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第1部   科学技術の地域展開
第2章  地域と共に発展する科学技術
第7節  地域における科学技術推進上の問題点
3.  人材確保


研究人材は科学技術振興の要であり,各研究機関は人材の確保・育成に多大な努力をしている。労働省「労働経済動向調査」(平成3年2月)によると,新規学卒者の採用計画に対する採用内定者の充足状況をみると,大卒技術系を100%以上充足できた製造業の事業所割合は全体で27%に過ぎず,また規模が小さいほど充足状況は低いことが現れている。

(困難な新卒者の採用)

地域においても同様な状況であることが推測されるが,例えば東北地域の状況をみると,「地域技術の振興に関する調査」によると,技術系新卒者の採用姿勢として企業は「従来よりこだわりなく,どこの地域にある学校でもオープンにしている」と答えた企業が64%で最も多く,「従来より地元採用を行っており,今後も続けたい」(26%)を大きく上回っている。

しかし,技術系新卒者の採用の難易度については,「採用予定数を確保するのは難しい・できない」とする企業が全体では59%もあり,「予定数を確保するのに非常な努力が必要」と答えた企業と合計すると80%に達し,人材確保に苦しむ企業の現状が浮き彫りとなる( 第1-2-48図 )。

第1-2-48図 採用の難易状況

(人材確保施策の理想と現実)

前述の問題点を解決し,地域の科学技術を振興するために,各地方公共団体はさまざまな施策を展開し,あるいは計画を進めている。

「地域科学技術行政連絡会議調査」によると,都道府県の科学技術振興を図るために必要な条件として,「人材の確保・育成」(68%)を上げたものが多く,「産学官の連携強化」(32%),「科学技術振興体制の強化」(29%)の順となっている。

文部省「学校基本調査報告書(平成3年度)」によると,卒業した大学の所在都道府県に就職した理工系学部卒業者の割合をみると,東京都と愛知県が50%を越えている以外はすべて5割に満たず,うち36県は20%未満という状況であり,出身大学の所在都道府県への就職率は極めて低い( 第1-2-49表 )。

第1-2-49表 理工系学生の大学卒業後の状況

このことは,各都道府県は科学技術振興を図るために必要な条件としては「人材の確保・育成」を最も重要視し,各種の施策を講じてはいるものの人材の確保に関しては満足な成果はえられていないことを示しているものと言えよう。

(地域の科学技術水準の向上)

科学技術系人材の地元への就職を促し,優れた研究人材を育成していくためには,地域の科学技術水準の向上を図り,研究者にとって魅力的な研究環境を醸成していくことも有効な手段の一つである。

都道府県においては,このような認識を踏まえ,先端科学技術分野の研究開発を重視しできている。「地域科学技術行政連絡会議調査」によると,地方公共団体が特に力を入れている科学技術分野は新素材及びバイオテクノロジー分野であり,それぞれ64%,61%の都道府県がその推進に努力している。

地域の研究水準について研究者にアンケート調査(「先端科学技術研究者調査」)を行った結果に基づき,それぞれが所属する分野で特に研究水準が高いと考えられる地域として回答のあった数を,地域ごとにレーダチャートに示したものが 第1-2-50図 である。これにより,各地域の研究水準の高さに対して,研究者がどのように認識しているかを分野ごとに地域内で比較することができる。

東京都及び神奈川県,筑波地域,関西地域においては,研究水準に対する認識の分野間の差は小さい。その他の地域においては,1分野又は2分野の研究水準が高いと考える回答数がそれ以外の分野を大きく上回っている。このような地域の特徴を考慮に入れた研究開発資源の活用を行うことが,科学技術政策を立案する際には重要と考えられる。

第1-2-50図 研究水準アンケート調査結果

(公設試験研究機関の水準向上)

また,公設試験研究機関の水準向上も欠かせない。「先端科学技術研究者調査」によると,公設試験研究機関の研究者は筑波研究学園都市の集積効果について,「研究水準が上がる」との回答(33%)が国研,大学,民間企業の研究者の回答(それぞれ12%,17%,15%)を大きく上回っている。この結果は公設試験研究機関の研究者が筑波研究学園都市において国や大学等の研究機関と交流することにより研究水準が向上したという実績と,研究集積効果に対する期待があらわれているものと思われる。また,研究内容をみると「目的基礎研究」の割合が国研に比べて低く,「試験評価分析」及び「技術指導」の割合が他の機関よりはるかに大きい。

第1-2-51図 現地域の課題(研究について)

さらに,現在の研究拠点での研究活動についても,不便を強く感じており,「科学技術情報データベースが不十分」,「研究材料の入手に時間」,「機器設備の不整備」,「周囲の研究水準の低さ」,「研究支援体制が不十分」など,ほとんど全ての点において不便感が他の機関を上回っている,( 第1-2-51図 )。逆に,現在研究を行っている地域のメリットについては,「特にメリットがない」が他の機関に比べて大きく,「研究人材が豊富である」や「研究交流にアクセスしやすい」は低く,交流を希望してても実現しにくい状況であることを訴えている( 第1-2-52図 )。このため,民間企業の研究機関との交流状況をみると,「共同研究」,「情報交換」,「シンポジウム・研究会への参加」の項目すべてについて他の機関を大きく下回っている。

第1-2-52図 現地域の利点

(地方公共団体に対する民間企業の希望)

地域における科学技術の振興に対しては,国や地方公共団体の働きを見逃すことはできない。今後地域における企業の発展のために地方公共団体に望む事項として,「地域技術の振興に関する調査」よると,「人材育成施設の設立」(32%)が最も多く,次いで「研究開発型企業育成施設の設立」(18%),「産学官共同研究の推進」(16%),「開放型試験研究施設の設立」(14%)となっている。


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