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第1部   科学技術の地域展開
第2章  地域と共に発展する科学技術
第4節  地域における一般科学技術施策
2.  地方公共団体において策定された大綱等と科学技術施策


近年,地域における科学技術の重要性の認識が高まっていることを反映して,科学技術振興のための大綱や指針を策定する地方公共団体が増加し,平成4年4月現在で8都道府県が科学技術政策大綱等を策定している。

平成3年4月以降に策定された大綱,指針等としては,「北海道における科学技術振興の基本方針」,「富山県科学技術プラン」及び「山梨県科学技術政策大綱」がある。また,現在,山口県において,科学技術振興の基本方針について検討が進められている。

これら大綱・指針の内容については,主要な政策目標として1)地域住民の生活の質の向上,2)地域産業の高度化が共通的に掲げられているが,都道府県内の既存の産業構造,地域に立地している研究機関等の科学技術ポテンシャル等によって地域の特色がみられる。特に,近年の科学技術活動のグローバリゼーションを背景として,北海道,埼玉県,神奈川県,富山県,山梨県,大阪府,兵庫県においては,国際化の推進や国際社会への貢献等世界への情報発信基地としての地域づくりを基本目標の一つとしている。

これらの目標を達成するための科学技術施策として,研究開発関係機関等の整備・充実,研究開発型企業の誘致・育成,研究交流の促進,国際交流の推進,研究人材の育成,科学技術知識の普及啓蒙,科学技術情報の提供等がある。

科学技術関係経費を部局別の支出額で比較すると,農林水産系が4割,商工系が3割弱を占め,都道府県においては地域産業の活性化のための経費が7割近くを占めている。

以下では,主に科学技術庁科学技術政策研究所が平成4年8月にまとめた「地域における科学技術振興に関する調査研究」に基づき,都道府県及び政令指定都市の科学技術施策を記述する。

(1)研究開発関係機関等の整備・充実

地域における科学技術振興のために,公設試験研究機関等の再編整備や設備の充実,地方公共団体の出捐出資による第三セクターの整備,科学技術振興基金の設立等の事業が行われている。

地方公共団体の科学技術関係予算を施策項目別にみると,公設試験研究機関,公立大学等の研究機関への配分額が全体の68%を占め,割合として最も大きい。これらは主に公設試験研究機関,公立大学等の研究開発や試験研究機関の再編整備に支出されている。公設試験研究機関等の再編整備のために,都道府県で61事業が実施されているが,これらの多くは総合研究所やセンターの設立を図ることを目的としており,その他事業として研究機能を高めるための試験場の移転,第三セクターの活用のための検討等が行われている。

都道府県及び政令指定都市の出捐出資で整備されている第三セクター総数は財団法人,株式会社等を併せて121法人であり,これらは,自ら研究を行う法人と,研究を支援する法人に大別される。地方公共団体の1法人当たりの平均基金資本金額は財団法人等が16億円,株式会社が17億円であり僅差であるが,地方公共団体の負担率は前者が39%に対して,後者が16%であり差は大きい。これら法人に対する地方公共団体の支出は,基金資本金の負担額に加え,補助金,委託費等があり,平成2年度総額は約143億円になる。また,法人設立以来の基金資本金の負担額を累計すると677億円になる。

科学技術の振興を目的とした基金の設立については,都道府県において7基金,政令指定都市において2基金が設立されている。富山県においては研修指導,技術交流等のための技術振興基金(基金額:10.7億円)が設立されている。また,山口県は,平成3年度から平成5年度にかけて地域科学技術振興基金(基金額:10億円)を造成し,基礎的研究開発事業を行う計画を進めている。

(2)研究開発型企業の誘致及び育成

近年,内発型の民間企業の活力を活用して地域経済の発展を図ることが重要と考える地方公共団体が増加している。現在,研究開発型企業の誘致,育成のための事業として,都道府県において68事業,政令指定都市において9事業が進められている。

このうち,地域において研究開発を行う民間企業に対し,その用地取得,試験研究施設等の建設や機械設備の設置,研究開発等に要する資金の一部融資や補助金の交付等資金面の援助を行うものが全体の7割以上を占める。その他事業として,研究成果の企業化を支援するための研究中核施設や工業団地の整備等施設面の援助,地域の研究機関との情報交流の促進等が行われている。

都道府県別には,平成2年度において,大阪府が研究開発型企業振興財団の設立(117億円),千葉県が企業研究所立地促進基金の設立(70億円),秋田県が企業立地促進基金の整備(52億円),三重県が振興拠点地域基本構想推進基金設置事業(40億円),青森県が企業立地促進資金貸付け(29億円)等を行っている。

(3)研究交流の促進

地域の大学,国立試験研究機関,民間企業との連携を図り,お互いの知的触発やポテンシャル向上を図るため,地方公共団体は,公設試験研究機関を中心とした共同研究や技術指導,都道府県の出捐等による共同利用研究施設,研究交流支援センターの開放を通じて,地域における産学官の連携を促進している。

共同研究の推進,技術交流のためのフォーラムの開催など産学官の研究交流を促進するための事業として,例えば,栃木県が産学官共同研究事業・地域システム技術開発事業,福井県が産学官共同バイオテクノロジー研究推進事業・地場産業構造転換支援事業,静岡県が産学官共同研究開発事業,宮城県が新素材応用研究開発事業・地域システム技術開発事業を実施している。

共同研究を行っている公設試験研究機関は全体の7割以上であるが,1機関当たりの実施件数は3件以下の機関が大半を占める。共同研究の相手先は,分野によって異なり,衛生系では大学が最も多く,農林水産業系では公設試験研究機関が最も多く,工業系では民間企業が最も多い。

また,地元企業に対する技術相談や指導のための事業を通じて技術アドバイザー派遣,巡回技術指導,個別技術相談,セミナーの開催,情報誌の発行等が行われている。

さらに,民間の異業種交流を支援する事業として,都道府県で86事業,政令指定都市で8事業が実施されている。主な事業形態として,セミナーやフォーラムの開催等による情報交換の場の提供,異業種グループの研究開発活動に対する資金助成が行われている。

(4)国際交流の推進

地方公共団体で実施されている国際交流事業を通じて,地域の試験研究機関への外国人研究者の受入れ,科学技術分野における国際交流の拠点整備等が行われている。

外国人研究者の受入れのための優遇・支援措置を行う事業として,都道府県において20事業,政令指定都市において4事業が行われている。受け入れた研究者の出身国は中国,韓国等アジア諸国が多く,受入れ先は,地域の農業総合試験場,医療機関,産業技術総合研究所等である。また,先進国との交流は,主として超高温材料等先端科学技術分野の国際シンポジウムの開催を通じて行われている。

地域における科学技術分野の国際交流を推進するための拠点の整備事業として,都道府県において8事業,政令指定都市において3事業が行われている。一例をあげると,仙台市においては,国際学術都市及びコンベンション都市の建設に向けて,国際化推進の拠点施設として仙台国際センターの建設が進められている。

(5)研究人材の育成

研究人材の育成事業として,技術研修の実施や職業能力の開発,先端科学技術分野の研究者の支援等専門的技術分野における人材育成のための事業と,若手研究者の育成事業が実施されている。

専門的技術分野における人材育成のための事業として,バイオテクノロジー,新材料,オプトエレクトロニクス等最先端の技術修得を目的としたものや,ハイテクを必要としない研修目的のものが行われている。例えば,神奈川県が工学系大学長期公開講座開設事業・工業技術研修センター補助事業,千葉県,大阪府,広島県等が技術パイオニアの育成のための事業を実施している。また,研究者を対象にした事業としては,創造的研究開発を行う研究者の養成を目的とする青森県の地域研究者養成事業等がある。

さらに,将来の地域科学技術活動を担う若手研究者の育成のため,国内の研究機関に若手研究者を派遣し,留学・研修を行う事業,海外に派遣する事業が行われている。例えば,岡山県で技術パイオニア養成事業,愛媛県で技術開発リーダー養成事業,北海道で研究職・技術職を対象にした外国派遣研修が行われている。

(6)科学技術知識の普及啓蒙

地域住民の科学技術に対する関心度を高めるため,各地域に科学博物館が整備されている。平成2年現在,公立博物館は全国に387機関あり,うち自然科学系博物館は42機関で,全体の約11%に当たる。また,地方公共団体のうち,15都道府県及び6政令指定都市が公立の自然科学系博物館を有しており( 第1-2-39表 ),11県が計画中である。

また,青少年を中心とした科学技術知識の普及啓蒙事業として,都道府県において62事業,政令指定都市において11事業が行われ,青少年の創意工夫する心,科学する心の醸成に努めている。これらには,地域に生息する動植物の観察教室,天体観測会,青少年パソコン・ワープロ講座,科学フェスティバル等の開催,プラネタリウム・科学館の活用,映像教材の開発等の事業がある。

第1-2-39表 自然科学系博物館の所在地と設立年

さらに,住民に対して地域の科学技術行政に関する理解の醸成を図るための事業が,都道府県において46事業,政令指定都市において4事業が行われている。本事業を通じて,地域内で行われている科学技術活動に関する情報誌の発行,講演会・公開講座の開催,展示コーナーの設置,地域の試験研究機関の公開,科学技術功労者の表彰等が行われている。

(7)科学技術情報の提供

研究開発の成果を迅速,高度に活用するために不可欠な科学技術情報の収集や整理,検索しやすい形への加工,アクセスをオンライン化する情報ネットワークの整備等の情報提供事業が地方公共団体を主体として進められている。

現在,このような情報提供事業として,都道府県において40事業,政令指定都市において3事業が行われている。このうち,JOIS,PATOLIS等外部の情報サービスを活用したオンライン・サービス事業が16事業行われている。また,「ハイテクネットとうほく」,「ハイテクネット石川」,「けいはんなネット」,「オリオンシステム」(大分県)など地域研究情報ネットワークの整備,活用等も行われている。

さらに,地域の内外で得られた研究開発情報のデータベース化等のための5事業が行われている。科学技術文献の閲覧,複写,貸出,技術情報誌の発行等による一次情報の提供サービス事業も実施されている。


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