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第1部   若者と科学技術
第1章  若者の科学技術離れの傾向
第3節  懸念される影響
2.  将来における国民の科学技術に対する関心低下の懸念


我が国の若者の科学技術離れの傾向,すなわち,若者の「科学技術に対する能動的関心」低下の傾向は,今後の科学技術系人材の確保に対して大きな不安を投げかけるだけではなく,将来における国民全体の科学技術に対する関心にも大きな影響を及ぼしかねない問題でもある。

幸い,

第1-1-1図 に示したとおり,1991年末における30歳代,40歳代及び50歳代といった国民の中堅的世代の「科学技術に対する能動的関心」は1981年当時よりも若干向上基調にある。しかし,今後,仮に現在「科学技術に対する能動的関心」低下の傾向がみられる20歳代の世代が,関心の低い状態のまま30歳代,40歳代となり,さらに,この世代に続く世代も「科学技術に対する能動的関心」について,現在20歳代の世代と同様の傾向を示したとした場合,国民全体の「科学技術に対する能動的関心」が低下していくことが懸念される。また,現状においても,前節で示したとおり,我が国国民の約半数を占める女性の「科学技術に対する能動的関心」が特に低いという傾向にあることは憂慮されるべきことである。

今後,我々が地球環境問題をはじめとする地球規模の諸問題を解決し,平和で質的に豊かな国民生活を実現していく上で,科学技術に期待するところは極めて大きい。例えば,開発途上国を中心に世界人口の爆発的増加が予想される中で,それぞれの国内産業の発展,国民の生活水準の向上を目指すこれら諸国の願望と地球環境の保全とを両立させていくためには,科学技術の発展に基づく新たな解決手段の導入が不可欠である。また,国内的にみても,今後人口構成の高齢化・少子化が進行していく状況の下で,若い世代から高齢者までを含むあらゆる年代層の国民が,快適で生き甲斐のある豊かな生活をおくることのできる社会を築いていく上で,科学技術の発展は重要な役割を担うことが期待される。

他方,今後,科学技術の発展を図っていくに当たっては,科学技術の発展が人間・社会に及ぼす影響が必ずしも純然たるプラスの側面ばかりでないということに十分留意する必要がある。科学技術の発展に伴って新たな問題が提起された例としては,例えば,ライフサイエンスの進展が,遺伝子の操作,臓器の移植等にみられるように,人間の尊厳あるいは倫理との関係に新たな問題を投げかけたことがあげられる。また,地球環境問題については,科学技術の発展に伴う人間活動の規模と範囲の拡大によってもたらされたという側面があることは否定できない。

このため,今後は,科学技術の発展により新たな問題が発生することを慎重に避けつつ,内外のニーズに応えて科学技術を適切な方向に発展させ,その成果を普及し,かつ,的確に使いこなしていくことが我が国にとって大きな課題となる。

しかし,このようなことは,政府や科学者,技術者の力だけでできるものではない。急速に進歩し,新しいものが次々と現れる科学技術分野で,最先端の成果を速やかに理解し,習得し,現実の社会で使いこなしていく主体として,政府や科学者,技術者に加えて,国民全体が大きな役割を担っていることはもちろん,政府や企業,そして科学者や技術者に直接間接に働きかけ,科学技術発展の方向やペースに影響を及ぼす主体としても,国民の果たすべき役割は大きい。

国民は,例えば,科学技術の発展をもって解決すべき問題を提起し,ニーズを明らかにする,科学者や技術者の努力を評価し,あるときは称賛し,あるときは批判するといった形を通して,科学技術活動に様々な影響を及ぼすことができる。このような国民からの働きかけは,今後の科学技術の適切な発展にとって重要な要素となると考えられる。

さらに,このような国民からの働きかけは,それによって,科学者,技術者が仕事により大きな手応えを感じ,職務に一層まい進することができるようになるという意味からも意義有るものと考えられる。

国民がこのような役割を十分に果たしていくためには,国民全体が,科学技術の必要性等の科学技術に関する問題を,政府や科学者,技術者に任せ切りにするのではなく,科学技術の発展に伴って新たな問題が生ずる可能性のあることをも十分に視野に入れた上で,的確に論じられる素地を持つことが必要である。このためには,国民が,日頃から,社会の中で科学技術が果たしている役割,これから果たすべき役割といった科学技術を巡る諸問題について,自らの問題として,高い関心を持ち,いっしょに考えていこうとする積極的な意識を持っていることが必須の要件となろう。

また,このことは,高度な科学技術が将来の社会においてますます大きな役割を果たすことになると予想される中で,このような高度科学技術社会に参加し,健全に運営していくために必要な国民としての基本的な素養という視点からも極めて重要と考えられる。

若者の科学技術離れの傾向については,このように重要な我が国国民全体の科学技術に対する関心の低下につながるおそれが極めて強いという意味においても,今後とも注目していく必要がある。


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