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第1部   いま,世界の中で
第2章  主要国の科学技術政策動向(各国編)
第3節  アジア太平洋地域
6.  オーストラリア


オーストラリアにおいては,従来の一次産品への依存を改め製造業の国際競争力の強化を重要課題とし,そのため,研究開発活動の実施が重要であり,民間部門の研究開発能力の強化等に主眼をおいた科学技術政策が展開されている。また,国際研究協力においてアジア地域との関係強化を重視する動きもみられる。以下では,その研究開発活動と科学技術政策の最近の動向をみていくこととする。


(1) 研究開発資源

(研究費)

オーストラリアにおける1990/91年度(1990年7月〜1991年6月)の研究費は,51億豪ドルで,国内総生産に対する比率は1.34%となっている。ここ数年間の研究費の伸び率は平均10%を超え顕著であるが,主要国の研究費の対国内総生産比が2%台の水準にあることから,いまだ研究費は低いレベルにあるといえる( 第1-2-豪1 , 2図 )。

研究費の1990/91年度における組織別負担割合をみると,産業界が40.3%,政府が54.9%,外国が1.3%,その他が3.6%となっている。また,研究費の1990/91年度における組織別使用割合をみると,産業界が39.9%,政府が32.3%,高等教育機関(大学等)が26.4%,非営利民営機関が1.3%となっており,負担割合,使用割合とも他の主要国に比べ産業界の割合が低くなっている( 第1-2-豪3図 )。


脚注:1豪ドルは,1990年において113円,1991年において105円,1992年において93円,1993年において76円である。(IMF為替レート)

第1-2-豪1図 オーストラリアの研究費の推移

第1-2-豪2図 オーストラリアの研究費の対国内総生産比の 推移

研究費の性格別構成比については,基礎研究が27.4%,応用研究が39.9%,開発研究が32.7%となっており,他の主要国に比べ応用・開発研究の割合が低くなっている。

(研究人材)

1990/91年度における研究者数は,4万2千人であり,研究者の組織別割合は,産業界が27.9%,政府研究機関が21.4%,高等教育機関が49.4%,民営研究機関が1.3%となっている。研究費と同じく,他の主要国に比べ産業界の割合が低くなっている。

第1-2‐豪3図 オーストラリアの研究費の組織別負担及び使 用割合


(2) 科学技術行政体制

(主要な行政機構)

オーストラリア連邦政府の科学技術政策は産業科学技術省(DIST),雇用教育訓練省,国防省,環境スポーツ特別地域省などの各省庁に分担されている。また,首相を議長とし,関係閣僚,学界,産業界等の委員から構成され,科学技術に関し国家的に重要な諸問題を審議する科学工学会議(PMSEC),各省庁と機関の間における情報の共同利用,科学技術に関する計画や政策の調整の円滑化を図るため関係省庁の幹部より構成される科学技術調整委員会(CCST),これらの事務を担当するとともに各省庁の科学技術政策の調整などを行う首任科学者室が設置されている。さらに,独立した立場から政府に助言を与えるオーストラリア科学技術審議会(ASTEC)が設けられている( 第1-2‐豪4図 )。

(主要な研究機関)

連邦政府の主な研究機関には,オーストラリア最大の総合的研究機関である連邦科学産業研究機構(CSIRO)のほか,国防科学技術機構(DSTO),オーストラリア原子力科学技術機構(ANSTO),地質調査所(AGSO),南極局,及びオーストラリア海洋科学研究所(AIMS)がある。

政府研究機関のための1994/95年度政府予算は,921百万豪ドルと連邦政府の科学技術関係予算の32%が計上されているが,政府からの予算配分のほか,連邦科学産業研究機構,オーストラリア原子力科学技術機構等はその予算の30%を受託研究や共同研究の形で企業等外部から獲得することが義務付けられており,産業界との研究交流や研究成果の移転促進が図られている。

また,連邦政府は国防科学技術機構の防衛研究から生まれる技術を

第1-2-豪4図 オーストラリアの主な科学技術行政機関と研究機関

産業に移転することが重要とし,国防科学技術機構の航空学研究所に産業支援室を設立するなど,産業界に対し技術移転を促進することとしている。


(3) 科学技術関係予算

1994/95年度における連邦政府の科学技術関係予算は,2,858百万豪ドル(対前年度比4.3%増)で,1981/82年度以来,著しい増加がみられている( 第1-2-豪5図 )。1994/95年度予算の使用目的別内訳をみると,関係省庁の研究機関の研究に32.2%(921百万豪ドル),民間の特定分野の研究等に対する科学・技術革新関係補助金に19.5%(557百万豪ドル),高等教育機関の研究に48.3%(1,380百万豪ドル)となっている( 第1-2-豪6表 )。

第1-2-豪5図 オーストラリアの科学技術関係予算の推移

第1-2-豪6表 オーストラリアの科学技術関係予算の使用目的別内訳


(4) オーストラリアの科学技術政策

(科学技術政策の背景)

オーストラリアは,資源を中心とした一次産品への外需によってこれまで成長してきたが,こうした所得弾力性の低い資源輸出への依存は,世界の需要動向により国内の景気が左右されることとなるため,1983年の労働党政権誕生以来,従来の一次産品への依存を改め製造業の国際競争力の強化を重要課題としている。その解決には,先端技術,製造技術における研究開発の実施が極めて重要とし,1991年3月に発表された「競争力あるオーストラリアを築くために」と題する政府声明においても,研究成果の商業化,実用化の促進や研究基盤の強化の必要性が示されている。

従来,オーストラリアは優れた研究能力を持つものの,研究成果を実用化する能力は一次産業部門以外では乏しかったとみており,最近では国の経済的,社会的な繁栄のため,研究成果をより有効に活用することを目指して,産業界の研究開発を盛んにし公的部門の研究が企業やその他の研究成果の利用者の必要に一層応えるよう全研究部門間の連携の強化に重点が置かれている。

(科学技術の重要性の認識の増大)

連邦政府の科学技術政策は,オーストラリアの将来における科学技術の役割を明確に認めた1989年5月に発表された政府声明(「Sci-ence and Technology for Australia),その方向に沿った1992年8月の科学技術白書(「Deve10ping Austra11an Ideas-A Blueprint for the1990s」)に沿って推進されている。

連邦政府は,科学技術を農産物及び天然資源に依存した経済から脱却するための鍵として位置付け,科学技術,とりわけ産業化に直接結び付く産業技術分野の能力拡大に努力を傾注してきたが,昨今の世界情勢,すなわち,世界貿易に占める技術依存型工業製品の増大,地球環境問題に対する認識の高まりから一段と科学技術の重要性が増しているとしている。

(民間研究開発の強化と産学官の連携の強化)

連邦政府は,科学技術を国際競争力の基礎と考えており,技術革新からマーケティングに至る活動を科学技術政策の一環としてとらえている。連邦政府の科学技術振興政策の重点は,産業技術の育成にあるが,特に,民間部門を研究成果を富に結び付ける主力と位置付けており,政府の講ずる科学技術政策は次の2つが核となっている。

1) 民間部門の研究開発能力の強化
2) 公的研究部門と民間部門との連携の強化

そのため,政府の科学技術への投資効果を改善するため,次の4つを政策の柱として掲げている。

1) 技術への投資を支援する環境整備,及び国際競争力強化のための技術革新を奨励する環境整備
2) 生活の場において,特に経済,社会の発展において,科学技術,技術革新が果たす重要な役割に対する国民の理解の増進
3) 科学・工学教育の強化を通じての技能の提供
4) オーストラリアにとってのニーズや世界的レベルに対応する大学,公的研究機関の研究基盤の整備

連邦政府は,民間部門の研究開発活動の拡大を目標とし,国際競争力獲得のため研究開発が重要な役割を果たすことを民間に示すとともに,研究開発投資を支援する税制の優遇措置等のような刺激策が政府の科学技術政策の中心的要素であるとしている。また,国の研究開発に民間が参加するように呼びかけるとともに,国際化の促進を図りたいと考えている。そのため,産学協力の促進,税制上の優遇措置,補助金の交付,特に市場性の高い研究開発を奨励するための施策等を講じている。

‐研究開発促進税制‐

本制度は,企業の支出した研究費の150%相当額を,法人税の課税対象額から控除(損金算入)するもので,企業の研究開発を振興し産業の国際競争力強化を図る目的で導入された。民間企業の研究開発実施への大きなインセンティブとなっており,最も重要な施策のーつとなっている。1985年に期限付きで導入されたが,1993年以降無期限に適用されることとなった。

連邦政府は民間部門の研究開発投資は過去10年間急増しているもののいまだ海外に比べて低く,研究開発への事業投資のため強力な刺激を引き続き提供する必要があると考えており,また,国際競争力強化のため民間の果たす役割が大きいことを民間に示す意味もあるとしている。

‐研究開発助成金‐

民間企業の実施する研究開発に対し助成金を交付するもので,研究開発段階でまだ利益の上がっていない企業や中小企業への研究費の助成,及び重要な先端技術分野で政府の支援がなければ開発が困難なバイオテクノロジー,新素材,情報技術,通信技術,廃棄物処理・環境技術の分野の基盤的革新技術の研究開発プロジェクトを助成するものである。

-共同研究センター(CRC)事業-

連邦政府は,大学,政府研究機関の研究成果を,民間部門へ移転しその産業化を進めており,共同研究センターはその中心的施策である。

同センターは,資源産業,製造業,情報産業,環境保全,医療研究等の特定研究課題に関し,産業界,国立研究機関,大学等が共同してセンターを作り,革新的な技術を開発しようというものありで,1991年から開始され1993年末までに51センターが設立されている。

(国際協力)

連邦政府は,研究者の不足や産業技術基盤の弱いことによる先端技術分野の遅れ等に対処するため,これを補完する意味で国際研究協力については積極的である。国際的な研究協力等を通じ先進国における新規の研究開発成果や技術開発プロジェクトに早い段階からアクセスすることによって,オーストラリア産業の競争力が増すとの認識を持っており科学技術協力協定等に基づく国際研究協力を実施している。

特に,経済成長が著しく,オーストラリアの主要な貿易相手国となっているアジア地域との関係強化を重視しており,連邦科学産業研究機構などにおいて,アジア各国の研究機関との協カのための取り決めがなされている。

(科学技術に関する意識の向上)

連邦政府は,科学技術に対する国民の意識を高める措置を講じてきている。1989年中頃に開始された「科学技術意識プログラム」は,国声的な奨励金プログラムで,卓越した科学技術の業績に対し「オーストラリア賞」を授与するなどを内容としている。


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