ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
第1部   科学技術の地域展開
第1章  科学技術の地域への新展開
第2節  国の科学技術政策の地域展開
3.  今後の科学技術政策における地域の重要性


以上,現在進んでいる国の研究拠点の地域展開を具体的に見てきたが,前項に述べた理由により研究拠点の地域展開は今後も一層進んでいくものと思われる。このように世界的にも数少ない優れた先端研究設備を持つ研究拠点が地域に所在することは,当然のことながら地域の研究水準の向上に大きく役立つものである。しかし,一方また,国の研究拠点が地域に設置されることは地域の優れた研究者が国の研究に参加していく機会を増やすことともなり,国の研究が幅広い研究者によって支援されていくことともなる。以下では,科学技術政策の地域での展開を考えてみることとする。

(我が国の科学技術水準の向上)

前項では国の研究拠点の地域展開を主に眺めたが,国の科学技術政策の推進の観点から見たとき,国の研究拠点の有無を問わず,地域で高度で優れた研究が実施されていくことは,我が国全体の科学技術水準の向上の意味からも好ましいことである。

国においては従来より,基礎研究の推進や国際交流の促進を目的として国立試験研究機関の活用,大学との協力,民間への助成や共同研究など各般の施策を講じてきたが,公設試験研究機関等の地域の研究拠点の参加はまだ少ない。研究者の時間的余裕や財政的負担から困難な点も多いと考えられるが,研究水準が十分であれば地域の研究拠点がこれらの国の施策に参加することを制限するものではなく,現に近年国の高度な基礎研究プロジェクトに積極的に参加する地域研究拠点も出ている。我が国の科学技術水準の向上のためには,従来の大学,国立試験研究機関,特殊法人や大規模な民間企業研究所だけではなく,今後,地域の研究拠点の積極的な参加が望まれるところである。またこうした機会を通して,地域の研究拠点が国内のみならず海外へも通用する研究拠点となることも可能である。

科学技術会議の諮問第18号「新世紀に向けてとるべき科学技術の総合的基本方策について」に対する答申(平成4年1月)で卓越した研究指導者,最新の研究情報,優れた研究施設・設備,充実した研究支援体制を有する中核的な研究機能としてのセンター・オブ・エクセレンス(以下COEという)を育成していくことを新たな課題としてあげているが,地域においてこのようなCOEを生みだすことも可能である。

(人間・社会との調和と科学技術の普及啓発)

科学技術政策大綱の基本方針の目標の一つとして「安心して暮らせる潤いのある社会の構築」をあげており,また重点施策の一つとして人間・社会との調和の確保をあげている。しかしながら,人間の生活や社会的活動はそれぞれの居住する地域において行われており,このような問題の解決のための科学技術の推進に当たっては,地域の状況やニーズを知悉した地方公共団体の協力を得つつ,進めていくことが必要である。また近年,先端技術を駆使した福祉・医療機器など高度な科学技術を利用した研究成果も登場しているが,これらも地方公共団体などを通じて国民が恩恵を受けることが多い。

また,産業界等での研究者・技術者の需要が高まる一方,供給量は大きく下回り,今後我が国では科学技術関係の人材需給が逼迫するとの予想もある。また,科学技術関係の人材不足は18才人口の大幅減少とあいまった理工系大学入学志願者の減少にも起因するという指摘もある。このような若年者の科学技術離れに対しては,科学技術に親しむ機会を与え,夢と希望を青少年が抱けるようなものとすることが必要である。特に最近の調査では,我が国の若年層を中心に科学技術に対する無関心層が増え,欧米各国と比較しても多くなっている。このような状況の中では国民の科学技術に対する親しみと理解を増進する努力が肝要であるが,そのための施策の実施に当たっては地方公共団体の協力を得つつ,進めていくことが極めて重要である。

これら地域の住民のニーズを把握し,住民の科学技術に対する親しみや理解を得ていく施策の実施に当たってはあらゆる地方公共団体の協力を得つつ,進めていくことが必要ではあるが,比較的情報やサービスの提供機会も多く,研究機関,科学技術関係の博物館等も多い東京都等の大都市圏地域にあっては施策の選択肢も多いのに対し,特に大都市圏以外の地域にあってはこれらの条件が十分整っておらず,これらの施策を実施していくための地方公共団体の協力の持つ重要性が極めて高い。このように今後科学技術政策を推進していくに当たっては地域性を十分配慮した施策が講じられる必要がある。

(地域の振興)

最後に,国の科学技術の振興は,国全体の経済,社会の発展や国民生活の向上を目的とするものであるが,その中には当然地域の発展・振興も含まれている。このような観点から,従来より地域における研究開発の推進,研究開発機能集積の支援,情報基盤の整備等の施策が講じられて来ているところである。しかしながら,地域の振興を目的とする科学技術の振興は国の観点からのみ政策を展開するのではなく,地方公共団体が中心となりつつ側面から国が協力していくという考え方の下で推進されてきたところである。

このような観点から,地域振興のための科学技術政策については,前述の国の研究拠点の地域展開,科学技術水準の向上,人間・社会との調和等の政策とは別に分析することが適当である。このため,以下第2章の中で分析を進めることとする。


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ