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第1部   いま,世界の中で
第2章  主要国の科学技術政策動向(各国編)
第3節  アジア太平洋地域
2.  韓国



(1) 研究開発資源

(研究費)

韓国の1992年度の研究費は4兆9890億ウォンであり,これは前年度に比べて20.0%の増加となっている( 第1-2-韓1図 )。しかし,1981年度の3668億ウォンから1991年度には4兆1584億ウォンへと,年平均27.9%の増加率で増えてきたことに比べると,増加率が多少鈍化している。また,1992年度の研究費の対国民総生産比は2.17%であり,1981年度の0.81%と比較すると2.68倍に増加している( 第1-2-韓2図 )。

第1-2-韓1図 韓国の研究費の推移


脚注:1ウォンは1980年において0.373円,1985年において0.274円,1990年において0.205円,1991年において0.184円,1992年において0.162円である。(IMF為替レート)

第1-2-韓2図 韓国の研究費の対国民総生産比の推移

第1-2-韓3図 韓国の研究費の組織別負担割合の推移

研究費の組織別負担割合の推移をみると,研究費総額が大幅に増加する過程で,政府と民間の負担割合が大きく変化している。1976年度には,政府負担が77.9%,民間負担が22.1%と政府負担が大きな割合を占めていたが,1982年度には,政府負担が49.6%,民間負担が50.4%とほぼ肩を並べ,1992年度には政府負担が17.6%に対し,民間負担が82.4%と民間負担の割合が圧倒的に大きくなっている( 第1-2‐韓3図 )。

1992年度の研究費を使用組織別にみると,試験研究機関1兆603億ウォン,高等教育機関3029億ウォン,民間企業3兆6258億ウォンで,前年比,それぞれ17.3%,5.0%,22.3%の増加となっている。構成比率は試験研究機関21.2%,高等教育機関6.1%,民間企業72.7%で,民間企業の比重が大きく,企業の研究開発活動が国家全体の研究開発において重要な位置を占めていることがわかる( 第1-2‐韓4図 )。

1992年度の研究費の性格別による構成は,基礎研究が6286億ウォン,応用研究が1兆3133億ウォン,開発研究が3兆471億ウォンとなっており,その構成は,基礎研究が12.6%,応用研究が26.3%,開発研究が61.1%となっている( 第1-2‐韓5図 )。

第1-2‐韓4図 韓国の研究費の組織別使用割合の推移

第1-2‐韓5図 韓国の研究費の性格別構成比の推移

第1-2‐韓6図 韓国の研究者数の推移

(研究人材)

韓国の1992年度における研究者数は8万9千人で1991年度の7万6千人に比べて16.4%増加しており,1981年度の2万1千人に比べて4.28倍となっている( 第1-2‐韓6図 )。

1992年度の研究開発主体別研究者数は,試験研究機関1万4千人,高等教育機関2万3千人,民間企業5万1千人であり,その割合はそれぞれ試験研究機関16.3%,高等教育機関26,2%,民間企業57.5%となっている。


(2) 科学技術行政体制

急速な工業化に重点を置いて1962年に始まった韓国の第1次5カ年経済開発計画において,政府は経済成長を維持し,韓国製品の国際競争力を向上するため,技術と人材開発の重要性を強調した。そこで政府は主要な政策の目的として科学技術の開発を挙げ,1967年にその実施の中心機関として科学技術處を設立した。また,1967年,国家レベルで科学技術の振興を図るための計画の実施と,科学技術の利益の国民への普及,経済・産業開発の促進を目的として,科学技術振興法が可決された。こうして政府は,科学技術處を通じて,中・長期の経済社会開発計画の一環として総合的な科学技術振興政策を実施している。

現在の韓国の科学技術行政体制の骨格は,科学技術處を中核とした科学技術関連省庁と,大統領の科学技術諮問機構である国家科学技術諮問会議,各部門の科学技術政策の総合調整機構である総合科学技術審議会で成り立っている。また,制度化された常設機構ではないが,科学技術振興会議も実質的に科学技術行政の重要な一翼を担っている。

-科学技術處‐

現在の韓国の科学技術開発の目的は,2000年までに先進国の技術水準に達することである。この目的達成のために,科学技術處は他の省庁と協力して活動している。

科学技術處の政策の目標は以下のとおりである。

1) 国家的な研究開発計画の実施
2) 安定した研究開発資金と研究開発人材の確保と供給
3) 研究指導者の役割の活性化
4) 科学技術情報の収集・普及システムの強化
5) 研究開発活動のグローバル化
6) 技術的な便益を大衆に普及させることによる科学技術の社会的な基盤の強化

また,海外との関係においては,科学技術處は,韓国の限られた研究開発能力と先進国の技術保護主義を克服することを念頭に,国際共同研究等国際協力を進めている。

‐国家科学技術諮問会議‐

科学技術の高度化と複雑性により,科学技術と政策との関連が一層拡大・専門化するにつれ,政府首脳が高度に専門的な科学技術分野の政策立案・実施などのために,専門的で時宜にかなった助言を求める機構を必要としているとの認識が高まってきた。このため,「国家科学技術諮問会議法」が1991年3月に制定され,1991年5月正式に国家科学技術諮問会議が発足した。同会議は委員長と10名の委嘱諮問委員から構成され,

1) 科学技術の革新と情報及び人材開発など,科学技術基本政策の発展方向に関する事項
2) 科学技術開発を促進するための制度の発展に関する事項
3) その他,科学技術分野に関して大統領が付議する事項

などに関して,大統領の諮問に応じることとなっている。

1991年5月からの2年間の第1期諮問会議では,原則として月1回の全体諮問会議が開催され,26回の全体会議で124件の案件を扱った。

そのうち,4回にわたる大統領報告会議を経て,2年間の活動で科学技術投資財源の動員及び活用方策,環境科学技術の総合対策,科学技術情報の総合的管理・支援対策等の8課題について政策建議を行った。

大統領に報告した政策建議事項は,大統領の指示事項として示達され,関係部局で具体的計画が策定され,推進されている。

第2期諮問会議は,科学技術発展のために国家科学技術諮問会議を活性化すべきとする大統領の指示に沿って運営されており,委員長を常任とし,隔週に会議を開催し,結果を毎月1回ずつ大統領に報告している。なお,現在までに報告された課題及び推進中の課題は 第1‐2‐韓7表 に示すとおりである。

-総合科学技術審議会‐

総合科学技術審議会は,科学技術振興政策と科学技術投資計画の総合調整のため,1972年12月に改正された科学技術振興法の規定によって,国務総理の下に設置されたもので,1993年12月現在,9回開催されているが,1990年からは年1回以上の割合で開催されている。国家的に重要な科学技術関連の主要施策が,関係省庁がともに集まる場で討議・検討され,確定することで,関係省庁間の協力体制の強化と関連事業計画の立案・執行の効率性が一層高められる点が,総合科学技術審議会開催の重要な成果だとされている。

第1-2一韓7表 第2期国家科学技術諮問会議の課題

-科学技術振興会議‐

大統領が主催する科学技術振興会議は,1980年代の技術振興拡大会議を発展させたもので,科学技術革新に関する意思表明と汎国民的集約を通じた科学技術振興を目的として,1989年から1993年までに6回開催された。この会議は,科学技術関係者はもちろん,産業界・言論界・金融界など,非科学系を含む社会の各界各層の人々と,大統領が一堂に会して,科学技術懸念課題について報告し,討論することで,解決策を模索していくというところにその意義を置いている。1993年には,科学技術振興会議が技術開発促進計画報告会議と名称変更して開催された。


(3) 韓国の科学技術政策

(科学技術政策の背景)

韓国経済は,過熱気味の景気に対し1991年央から引き締め政策をとったことから1992年に大きく減速し,実質国内総生産は1992年第4四半期に前年同期比3.0%増と伸び悩み,1992年通年では5.1%成長にとどまった。景気減速の要因としては,1991年から「物価安定及び国際収支改善対策」として金融引き締め等の総需要抑制策がとられたこと,及びバブル経済が崩壊したことが挙げられる。

1993年に入り成長率は緩やかに回復したが,このような状況を踏まえ,国際競争力を維持し,韓国経済の活力を保っために,韓国政府は1993年7月「新経済5カ年計画」を策定した。同計画においては,

1) 労働生産性の上昇に見合った賃金上昇を図る
2) 製品の高付加価値化を一層図る
3) 貿易相手国を多角化する
4) 海外展開をさらに積極的に図る
5) 国際的に市場開放を推進し,韓国企業の体質強化を図る
6) 資本財,中間財産業を育成する

ことが主要な目標として示されている。

韓国経済の競争力の回復策としての視点からみた主要な施策としては,生産性向上,高付加価値化,貿易相手国の多角化及び海外展開,市場開放と韓国企業の体質強化が挙げられる。このように「新経済5カ年計画」では,制度面から先進国化,民間主導の成熟した経済構造への転換を目指しているといえる。

(先導技術開発事業の推進)

韓国政府は,1993年に「新経済5カ年計画技術開発戦略部門計画」を策定して,韓国の科学技術を21世紀初頭には先進7カ国の水準にまで高めるという基本目標を定めた。その基盤構築のため,1998年までに主力産業の技術競争力を先進国の水準まで高め,特定分野の戦略核心技術を世界の水準にし,基礎科学研究と公共福祉技術の自立基盤を拡充するという目標を示している。政府は,「新経済計画」の基本路線の中で科学技術の国際化,専門化施策を推進し,急変する国際経済・技術環境に積極的に対処していくために,今後の科学技術政策の基本方向として,以下のような項目を挙げている。

韓国は21世紀に科学技術先進国入りを目標としているが,先進国に比べて技術力の蓄積がそれほど高くなく,10年という短期間に全分野の科学技術を先進国水準に発展させるには限界があると認識している。

従って,厳選した少数の主力技術を集中的に開発し,それを中心に関連技術の開発を促進するという戦略をとることとしている。

これに伴って,政府は,新生技術として世界各国で開発に重点を置いている技術分野と,その中でも韓国の条件と能力を活かせる技術,そして韓国主力産業の世界市場における競争力の向上に必須の技術などを選び出し,これを国家的に推進するため先導技術開発事業(G7プロジェクト)を定めた( 第1-2‐韓8表 )。

第1-2‐韓8表 先導技術開発事業(G7プロジェクト)の推進目標

11個の先導技術開発事業開発には,1992年から2001年までの計画期間中,政府から1兆4700億ウォン,政府投資機関から5900億ウォン,民間企業から1兆6400億ウォンなど,総額3兆7000億ウォンを投資する計画である。

(創造的科学技術確保のための国家戦略研究事業の強化)

世界的水準の独創的技術を確保するため,11個の先導技術開発事業を計画通り推進していくにあたり,目標管理制強化など効率性の向上に重点を置いている。21世紀の新産業創出を先導していく未来型複合技術を積極的に開発していくとともに,航空宇宙,原子力など巨大科学技術開発事業も中・長期計画に基づいて推進していくこととしている。

また,産業技衛の土台となる基礎科学研究を振興していくため,目的基礎研究費の拡大,大学優秀研究センターの拡充,基礎科学支援センターを中心とした先端研究施設共同利用体制の確立などを推進するとともに,「基礎科学研究振興総合計画」を樹立して支援していく計画である。

(民間企業主導による技術革新体制の支援の強化)

新経済計画の理念に従って,技術開発における民間の創意と活力が最大限に発揮されるよう,実効性のある支援施策を拡充していくため,企業の研究所,産業技術研究組合などの民間研究開発組織を育成するとともに,技術開発活動に対する租税優遇措置及び資金の供給を持続的に拡充していく。

(競争と協同の国家研究開発体制確立)

政府出捐研究所(国が設立し,運営経費等を国が出資,職員は公務員ではなく,日本の特殊法人に相当)の研究開発体制を,競争中心に大幅に改革し,研究の生産性と効率性を向上するために,厳正で客観的な評価制度を導入し,研究成果に応じて報酬や人事などを差別化する。併せて,国内の研究能力を最大限に結集・活用するため,1994年から施行される協同研究開発促進法によって,産業界・大学・出捐研究所間の研究人材,情報などの交流制度を奨励し,協同研究に対する優遇措置を推進していく。企業の協同研究を奨励するため,企業間の特許相互使用と,競合企業間,大企業と中小企業間,異種企業間の研究組合結成を積極的に奨励する。

(科学技術の世界化戦略推進)

国際化・開放化の急進展に伴い,科学技術分野でも世界化戦略を推進し,国際的に競争力のある研究開発体制を確立していく。このため,政府では,米国,日本,EUなど先進国ごとに特化された先端技術を中心に,共同研究,人材交流などを強化するとともに,旧ソ連・東欧諸国及び中国との戦略的技術協力を拡大し,先進工業国の技術保護障壁を克服する契機として活用していくこととしている。また,国内研究員の海外派遣を通じた海外における共同研究を強化するとともに,海外研究所設置と外国研究所の国内誘致を促進していく方針を示している。

(研究開発投資・人材など科学技術革新の基盤の拡充)

政府は,研究開発投資拡大政策として,研究開発投資を1990年度の対国内総生産比1.95%から,1996年までに3.24%,1998年までに4%,2001年までに5%の水準まで拡大するという基本目標を設定した( 第1-2‐韓9図 )。このような目標を達成するため,政府全体の予算のうち,研究開発投資に優先順位を付けて,研究開発関係予算の比重を毎年段階的に高める計画である。

第1-2‐韓9図 韓国の研究開発投資の拡大目標

研究人材の安定的確保・供給のために1998年までに,14万人の研究人材を養成するという目標の下,大学(院)の定員を理工系中心に拡大し,優れた理工系大学を大学院中心体制に改編するとともに,特定先端技術分野の専門家養成機関として光州科学技術院を建設している。

(科学技術の全国的展開と社会的受容基盤の強化)

地方化の時代に対応して,科学技術の地域的な均衡発展を図るため,光州・釜山・大邱・全州・江陵などの地方科学産業団地造成等の地方科学技術振興施策を検討していくこととされている。また,先端技術が社会的に受容され得る基盤を整え,国民生活への科学の導入を促進するとともに,学校外の科学教育活動を強化することとされている。


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