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第1部   いま,世界の中で
第2章  主要国の科学技術政策動向(各国編)
第1節  北米
2.  カナダ


カナダは資源依存型の産業構造を見直し,先端技術産業の強化を図ってきているが,近年の経済成長の低迷と高い失業率から,1993年10月の総選挙により政権が進歩保守党から自由党に移行し,現在,同政権の下で科学技術政策の見直しが進みつつある。以下では,その研究開発活動と科学技術政策の最近の動向をみていくこととする。

第1‐2‐加1図 カナダの研究費の推移


脚注:1加ドルは,1981年において184円,1985年において175円,1990年において124円,1991年において118円,1992年において105円,1993年において86円である。(IMF為替レート)


(1) 研究開発資源

(研究費)

カナダの研究費は,1993年において106億加ドル(推定値)となっている。この研究費の推移をみると,1981年の44億加ドルから,1991年に初めて100億加ドルを超え,順調に増加している( 第1‐2‐加1図 )。

最近の研究費の対国内総生産比の推移をみると,かなりの波があるものの,1981年の1.23%から1993年の1.48%へと上昇傾向がうかがえる( 第1‐2‐加2図 )。

第1‐2‐加2図 カナダの研究費の対国内総生産比の推移

次に研究費の組織別負担割合をみると,民間が41.2%,政府が35.5%,高等教育機関が10.7%となっている。このほか,外国の負担が10.0%と大きいのがカナダの特徴である。1980年代前半には政府の負担割合が民間を上回っていたが,その後は民間が政府を上回り最近はいずれも横ばいの傾向を示している( 第1‐2‐加3図 )。

さらに,研究費の組織別使用割合をみると,民間が53.7%,高等教育機関が26.1%,政府が18.9%,非営利団体が1.2%の順となっている( 第1‐2‐加4図 )。

第1‐2‐加3図 カナダの研究費の組織別負担割合の推移

第1-2-加4図 カナダの研究費の組織別使用割合の推移

(研究人材)

カナダの1991年の研究者数は6万5千人である。その構成比をみると,産業が46.4%,高等教育機関が41.2%,政府が11.5%となっている。また,研究者数の推移をみると,順調な増加を示している( 第1-2-加5図 )。


(2) 科学技術行政体制
第1-2-加5図 カナダの研究者数の推移

科学技術に関する主要な機関として国家科学技術諮問委員会(NABST),産業省,同省傘下の国家研究会議(NRC)などがある( 第1-2-加6図 )。

国家科学技術諮問委員会は,1987年に,科学技術の国内外の動向調査,政府・大学・民間企業の協力関係,政府の科学技術計画等について検討するため,首相の諮問機関として設置されており,首相が議長,産業大臣が副議長を務め,科学者,産業界等の代表者で構成されている。

産業省は,1993年11月に産業科学技術省,通信省,消費者・広報省などが統合され,設置されたものである。カナダにおける運信政策,産業政策,科学技術政策などを担当している。同省の傘下には国家研究会議,自然科学・工学研究会議(NSERC,カナダ宇宙庁(CSA)などの機関がある。

第1-2-加6図 カナダの主な科学技術行政機構

国家研究会議は,19の研究所を抱え,カナダの競争力向上を支援するため,情報技術,製造技術,輸送,先端素材,バイオテクノロジー,資源,環境などの重要で戦略的な分野における研究活動を行い),また,こうした領域における研究の指導を行っている。


(3) 科学技術関係予算

カナダ統計庁の「Survice Bu11etin」によると,1994年度におけるカナダの科学技術関係予算は,58億2千加ドル(暫定値)である。このうち,国家研究会議が9.1%,国家科学工学研究協議会が8.2%,産業省が6.5%,カナダ宇宙庁が5.5%の予算を使用している。また,科学技術関係予算の推移をみると,1980年代は順調に増加していたが,1992年以降ほぼ前年通りとなっている( 第1‐2‐加7図 )。

第1-2‐加7図 カナダの科学技術関係予算の推移


(4) 科学技術政策

(政権の交代と科学技術政策の見直し)

景気低迷と高い失業率に対して国民が懸念を抱くなか,1993年10月の総選挙において,9年ぶりに自由党が政権に復帰し,クレティエン政権が誕生した。同政権は,雇用創出と財政赤字削減を最優先する方針を示しており,科学技術政策についても見直しの姿勢を示している。

1994年2月に大蔵大臣が行った1994年度予算に関する財政演説では,「技術革新及びアイデアが雇用機会創出の要であり,今後一層の産業界の技術力強化が必要であるため,カナダとしての真のプライオリティ,方向性,結果評価を有する研究開発戦略を打ち出す」としている。

そして,この方針に沿って科学技術分野において,

1) カナダにおいて進められていたKAON(粒子加速器)計画への連邦政府の支援の中止
2) 宇宙ステーション計画に対する現在のカナダの貢献を見直し,産業競争力を重視した宇宙開発を進めること
3) カナダにとって真に利益のある雇用創出の可能性,市場が存在する分野における研究開発の推進

等の決定を行ったことを発表している。

1994年6月,連邦政府の科学技術活動の優先度に関する国家科学技術諮問委員会の報告書が発表された。同報告書は,科学技術が連邦政府の優先課題であり,予算的にも高い伸びを示してきたとしながら,連邦政府における科学技術関係経費の配分,科学技術の分野,計画,機関間における優先順位の決定手段などに欠けているとしている。

また,資源が限られたなかでの国際的な競争力と将来の繁栄のため,連邦政府の科学技術活動の主要な役割は,

1) 科学者のみならず幅広い国民の知識の開発・蓄積に対する支援など知識渇望型社会の発展への貢献
2) 製品・プロセスへの知識の応用等,市場が必要とする技術の獲得と開発を優先的に行う市場指向型技術開発の支援

であるとしている。

また,こうした認識に基づき,

1) 関係政府機関の科学技術活動の戦略的運営
2) 連邦政府が政府の科学技術活動の主要目標が知識渇望型社会の形成,市場指向型技術開発であることを関係機関ヘアドバイスすること
3) 今後6カ月以内に関係機関へ戦略資産としての科学技術の認識,連邦政府の2つの主要目標の適用.に関する報告書の作成
4) 6カ月以内に連邦政府の内部及び組織間の科学技術優先順位設定のためのシステムの確立

が必要であると勧告している。

本報告を受け,政府は連邦政府の科学技術戦略の策定のため,広く一般国民及び科学技術関係者から意見を聴取することを発表し,1994年7月よりワークショップの開催などの作業を開始した。


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