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第1部   若者と科学技術
  はじめに

我が国のこれまでの社会経済の発展は,科学技術によって支えられてきたところが大きい。明治政府が誕生した当時,欧米においては,いわゆる産業革命を経て,科学技術の発展・普及による急速な近代化が進行中であり,我が国は科学技術の面において明らかに立ち後れていた。そこで,明治政府は,欧米の進んだ科学技術を積極的に導入するとともに,留学生の海外への派遣,欧米の科学者や技術者の招へい,理工系高等教育機関の整備などを通して,早い時期から科学技術水準の向上に努めてきた。戦後においても,我が国は,経済発展と社会の諸問題解決のために,科学技術を積極的に振興し,今日の経済力と豊かな国民生活を築き上げてきた。

このような我が国の発展の背景には,明治以来積極的に養成がなされてきた科学者や技術者の努力と科学技術水準の向上を通して欧米先進諸国の生活水準に一日も早く追い付きたいとする国民の科学技術に対する期待感があったと言えよう。

今,我が国は,多くの先人の努力の結果,国民生活の物質的豊かさを達成し,科学技術の水準も民間の生産技術では多くの分野で世界をリードするに至っている。しかし,グローバルな視点でみると,国際社会は,人類の生存を脅かしかねない地球環境問題等の地球規模の諸問題に直面しており,また,国内的にみても,我が国は人口構成の急激な高齢化・少子化や中堅的労働力の減少など新しい問題への対処を迫られつつある。

これら我が国が直面しつつある内外の諸問題は,科学技術のさらなる発展がなければ対処し難いものが多い。今後も,平和で豊かな生活を享受していくためには,科学技術の一層の発展を図り,その成果を通してこのような新しい問題に対処していくことが不可欠である。

他方,現在の社会状況をみると,科学技術についてのニュースや話題に対して関心を示す若者の比率の減少といった傾向が指摘され,「若者の科学技術離れ」として話題になっている。

これまで,我が国の若者の科学技術に対する関心は基本的に高く,若者が科学技術に対して高い関心を示すことは,いわば当然のことのように受け止められていた。科学技術に対して高い関心を示す若者の厚い層があったからこそ,我が国は科学技術に対する夢と情熱を持った多くの科学技術系人材に恵まれ,また,国民全体として,科学技術の成果を的確に現実の問題に適用していくことができたと言える。

しかし,これまで当然のことのように受け止められてきた若者の科学技術に対する関心の高さが今や揺らぎ始めてきており,今後の推移によっては,科学技術系人材の不足,あるいは国民全体の科学技術に対する関心の低下といった形で,我が国の将来に関わる問題に発展するおそれも懸念される。

特に,将来における科学技術系人材の確保に関する問題については,政府においても,科学技術政策大綱(1992年4月24日閣議決定)において,重点施策の一つとして取り上げており,また,科学技術系人材の確保に関する基本指針を策定すべく,1992年12月2日,科学技術会議に対し,諮問第20号「科学技術系人材の確保に関する基本指針について」を諮問したところである。

本白書第1部は,いわゆる「若者の科学技術離れ」と呼ばれている現象に焦点を当て,その状況,背景等について検討し,科学技術会議における審議の一素材を提供するとともに,このことに関し,科学技術関係者そして国民全体が取り組んでいくべき課題として,国民各層の間で議論が深まっていく一つの契機としようとするものである。


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