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第1部   科学技術の地域展開
第2章  地域と共に発展する科学技術
第7節  地域における科学技術推進上の問題点
2.  研究交流


(活発な研究者の交流)

研究交流を行う主体は研究者であるが,「先端科学技術研究者調査」によると,研究者は活発に交流を行っている。交流を行っているとの回答は9割を越えており,交流をしていないはわずか5%に過ぎない。

交流先の地域も「東京・神奈川・大阪・筑波のみ」(20%)よりも「地域の限定なし」(66%)の方が多く,全国的に広く交流が行われていることがうかがわれる。交流の内容としては,共同研究,情報交換,技術指導,シンポジウム・研究会への参加などであり,共同研究,情報交換,シンポジウム・研究会への参加は大学,国研,民間企業が主体である。技術指導は主として国研,大学と民間企業間で実施されている。

第1-2-43図 筑波移転前後における研究者の平均活動・滞在時間の割合(建築研究所)

将来の交流先については,特に地域にはこだわらず大学が交流の中心であることには変化は見られないが,公設試験研究機関の比重が大きく増加しているのが注目される。

(東京圏中心の地域間の交流)

地域間の交流は東京圏中心に実施されている。例えば,国土庁が昭和62年に全国の地域中堅企業を対象に実施した調査(以下「産業・技術ネットワーク調査」という。)によると,研究開発分野における地域間交流の現状をみると,交流を行っていると回答した民間企業の比率は,全体の95%にのぼり, きわめて活発に実施されている。これらの民間企業がどのような地域と交流を行っているかをみると,「東京圏」が80%と最も多く,「地元」(59%),「周辺地域」(51%)を大きく上回っている。それ以外では「大阪圏」(44%),「海外」(17%),「その他」(20%)が上げられている( 第1-2-44図 )。交流の具体的内容としては,「研究開発に関する情報の入手」,「生産技術に関する情報の入手」,「試験・分析等の依頼」,「共同研究・技術開発」等が多い。

しかし,将来の交流希望先となると,むしろ周辺や大阪圏,海外の増加が大きく,東京圏,地元は僅かである。現状に比べて周辺地域の増加が大きい具体的交流内容は,「研究者等の人材情報の入手」と「共同研究・技術開発の相手」であり,より優れた研究人材と共同研究・技術開発の相手を求めて,地元から周辺地域へと交流が拡大する傾向にあると言えよう。

第1-2-44図 研究・開発分野における地域間交流の現状 (地域的結びつき)

(交流の阻害要因)

交流をさらに促進するための条件は何であろうか。「先端科学技術研究者調査」によると,東京・大阪・神奈川以外の地域との交流を阻害する要因としては,「時間的」,「地理的」制約条件とともに「共通の研究課題を有する研究者の不足」および「交流のための情報不足」が大きい( 第1-2-45図 )。

(情報交流)

第1-2-45図 東京・神奈川・大阪以外の地域と交流しない理由

前述のように研究者は,研究情報にアクセスしやすいことを最も重視しており,交流を促進するためには研究者を時間的,地理的制約条件から解放し,研究情報が滞りなく研究者間で流通するようにしなければならない。そのためには研究情報ネットワークの構築が有効な手段となろう。しかし,基盤の整備にとどまらず研究情報が活発にネットワーク上を流通するようになるためには,自らも研究情報の発信源となり,アクセスを受けるようになることが重要であり,それには地域の科学技術の水準を向上させる必要があることはいうまでもない。

都道府県も研究情報ネットワークの構築の重要性を認識している。「都道府県意識調査」によると,県内の科学技術振興のために必要な方策をいくつかあげているが,交流に関するものとして,「都道府県内の研究情報ネットワークの構築,筑波研究学園都市との接続等による研究情報の流通促進」(75%),「研究交流施設の設置等による都道府県内の研究者交流の推進」(65%)や「都道府県外の研究機関との研究交流推進」(52.5%)をあげた地方公共団体が多い( 第1-2-41図 )。

(共通の研究課題)

共通の研究課題が少ないことについては,例えば地域の公設試験研究機関の研究者数自体でも1.5万人と,国研を上回る研究者数を擁しており,研究者の不足という要因よりも,交流しやすい研究テーマが少ないこと等によるものと考えられる。

「先端科学技術研究者調査」によると,研究交流促進条件としては「学会・研究会等の開催」,「優れた研究者の育成」,「交流をまとめるコーディネータの存在」などがあげられており,地域の研究拠点においても学会や研究会等を開催できるような研究水準の向上や研究をリードする研究者の存在が求められているものと考えられる( 第1-2-46図 )。

これらの研究水準の向上やコーディネータたりうる人材の確保・育成のーためには,地方公共団体をはじめ,公設試験研究機関,第三セクター,大学などによる積極的な努力が必要であろう。

公設試験研究機関の改編,設備の充実等,地方公共団体による努力が図られているのは既に述べたとおりであるが,一方で若手研究者の育成などの施策は比較的少なく,研究者の資質向上を図って行くことが課題と見ることができる。特に最近の傾向として,公設試験研究機関研究者の高学歴化が見られ,研究テーマを高度化していくことが十分可能な公設試験研究機関が増えている。「民間企業研究活動調査」によると,東京都,大阪府,神奈川県以外の地域に研究拠点を設置している民間企業は,公設試験研究機関との交流についての問題点として,「分野が違い共通するテーマがない」ことと「交流する機会や情報がない」ことを多く回答しており,公設試験研究機関の努力に期待している( 第1-2-47図 )。さらに,民間企業が地域における科学技術振興に関して地元の県に望んでいることとしては「地域内の産学官の研究交流の促進」,「公設試の拡充,強化,レベルアップ」が多い。民間企業は公設試験研究機関の水準向上により,地域内の産学官の研究交流が促進されることを求めている。

一方,大学との研究交流については,東北地域の民間企業を対象とした調査でも,異業種民間企業との交流に次いで多く (44%),また,「先端科学技術研究者調査」によると首都圏以外の機関の研究者との交流実績も大学とのものが最も高い(47%)。これらからも地域における研究交流の重要性はうかがえるところであり,既に地域の大学において共同研究センターの設置などが進んでいるものの一層の地域との協力が望まれる。

地方公共団体にあっては産学官の技術交流に力がいれられているところから,第三セクターについては,このような研究交流において力を発揮することが期待される。しかしながら一方で,第三セクターの研究職員数は86%が10人以下であり,規模的に小人数の研究拠点が多く,流動的な研究体制を活用しつつ効果的な運用が図られる必要があろう。

第1-2-46図 研究交流を促進するための条件

第1-2-47図 公設試験研究機関との研究交流における問題点


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