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第1部   若者と科学技術
第1章  若者の科学技術離れの傾向
第2節  若者の科学技術離れ傾向の特徴
1.  科学技術に対する関心の二つの側面


前節で示したように,科学技術についてのニュースや話題に対する関心,あるいは進路選択といった面からは,若者の科学技術に対する関心が低下している傾向をうかがうことができよう。他方,科学技術の成果の利用といった面をみると,若者が消極的であるというような兆候は見られない。最先端の科学技術の成果であるパソコンやワープロを日常の生活に取り入れていく上で,最も積極的な姿勢を示しているのは,むしろ若者である (第1-1-9図)。

このように,若者が一見矛盾した態度を示していることは,科学技術に対する関心の持ち方が一つの尺度だけで測れるような簡単な構造をしていないことを示している。

科学技術庁科学技術政策研究所「科学技術活動に関する情報を青少年に向けていかに発信するか」では,若者の科学技術に対する関心の持ち方は一元的なものではなく,「新しい科学技術の動向に関心がある」,「科学技術についての新聞記事を熱心に読む」といった意識・態度に代表される関心の持ち方と「コンピュータが発達し,生活が便利になることは良いことだ」,「リニアモーターカーなど交通機関のスピードアップは良いことだ」といった意識・態度に代表される関心の持ち方の二つの側面に分けることができ,例えば,進路選択と深い関係がみられるのは,前者の関心の持ち方であるとしている。

第1-1-9図 科学技術に対する意識・態度と年齢との間の関係

若者は,最先端の科学技術の成果の利用に対しては積極的である一方,科学技術についてのニュースや話題に対してはあまり関心を示さないということも,このような二元的な見方に立てば,科学技術に対する関心の持ち方の一つの有り得るパターンとして理解することができる。

ここでは,科学技術に対する関心のうち,[新しい科学技術の動向に関心がある」,「科学技術に関係する進路を選択する」,「理科がおもしろいと思う」,「製品の製造法,構造,作動原理に関心がある」といった意識・態度に代表される関心の持ち方を,科学者,技術者の活動や製品の製造法,構造,作動原理などについて知りたい,関わりたいといった積極的意識・態度を示すという意味で「科学技術に対する能動的関心」と呼ぶこととする (第1-1-10表)

第1-1-10表 科学技術に対する関心の持ち方に関する二つの側面

また,最先端の科学技術の成果を便利な道具,物として利用していくことには積極的であるが,それが“科学技術”の成果であるということについては,ことさら意識しないという関心の持ち方を,「科学技術の成果に対する受容的関心」と呼ぶこととする( 第1-1-10表 )。

この考え方によると,[科学技術の成果に対する受容的関心」はあるが,「科学技術に対する能動的関心」はない者は,パソコンやワープロといった最先端の科学技術の成果を身近な生活や自分の仕事に取り入れることには積極的で,その使用法については高い関心を示すが,製品を開発した科学者,技術者の活動や使用に必要な知識以外の知識,例えば,製品の製造法,構造,作動原理などについては,ほとんど関心を示さず,それを単に便利な道具,物としかみない傾向を示すことになろう。

若者がパソコンやワープロの使用に対しては積極的であるにもかかわらず,「科学技術についてのニュースや話題」に対しては関心を示さず,進路選択においても科学技術から離れていくようにみえることは,若者の「科学技術の成果に対する受容的関心」は旺盛であるにもかかわらず,「科学技術に対する能動的関心」は失われつつあることを示していると解釈できる。すなわち,いわゆる「若者の科学技術離れ」と呼ばれている最近の若者の意識変化の具体的内容は,「科学技術に対する能動的関心」の低下であり,若者が科学技術の成果の利用について消極的になったというようなことを意味するものではないと理解できる。


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