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第1部   若者と科学技術
第1章  若者の科学技術離れの傾向
第1節  若者の科学技術離れ傾向の兆候
2.  若者の進路選択動向


(大学受験生の学部志願動向)

最近の大学受験生の進路選択動向を把握するため,科学技術庁科学技術政策研究所「大学進学希望者の進路選択について」及び文部省「学校基本調査報告書」に基づき,工学部,理学部,理工学部,法学部,経済学部,経営学部及び商学部について,入学志願者全体に占めるそれぞれの学部への入学志願者比率(実数ベース)の推移を推計した (第1-1-3図)。

これによると,我が国の経済が1970年代の二度にわたる石油危機に続く景気の停滞を脱し,製造業が立ち直っていく過程と軌をーにして工学部への入学志願者比率が増加した。しかし,その後,1980年代末において,我が国の経済が活況を呈し,製造業側の科学技術系人材に対する需要が高い水準で推移していたにもかかわらず,工学部への入学志願者比率は減少し始めた。この傾向は,1988年から1990年にかけて顕著で,その後も減少の速度を弱めつつも1992年まで続いている。

また,理学部への入学志願者比率は1988年以降低迷を続けており,1985年まで増加傾向にあった理工学部への入学志願者比率も1987年以降低迷が続いている。一方,経済学部への入学志願者比率については,これらとは対照的に,1987年から1990年にかけて急増したことが注目される。

第1-1-3図 学部別入学志願者比率(実数ベース)の推移

以上のような状況は,全体的にみて,最近の若者の意識が科学技術から離れつつある傾向を示唆していると解釈することもできよう。 (理工系学生の就職動向) 最近の理工系学生の製造業への就職動向を把握するため,科学技術庁科学技術政策研究所「理工系学生の就職動向について」及び文部省「学校基本調査報告書」により,理工系の大学学部卒業者・大学院修士課程修了者の製造業への就職比率の推移をみる (第1-1-4図)。

これによると,理工系学生の製造業への就職比率は1987年から1988年にかけて急激に減少した。このような現象が当時「理工系学生の製造業離れ」として注目されたことは記憶に新しい。その後,1980年代末の好景気に伴う製造業の採用拡大により,この比率は1990年まで一時的に回復の兆しをみせたが,1990年から1991年にかけて,頭打ちの状態となり,1992年に至っても1987年当時の水準まで回復することができない状態が続いている。

第1-1-4図 理工系学部卒業者・修士課程修了者の製造業への就職比率の推移

また,大学学部を卒業し又は大学院修士課程を修了して製造業に就職した者に占める理工系の大学学部卒業者・大学院修士課程修了者の比率の推移をみると,1980年代半ばまでは比較的安定的に推移していたが,1987年をピークに急激に減少し始めた。この傾向は1992年まで続いており,回復の兆しはみられていない (第1-1-5図)

このことは,1988年以降の好景気の中で,製造業の大学学部卒業者・大学院修士課程修了者全体の採用拡大のペースに理工系の大学学部卒業者・大学院修士課程修了者の採用拡大のペースが追い付いていなかったことを示している。

なお,労働省「労働経済動向調査報告書」により,製造業の労働者の過不足感の推移を職種別にみると,問題としている現象が起きている1988年から1992年までの期間においては,主に理工系の大学学部卒業者・大学院修士課程修了者が中心となるとみられる専門・技術系の職種の労働者の不足感が,主に文系学部卒業者が多いとみられる事務系の職種の労働者の不足感と比較して一貫してかなり高く,また,販売やサービスといった職種と比較しても一貫して高いことがわかる (第1-1-6図)。

 第1-1-5図 製造業への就職者(学部卒業・修士課程修了)に占める 理工系学部卒業者・修士課程修了者の比率の推移

第1-1-6図 製造業労働者過不足判断D.I.(職種別)の推移

科学技術庁が1993年6月に民間企業1,444社(回答企業840社)に対し実施した「民間企業の研究活動に関する調査」(以下,「民間企業研究活動調査」という。)によると,回答企業の75.9%が数年前には理工系学生の製造業離れの風潮を感じ,不況の中,多くの企業が新規採用を抑制している現在においても,48.2%がこの風潮を感じている。また,今後については,回答企業の61.0 %がこの風潮が続く,あるいは再び顕在化すると予想している (第1-1-7図)

景気が低迷し,新規学卒者の就職市場の買い手市場化が指摘されている現時点では,理工系学生の製造業離れ現象が注目されることは少なくなっているが,上述のような視点からみる限りでは,理工系学生の意識の根底において,製造業が就職先として以前程の魅力を持ち得なくなっているという傾向は依然続いているとの解釈もできよう。今後,長期的には若年人口の減少が予測されていることから,新規学卒者の就職市場が現在の買い手市場から再び売り手市場に転ずることが考えられる。これらのことから,将来において,製造業が再び理工系学生の採用について困難に直面することが懸念される。

第1-1-7図 理工系学生の製造業離れの風潮を感じる企業の比率

製造業は,科学技術の成果を製品という形で社会に提供するものであり,最も典型的な科学技術活動の主体の一つということができる。

このような場が,理工系の専門を修めた者からみてさえ,以前程の魅力を持ち得なくなってきている傾向があるとすれば,それは,若者の意識が科学技術から離れつつある傾向を示唆するものとして受け止めることもできよう。

(米国,英国等の状況)

科学技術関係の進路を選択しようとする若者の比率が減少する傾向は,米国,英国等においても指摘されている問題である。

米国議会技術評価局(OTA)が1989年に発表した報告書「HIGHER EDUCATIONFORSCIENCEANDENGINEERING」によると,米国の大学1年生の中で自然科学・工学を専攻することに関心がある者の比率は,1978年には27%であったが,1986年には24%へと減少している。また,科学技術関係の研究を職業とすることに関心がある者の比率についても,1978年には9.5%であったが,1986年には7.0%へと減少している。

米国科学審議会が1991年に発表した報告書「SCIENCE& ENGI‐NEERINGINDICATORS:1991」によると,米国の学士の学位取得者全体に占める自然科学専攻,工学専攻及びコンピュータ科学専攻の学士の学位取得者の比率は,近年,一貫して減少傾向を示している (第1-1-8図)。

英国科学技 術諮問 委員会(ACOST)が1991年に発 表した報告書「SCIENCE AND TECHNOLOGY:EDUCATION AND EMPLOYMENT」によると,英国において,16歳以降,高等物理,高等数学,高等化学の課程を選択する者は,1989年から1990年にかけて,それぞれ,44,871人から42,564人,82,987人から77,277人,47,559人から47,286人へと減少している。また,大学の工学・技術課程への入学志願者は,1985年には81,000人であったが,1989年には67,000人へと減少している。

第1-1-8図 米国における専攻分野別学士の学位取得者比率の推移

また,経済協力開発機構(OECD)が1992年に発表した報告書「TECHNOLOGY AND THE ECONOMY:The Key Relationship」によると,米国や英国の他にカナダ,イタリア等においても同様の傾向がみられるとしている。


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