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第1部   科学技術の地域展開
第3章  今後の展望
第2節  地域における科学技術政策の基本的考え方
1.  地域における科学技術の方向性―科学技術の高度化


(科学技術の高度化)

第1節で述べたように,地域により科学技術に期待するところは異なるところであるが,多様な目標を掲げつつも,科学技術の方向性として共通的な考え方を汲み取ることができる。

例えば,製造業にあっては,単純な製造作業から,作業管理・生産技術,製品開発と段階を経て技術の幅を広げ付加価値を高めていくが,この過程で,科学技術も外部技術の導入,導入技術の改良,新技術の創造と高度化が図られていく。このような地域の科学技術の高度化は,それぞれの目的達成のためにも合理的な方向と考えることができる。

技術は近年陳腐化する速度が早まっていると言われる。このような状況の中で地域においても科学技術の高度化に向けての投資や努力は不可欠である。

以上は,製造業を中心に考えたものであるが,近年の進展している科学技術の内容を考えれば,様々な目的に応じて科学技術の高度化が重要となっており,地域における科学技術の共通の課題として掲げることができる。例えば,近年のバイオテクノロジーの発展は,工業生産だけでなく,農林水産業生産,医療福祉の向上,安全の向上など多方面において多大な効果を上げることが期待されているところである。

このような科学技術の高度化は,研究そのものの水準向上がまず重要であるが,更にそのような研究を可能とする高度な先端的研究設備の整備や研究機関の集積,支援機能の充実や高い技術水準の研究機関との交流など多くの方法で図っていくことが必要である。このような趣旨から地域における科学技術施策を眺めた場合,先端技術への志向,公設試験研究機関の再編・見直しや設備整備,研究交流の促進等の各種の施策は地方公共団体における科学技術高度化の考え方が具体化したものと考えることができる。

(基礎的,独創的研究の推進)

科学技術の高度化の中にあって,製品を開発したり既存の原理原則を応用したりするだけではなく,基礎的かつ先端的な研究を実施する研究機関が地域に増加しつつある。産業分野においては,民間企業においても長期的視野に立った研究を実施する例が多くなっているが,このような企業との研究交流を行ったり,技術移転を円滑に進めるには公設試験研究機関や第三セクターにおいても基礎的なレベルからの研究を進め高いポテンシャルを維持しておくことの必要な場合が多い。

また,産業以外においても,近年地域住民の高度かつ広範なニーズに応えるためには基礎的な研究の成果を必要とする事態も増えている。

とりわけ,地域における内発的な科学技術を進めようとする場合には基礎的研究の充実が重要な鍵となるものである。

また,地域においてはその歴史や風土から独自の優れた発想も生まれやすく,独創的な研究の生まれることが期待される。戦前に設置された大学や研究機関に独特の伝統が形成され,現在においても高いポテンシャルを維持している機関が少なくないのがその例である。また,基礎的研究の中には,直ちに先端産業につながることは期待しにくいが新しい科学技術の芽となり,地域の住民の誇りとなるような研究も少なくない。特に,地域の住民の生活と密接に関係する科学技術の中にはこのような研究が多いと考えられる。特色ある地域の研究としては滋賀県琵琶湖研究所等における琵琶湖の水質改善研究,鳥取大学等における砂漠化対応の研究,鹿児島県工業技術センターの火山堆積物のシラスを利用する研究,沖縄県水産試験場や公害衛生研究所等による熱帯樹林の生態系解明に関する研究等があり,国の機関と協力しながら研究が進められている例も多い。

これらを更に進めて,一部の都道府県では我が国における基礎的研究の発信基地となることを目標に掲げ,先端的設備の整備や国内外からの優れた研究者の招へい,厳しい研究評価を導入した研究機関も設置している。これらの機関においては我が国最高レベルの創造的な研究を実施し,国の先端的プロジェクトにも積極的な参加を図っているものもある。このような研究拠点は,一見,産業振興や生活向上と言った地域のニーズとは直接に結び付きにくいように見えるが,地域の科学技術レベルを牽引し,当該地域を科学技術立県化していくセンターの位置付けを持つものとして長期的には重要なものといえる。将来的には,第1章に述べたように地域にある国立試験研究機関や大学,先端的民間研究所からCOEが登場するだけでなく,地方公共団体の設置したこのような地域の研究拠点からも日本のCOEが誕生することが期待されるのである。


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