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第1部   若者と科学技術
第3章  科学技術がより身近に感じられる社会を目指して
第2節  科学技術に目が向けられるようにする工夫


前節では,国民が科学者,技術者に触れる機会拡大の可能性について検討した。本節では,科学者,技術者に加え,科学技術に関連する興味深い知識,不思議な現象,素晴らしい成果などを含むより広い意味での“科学技術"に国民が触れる機会を拡大する努力を通して国民が科学技術をより身近に感じられるようになる可能性について検討する。

国民が科学技術に関連する興味深い知識,不思議な現象,素晴らしい成果などに触れる機会を提供することによって,国民の科学技術に対する関心を高める試みについては,従来から様々な場で努力がなされてきている。

このような活動が行われている場としては,例えば,科学技術に関する展示を行っている施設がある。このような施設は,科学技術の代表的な成果を展示する場として,また,科学技術に関する知識をわかりやすく,かつ,印象的に国民に伝える知識普及の場として,重要な役割を果たしている。さらに,これらの施設は,若者をはじめとする多くの人々が様々な展示物等を見たり触ったりし,また,説明を聞いたりすることにより,科学技術の重要性,あるいは面白さや夢を感じてもらうことを通して,国民の科学技術に対する関心を高める場としても重要な役割を果たしている。

全国科学博物館協議会の調べによると,我が国において,科学に関する展示を行っている施設は,1992年9月現在で1,613館ある。このような施設の例としては,文部省の国立科学博物館(東京都,1877年開設)や財団法人が運営する科学技術館(東京都,1964年開設。大阪市,1963年開設),つくばエキスポセンター(つくば市,1986年開設)といったものがあるが,展示面積など施設の規模等について,欧米先進諸国にある著名な施設に匹敵するものはまだない (第1-3-4表)。 最近では,地方公共団体が,この種の施設の設置・運営に力を入れるようになってきているほか,民間企業においても,,比較的規模の大きな企業を中心に,このような施設を設置・運営する動きが広まっている。民間企業における展示館等の設置状況については,「民間企業研究活動調査」によると,事業に関連して広く一般に公開する広報館,展示館等を設置している企業の比率は,全体では18.5%であるが,資本金1,000億円以上の企業では72.7%となっている (第1-3-5図)。

また,行事や催し物を通して,国民の科学技術に対する関心を高める試みも,従来から継続的に実施されている。

その代表的な例である科学技術週間は,科学技術に対する国民の関心と理解を深めるとともに,次代を担う青少年に科学技術の重要性を認識させ,科学する心を育てることを目的として,1960年に閣議了解によって設けられた。期間は,毎年,4月18日(発明の日)を含む月曜日に始まる一週間とされており,期間中は,国立試験研究機関をはじめ関係機関の協力・協賛を得て,各種の行事が全国的に実施されている。1993年度の科学技術週間(第34回)については,標語を「地球は一つ 英知は無限」と定め,1993年4月12日から18日までの一週間を中心に各種の行事が全国的に実施された。

1993年度の科学技術週間では,次のような行事が実施された。

1) 国立試験研究機関,特殊法人等の施設の一般公開全国の国公立試験研究機関,特殊法人等の施設を一般公開し,モデルロケット打ち上げコンテスト (航空宇宙技術研究所)等の様々なイベントを実施
2) SCIENCENOW’93東京国際見本市会場に「技術予測―私たちの未来はどう変わるか」をテーマに研究開発の現状や展望を紹介
3) 第3回サイエンスミュージアムラリー青少年に東京,埼玉,茨城の科学館等22館のオリエンテーリングのための地図を配布し,5館以上巡った者に記念品を贈呈

このほか,10月26日の「原子力の日」(1964年閣議了解)や9月12日の「宇宙の日」などの機会をとらえて,原子力や宇宙といった科学技術について,国民の理解を深め,関心を高めるための行事や催し物が活発に行われてきている。

第1‐3‐4表 国内外の主な科学技術に関する展示館

第1-3-5図 広報館,展示館等を設置している民間企業の比率

さらに,最近においては,若者の科学技術離れの傾向に対する危機感が高まってきたことを背景として,国民,特に若者が科学技術に触れる機会を拡大する努力の重要性について,学会等においても一層の認識の高まりが見られるようになってきており,学会等の関係者が中心となって,若者の科学技術に対する関心を直接間接に喚起することを狙った新たな試みの動きが出てきている。

例えば,1992年から,物理教育等の関係者の働きかけ等により,「科学の祭典」実行委員会(1992年は日本物理教育学会),科学技術庁及び(財)日本科学技術振興財団の共催で「青少年のための科学の祭典」が開催されるようになった。この祭典は,日本各地の教師と生徒たちが作り上げた多くの実験装置による科学実験の実演,科学者等による特別講演,さらに,参加した生徒や父母が手作りの実験を楽しむことを通して,若者に科学技術に対する興味や関心を持ってもらうことを目的としたものである。1993年においては,夏休みの時期(7月末から8月)に東京,仙台,札幌の3会場で開催された。

以上紹介したほかにも,国民が科学技術に関連する知識等に触れる機会を拡大するための様々な努力がなされている。特に科学技術関係者の間では,若者の科学技術離れの傾向に対する危機感の広がりを受けて,この種の試みを強化しようとする気運が高まりをみせつつある。

科学技術に関する展示,行事等は,国民と科学技術を結び付ける接点として重要な役割を果たしてきており,これからも果たしていくものと期待される。第2章第1節で検討したように,最近における若者の科学技術離れの傾向を引き起こしている基本的な要因の一つが生活の中での「科学技術のブラックボックス化」にあるとすれば,科学技術に関する展示,行事等を実施するに際して,今後これまで以上に期待されることのひとつとしては,生活の中における「科学技術のブラックボックス化」に対応した視点からの工夫が考えられる。

生活の中における「科学技術のブラックボックス化」に対応するためには,現代社会に溢れんばかりに普及・浸透した結果,かえって生活の中で見過ごされがちになっている科学技術の成果について,それがまさに“科学技術”の成果であることを国民に気付いてもらい,その背後にある高度な科学技術のイメージをつかんでもらうとともに,科学者,技術者の人間としての姿に触れ,その活動に目が向き,思いが至るようにすることによって,国民に科学技術を身近に感じてもらえるようになることが考えられる。

今後とも,科学技術に関する展示や行事等については,国民と科学技術を結び付ける貴重な接点として引き続き大きな役割を果たしていくのみならず,上述のような視点にも配慮した様々な工夫,改善を加えることによって,国民,特に若者が科学技術を身近に感じる上でも一層の貢献をする可能性が考えられよう。


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