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第1部  科学技術活動のグローバリゼーションの進展と我が国の課題
第2章  科学技術活動のグローバリゼーションの推進
第4節  科学技術活動のグローバリゼーションを支える共通の価値観と共通規範
2.  人類と地球の共存



(1) 地球環境問題

地球環境問題に関しては,科学技術を経済発展の原動力あるいは真理の探究を目指す文化のひとつとする見方というより,人類と地球の共存のための手段としてとらえる必要がある。従って,地球環境問題に関する研究開発は,大局的には協力が基本となる。地球環境問題に関する国際共同研究を効率よく分担して進める上からも各国の公的研究機関を中心に協力をより一層強化すべきである。

(地球環境観測に関する国際協力の推進)

地球環境変化の観測は,各先進国が独自に実施しているほか,国連の国連環境計画(UNEP)が国際機関,各国政府の調整・協力を行っている。また,世界気象機関(WMO)が世界気候計画の大きな柱として,国際学術連合(ICSU)と共同で世界気候研究計画(WCRP)を推進しており,その中で熱帯海洋及び全球大気変動研究計画(TOGA;熱帯海洋と大気大循環との相互作用の研究),世界海洋循環実験計画(WOCE;海洋大循環の実態と気候形成における海洋の役割の研究)等が既に国際協力によって実施されている。今後とも国際機関等を中心とした多国間協力の国際共同研究が重要な役割を占めてくるとみられることから,こうした国際共同研究をさらに拡充・強化していく必要がある。

この場合,その研究内容に応じて,各国が観測を地域的に分担して行うほか,各国のそれぞれ進んだ技術を受け持って分担することなどにより,効率的な観測体制をとることが必要である。

(開発途上国をはじめとした研究開発成果の普及)

地球環境問題への対策技術面からの対応として,原子力,自然エネルギー等の石油代替エネルギー技術,エネルギーの効率的利用技術,フロン等の代替物質の開発に大きな期待が寄せられ,先進国を中心とした研究開発がなされている。しかし,地球環境問題に関連した技術の円滑な普及や研究成果の国際的流通,移転についての制度の整備が今後の課題になってくるとみられる。特に,開発途上国は,そうした技術の安価な普及を期待しており,費用の面などから技術の導入が困難であれば,環境保護の技術の使用を控えることにもなりかねない。

そのような事態が起こらないよう,先進国で開発された地球環境問題に関連した技術を開発途上国が利用を容易にする方策が求められている。

(科学技術に関し世界的に求められる努力)

既に,フロンについては1990年6月にモントリオール議定書に定める削減計画の調整がなされ2000年までに特定フロンが全廃されることとなり,地球温暖化についても気候変動に関する政府間パネル(IPCC)において,科学的知見,環境的・社会経済影響,対応戦略が検討され,来年6月にブラジルで開催される環境と開発に関する国連会議(UNCED)までに作成することを目指して気候変動枠組条約に関する交渉会議が進められるなど環境悪化の原因に対する国際的なルールが形成されようとしている。こうした目標の設定のためには,信頼性の高いデータの蓄積と科学的予見が必要であるが,地球環境問題については科学的に解明されていない点が多く,国際的な協力の下,科学的な問題解明の努力を進めていかなければならない。

人類生存の危機に対し,国内産業技術の育成といった観点とは別に,国際的視点での研究者の意見を反映した政策の決定,対策技術の開発のための努力を推進すべきである。特に,公的研究機関においては,各国それぞれが科学的データ,進んだ技術を結集し,総合的な科学的知見の創出を積極的に行う必要があり,そうした環境をつくりあげる努力が国際的に求められよう。

また,かつて我が国企業が,厳しい自動車の排気ガス規制による制約を乗り越えたように,対策技術の開発においては,企業も重要な役割を果たすと期待されることから,民間の技術開発を促しつつ地球環境問題解決に向けた現実的施策が必要であり,そのためには,国によって異なる規制等の標準化や先進国が目標設定,具体的対策の推進等においてリーダーシップを発揮することなどが有効な方策になるとみられる( 第1-2-26図 )。

第1-2-26図 民間企業が地球環境問題に対し貢献するために 変化すべき国際環境

さらには,環境にやさしい経済,生活の仕組みをつくりあげていくための科学的知見の普及を進め,化石エネルギーの消費,極限技術,今後開発される新物質が環境に及ぼす影響評価の手法の確立,評価の実施が,地球において共存する各国の責務としてなされなければならない。

(我が国の役割)

我が国は,国内においては国際的にも高いレベルの研究開発能力を石油代替エネルギー,エネルギーの効率的利用,フロン代替物質の開発,二酸化炭素の固定化等個別の技術開発に活用していくとともに,オゾン層の破壊,地球温暖化の現象解明及び環境や社会経済への影響評価等,地球環境問題に関する総合的研究課題については国際的な研究協力を進めていくことが有効と考えられる( 第1-2-27図 )。

第1-2-27図 地球環境の研究開発に当面重点を置くべき方向

そのためには,各国の進んだ科学技術を結集しての協力も有効ではあるが, 一方では,巨大な地球環境の観測には,各地点の観測結果の集積が必要であるとの観点から各国の地道な基礎的観測の努力も必要である。二酸化炭素濃度の観測など地球環境に関するデータは,国際機関のほか米国が古くから観測を実施し,蓄積してきたものがほとんどであったが,我が国としても,地球環境の基礎的観測について公的研究機関の活動をはじめとした積極的な対応を進めていかねばならない( 第1-2-28表 )。

また,国際的にも高いレベルにある我が国民間企業の技術力を生かした環境問題への対処も大いに期待されるところである。本年4月には社団法人経済団体連合会が経団連地球環境憲章を発表し,また,「民間企業研究活動調査」によると地球環境問題に対処すべく,48%の企業が研究開発の実施又は検討をしているなど我が国民間企業の地球環境問題に対する関心は高まりつつある。国民への正しい知識の普及などの面での施策が待たれている。

第1-2-28表 バックグラウンド大気汚染観測網観測地点(BAPMON(WMO)による二酸化炭素観測点)


(2) 生存基盤の確保

科学技術の成果ばかりでなく,人類により創造された全てのものの価値は,それを利用する者の手に委ねられている。科学技術活動のグローバリゼーションが推進されていく上でも,人類の生存基盤をより強固なものとするよう科学技術を活用していくことは,万人が守るべき共通規範といえよう。

例えば,核兵器の拡散を阻止することは,世界の平和の維持,人類及び生物の生存基盤の確保にとって重要な課題であり,核兵器の不拡散に関する条約(NPT)に基づく国際原子力機関(IAEA)の保障措置は,そのために国際社会が作り出した一つの手段である。IAEAの保障措置の目的は,平和利用のために使われている核物質が核兵器に転用されるおそれがある場合には,これを適時に探知するとともに,早期探知の危惧を抱かせることによりそのような転用を抑止することにあり,IAEAの査察を受けること等により核物質が平和目的以外に利用されることのないよう国際的に管理されている。

我が国は,原子力基本法に基づき原子力の研究,開発及び利用を平和の目的に限り行うとともに,1976年にNPTを締結し,1977年にIAEAとの間で保障措置協定を締結することにより,国内保障措置制度を前提としたIAEA保障措置を受け入れている。さらに,我が国はNPTを締結していない国や締結していても保障措置協定を締結しておらず,IAEA保障措置を受け入れていない国に対し,NPTの締結,保障措置協定の締結及びその履行を求めている。

また,ロケット技術等が核兵器運搬システムに利用されるようになれば,国際的な緊張が高まることから,搭載能力及び飛距離が一定値を上回る核兵器運搬システムに寄与しうる関連機材や技術を対象として,ミサイル関連技術輸出規制ガイドラインが作成されているが,我が国はそのガイドラインを各国が採用すべく要望している。

さらに,生物や化学に関連した技術の輸出で,生物兵器や化学兵器の拡散につながるおそれのあるものについては規制を強化する必要がある。また,本年9月の生物兵器禁止条約再検討会議において,同条約の信頼醸成措置の強化と拡大を図るとともに実効的な検証措置を講ずる余地について検討することになっており,同条約の強化が期待されている。


(3) 開発途上国との協力

開発途上国における科学技術振興にとって,政府開発援助における技術協力,さらには現地への工場の設立等による製造業の直接投資,開発途上国からの製品輸入の促進の効果が大きいものと考えられるが,開発途上国において科学技術が定着し,社会・経済の発展の原動力となるためには,数多くの優秀な研究者の育成が必要である。どのような場合であっても留意すべき基本的な姿勢は,先進国による一方的,一時的な援助に陥らないことであって,開発途上国側の真の自立意志を尊重し,開発途上国の自立的・持続的発展の自助努力に対する協力を行っていくことである。開発途上国への協力の強化は,我が国に求められている国際貢献策の一つであり,その中でも,科学技術面での協力は,人材の育成などにより現地の発展に寄与するものであるので,その拡充が必要である。

開発途上国の研究技術者の受入れ,開発途上国への研究者等の派遣については,相手国の研究開発基盤の向上という意味でも重要であるので,現地の実情を十分把握しつつ協力していくことが求められている。

開発途上国協力は,政府のみならず民間企業の努力が必要であることはいうまでもない。我が国が地球社会の一員として現地から歓迎され,尊敬を得るためにも,現地設立の日本企業が現地職員を幹部として積極的に登用し,現地の発展と日本企業の発展を調和させていくことが求められている。


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