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第3部   我が国の科学技術政策の展開
第4章  研究活動の推進
第1節  重要研究開発分野の推進
2.  人類の共存のための科学技術


人間活動の拡大に伴い,地球環境問題その他の地球の有限性に起因する問題が顕在化している。これらの問題を解決し,地球と調和しつつ,人類が共存し得る新たな手段を提供するため,1992年4月に閣議決定された科学技術政策大綱において,「地球・自然環境の保全」,「エネルギーの開発及び利用」,「資源の開発及びリサイクル」,「食料等の持続的生産」の各分野を,人類の共存のための科学技術と位置付け,その積極的な振興を図っている。

(1)地球・自然環境の保全

近年,地球温暖化などの地球的規模での環境問題が顕在化しつつあり,国際的に協力してこれらの課題の解決を図って行くことが強く求められている。また,潤いのある生活環境を整備するため,地域において公害を防止するとともに自然環境を保全していくことが重要である。このため,地球的規模の環境問題への対応,公害の防止,自然環境の保全のための研究開発を推進していくことが必要である。

本分野については,「平成5年度地球環境保全調査研究等総合推進計画」(1993年6月 地球環境保全に関する関係閣僚会議),科学技術会議第17号答申を踏まえた「地球科学技術に関する研究開発基本計画」(1990年8月 内閣総理大臣決定),「公害の防止等に関する試験研究の重点強化及び総合的推進について」(毎年度 環境庁)等が策定され,研究開発が重点的に推進されている。

地球環境変動の把握・影響評価・対策技術,環境汚染の防止等の研究開発が,科学技術庁,環境庁,文部省,農林水産省,通商産業省,運輸省,郵政省,建設省等により推進されている。

(2)エネルギーの開発及び利用

エネルギー研究開発は,広範な分野を対象とし,長期にわたり膨大な研究開発のための資金及び人材を必要とするため,研究開発全般を計画的・重点的・効率的に推進することが重要である。このため,政府が中心となって推進するエネルギー研究開発について,1978年8月に「エネルギー研究開発に関する基本計画」が定められ,その着実な推進が図られてきている。また,1991年6月,地球環境問題の顕在化等近年のエネルギーを巡る情勢変化を踏まえ,現行の基本計画を抜本的に改定することを求めた「エネルギー研究開発基本計画に関する意見」が科学技術会議から内閣総理大臣に具申された。これに基づき,同年7月,政府は新たな「エネルギー研究開発基本計画」を決定している。

1) 原子力開発利用の推進

原子力は,供給安定性,経済性の面のみならず,二酸化炭素,窒素酸化物等を排出しないことから地球環境負荷の面でも優れており,我が国のエネルギー供給構造の脆弱性の克服に貢献する主要なエネルギー源の一つとして着実に開発利用を進めることが必要である。

我が国では原子力の開発利用を原子力委員会の策定した原子力開発利用長期計画(1987年6月決定)に沿って,総合的かつ計画的に推進してきている。なお現在,原子力委員会では,国内の原子力開発利用の着実な進展,国際社会の情勢の変化等を踏まえ,現行長期計画の見直し作業を進めている。

(1)安全性の確保及び核不拡散対策

原子力開発利用は,開発当初から,放射性物質を確実に管理する対策を講じるなど,安全性の確保を最重点にして行われてきており,他の産業分野には見られない国による厳しい安全規制を始め,環境放射能調査や,万一の事故の際の備えとしての防災対策を含めた各般の安全確保対策が講じられている。

安全規制の一層の充実及び原子力施設の安全性の向上に資するために,原子力安全委員会は,安全研究年次計画の策定,研究成果の評価等を行い,安全研究の総合的・計画的な推進を図っている。

現在は,1990年に策定した安全研究年次計画(原子力施設等,環境放射能及び高レベル放射性廃棄物等の3つの安全研究年次計画を1990年度に策定,低レベル放射性廃棄物安全研究年次計画は1989年に策定)に沿って,以下の原子力安全研究が推進されている。

軽水炉施設の安全研究については,日本原子力研究所を中心に,原子炉の反応度事故及び冷却材喪失事故等に関する研究を行っている。

新型転換炉施設,高速増殖炉施設,核燃料施設,放射性廃棄物の処理処分等については,動力炉・核燃料開発事業団 日本原子力研究所等において各種安全研究を行っているほか,放射性物質輸送時の安全性,原子力施設の耐震安全性については,国立試験研究機関等において研究を行っている。その他,原子力施設の安全性,信頼性及びリスクを確率論的に評価する手法等については,日本原子力研究所,動力炉・核燃料開発事業団等において研究を行っている。

また,低線量放射線の人体に対する影響,被ばく形式の特異性を考慮した内部被ばくの障害評価,環境中の放射性物質の挙動等について,放射線医学総合研究所を中心に研究を行っている。

我が国は従来より原子力基本法の下に原子力の研究,開発及び利用を平和目的に限って推進するとともに,核兵器の不拡散に関する条約(NPT)及び米国等と二国間原子力協力協定を締結し,国内全ての核物質に対する国際原子力機関(IAEA)の保障措置を受け入れている。また,これらの協定をより効率的に履行するため,保障措置技術の研究開発等を実施している。さらに,核物質の不法な移転及び原子力施設に対する妨害破壊行為の防止が核拡散防止上も重要であるとの国際的な認識のもと,我が国は,核物質防護条約に加入し,国内法令を整備するとともに,核物質防護に関する調査・研究を実施している。

(2)原子力発電の現状

我が国の商業用の原子力発電は,1993年9月現在,45基が運転中で,発電設備容量は3,719.6万kWであり,1992年度実績で総発電電力量(電気事業用)の28.3%を賄っている。

現在の我が国の主流の原子炉である軽水炉については,政府,電気事業者,原子力機器メーカー等が協力して,自主技術による軽水炉の信頼性,稼働率の向上及び従業員の被ばく低減を目指し,技術開発を実施してきたところであるが,現在の軽水炉の技術水準に満足することなく,さらなる経済性,信頼性,安全性の向上を目指した軽水炉技術の高度化が進められている。

(3)核燃料サイクルの確立

我が国の原子力発電を今後とも円滑に推進していくためには,核燃料の安定的供給の確保とウラン資源の有効利用などを目指した核燃料サイクルの確立が重要な課題である。

原子力発電の燃料である濃縮ウランの安定確保は重要な課題であり,遠心分離法によるウラン濃縮技術の開発を積極的に推進している。動力炉・核燃料開発事業団の研究成果に基づき,青森県六ケ所村において民間濃縮工場が1992年3月より操業を一部開始している。さらに,今後のウラン濃縮の経済性の向上を図るためレーザー法ウラン濃縮技術の開発を進めている。

また,原子力発電所からの使用済燃料については,ウラン資源の有効利用等の観点から再処理して,プルトニウム及び回収ウランを再利用することを基本方針としておリ,現在,国内では動力炉・核燃料開発事業団の東海再処理工場において再処理を行っており,1993年3月末までに約680トンの再処理を行った。民間大型再処理工場については,青森県六ケ所村において年間の最大再処理能力800トンの工場の建設が進められている。

さらに,高速炉燃料の再処理については,動力炉・核燃料開発事業団において,研究開発が進められている。

(4)原子力バックエンド対策の推進

放射性廃棄物の処理処分対策及び原子力施設廃止措置対策の確立は重要な課題である。

原子力発電所等から発生する低レベル放射性廃棄物に関しては,発生量の低減化を図るとともに,減容化,固化等の処理を行っている。

さらに,青森県六ケ所村において,低レベル放射性固体廃棄物を浅地中処分する計画が進められ, 1992年12月には廃棄物埋設事業が開始された。

再処理工場から発生する高レベル放射性廃棄物は,安定な形態にガラス固化し30年から50年間程度冷却のため貯蔵した後,地下数百メートルより深い地層中に処分することを基本方針としている。ガラス固化体の一時貯蔵施設については,青森県六ケ所村において建設が計画中であり,1992年4月には,内閣総理大臣による事業許可が行われた。

また,高レベル放射性廃棄物の処分について,1993年5月には高レベル事業推進準備会が発足した。一方,地層処分の研究開発等については,動力炉・核燃料開発事業団が中心となり,研究開発を推進している。この一環として地層処分技術を確立するための深地層試験等の研究開発と高レベル放射性廃棄物等の貯蔵を行う貯蔵工学センター計画の着実な推進を図っている。また,高レベル放射性廃棄物から有用金属等を分離し,さらに長寿命核種を短寿命核種又は非放射性核種に変換する核種分離(群分離)・消滅処理技術の開発も日本原子力研究所,動力炉・核燃料開発事業団等を中心に実施している。

原子力施設のうち原子炉の廃止措置に関する技術開発については,1981年度から,日本原子力研究所において動力試験炉(JPDR)をモデルとしてその研究開発に取り組んでいる。1986年度からは,JPDRの解体実地試験を行っており,1990年度には放射線遮へい体の解体作業に着手した。また,(財)原子力発電技術機構においても1981年度から廃炉技術の確証試験を進めている。

(5)プルトニウム利用の展開

我が国は,ウラン資源の有効利用を図り,エネルギーの安定供給に貢献するため,使用済燃料の再処理によって得られるプルトニウムの利用体系の確立を目指すこととしている。その際,高速増殖炉による利用を基本とするが,当面は,プルトニウム利用体系に係る広範な技術の確立等を図るため,軽水炉及び新型転換炉における利用を進めることとしている。軽水炉におけるプルトニウム利用は,現在ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料少数体規模実証計画が進められており,これに続いて,1990年代中に80万kW級以上のPWR及びBWR各1基(1/4炉心にMOX燃料を装荷)で使用し始め,1990年代末には100万kW級軽水炉に換算(1/3炉心にMOX燃料を装荷)して4基,2000年過ぎには12基程度の規模に段階的かつ計画的に拡大することとしている。また,新型転換炉の開発は,これまで動力炉・核燃料開発事業団等において進められてきており,現在原型炉「ふげん」が順調に運転されている。実証炉については民間の主体的役割の下に建設の計画が進められている。高速増殖炉については,これまでその開発は動力炉・核燃料開発事業団を中心に進められてきており,実験炉「常陽」は現在まで順調に運転されている。この成果を踏まえ,同事業団で建設を進めている原型炉「もんじゅ」については,1991年4月に機器据付を完了し,同年5月から総合機能試験を実施し,1992年12月に終了した。引き続き性能試験を行っている。実証炉については電気事業者の主体的役割の下に1990年代後半の着工を目標に計画が進められている。

世界有数の核融合研究のための臨界プラズマ実験装置「JT-60」

英仏に委託している再処理から回収されるプルトニウムの返還輸送については,日米原子力協力協定(1988年改定)に基づく初めての海上輸送が,動力炉・核燃料開発事業団により実施され,1993年1月に終了した。

この輸送経験及び国内のプルトニウム需給状況を踏まえて,次回以降の計画が検討される。

(6)先導的プロジェクト等の推進

核融合の研究開発については,恒久的なエネルギー源としてその実現が世界的に期待されており,我が国では,原子力委員会の定める基本計画の下,核融合の研究開発を計画的かつ総合的に推進している。

1992年6月,原子力委員会は,第三段階核融合研究開発基本計画を策定し,現在,本計画に基づき,日本原子力研究所,文部省核融合科学研究所を始め大学,国立試験研究機関がその研究開発に携わっている。

核融合研究開発の進展状況については,日本原子力研究所において,トカマク型の臨界プラズマ試験装置(JT-60)により,1991年7月から重水素を使用したプラズマ性能向上のための実験を実施しており,プラズマの総合性能を示す核融合積(中心イオン温度,中心プラズマ密度及び閉じ込め時間の積)゛で従来の世界最高値を上まわる成果を得た。また,日本,米国,EC,ロシアの4極の協力により推進している国際熱核融合実験炉(ITER)計画については,概念設計活動の成果を踏まえ,1992年7月には,ITER土学設計活動に関する協定等が締結され,工学設計活動が開始されている。文部省核融合科学研究所においては,ヘリカル方式による定常運転及び高温プラズマに関する閉じ込め物理の究明を目指し,超伝導コイルを用いた世界最大の大型ヘリカル装置計画を推進している。

放射線利用については,1993年6月に原子力委員会放射線利用専門部会が「放射線利用の新たな展開について」をとりまとめ,加速器を用いた先端的な研究開発の推進と普及促進などの方針が示された。放射線利用の現状としては,医療分野では,X線CT等による診断やX線,ガンマ線等を利用した悪性腫瘍の治療が実用化されており,現在,速中性子線,陽子線,重粒子線による治療の研究が行われている。特に,放射線医学総合研究所においては,速中性子線,陽子線のほか,がん細胞に対する治療効果が特に高い重粒子線によるがん治療の研究が行われており,現在,重粒子線がん治療装置の建設が着実に進められている。また,大学においでも,筑波大学陽子線医学利用研究センター等において陽子線等によるがん診断・治療の研究を行っている。

農林水産業の分野では,品種改良,害虫防除,食品照射等に放射線が利用されている。工業分野では,非破壊検査,各種高分子材料の改質などに放射線が用いられている。研究利用では,1987年度から7年計画で日本原子力研究所がイオン照射研究施設を建設中であり,1991年度より一部運転が開始されている。また,1998年度の完成を目指し,1990年度から,日本原子力研究所と理化学研究所が大型放射光施設(SPring-8)を兵庫県播磨科学公園都市に整備を進めている。さらに,文部省高エネルギー物理学研究所においては,トリスタン入射蓄積リングを用いた大強度放射光実験設備による研究を行っている。

また,高温工学試験研究については,高温の熱供給を図り,将来のエネルギー供給の多様化の可能性を高める高温ガス炉技術の確立及び高温工学に関する先端的基礎研究を進めることを目的として,日本原子力研究所において高温工学試験研究炉(HTTR)の建設等を進めている。

原子力船の研究開発については,日本原子力研究所が中心となって原子力船「むつ」による研究開発等を進めている。原子力船「むつ」は1991年2月から,海洋環境下における振動・動揺・負荷変動等が原子炉に与える影響等に関する知見を得るため,概ね1年間実験航海等を実施し,1992年2月全ての実験を成功裡に終了した。この間,4回の航海により,東はハワイ諸島沖,南はフィジー諸島沖,北はカムチャッカ半島沖にまで航行し,通常海域,高温海域,荒海域等において所要のデータ等を取得した。現在,原子炉を原子炉室ごと一括して船体から撤去する「撤去隔離」方式により解役を進めており,使用済燃料の取り出し等を実施している。また,舶用炉の改良研究については,原子力船「むつ」の成果を活かし,経済性,信頼性等の向上を目指した設計評価研究を進めている。

さらに,日本原子力研究所,大学,国立試験研究機関等において,炉物理・核物理に関する研究,放射線に関する生理学研究,燃料・材料の照射試験等の基礎研究を幅広く行っており,特に日本原子力研究所においては1993年4月に新たに先端基礎センターを設置し,基礎研究の一層の充実を図っている。また,基盤技術開発としては,原子力用材料技術,原子力用人工知能技術,原子力用レーザー技術,放射線リスク評価・低減化技術の4技術領域について,日本原子力研究所,動力炉・核燃料開発事業団,理化学研究所及び国立試験研究機関において進めている。1993年4月には,原子力委員会基盤技術推進専門部会で「原子力基盤技術開発の新たな展開について」が取りまとめられ,新たに放射線ビーム利用先端計測・分析技術,原子力用計算科学技術原子力分野における人間の知的活動支援技術の3技術領域が設定されるとともに,産・学・官のより積極的な推進の必要性が示された。

(7)国際社会への主体的貢献

原子力開発利用は,各国毎に取り組むだけではなく,相互依存関係の中で,国際協力により効率的に研究開発を進めることが重要である。

先進国との協力については,情報交換,人材交流,研究協力等の二国間協力の他,条約,協定等に基づく政府レベルの多国間協力や国際機関を通じた協力も積極的に推進している。1991年4月には,日ソ原子力平和的利用協力協定を締結した。開発途上国との協力については,原子力委員会がアジア地域原子力協カ国際会議を開催する等,近隣アジア諸国との地域協力を積極的に行っている。

(8)国民の理解と協力

原子力開発利用を円滑に進めていくためには,国民の理解と協力を得ることが重要である。このため,まず安全の確保に万全を期すとともに,各種メディアを通じた広報のほか,各地の勉強会に講師を派遣するといった対話を重視した草の根的な広報や身の回りの放射線を実際に測定するための簡易な測定器を貸し出すといった体験型広報活動等を幅広く実施している。

2) 自然エネルギーの研究開発

太陽エネルギー,地熱エネルギー,海洋エネルギー,風カエネルギー等は,その資源特性から見て解決すべきいくつかの問題があるが,二酸化炭素等を排出しないクリーンなエネルギーであるため,その利用は地球温暖化防止のための主要な対策の一つとなる。このため,新エネルギー・環境領域総合技術開発推進計画(ニューサンシャイン計画)をはじめ,海洋科学技術センター等で積極的な研究開発が進められている。

太陽エネルギーについては,給湯用,冷暖房用,太陽光発電等の利用が考えられ,既に民生用給湯システムについては,技術開発を終了し,一般家庭に普及している。このため,産業用ソーラシステム等の技術開発を積極的に推進するとともに,太陽光発電については,太陽電池・システムの一層の低コスト化,高効率化等を目指した研究開発を進めている。

地熱エネルギーは,資源量が豊富な純国産エネルギーであり,その利用拡大に向けて,地熱探査技術,掘削・採取技術,熱水利用発電技術等の開発を進めている。

海洋エネルギーは,海域特性を活かした利用が可能であり,高効率波カエネルギー利用システム,海洋深層水高度利用システム,海洋温度差発電等についての研究開発が進められている。

風カエネルギーについては,欧米においては,既に電力供給源の一部を担うものとして導入・普及が進んでいるが,我が国においては,現在,中・小型の集合型風力発電システムの研究開発が推進されている。また,風カエネルギーの利用拡大の観点から重要となっている大型風力発電システムの研究開発等の開発が推進されている。

バイオマスエネルギーや生物の光合成機能を利用したエネルギー技術は,エネルギー密度,輸送,貯蔵等の面に解決すべき問題が多いが,環境への負荷が小さく,再生可能なエネルギー資源として期待されており,メタノール車における新技術の評価並びに導入効果・影響の予測に関する研究等が進められている。

3) 化石エネルギーの研究開発

我が国のエネルギーの中核である石油については,新規開発油田の中小規模化等探鉱・開発条件の悪化傾向等に対応し,石油開発技術研究開発の推進を図っている。また,日本周辺における賦存状況の把握とその活用に係る研究開発を進めている。

石炭は,原子力と並ぶ石油代替エネルギーとして,その利用技術の研究開発が進められ,石炭液化・ガス化技術等の研究開発が推進されている。

天然ガスについても主要な石油代替エネルギーの一つであり,かつ,クリーンで相対的に環境負荷が小さいことから,基礎的な研究開発を行っている。

4) エネルギー利用の効率化のための研究開発

エネルギー安定供給の確保,地球環境問題への対応及び有限なエネルギー資源の有効利用の観点から,エネルギーの供給から最終消費にいたる各段階において,その利用の効率化を図るための研究開発を推進するとともに,社会全体としての最適なエネルギーの利用を図るための研究開発を進めることが必要となっている。

このため政府では,広域エネルギー利用ネットワークシステム(エコエネルギー都市:ニューサンシャイン計画),エネルギー変換と効率利用,省資源・省エネルギー型国土建築技術等の研究開発を積極的に推進している。

さらに,ニューサンシャイン計画においては,熱効率が高く,コージェネレーションの普及拡大に資するセラミックガスタービンの研究開発,発電効率が高くクリーンな燃料電池発電技術や超電導電力応用技術,分散型電池電力貯蔵技術,水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術等の研究開発を推進している。

この他,エネルギー使用合理化技術の実用化開発等が推進されている。

(3)資源の開発及びリサイクル

天然資源の開発及び管理に関する研究開発としては,通商産業省の産業科学技術研究開発制度において,深海底に多量に賦存するニッケル,銅,コバルト,マンガン等の重要金属を含有するマンガン団塊を採鉱するためのマンガン団塊採鉱システムの研究開発が推進されている。また,農林水産省の物質循環の高度化に基づく生態系調和型次世代農業システムの開発,木質廃棄物の再生利用技術の開発,建設省の建設副産物の発生抑制・再生利用技術の開発などが進められている。

(4)食料等の持続的生産

食料等の持続的生産に資する研究開発としては,育種・増殖技術の開発,農用地・林地等の生産力の増強と施設の開発,栽培・飼養管理技術の高度化,貯蔵・流通システムの合理化,遺伝子資源の収集と保存,未・低利用資源の用途開発,等が重要であり,農林水産省の生物情報の解明と制御による新農林水産技術の開発に関する研究,農林水産系生態秩序の解明と最適制御に関する研究,農林水産省ジーンバンク事業や通商産業省の熱帯生物機能利用技術に関する研究開発等が推進されている。

3.生活・社会の充実のための科学技術

社会の成熟化や高齢化が進み,また,国民の意識が,ゆとり,潤い,快適さといった精神的あるいは,心理的な豊かさを求めるものに変質してきている状況を踏まえ,人間が個人として,また,社会の一員として,快適で充実した生活を送るためには,健康を維持・増進するとともに,安全性を確保しつつ,生活環境や社会経済基盤を向上させる展開が従来以上に求められている。このような認識のもとに,科学技術会議第18号答申(1992年1月)において,生活・社会の充実のための科学技術の推進の重要性が指摘され,この答申を受けて,科学技術政策大綱(1992年4月閣議決定)が策定され,健康の維持・増進,生活環境の向上,社会経済基盤の整備,防災・安全対策の充実のための研究開発が関係省庁において推進されている。

(1)健康の維持・増進

ゆとりと豊かさを実感できる生活を実現していくため,健康の維持・増進を図ることは,基本となるものである。このため,日常生活において,肉体及び精神の健康を維持・増進するための多様な技術の研究開発の推進,さらには,人体に有毒な各種物質の発生防止・処理技術,人体への影響を低減する技術等の研究開発を推進することが必要である。また,完治困難な疾病,社会問題化している疾病等の診断・治療法の開発,そのための薬剤の開発等,医療技術の高度化・総合化を図ることが必要である。その際,人間の尊厳や生命倫理に関する多方面からの議論を十分に踏まえることが重要である。

本分野については,「脳・神経系科学技術推進の基本方策に関する意見」(1987年8月 科学技術会議),「免疫系科学技術推進の基本方策に関する意見」(1987年8月 科学技術会議),「エイズ問題総合対策大綱」(1987年2月 エイズ対策関係閣僚会議決定),「がん研究推進の基本方策に関する意見」(1983年7月 科学技術会議),「対がん10カ年総合戦略」(1983年6月 がん対策関係閣僚会議決定),「創薬基礎科学研究の推進について(勧告)」(1990年10月 日本学術会議)等が策定され,研究開発が重点的に推進されている。

心身障害研究,農林水産物の健康に寄与する機能の評価・活用技術の開発,がん・エイズ・循環器疾患・難病等の診断・治療技術,医療システムの開発,独創的・画期的な医薬の創製,診断治療機器・人工臓器の開発,食物アレルギー発症機構の解明とその予防・治療に関する研究等の研究開発が,科学技術庁,厚生省,文部省,農林水産省通商産業省等により推進されている。

(2)生活環境の向上

生活そのものの質的向上,人口構成の高齢化,出生率の低下等への対応については,個人,家庭,地域社会等の主体的な活動に委ねられる部分が大きく,科学技術面での対応にはおのずと限界はあるが,その推進によってこれらの向上に大きく寄与していくことが期待される。

このため,個性を発揮し,文化的な生活を送ることを可能にする豊かな生活環境を整備するため,衣食住等の生活技術,精神的充足やコミュニティ形成を支援する技術等の研究開発を推進することが必要である。また,高齢者,身体障害者等が大きな不便を感じることなく生活したり,さらに積極的に社会参加することが可能になるように,多様な要請にきめ細かく応える福祉技術の研究開発を推進することが必要である。

本分野については,「長寿社会対応科学技術推進の基本方策に関する意見」(1986年5月 科学技術会議)等が策定され,研究開発が重点的に推進されている。

人間感覚計測応用技術の開発,交通環境の変化に対応した総合的な安全対策の確立に関する調査研究,長寿科学研究に関する総合的な研究,高齢者向け機器等の医療福祉機器技術の研究開発,高齢者の職域拡大・安全確保のための機器等の研究開発,高齢化を支える保健・医療に関する生活情報システムの構築と効果的な活用に関する研究等の研究開発が,科学技術庁,厚生省,通商産業省,運輸省,労働省等により推進されている。

(3)社会経済基盤の整備

都市化の進展,交通・運輸や通信システムの発達等社会全体が高度化,複雑化していく中で,社会経済基盤の整備が内外から求められている。このため,総合的な国土の利用を図るための技術,公共的施設等の土木・建築に関する技術及び交通・輸送に係る研究開発,高度な情報通信システムの確立を目指した技術及びデータベースの構築に関する研究開発並びに廃棄物処理技術の研究開発を推進することが必要である。また,環境に対する負荷の低減に留意しつつ,消費者要請の多様化,労働力の不足等に対応するための生産活動に関する技術の研究開発を推進することが重要である。

本分野については,「建設技術研究開発の長期展望」(1988年4月建設省),「運輸省研究基本計画」(毎年度 運輸省),「21世紀を展望した運輸技術施策について」(1991年6月 運輸技術審議会 運輸省)「情報通信技術に関する研究開発指針」(1992年5月,1993年8月一部改正,郵政省),「公害の防止等に関する試験研究の重点強化及び総合的推進について」(毎年度 環境庁)等が策定され,研究開発が重点的に推進されている。

都市・農村の計画・建設技術の開発,都市機能の維持管理技術,新しい交通輸送システム開発,新しい情報通信システム開発等の研究開発が,警察庁,環境庁,農林水産省,運輸省,郵政省,建設省等により推進されている。

(4)防災・安全対策の充実

安心して暮らせる潤いのある社会を構築していく上で,火山の噴火,地震等の自然災害,火災・危険物等による災害・事故,あるいは,コンピュータや通信ネットワークにおける犯罪,大規模システムにおける事故等,生活や社会に影響を及ぼす不安・危険要因を除去・軽減することが求められている。このため,自然災害の発生の機構解明やその予測及び防止・復旧技術の研究開発を推進するとともに,火災・危険物災害等に対応するための技術及び巨大構造物・システムの運用・保守管理技術の研究開発を推進することが必要である。また,ハイテク化や情報化が進展した結果として,日常生活や職場環境において増大しつつある新たな危険に対処する技術の研究開発を推進することが必要である。

本分野については,「防災に関する研究開発基本計画」(1981年7月内閣総理大臣決定)等が策定され,地震・火山噴火・気象災害等の自然災害の発生機構の解明・予測・防止・復旧技術等についての研究開発が科学技術庁,文部省,運輸省,建設省等により推進されている。

また,火災・危険物災害対策技術,労働衛生・安全の確保等の研究開発が,警察庁,労働省,自治省等により推進されている。


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