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第1部   いま,世界の中で
第1章  転換期の世界における科学技術政策
第4節  転換期における我が国の科学技術政策
2.  独創的技術の開発,企業家精神の涵養と企業の活動環境の整備


(独創的技術の開発)

我が国は,アジア諸国の追い上げのなか,基礎研究の成果をも踏まえた技術革新を進め,独創的な新しい技術に基づく新産業の創成を継続的に行っていくことが求められている。また,これにより,我が国において産業の空洞化を防ぎ,雇用を確保するとともに,開発途上国等に対する技術の移転を可能とし,その発展に資することが出来ると考えられる。

我が国の民間企業は,その企業戦略において消費者ニーズへの対応とともに,研究開発による独自の高付加価値製品の創出を極めて重視しているが,この戦略に沿った独創的な技術の開発への積極的取り組みが求められる。

今後の技術革新の方向との関連において,科学技術に対する国民の期待を科学技術庁科学技術政策研究所の調査によってみると,今後の科学技術の貢献が期待される側面として,「公害の軽減や地球環境問題の解決に貢献すること」,「エネルギーや資源を節約できること」,「世の中が安全になること」,「福祉が充実すること」,「人間が危険な仕事から解放されること」,「病気にかかりにくくなったり,病気になっても簡単に治ること」等に対する期待が大きくなっている( 第1-1-39図 )。

第1-1-39図 科学技術への期待

従って,企業の技術革新への取り組みにあたっては,従来技術の効率向上を追求することもさることながら,独自の高付加価値製品の創出につながる技術の開発とともに,国民の生活や福祉の向上に直結する分野など,これまでどちらかといえばあまり技術革新の成果が及んでいない領域に対して積極的に取り組むことも期待される。また,この際,技術から新しい製品やサービスの提供を考えるのみではなく,求められているニーズの側から技術に求められるものを分析し,技術革新に取り組んでいくことも重要である。

これに対し,国は,民間が国に期待する役割を踏まえ,独創的技術の基礎となる基礎的,先導的研究,長期的視点を要し開発リスクの大きい研究開発等,民間では取り組みが困難なものに対し着実に取り組んでいくことが求められている。

(企業家精神の涵養)

独創的な新たな技術を産業に結び付けるにあたっては企業家(起業家)精神が重要である。しかしながら我が国は,米国と比較し企業家精神が欠けている傾向がみられる。

科学技術庁科学技術政策研究所が工学部卒業生の進路と職業意識に関する日米比較を目的として行った調査「工学部卒業生の進路と職業意識に関する日米比較」によると,調査対象となった卒業生が現在望んでいるキャリアパスについてみると,我が国の卒業生では「既存企業や組織で出世する」ことを希望する者が40.2%で一番多いのに対し,米国の卒業生では「自分の会社を設立し,発展させる」が25.7%と一番多くなっており,米国の工学部卒業生において企業家指向が高いことがうかがわれる( 第1-1-40表 )。

第1-1-40表 日米の工学部卒業生が現在望んでいるキャリアパス

また,同調査によれば,実際に会社のオーナーになっている者の割合は,米国の1960年の卒業生では16.9%,1970年の卒業生では12.1%,1980年の卒業生では4.2%,1985年の卒業生で3.9%となっており,新しい卒業生ではその割合は低いものの,我が国の各年次の卒業生における割合が1%程度であることと比較して圧倒的に高く,米国における企業家精神の高さが示されているといえる。

また,我が国においては,横並びを重視する傾向がある。企業の設備投資を,能力増強投資,合理化・省力投資及び研究開発投資に分類し,それぞれの投資の決定要因を調査した企業に対するアンケート調査結果を製造業についてみると,内外の需要動向,収益水準が大きな割合を占めているが,研究開発投資については,これらに次いで他社の動向が相当大きな割合を占めている。もとより,この調査は研究開発投資の額についての決定要因であり,その投資の内容について推し測ることは出来ないが,研究開発投資に関する企業の横並び重視の傾向を示唆するものと考えることができる( 第1-1-41表 )。

第1-1-41表 製造業の設備投資の決定要因

企業家精神の涵養には,このような精神を持った人材を育てるための努力とともに,このような人材が社会で活躍でき,評価されるための社会的環境の整備の双方を相まって進めていく必要がある。このため,社会が横並び思想を改革し,先取の機運を尊重するとともに,リスクに果敢に挑戦し成功した者が社会的に評価されるような社会的機運の醸成に努めるとともに,これらの者が経済的にも報われることが重要であり,この観点からの各種の制度の整備,充実が必要である。

(企業の活動環境の整備)

新たな技術を発展させ,新たな産業としていくにあたり,企業の果たす役割は極めて重要である。

民間企業の国への要望からみると,調査対象企業が大企業中心になっていることに留意する必要はあるものの,企業の研究開発に対する補助金の充実よりは,税制の優遇措置の充実への要望が高くなっている。これには,国の補助金に関する種々の規則や手続きが影響しているとも考えられるが,それ以上に,企業の自主的な活動を支援できる税制に対する期待が大きいと考えられる。このように,企業が自己責任の原則の下に,その創意と活力を十分に発揮し,新しい技術のもたらす可能性を十二分に引き出していくためには,国は規制の緩和も含めてその活動環境の整備に努めることが必要であると考えられる。

さらに,企業家精神に富んだ者が新しい技術の開発やその技術を基礎として創業するにあたっては,リスクマネーの提供等が重要である。

この際,リスクマネーの供給者が危険回避,安定志向に陥ることのないようその運営に留意する必要があり,このためにも,自己責任の原則の徹底とともにリスクの高い投資が高い収益をもって報われることが必要であろう。


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