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第1部   いま,世界の中で
第2章  主要国の科学技術政策動向(各国編)
第2節  欧州
2.  フランス


フランスにおいては,基礎研究及び原子力,宇宙等の大型プロジェクトが政府主導で実施されてきたが,産業界における研究開発が必ずしも十分には行われてこなかったとの認識のもと,産業界における研究開発への支援が強化されてきている。1993年3月に発足した新内閣も,競争力強化及び雇用の確保のため産業界における研究開発を重視しているが,現在の科学技術の枠組みが過去12年間基本的に変更されていないことから,諸情勢の変化を踏まえた新しい科学技術政策を模索中である。以下では,その研究開発活動と科学技術政策の最近の動向をみていくこととする。


脚注:1フランは,1981年において41円,1985年において27円,1990年において27円,1991年において24円,1992年において24円,1993年において20円である。

(IMF為替レート)


(1) 研究開発資源

(研究費)

フランス国内で1992年に支出された研究費は,1691億フランであり,国内総生産に対する比率は,2.42%となっている。最近の研究費の推移をみると,1981年から1990年代の初めまでは,政府の研究投資拡大の取り組みなどにより順調に増加してきている( 第1-2-仏1図 )。

研究費の組織別の負担割合をみると,1991年において,政府が48.8%で最も負担が多い。しかし,1980年代後半の政府の負担割合は減少傾向にあり,一方外国の負担割合が増加傾向にある( 第1-2-仏2図 )。

第1-2-仏1図 フランスの研究費の推移

第1-2-仏2図 フランスの研究費の組織別負担割合の推移

第1-2-仏3図 フランスの研究費の組織別使用割合の推移

研究費の組織別使用割合をみると,1992年において,フランスの研究開発支出の61.1%を産業界が使用しており,ここ数年,その使用割合は微増傾向にある。一方,政府の使用割合は減少傾向にある( 第1-2-仏3図 )。

(研究人材)

1991年におけるフランスの研究者数は,12万9千人であり,29.9%が公的研究機関,22.4%が大学,1.6%が民営研究機関,46.1%が産業に属している。他の先進主要国と比較して,公的研究機関に属する者の比率が高く,産業に属する者の比率が低くなっている。


(2) 科学技術行政体制

(科学技術政策の総合調整)

科学技術行政は,各省庁で行われているが,総合的な科学技術政策及び各省庁間の調整は高等教育研究省で行われている。高等教育研究省は政府機関における研究を所管しており,政府の研究開発予算をとりまとめるほか,公的研究機関,大学,民間等における研究開発の助成を行っている。高等教育研究省は,それまで,別々の組織に属していた高等教育部局と研究部局とが1993年3月に統合され,発足している( 第1-2-仏4図 )。

(研究組織)

政府において,研究を実施している組織には,公的研究機関,大学,及び,研究内容の公益性から広い意味での公的な研究機関と考えられている民営研究機関がある。

第1-2-仏4図 フランス政府の主な科学技術行政機構と研究機関

公的研究機関は,政府の研究機関である。高等教育研究省の所管であるものが多く,複数の省庁で共管されている場合もある。研究内容が,科学技術的であるか,産業商業的であるか,またはその他の行政目的のためであるかにより,3種類に分類されている。

国立科学研究センター(CNRS),国立農学研究所(INRA),国立保健医学研究所(INSERM)等の科学技術的性格の研究機関は,EPST機関と呼ばれている。研究のほとんどが基礎研究で占められ,大学と並びフランスの基礎研究を支えている( 第1-2-仏5図 )。

1982年に行われた制度改革により,これら機関には,公的な法人格が与えられ,また,子会社の設立,企業への出資等が可能となっている。

特に,国立科学研究センターは1993年において,研究者数が約1万l千人で,公的研究機関の中で最大の組織である。予算面でも1993年度の国からの助成金が121億フランと,国の民生研究開発予算の24.0%を占めている。

原子力庁(CEA),国立宇宙研究センター(CNES),国立海洋開発研究所(IFREMER)等の産業商業的性格の研究機関は,EPIC機関と呼ばれている。大規模技術計画の政府側担当分の多くは,これらEPIC機関により実施されており,これらの機関では基礎研究の割合が小さく,応用研究や開発研究の割合が大きくなっている( 第1-2-仏5図 )。

第1-2-仏5図 フランスの研究費の組繊別の性格別構成(1990)

大学は,全て国立であり,高等教育研究省所管の大学のほか,各省所管のグランゼコールなどの高等教育機関も含んでいる。基礎研究の割合が1990年で89%と,他の先進主要国の大学と比べて極めて高いのが特徴である(第1-2-仏5図)。

民営研究機関とは,非営利の財団や協会をいい,研究内容の公益性のため,1990年には,その研究費の19%を国からの研究補助金で賄っており,フランスでは広い意味での公的な研究所ととらえられている。

この分類の代表的研究所として,パスツール研究所,キュリー研究所がある。


(3) 科学技術関係予算

(科学技術関係予算の現状)

1993年度(1993年1月〜12月)における科学技術関係予算(当初予算ベース)は,805億9干万フランである。その62.8%を,民生研究開発予算が占め,残りの37.2%を国防研究予算が占める。

民生研究開発予算の省庁別内訳をみると,最も割合の大きいのは高等教育研究省で,58.1%と2分の1を超える。次いで,産業郵政貿易省(31.5%),設備運輸観光省(5.8%)等となっている。

次に,民生研究開発予算の研究機関別の内訳をみる。最も割合の大きいのは,国立科学研究センターが24.0%である。以下,国立宇宙研究センター(16.5%),原子力庁(12.8%),国立農学研究所(6.0%),国立保健医学研究所(4.4%)と続いている。

(研究開発投資拡大の取り組み)

1981年に就任したミッテラン大統領は,研究開発を国の政策の優先課題に掲げ,研究開発の強化を打ち出した。技術への積極的な投資がなされなかったことを反省し,1985年までにフランス全体の研究開発支出を国内総生産の2.5%に引き上げるとの野心的な拡大目標を設定し,研究開発投資の拡大を進めた。この結果,1985年には,対国内総生産比2.5%の目標は達成できなかったが,2.25%にまで上昇した( 第1-2-仏6図 )。

2年間の投資の停滞期(1986年〜1988年)を経た後,政府は,再度,研究開発投資拡大の目標を打ち出し,研究開発支出の対国内総生産比を3.O%にまで拡大する目標を,第10次社会経済文化発展計画(1989年〜1992年)において定め,研究開発投資の拡大を図った。この結果,1992年の対国内総生産比は2.42%となり,目標は達成できなかったものの,フランスは,米国,日本,ドイツに次ぐ世界第4位の研究開発投資国の地位を確保した。このような研究開発投資拡大の取り組みにより,科学技術関係予算は急速に増加し,1980年度に,290億フランであったものが,1990年度には781億フランと約2.7倍となった( 第1-2-仏7図 )。1990年度以降は,ほぼ横ばいで推移している。

第1-2-仏6図 フランスの研究費の対国内総生産比の推移

第1-2-仏7図 フランスの科学技術関係予算の推移

第1-2-仏8図 フランスの国防研究予算の科学技術関係予算に占める割合の推移

フランスの科学技術関係予算に占める国防研究予算の割合の推移についてみてみる( 第1-2-仏8図 )。1980年度から1985年度までは,ミッテラン大統領のとった産業研究開発強化策により民生研究開発予算が拡大されたため,国防研究予算は,相対的に割合を徐々に下げた。1985年度からは,民生研究開発予算の伸びが緩やかになったのに対し,国防研究予算は引き続き拡大したため,1988年度には,45.2%に回復する。しかし,それ以後,国防研究予算の伸びが鈍り,さらに1991年度からは絶対額の減少に転じたため,1993年度には37.2%まで割合を落とすこととなった。冷戦終結は,フランスの科学技術関係予算の構成に影響を与えていることがわかる。

このような状況の中で,1993年度予算からは,民生・国防両用研究費が7億フラン計上されている。

政府負担の目的別内訳をみると,1990年度の研究費についてではあるが,最も割合の大きいのは,大規模技術計画で,全政府負担の54.2%に達している。ここで,大規模技術計画とは,社会基盤の整備や国防装備の充実に資する特定のハイテク技術の開発を目的として推進されている国家プロジェクトであり,フランスの研究開発の特徴の一つである。国家予算が集中的に投入されていることがわかる。次に大きな割合を占めるのは基礎研究・教育であり,25.3%となっている。これに対して,技術革新の支援のためには,1.9%を占めるに留まっている。


(4) フランスの科学技術政策

(1990年代の科学技術政策の動向)

1993年3月にバラデュール内閣が発足した。新内閣は,他の政策分野と同様に,科学技術政策についても,さまざまな修正や変更に取り組んでいる。

新内閣は財政均衡化を目指し,財政赤字の削減に取り組んでいる。

このような状況において,1993年度の研究開発予算では,827億フランが減額修正された。また,1994年度の民生研究開発予算の伸びも当初予算ベースで前年比2.0%と低く抑えられている。

高等教育研究省では,1993年6月から1994年4月にかけて,今後の科学技術政策について広く国民の意見を集め,それを「フランスの研究に関する主要目標に関する報告書」(以下,「全国討議報告書」という。)に取りまとめた。1994年2月及び4月に発表された同報告書は,現在のフランスの科学技術政策の枠組みはミッテラン政権初期に定められ,12年間基本的に変更されていないことから,旧ソ連の崩壊による激変やアジアNIEsの勃興などの諸情勢の変化を踏まえた新しい枠組みを検討する必要があることを基本認識とし,

1) フランスの体力を強化するための基礎研究
2) 社会との対話の必要性
3) 民間企業の技術革新
4) 高等教育と研究組織
5) 地方と欧州と世界

の5項目について検討している。なお,これを受け,国民議会では,1994年6月より,今後の科学技術政策について議論がなされている。

(基礎研究強化の取り組み)

フランスは日本,米国と比較して研究費に占める基礎研究の割合が大きく,約20%の水準を保っている。基礎研究を主として行っている組織としては,EPST機関,大学及び民営研究機関があり,中でも,国立科学研究センターやパスツール研究所などは,優れた基礎研究所として知られている。

政府は,1994年度予算法案付属書の中で,このような成功をもたらした要因として,1) 研究職員の積極雇用,2) 研究人材の育成,3)公的研究機関と大学との連携に取り組んできた点を挙げている。

これまで,公的研究機関の職員の積極雇用がなされてきた。EPST機関についてみると,1980年代前半は平均して毎年1000人を上回る定員の拡大が行われた。また,1989年から1993年までは,平均して毎年400人前後の定員拡大が図られている( 第1‐2‐仏9図 )。しかしながら,1994年度予算においては,研究者が微増で研究補助者が削減されたため,全体では定員の縮小となった。一方,研究人材の育成については,1976年から,大学院博士課程の若手研究者に対して研究奨励金を支給しており,1981年度から1993年度までに年間件数が15百件から38百件へと,拡充されてきている。1993年度の研究奨励金充当予算は11億6400万フランであった。 

第1‐2‐仏9図 フランスの公的研究機関(EPST)の研究従事者数の対前年増減

公的研究機関と大学との連携強化は,研究者の流動化及び共同研究の実施の両面において図られている。公的研究機関では,研究者が他機関に出向し研究を行うことが奨励されている。これを,国立科学研究センターについてみると,大学への流動性が増加していることがわかる( 第1‐2‐仏10図 )。また,共同研究については,1993年に,同センターに属する1360の研究室のうち1000を超える研究室が大学や他の公的研究機関との間で共同研究を行っている。

政府は,1994年度予算法案付属書において,基礎研究は人類全体に関わる重要問題の解決に貢献しなければならないとし,そのためには,基礎研究の新たな進歩が必要となっていると指摘している。また,前述の全国討議報告書は,基礎研究をフランスの体力強化のために重要であるとし,以下の項目を提案している。

第1‐2‐仏10図 国立科学研究センターから他機関への研究者の流動性の促進

1) 基礎研究のうち物理学・化学などの伝統的部門は強いが,工学部門は弱い。研究活動の配分の硬直性を排除する必要がある( 第1‐2‐仏11図 )。
2) 新たな知識を獲得するための基礎研究だけではなく,社会との関わりを有する研究,さらには社会生活の向上に貢献する研究を行う必要がある。
3) 核物理学,高エネルギー物理学,天文学などの分野の基礎研究では,数億フランを超える規模の施設が用いられる。このような施設の整備について積極的に貢献していく必要がある。

社会との関わりの重視については,1993年10月に発表された,国立科学研究センターの「戦略的計画(1993年〜1995年)」において,今後3年間に「挑戦すべき社会的課題」として,環境問題,健康と高齢者問題,都市問題,雇用と労働問題の4つの課題が取り上げられている。

第1‐2‐仏11図 民生研究開発予算における基礎研究開発予算の学問分野別構成(1991)

(大規模技術計画の見直し)

フランスでは,大規模技術計画を柱とする研究開発をとってきた。

同計画は,第5共和制の発足当初から現在まで続く長期の国家プロジェクトで,国家の研究開発活動として位置付けられている。社会基盤の整備や国防装備の充実に資する技術の開発を目的とし,現在では,宇宙開発,民間航空機,原子力開発,電気通信,国防研究などの技術分野で実施されている。

同計画の予算規模は,1990年度で,公的研究開発投資額の半分以上を占めている。また,同計画は,国と民間企業との緊密な連携の下,公的研究機関と民間企業との共同で実施され,フランス国内の官民の研究主体が総動員されているとされる( 第1‐2‐仏12図 )。トップ・レベルの技術者を国家の研究に従事させ,得られた研究成果を国が調達するという仕組みは,大規模技術計画が対象とした技術分野の多くにおいて,例えば,アリアン・ロケット,エアバス機,高速鉄道(TGV),デジタル通信網,原子力開発など現在までに多くの優れた成果を上げ,フランスの技術力を世界最高の水準に強化したとフランス政府は評価している。

第1‐2‐仏12図 大規模技術計画の実施者(1990)

このように,大規模技術計画を柱とする研究開発政策をとってきたことは,民間研究開発活動に大きな影響を与えている。

影響の一つに挙げられるのが,研究開発活動の特定産業分野への集中である。1990年の研究開発活動をみると,民間の研究費の49.1%が電子機器工業(28.2%)と航空宇宙産業(20.9%)で使用されている。しかし,これら2業種の生産額は,全産業の約10分の1に過ぎない( 第1‐2‐仏13図 )。

他方,研究開発活動の国有企業への集中が挙げられる。多くの国有企業が,大規模技術計画に参加している。この結果,民間の研究開発活動の多くが国有企業により担われることとなった。1991年についてみると,国有企業は,民間の研究開発費の45%を支出している。特に,航空宇宙産業とエネルギー産業では,割合はそれぞれ88%,63%であり,国有企業に集中していることがわかる( 第1‐2‐仏14図 )。

このような状況の下,前述の全国討議報告書では,大規模技術計画が,国と国有企業を中心とする民間企業との緊密な連携の下,優れた成果を上げてきたことを評価しつつも,その成果が他の産業分野に波及することが少なく,総合的な産業技術力の向上に貢献していないことを考慮し,目標及び方法の見直しを提案している。

第1‐2‐仏13図 特定産業分野に集中する産業界の研究開発活動(1990)

第1‐2‐仏14図 国有企業に集中する産業界の研究開発活動(1991)

(民間研究開発の遅れとその対策)

フランスが民間研究開発の遅れを認識したのは,世界各国が石油ショックに始まる深刻な経済危機を経験した1970年代の末である。当時の西欧各国は,産業競争力の低下に直面していた。特に,フランスは,競争力の源泉である技術開発について積極的な投資をしてこなかったとされている。この1970年代に,米国,イギリス,西ドイツの主要国が研究開発費を対国内総生産比2%以上を維持し,日本が大きく拡大したのに対して,フランスの研究開発支出は1967年の2.1%から1978年の1.7%に落ち込んでいた。この結果,フランスは,1980年時点で他の主要国に大きく水を開けられた。

このため,1980年代に研究開発を国の政策の優先課題に掲げ研究開発投資の拡大を進めてきた。また,これと並行して,さまざまな民間研究活動の振興策が講じられてきた。

1979年には,新製品開発やプロセス技術開発など民間企業の技術革新努力を助成する補助金制度が創設された。その実施は,国立工業化機関(ANVAR)が担当している。

1983年には,研究開発費税額控除制度が設けられた。現在,この制度により,企業は,その年に支出した研究開発費が前2年間の研究開発費の平均支出を超える場合,その差額の50%(控除限度額4,000万フラン)を法人税等から控除できる。1991年の研究開発費税額控除の適用実績をみると適用企業数で6513件,控除総額で48億5200万フランに達している。

1988年には,バイオテクノロジーなどの戦略的技術分野の技術開発活動に対する補助金支給制度が創設された。この制度は,基礎研究を助成する「技術飛躍制度」と応用・開発研究を助成する「革新的大規模プロジェクト制度」の2制度により構成されている。同制度では,戦略的技術分野が設定され,その分野での民間の研究開発の実施を促すため,企業から提案されたプロジェクトに対し,補助金が支給される。

1990年には,無公害自動車,新世代高速鉄道(TGV)などのテーマにつき官民共同参加の技術計画が開始された。この計画は,前述の大規模技術計画の小型版と考えられ,高等教育研究省とプロジェクトの技術分野に関係する他の省庁との共管により実施され,計画期間は約5年とされている。

(産業界における研究開発を担う人材の養成)

フランスでは,研究開発を担う人材が十分でないと認識されており,前述の研究奨励金の支給拡大以外にも,研究人材養成産業契約制度(CIFRE制度)や高級技術者育成制度(CORTECH制度)など,研究者,技術者の養成と採用のためのさまざまな施策が行われている。

産業界への人材の供給を強く打ち出し,1981年に創設されたのが,研究人材養成産業契約制度である。これは,引き続き研究活動を希望する若手研究者と優秀な研究者を確保したいとする企業との仲立ちを促進する制度であって,企業,若手研究者,公的研究機関の3者が契約を締結するものである。研究者は,所定の期間,契約企業で雇用され,給与を得ることができ,企業は,研究者の研究テーマに関与し,内容について入手することができる点が魅力となっている。これに対し,政府は,研究者に対しては公的研究機関による研究指導を行い,また,契約企業に対しては補助金を支給することにより支援している。

研究人材養成産業契約制度と類似の制度として,1988年には,高級技術者育成制度が設けられた。この制度は,所定の資格を有する若手技術者を雇用したいとする中小企業に対し賃金や社会保障費の一部が1年間に限り補助されるものである。また,公的研究機関は,技術者の指導に当たることとなっている。

同じく1988年には,研究者の採用を希望する中小企業を対象として,研究者の雇用支援制度が発足した。この制度は,研究者を雇用した最初の年の研究費の50%が補助されるというものである。

(産業界における研究開発の新たな方向)

研究投資の拡大や人材養成に対する努力により,民間での研究開発活動は改善されてきた( 第1‐2‐仏15図 )。しかし,政府は,他の主要国と比較すると,依然,不十分であるとしている。また,1990年の産業部門の使用研究費をその生産額で割った割合をみると,日本が2.41%,ドイツが2.48%と大きく,米国とイギリスについても,2.18%,2.03%と2%台を保っているのに対して,フランスは1.91%と小さくなっている。

第1-2-仏15図 各組織で使用される研究費の対国内総生産比の推移

また,フランスは,他のEU諸国と同様に深刻な失業問題を抱えており,全国討議報告書は,産業競争力の強化,雇用の維持のために,さらなる研究開発の推進に取り組む必要性を指摘している。以下は,同報告書に述べられている主要な政策である。

1) 産業の弱点は,市場分析,商業化及び技術革新の弱さにある。 競争力を強化するとともに,雇用を維持するため,技術革新を導く基礎的技術の研究を重視する必要がある。
2) 公的研究機関と産業界との連携,あるいは大学と産業界との連携が弱いので,これを強化すべきである。

2)については,既に,国立科学研究センターが民間企業との間で結んでいる協力契約の件数が,1982年には120件にすぎなかったのに対し,1992年には3500件にまで増加する等,連携強化の先導的な取り組みがみられている。

(欧州の枠組み)

欧州での多国間協力の枠組みには,大きく分けて,EUのフレームワーク計画,欧州宇宙機関の宇宙計画,欧州大規模施設計画及びユーレカ計画がある。このような計画に基づく活動が,フランスの科学技術活動において,大きな比重を占めている。これを研究費についてみると,1990年にフランス政府が負担した研究費(民生のみ)のうち,これらの欧州計画に基づく活動に対して支出された割合は11.4%に達している。この割合を,研究目的別にみると,宇宙分野が44.5%と最も大きく,次いで,技術革新の支援(22.O%),電気通信(17.6%)の分野において,割合が大きくなっている( 第1-2-仏16図 )。

第1-2-仏16図 政府負担研究開発費にみられる欧州の影響(1990)

全国討議報告書では,

1) 巨額の施設を必要とするメガサイエンスの分野では,欧州での協力を基調とすること
2) 欧州連合の研究計画の意思決定の透明化と手続きの簡略化を求める必要性

等,欧州での多国間協力についての基本的考え方が述べられている。


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