務局は7部門からなり,約220名の専従スタッフが置かれている。

国家科学研究委員会は科学技術行政の最高機関とされており,国防研究費を除く研究開発予算を配分する。


脚注:1ズロチは,1990年において0.015円,1991年において0.013円,1992年において0.009円である。(IMF為替レート)

‐研究機関の評価‐

研究開発予算の配分に当たり,国家科学研究委員会は,研究機関に対する評価を重視することとされている。過去5年間の論文の数と質,論文の引用回数,学位取得者の数等から研究機関をランク付けし,研究開発予算の配分は,このランクをもとに行われることとなっている。

‐研究開発予算‐

第1-2‐東3表 にポーランドの研究開発予算額を示す。予算額は,1990年から1991年に対前年比9.3%減,1991年から1992年に対前年比8.8%増となっているが,ここに示された数値は名目であり,消費者物価指数が1991年には45.3,1992年には36.9であることを考慮すると,実質の予算額は大きく減少しているといえる( 第1-2‐東1表 参照)。

‐研究実施機関‐

ポーランドの研究開発は,科学アカデミーの研究機関,高等教育機関,各省庁傘下にある研究開発機関によって実施されている。機関ごとの研究の性格としては,基礎研究は科学アカデミーの研究機関,応用研究は各省庁傘下にある研究開発機関,高等教育機関は大学が基礎研究,高等技術等の専門学校が応用研究と分担されている。

研究開発機関毎の予算配分の内訳を 第1-2‐東4表 に示す。構成比は,各省庁傘下にある研究開発機関が最も多く33.8%を占め,高等教育機関が30.7%,科学アカデミーの研究機関が17.4%となっている。

第1-2‐東3表 ポーランドの研究開発予算

第1-2‐東4表 ポーランドの研究開発予算の組織別割合(1992年)

(ハンガリー)

ハンガリーでは,知的資源が最大の資産であり,科学研究と技術発展が新生ハンガリーをつくる原動力であるという認識のもとに,政府による国家科学技術戦略の策定とその実施の調整等を行おうとしている。

‐科学技術行政機関‐

ハンガリーにおける科学技術行政機関として,科学アカデミー,国家技術開発委員会(OMFB),科学政策委員会がある。

科学アカデミーはハンガリーの科学の発展に重要な役割を果たして来たが,1991年,基礎研究の推進と科学政策の策定を担当する機関として暫定的に位置付けられた。科学アカデミー傘下の研究機関は基礎研究を実施する。

国家技術開発委員会は1964年に設立され,技術開発を担当する行政機関として旧体制崩壊後も存続しており,国の科学技術政策の策定に関する提案,中央技術開発基金(KMUFA)の運営管理,科学技術に関する知識及び情報の収集・普及等を行っている。国家技術開発委員会の長官は無任所大臣が務めている。

科学政策委員会は,旧体制下において中央議会委員会の決定した科学技術政策の遂行に携わっていたが,1990年に改編され,現在では科学技術政策の調整機能を持つとともに,研究開発の方針についての政府への助言を行うこととなっている。委員会は,議長である科学技術担当の無任所大臣と,科学アカデミーの長官,文化教育大臣,大蔵大臣及び国家技術開発委員会議長から構成されている。

‐研究費‐

ハンガリーの研究費は,政府,中央技術開発基金及び企業が負担する。1990年の負担割合は,それぞれ政府が23.7%,中央技術開発基金30.0%,企業38.8%となっている。

中央技術開発基金は,応用研究や研究成果の普及・事業化を目的とした融資であり,申請に対し有望なものを認可するシステムとなっている。一方,基礎研究に対しては,科学研究基金(OTKA)が資金提供を行っている。゜科学研究基金の資金は,中央技術開発基金が負担する。

‐0ECDの科学技術政策レビュー-

1992年3月,ハンガリーに対するOECDの科学技術政策レビューが実施された。このレビューでは,ハンガリーの科学技術政策に対し,科学政策委員会の調整機関としての役割を強化し,研究開発予算の調整も行うようすること,科学アカデミー及び大学の研究所の見直しを行うこと,中央技術開発基金及び科学研究基金からの資金提供を強化すること等が提言された。


(3) 国際協力

地理的な位置からも,中・東欧諸国の国際協力は西欧諸国を中心として行われている。

EUは,EU諸国以外との協力関係の中でも中・東欧諸国を重視しており,第3次フレームワーク計画では1992年1月,初めて旧東欧諸国(ポーランド,ハンガリー,チェコ,ルーマニア)が環境,生物医薬と健康,非核エネルギー,原子力安全の4つのプログラムに参加したが,この際必要な資金は,EUが負担した。

また,中・東欧諸国のうち,いくつかの国は,多国間協力の枠組みであるユーレカ計画,欧州科学技術研究協力,欧州原子核研究機関に参加している。


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ