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第1部   科学技術の地域展開
第2章  地域と共に発展する科学技術
第7節  地域における科学技術推進上の問題点
1.  研究拠点の地域分散


(現在の立地動向)

地域において科学技術活動の中核となる研究開発拠点の立地動向の推移は,第1章第1節で述べたように,国立及び公設試験研究機関については,あまり変化が見られず,大学については,東京都以外の地域への分散傾向が見られた。さらに,民間企業の研究所の新規立地については,関東圏以外の地域への分散傾向が顕著に見られた。

労働省の「平成元年産業労働事情調査」によると,民間企業の研究所等が地方圏に立地した理由として「大都市圏では用地取得が困難なため」との回答が最も多いことをみると,民間企業の東京圏への研究所立地希望は根強いものの,土地価格の高騰などによる用地取得の制約から東京圏等の大都市圏に設置できなくなっているものと推測され,今後も東京圏以外の地域への拠点分散の傾向が続くものと思われる。

(地域移転に対する研究者の考え方)

東京都,大阪府,神奈川県で先端的研究に携わっている研究者も,地域への移動についてはこだわりを持っていない。「先端科学技術研究者調査」によると,研究者が現在いる地域以外での研究について「他の地域に移りたい」,「条件がよければ,他の地域に直ちに移っても良い」,「条件がよければ,他の地域に将来は移っても良い」の回答を合計すると61%となり,「現在いる地域から離れたくない」(33%)とする回答を大きく引き離している( 第1-2-40図 。移転先についても57%が「特に地域にこだわらない」としている。したがって,研究面や生活面で研究者の望む条件を満たしていけば,研究者は特に地域にこだわらず,東京都,大阪府,神奈川県以外の地域でも研究活動を実施できるものといえよう。

第1-2-40図 現地域以外での研究

)

(新設・移転のための条件)

東京圏を中心とした研究拠点の新設・移転はどのような条件によるものであろうか。国土庁が首都圏,大阪圏,名古屋圏,福岡圏の民間企業を対象に実施した「大都市の教育・研究機関の動向」調査によると,新設・移転の意向を有する研究所等が新設・移転先の立地条件として重視している項目を見ると,「大学,研究所の集積」(36%),「自社の本社との距離」(36%),「自社の工場との距離」(36%)の3つが特に多い。

(研究集積の効果)

筑波研究学園都市に見られるように,国立試験研究機関や民間企業の研究所などが多く集まることによる研究上の利点については,研究者のほとんどが肯定している。「先端科学技術研究者調査」によると,集積効果について「特にメリットはない」とする回答は8%に過ぎず,「研究者同士の知的触発が増える」(38%),「研究者間の交流の機会が増える」(36%),「情報収集がしやすくなる」(28%)などの効果を認めている。

(地方公共団体の対応)

これに対して,研究拠点を地元に誘致・新設する側になる地方公共団体の対応をみると,研究拠点の誘致に関してはそれほど重視していないように見受けられる。「地域科学技術行政連絡会議調査」の結果によると,都道府県が科学技術振興を図るために必要な条件に関する問いに対して「研究機関等の誘致」を回答している都道府県は少ないが,これは研究拠点の誘致の条件を満たすことが困難であるために,各都道府県は現実的な条件を優先させていることによるものと推測される。

科学技術庁が全国の都道府県を対象に実施した調査(回答40府県,以下「都道府県意識調査」という。)によると,各地方公共団体が属,する都道府県の科学技術振興のために必要な方策として,「公設試験研究機関の施設・設備の充実」(88%)を最も多く回答しており,公設試験研究機関の水準向上により公設試験研究機関を中心とした研究集積を図っていこうとしているものと思われる( 第1-2-41図 )。

これからの地域の科学技術振興のための施策・立案に当たっては筑波研究学園都市の例にみられるような研究集積,及び魅力的な中核となるべき優れた研究機関の設立・育成も参考としていく必要があろう。

第1-2-41図 地域の科学技術振興方策

(研究者が考える立地条件)

それでは研究者自身はどのように考えているだろうか。「先端科学技術研究者調査」によると,現地域における研究面での利点については研究者は,「研究情報にアクセスしやすい」(40%)を最も多くあげており,以下「研究交流が盛ん」(32%),「研究設備が整っている」(34%),「研究人材が豊富」(29%)と続いている。逆に「行政や本社との連絡がとりやすい」,「工場や支所との連絡がとりやすい」は比較的少ない。研究するうえで不便なところとしては,全体では「研究支援体制が不十分」(29%)が最も多く,とくに筑波地区の研究者の回答は50%に達しており,支援体制の強化が求められている。

将来,研究所を選ぶ条件として,生活面で重視する点としては「自然環境の良さ」が46%で最も多く,地域の自然環境に魅力を感じているものの,「生活関連インフラの整備状況」(25%),「教育環境の整備状況」(25%),「文化活動等の施設の整備状況」(24%)なども多く,これからは研究者の生活環境が立地条件として次第に重みを増してくるものと考えられる( 第1-2-42図 )。研究者の所属する研究拠点別にみてみると,「自然環境の良さ」はすべての地域で最も回答が多いが,東京・神奈川・大阪では「生活関連インフラの整備状況」と「教育環境の整備状況」が次に多いのに対し,筑波地区では「文化活動等の施設の整備状況」と「医療施設の整備状況」,その他の地域では「文化活動等の施設の整備状況」と「教育環境の整備状況」が多く,それぞれの地域間の差が現れている。

(地域移転に伴う生活環境の変化)

地域移動に関しては,特にこだわらないとしている研究者であるが,現実には移動前後において生活環境が大きく変化する事がありうる。例えば,概成時頃の筑波研究学園都市への移転直前・直後の研究者の活動・滞在時間の調査では,移転直後においては職場と自宅に滞在する時間が大幅に増加し,逆に都市的サービス施設への滞在時間や交際に費やす時間が大きく減少しているのが注目される( 第1-2-43図 )。このような変化は生活面,研究面,両面で影響を及ぼすことが懸念されるところである。

第1-2-42図 研究者が生活面で重視する点


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