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第1部   いま,世界の中で
第1章  転換期の世界における科学技術政策
第2節  主要国の科学技術政策動向の背景
2.  経済のグローバル化の進展と経済成長及び雇用創出において重要性を増す科学技術


経済のグローバル化の進展の中で,主要先進国においては,経済成長,競争力及び雇用の確保の観点から,科学技術の役割を重視する傾向にある。

(経済のグローバル化の進展と経済成長及び雇用の確保)

経済活動が世界規模で行われ,物やサービスの国境を越えた移動が進んでいる。また,資本も国境を越えて移動することが活発となっている( 第1-1-5図 )。

第1-1-5図世界の貿易,海外直接投資,国内総生産(GDP)の推移

この結果,競争力のある製品が国外から入り込むこととなり,競争力を失った製品を製造していた企業はその製造の維持が困難になる。

高度の技術や多額の資本を必ずしも必要としない製品については,労働コスト等が安価な地域で生産された製品が強い競争力を持ちうるため,先進国ではこの種の製品を生産する産業を維持することが次第に困難となり,これらの産業に従事している労働者の雇用の維持も困難になってくる。

第1-1-6図 世界の貿易に占める主要国・地域の割合

また,資本の国境を越えた移動により,企業がより有利な生産拠点を求めて国境を越えた移動することが一般的になってきている。特に,競争力を持ちける製品の製造への転換が自国内で円滑に行えない場合には,自国の生産拠点を縮小・閉鎖し,生産拠点を海外に移動することとなり,自国における富の生産や雇用は減少することとなる。

世界の貿易に占める主要国・地域の割合をみると,経済統合の進む欧州内部での貿易は格段に増加し,割合を増加させているものの,米国,EUとEU域外との貿易が占める割合はほぼ一定か若干の減少であるのに対し,東アジア諸国の世界貿易に占める割合は大幅に増加している( 第1-1-6図 )。

第1-1-7図 各国の失業率の推移

特に雇用との関連で主要国の失業率について,欧米主要先進国と東アジアの国々を比較すると,景気変動の影響を受けて変化はあるものの,1980年代を通じ,欧米主要先進国では総じて高く,他方,経済成長率の高い我が国や韓国は低い失業率を保っているととらえられている( 第1-1-7図 )。

このように,東アジア地域に位置する諸国の世界市場への進出等から,先進国においては自国の競争力低下の懸念,及び,雇用の海外流出の懸念が増大し,欧米における高い失業率をも背景として,経済成長,競争力と雇用の確保が主要先進国の主要な関心事項となってきている。

(経済成長及び雇用創出において高まる科学技術への期待)

経済成長のために科学技術が重要な役割を果たすことは,先進各国の政策担当者を通じた共通の認識となっている。

経済成長に影響を与える要素として,資本,労働に加え,技術進歩がある。1994年版の「経済白書」では,経済成長を供給面から考え,労働及び投資という生産要素では図れない要因(全要素生産性:TFP)の経済成長における寄与を計算している( 第1-1-8表 )。この全要素生産性においては技術革新が重要な役割を果たしているが,経済成長における全要素生産性の寄与を同白書によりみると,我が国では全要素生産性が経済成長に大きく貢献していることが示されており,80年代後半の国内総生産(GDP)成長率に対する全要素生産性の寄与が4割程度となっている。各国とも全要素生産性が経済成長に大きく寄与していることが示されている。また,技術進歩には,研究開発投資が大きく影響していると考えられている。

第1-1-8表 主要国の全要素生産性伸び率

競争力の源泉としての科学技術を重視する傾向も顕著であり,さらに,新たな雇用の創出に当たっても科学技術への期待が大きい。

米国科学審議会の「SCIENCE&ENGINEERING INDICATORS‐1993」によれば,日米欧3極とも,製造業の産出高においてハイテク産業の占める割合が年を追って増加している。ハイテク産業においては科学技術が重要な役割を果たしており,製造業における科学技術の重要性が増加しているということができる( 第1-1-9図 )。

第1-1-9図 製造業産出高におけるハイテク製品の割合

他方,世界のハイテク市場におけるそれぞれの国・地域のシェアの推移をみると,米国がほぼ一定の水準を維持しているのに対し,我が国が徐々にシェアを増やす一方で,ECはシェアを若干減少させている様子が分かる( 第1-1-10図 )。この点は,欧州がその国際競争力に重大な関心を寄せる大きな理由ともなっている。

第1-1-10図 世界のハイテク製品市場における主要国・地域のシェア

米国において1993年2月に発表された米国の技術政策に関する報告書「米国経済成長のための技術:経済力強化のための新たな方向」は,技術政策は,経済を強化し,経済成長を刺激するという新しい方向に向かわなくてはならないとし,米国の競争力の強化,雇用の創出を大きな目標としている。また,同年12月の欧州理事会(EU首脳会議)において発表された「経済成長,競争力及び雇用に関する白書」においても,同様の認識が示されている。

さらに,1994年3月開催されたG7雇用サミットにおいても,技術革新が富と雇用の源泉である旨示されている。また,同年6月に開催されたOECD閣僚理事会のコミュニケにおいては,「最近の技術の進歩及び貿易と投資の拡大は,OECD諸国にとり雇用拡大の大きな新たな機会を創出している。」とし,雇用拡大における技術の役割への期待を表明している。さらに,同年7月に開催された経済先進国首脳会議(サミット)の経済宣言においても,開放的,競争的かつ統合された世界情報インフラの整備を含む技術革新及び新技術の普及を奨励し促進する決意が示されている。

このように,経済のグローバル化の進展の中で,経済成長,競争力及び雇用の確保の観点から,これらに対する科学技術の役割が重視される傾向にあり,これらの観点が欧米主要先進国の科学技術政策において強調されるようになってきているといえる。


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