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第1部   若者と科学技術
第1章  若者の科学技術離れの傾向
第2節  若者の科学技術離れ傾向の特徴
2.  世代別にみた「科学技術に対する能動的関心」の推移


(1980年代における変化)

ここでは,1981年時点で10歳代,20歳代,30歳代,40歳代,50歳代であった各世代の「科学技術に対する能動的関心」が,小学生の頃から年齢を重ねていくに従って,どのように変化してきたかについて,主に1980年代に焦点を絞って分析する。

1981年時点における20歳代,30歳代,40歳代及び50歳代の各世代の「科学技術についてのニュースや話題に対する関心」,これらの世代が約10年経過し,それぞれ30歳代,40歳代,50歳代及び60歳代となった1991年時点における各世代の「科学技術についてのニュースや話題に対する関心」及び「小学生の頃の理科の好き嫌い」に関するデータをまとめた (第1-1-11表)

「科学技術についてのニュースや話題に対する関心」や「理科の好き嫌い」といった意識・態度は,「科学技術に対する能動的関心」を示すと考えられる (第1-1-10表)

従って,これらの意識・態度に関するデータは,「科学技術に対する能動的関心」の推移を分析する上で有用であると考えられる。

第1-1-11表 によると,「小学生の頃の理科の好き嫌い」については,世代間に大きな差はみられず,どちらかといえば,若い世代の方が小学生の頃に理科が好きであったようにみえる。また,1981年時点における20歳代,30歳代,40歳代及び50歳代の各世代の「科学技術についてのニュースや話題に対する関心」についても,世代間に大きな差は見られない。しかし,1991年時点における「科学技術についてのニュースや話題に対する関心」については,1991年時点で20歳代の世代,すなわち,1981年時点で10歳代の世代が際立って低い関心を示す層となった。

第1-1-11表 世代別に見た「科学技術についてのニュースや話題」に対する関心等の推移

このことは,「科学技術についてのニュースや話題に対する関心」や「小学生の頃の理科の好き嫌い」といった意識・態度が,「科学技術に対する能動的関心」を示すとみられることを考え合わせると,1981年時点で10歳代の世代の「科学技術に対する能動的関心」が,以後1991年に至る10年間に低下傾向にあったことを示唆していると考えられる。また,1981年時点で20歳代の世代の「科学技術に対する能動的関心」については,ほぼ横ばい傾向,30歳代,40歳代及び50歳代の世代については,いずれも若干高まっている傾向にあったようにみえる。

(10歳代における年齢との間の関係)

上記分析では,1981年時点で10歳代の世代が20歳代の大人へと成長していく過程で,「科学技術に対する能動的関心」が低下していった可能性を示した。ここでは,このような現象が最近の未成年層においても起きているか否かについて調べるため,最近の未成年層の「科学技術に対する能動的関心」と年齢との間の関係に着目し,東京都立教育研究所「理科学習にかかわる児童の諸能力に関する実証的研究」及び「中学校理科の学習にかかわる生徒の諸能力に関する実証的研究」,文部省国立教育研究所「理数調査報告書」及び「小・中・高等学校における理科学習と科学的態度の質的変容についての継続的調査研究」等のデータのうち,「科学技術に対する能動的関心」を示す意識・態度に関連するとみられるものを基に分析する。

第1-1-12図 理科の勉強の好きな小中学生の比率

まず,小中学生のうち,理科の勉強の好きな生徒の比率を学年別に調べた結果を 第1-1-12図 に示す。年齢の増加とともに「好き」と回答するものの比率が減少する傾向は,他の教科にもみられるが,これによると,理科の勉強が好きだとする生徒の比率は,小学6年生から中学3年生に至る段階で急速な減少がみられる。

次に,小学5年生から高校3年生までを対象として,理科はおもしろいと思う生徒の比率,科学に関する本をよく読む生徒の比率,科学や数学の読み物やテレビの科学番組が好きという生徒の比率及び将来の仕事として科学の研究をすることは魅力的な生き方と思う生徒の比率が学年の進行とともに変化していく過程を三つの母集団について追跡調査した結果を 第1-1-13図 に示す。

これによると,いずれの項目の比率も,学年の進行とともに減少する傾向を示している。

さらに,高校3年生が小学5〜6年生の頃,中学2年生の頃及び高校2年の1学期頃及び高校3年の11月〜1月に,大学(又は短大,専門学校)への進学先として文系と理系のどちらかを考えていたかを高校3年生に尋ねた結果を 第1-1-14図 に示す。

これによると,中学2年生の頃までは理系への進学を考えていた生徒の比率が文系への進学を考えていた比率を大きく上回っていたが,高校2年の1学期頃の時点においては,文系への進学を考えていた生徒の比率が理系への進学を考えていた生徒の比率を上回ることとなり,高校3年の11月〜1月の時点では,さらに,この傾向が強まっている。このことから,我が国の若者にとっては,中学から高校へと進むにつれて,理系に進もうとする者が文系へと進もうとする者に比べて相対的に減少していく傾向がうかがわれる。

第1-1-13図 小中高校生の科学技術に対する関心

第1-1-14図 大学(又は短大,専門学校)への進学先理系又は文系と決めていた者の比率

小中高校生に関するこれらのデータを総合的にみると,「科学技術に対する能動的関心」を示す者の比率は,10歳代の未成年層においては,年齢の増加とともに減少する傾向にあることがうかがわれる。

小学生の頃の理科の好き嫌いの傾向については, 第1-1-11表 によると,1981年時点において50歳代の世代が小学生であった1930年代の頃から,同時点において10歳代の世代が小学生であった1970年代の頃までの数十年にわたってあまり大きな変化はみられず,「非常に好きだった」または「好きな方だった」の回答を選択した者の比率は50%前後であった。

一方,東京都立教育研究所「理科学習にかかわる児童の諸能力に関する実証的研究」(1987年度)によると,「私は,理科の勉強がとっても好きです」という質問に対し,「よくあてはまります」または「だいたいあてはまります」の回答を選択した者の比率は小学4年生,5年生,6年生のそれぞれについて,82%,80%,70%である (第1-1-12図)。 また,文部省国立教育研究所「理数調査報告書(平成2年,3年)」によると,「理科はおもしろいと思う」という質問に対し,「そう思う」または「どちらかといえばそう思う」の回答を選択した小学5年生,6年生の比率も,それぞれ80.5%,73.2%と7割を超えている (第1-1-13図)

このように,理科の学習に対する積極性からみる限りでは,10歳の頃における「科学技術に対する能動的関心」は,最近においても比較的高い水準にあるようにみえるが,このような10歳の頃における「科学技術に対する能動的関心」の高さが,成人後の「科学技術に対する能動的関心」の高さに直ちにつながらなくなっており,大人へと変わっていく10歳代の成長過程で,「科学技術に対する能動的関心」が低下していく傾向のあることがうかがわれる。


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