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第1部  科学技術活動のグローバリゼーションの進展と我が国の課題
第3章  地球規模での転換期にのぞむ人類の科学技術に対する期待-我が国にとっての課題と展望日
4.  内なるグローバリゼーションの実現-我が国の国内の研究開発活動を世界の研究開発活動の真の一員とすること-


まず,第一の課題である「我が国の国内の研究開発活動を世界の研究開発活動のネットワークの真の一員とすること」は,我が国の基礎研究を充実させ,発展させていくため,我が国の研究費や研究人材,研究設備,研究支援や国際交流支援に関する体制など広い意味での研究環境を,世界的に通用するレベルに引き上げていくことをその狙いとしている。これは別の表現を借りれば「内なるグローバリゼーション」の実現を目指した努力ともいえる。

我が国はこれまでの欧米先進国のように,あるいはそれ以上に,研究開発,特に基礎研究に関する成果が自然と海外に流れ出していくような状況を作り出していく努力が必要である。そのためには我が国の研究機関は,海外の研究者が是非とも来日して研究したいと望むような,国際公共財ともいうべき人類の知的ストックの創出に関するメッカとして機能するようにならなければならない。基礎研究についても,これまでのように将来における産業の発展のための技術の芽の探索という観点のものより,真理の探究のための研究,あるいは地球環境問題の解決に関する科学技術のような人類と地球の共存のための科学技術というようなものに真剣に取り組む必要がある。このような分野の基礎研究に関しては,我が国の科学技術活動のグローバリゼーションがかなり進んできたとはいえ,いまだ世界において一流といえるような情報発信の一翼を担っているとはいえない。このことは研究者自身が,情報交換や共同研究を行うに当たっての最大の阻害要因として,研究者の国際的なネットワークに組み込まれていないと答えていることと軌を一にしている。

このような状況から脱却するための第1の懸案事項が「公的部門の研究開発活動の充実」であることは論をまたない。

第2は,「人材の確保」である。高い水準の科学技術を支えていくためには多くの優秀な人材が不可欠であるが,昨今,大学の理工系学部への進学希望者の減少に見られるように若者の間で科学技術離れが進んでおり,若年層の21世紀初頭における急速な減少と相まって我が国の科学技術の今後の発展に大きな不安を投げかけている。このような問題は適切な施策を講じても効果が現れるまでには相当の期間を要するので,早期に対応することが求められている。科学技術は人類の発展を支えていく非常に重要な役割を担っており,その創造的活動の素晴らしさをアピールしていく必要がある。特に,新たな真理の発見や発明をしたときの新鮮な喜びや感動といった研究者だけが味わえる経験を次の世代に伝えていく努力を怠ってはならない。

第3に,「研究環境」についても相応の努力を払っていかなければならない。我が国の研究環境は欧米と比較すると明らかに劣っているが,それにもかかわらず我が国の基礎科学の水準が上昇してきたのは,個々の研究者の献身的な努力あるいは研究者間の熾烈な競争の結果である。しかしながら,個々の研究者の個人的な努力や忍耐にあまりに多くを依存することは,社会全体のあり方として好ましいものとはいえない。このような意味では,人間の創造的な活動に重きを置いていない我が国の近年の価値観を転換することが迫られており,我が国の研究者が国際的にみて遜色のない環境の中で研究を行えるようにしていく必要がある。

第4は,「外国人研究者の受入れの促進とそのための環境整備」である。我が国の国立試験研究機関,大学等における外国人の受入れについては,1988年に新日米科学技術協力協定が締結されて以降の我が国政府の積極的な政策には評価できるものがある。この数年の初期的な経験を経て,これらの研究機関の内部には,まさにこれから訪れようとしている日本人のみから成り立つ社会とは異なる社会に対応できるような変化の兆しも出てきている。一方,外国人研究者を我が国に受け入れていくためには,研究者の配偶者の就職,子供の教育等をも含めた総合的な受入れ態勢の整備が必要である。そのような生活の基盤をどの程度整備しうるかが今後の大きな課題となってこよう。また,外国人研究者を受け入れると,受入れを担当する日本側研究者の負担が増えて研究の遂行に支障を来すことがあるが,欧米諸国の大学などには外国人の面倒をみる部局が存在する。我が国においても,研究機関の所在する地域におけるヴォランティアの組織化なども含め,外国人研究者の受入れ態勢の整備に本気で取り組まなければならない。日本人の英語能力,特に会話能力の向上は,研究者自身にとっても,また外国人研究者の生活支援を行うものにとっても長期的には大きな課題である。


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