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第1部   いま,世界の中で
第2章  主要国の科学技術政策動向(各国編)
第3節  アジア太平洋地域
1.  中国



(1) 研究開発資源

(研究費)

中国の1991年の研究費は142億元であり,1988年の90億元と比べて1.59倍に増加している。研究費の対国民総生産比は1991年に0.72%であり,1988年の0.64%に比べて1.13倍に増加している( 第1-2-中1表 )。

研究費の負担源別の内訳は,政府が54.9%,産業事業体が25.4%となっている。また実施部門別の内訳は研究開発機関が50.1%,事業体が27.4%,大学が12.1%,その他が10.4%となっている。


脚注:1元は,1988年において34.4円,1990年において30.3円,1991年において25.3円である。(IMF為替レート)

第1-2-中1表 中国の研究費及び研究費の対国民総生産比

(研究人材)

科学技術に関する人的資源に関しては,1990年の科学者・技術者数は40万8千人で1987年の24万4千人に比べて1.67倍に増加している。その内訳は研究開発機関が全体の50.3%,大学が29.0%,産業事業体が13.9%,その他の部門が6.8%となっている( 第1-2-中2表 )。

第1-2-中2表 中国の科学者・技術者の組織別構成


(2) 科学技術行政体制

(科学技術管理体制)

現在の中国の科学技術管理体制は,中央と地方,実行部門と管理部門,異なる業種により構成され,多くの機関が多元的に連携する一つの複雑なネットワークとなっている。このうち主なものは以下のとおりである。

政府は,このネットワークの中枢として,科学技術戦略と政策を制定し,主要な科学技術資源を提供し,所属する研究機関において科学技術活動を実施している。なかでも,国務院は中国の科学技術に関する最高政策決定及び管理機関であり,科学技術に関する基本的な政策はすべて国務院が決定することとなっている。

国家科学技術委員会は国務院が管理する全国科学技術活動を具体化する部門である。国家科学技術発展のための戦略,方針,政策,法規を策定し,国家計画委員会と共同して中・長期の科学技術発展計画及び年度計画を作成,実施し,経費の分配管理に責任を持つ。また,全国の科学技術データ,情報,技術市場,対外科学技術協力などの活動を管理している。

中国科学院は全国の傑出した科学者で構成され,国家の科学研究分野のプログラムと政策の制定に参与するとともに,中国の自然科学部門における最高の学術機関及び総合研究センターとして,直属の研究機関で研究を行っている。

中国科学協会は中国科学技術従事者の大衆組織であり,全国的学会,協会,研究会,地方科学協会により構成され,科学技術の繁栄,発展,普及,拡大を促進することを目的としている。

(科学技術活動機関)

科学技術活動機関は,科学研究・技術開発機関及び科学技術関係機関の2つで構成されている。

科学研究・技術開発機関は,政府部門に属する独立の研究開発機関,高等教育機関及びそれに付属する研究開発機関,大規模及び中規模の工業企業に属する技術開発機関並びに集団又は個人の経営する技術開発機関の4つに分類される( 第1-2-中3図 )。

科学技術体制改革(後述)以来,中国の科学技術活動には,国家重点研究所,部門級開放研究所,エンジニアリング(技術)研究センター,科学技術開発企業,各種科学技術基金会,博士後流動拠点などの非常に多くの新しい組織形式が出現した。

このうち,国家重点研究所は,基礎研究の支援,人材の育成,科学研究設備の更新,良好な科学技術環境の創造により,中国の基礎研究を基本的に国際水準に引き上げることを目的として,国家計画委員会により1984年に組織作りが開始された。これらの研究所は科学研究活動の中で逐次「開放,流動,連合」の新構造を形成し,中国の基礎研究および基礎研究の持続的応用,安定した発展に対し重要な働きをし,中国内および国際的に影響を与え,中国の科学研究と高級科学研究人材養成の活力に富んだ基盤とされている。1991年までに合計74カ所の異なる分野の国家重点研究所が設置されている。

第1-2-中3図 中国の主な科学研究・技術開発機関

国家重点研究所計画の実施と同時に,国家各部門は積極的に部門級の開放研究所を設置した。国家教育委員会は1983年から正式に開放研究所の建設を開始し,1991年に全部国家重点研究所に編入した。現在開放した研究所は17カ所である。中国科学院は1985年に正式に開放研究所の建設を開始し1991年に院級開放研究所は96カ所となり,その中の25カ所は国家から国家重点研究所として認定された。

なお,科学研究・技術開発機関の他,中国には多くの科学技術関係機関がある。これに該当する主な機関は,地質調査機関,気象観測予報機関,海洋観測予報機関,地震観測遠隔測定機関などである。


(3) 中国の科学技術政策

(科学技術政策の背景)

中国経済は経済改革・対外開放政策の下,高成長を続けており,1981年〜1990年を通じた平均成長率(実質)は9.1%であった。1987年,1988年と過熱化した経済の鎮静化を図ったため,1988年後半より経済調整期に入り,投資,消費共に減退し,成長率も鈍化した。1990年半ばより引き締め政策を緩和し,金利の引き下げ等により経済の活性化を図ったため,1990年に前年比4.1%まで落ち込んだ成長率も,1991年には8.2%,1992年は13.0%に高まり,1993年も13%の成長が見込まれている。

現在中国は,「社会主義市場経済」という新しい目標を掲げ,経済の市場化を進めており,中央政府の指令の下に経済を動かしてきた計画経済体制から,市場経済システムを採り入れた経済体制へと,中国の経済体制は過渡期にある。中国経済は急成長を遂げた一方で多くの問題点をかかえており,これらの問題点を解決するためには,市場経済体制に必要な諸制度の確立及び持続的成長に耐えうる経済の基盤強化が必要とされている。

1991年4月,第7期全人代第4回会議で「国民経済社会発展10カ年計画(1991年〜2000年)」及び「第8次5カ年計画(1991年〜1995年)」が採択され,1993年3月の全国人民代表大会では,当初は6%成長が目標だったこの計画期間の成長目標が,平均8〜9%へと上方修正されている。

(科学技術管理システムの改革)

1985年3月「科学技術管理システムの改革に関する決定(中共中央科学技術体制改革の決定)」が共産党中央委員会により発表された。

それ以降,科学技術に関して改革と外部世界への門戸開放が始まった。

また,研究開発成果の商業化を加速すること及び資金配分システムの再構築により,科学技術を経済発展と一体化することを目標とし,大きな改革が行われた。具体的な改革の内容としては,

1) 研究開発が経済発展に一層貢献するような研究開発資金の配分システムの改革
2) 技術製品の商業化を促進するための技術市場の急速な拡大
3) 科学技術発展分野の拡大及び科学技術と経済発展の統合の形の多様化

である。

科学技術管理システムの改革に推進され,世界及び中国内の科学技術と経済発展の傾向に合わせて,中国の科学技術開発戦略が徐々に形成されている。戦略は,経済発展の主流への奉仕,高度な新技術・産業の開発,基礎研究の強化の3点から構成されている。

(経済発展の主流への奉仕)

経済発展の主流への奉仕とは,直接的に国家経済発展の目標の実現を支援する研究開発を行うことを指している。主な活動は,伝統産業の技術を改善することであり,経済建設及び社会発展において重要となる科学技術に関する課題を克服し,各種企業と農村の技術進歩を推進し,工業,農業,その他産業の技術水準と経済利益を向上させることを目的としている。

「星火」計画は,中国政府が策定し,実施する科学技術による最初の農村経済発展促進計画であり,科学技術を広大な農村に普及させ,科学技術を柱とする農村の社会主義計画的な商品経済や農業の近代化を推進することを目的とし,1988年〜1991年の間に180億元が投資されている。

(高度な新技術・産業の開発)

高度な新技術・産業の開発は,経済,科学技術,国防,社会発展に重大な影響のあるハイテク領域における革新的研究を行うことであり,新興産業及びハイテク産業を育成・発展させ,世界の先進科学技術水準に追いつくことを目的としている。

「ハイテク研究開発計画(863計画)」は1987年末に開始され,バイオテクノロジー,宇宙技術,情報技術,レーザー技術,自動化技術,エネルギー技術,新材料の7分野がハイテク開発の重点として選ばれている。「ハイテク研究開発計画」は政府の特別予算配分によって全額出資され,1987年〜1991年までに民間の5分野に8億56百万元が投資されている。

「火炬」計画は1988年に導入され,中国の優れた分野の科学技術を一層開発し,ハイテク研究成果の商品化,ハイテク製品の産業化,ハイテク産業の国際化を促進することを目的として,1988年〜1991年までの間に総額43億4千万元が投資されている。

(基礎研究の強化)

基礎研究は,科学技術発展の基礎であり,国家の長期的発展に着目し,科学技術,社会,経済の持続的進歩を推進する極めて重要な作業であると認識されており,この認識に基づき,「国家基礎研究重要プロジェクト計画(クライミング・アップ計画)」が策定されている。同計画の目標は,人材育成を強化し,研究要員の資質やレベルを高め,主要な基礎科学や新興科学の分野,あるいは学際的な学問分野における中国科学界の地位を高め,中国の国民経済と社会の発展における重要問題の解決能力を強化することである。この計画は1991年に始まり,1200万元が投資された。

(長期的視点からの科学技術への取り組みの強化)

1992年3月に国務院から「中・長期国家科学技術開発計画」が発表された。同計画は,経済成長は科学技術の発展によらねばならず,科学技術活動は経済成長によって促進されねばならないことを基本原則としている。中・長期にわたる科学技術開発に向けた戦略,指針,政策,優先課題を具体化することにより,中国の主要産業を,2000年までに先進国の1970年代,1980年代の水準に,2020年までに先進国の21世紀初頭の水準に到達させることを目的としている。その開発優先課題として,農業科学技術,工業科学技術,社会開発に関する科学技術,ハイテク・革新技術と関連産業,純粋・応用基礎研究,国防科学技術が示されている( 第1-2-中4表 )。

第1-2-中4表 中・長期国家科学技術開発計画の開発優先課題

また,科学技術法制を確立するために,1993年7月に第8期全国人民代表大会常務委員会第2回会議において,科学技術進歩法が採択され1993年10月から施行された。同法の冒頭で,科学技術の進歩を促進し,社会主義近代化建設の中で科学技術を優先的に発展させ,科学技術の第一生産力としての役割を発揮させ,科学技術を経済建設のために寄与させることを推進するため,憲法に基づき本法を制定するとしている。現在,下部規定として,科学研究基金条例,科学技術成果転換条例,科学技術奨励条例,科学技術交流条例等を準備しているところである。


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