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第1部  科学技術活動のグローバリゼーションの進展と我が国の課題
第1章  グローバリゼーションの進展
第2節  科学技術活動の地球規模化
2  政府の施策にみる国際交流



(1) 研究者等の海外派遣と受入れ

我が国の国立試験研究機関から海外に派遣された研究者の数は,1984年度の1,156人から1989年度の2,303人へと,この5年間で2.0倍,国立試験研究機関への外国人研究者の受入れは217人から622人へと,2.9倍になっている( 第1-1-31図 )。

派遣と受入れの比率をみると,1984年度には5.3であったものが,1989年度には3.7と相当の改善がみられてきており,国立試験研究機関への外国人研究者受入れの努力が見られる。

文部省関係事業により海外に派遣された大学等の研究者の数は1984年度の3,421人から1989年度には6,651人へと,この5年間に1.9倍,大学等への研究者の受入れは2,066人から3,537人へと,1.7倍になっている( 第1-1-32図 )。

第1-1-31図 国立試験研究機関における研究者交流

第1-1-32図 文部省関係事業による研究者交流

研究者の国際交流はこのように着実に増えている。我が国への受入れは近年相当に増えているが,海外への派遣も急激に伸びているため,派遣が受入れをかなり上回るという状況が続いている。また,派遣先では先進国,とりわけ米国が多い。受入れでは中国等の開発途上国が多いが,近年は先進国も多くなってきている。

我が国からの研究者の派遣が多いのは,国際会議等の国際的な研究集会への参加などの短期間の派遣が多いためであって,研究目的の交流かどうかを判断するためには,ある程度の期間以上滞在した研究者の数を比較することが有効であると考えられる。このような観点から1989年度の我が国の国立大学及び国立試験研究機関における日米間の研究者交流をみると,短期訪問を含む全ての研究者交流では,受入れ(米国から日本)が1,966人(国立大学:1,847人,国立試験研究機関:119人),派遣(日本から米国)が10,461人(国立大学:9,657人,国立試験研究機関:804人)でその比は5.3(国立大学:5.2,国立試験研究機関:6.8)であるが,滞在期間1カ月以上の研究者交流では,受入れが657人(国立大学:607人,国立試験研究機関:50人)であるのに対し,派遣は1,574人(国立大学:1,457人,国立試験研究機関:117人)と大幅に減って,その比は2.4(国立大学:2.4,国立試験研究機関:2.3)と出入国管理統計による研究技術者交流の値13.2と比べて相当均衡した値となっており,研究機会の提供という観点からは我が国もかなりの努力をしていることがうかがわれる( 第1-1-33図 )。

近年の我が国は,国際交流,特に外国人若手研究者の招へいを重点施策としており,1988年度には科学技術庁,文部省,通商産業省がフェローシップ制度を設けている( 第1-1-34表 )。

さらに,1990年度からは,米国の自然科学系大学院に在学している学生を対象に,我が国の国立試験研究機関等における研究に関する約8週間の研修等の機会を提供するサマーインスティテユートが実施されている。1990年度には25名,1991年度からは民間の研究機関への受入れも行われるようになり49名を受け入れている。

第1-1-33図 国立試験研究機関及び国立大学における日米間の研究者交流

我が国の国公私立のすべての大学院の外国人学生数(理学,工学,農学,保健の計)は1985年度の3,111人から1990年度には6,470人へと,この5年間に2.1倍となっている。全学生数に占める割合では,特に農学が高く,1985年度の10.7%から1990年度には18.9%を占めるまでになっている。また,工学でも1990年度には11.1%という値になっている( 第1-1-35図 )。

第1-1-34表 主なフェローシップ制度の概要

第1-1-35図 大学院の外国人学生数

(研究交流促進法)

国立試験研究機関等を中心として,産学官あるいは国際的な研究交流を一層積極的に推進するため,1986年5月に「研究交流促進法」が制定された。これにより,外国人を国立試験研究機関において研究部長,研究室長クラスの研究公務員としても任用し,うるよう措置するとともに,研究集会への参加,国際共同研究に係る特許権等の無償又は廉価使用,国際共同研究に係る損害賠償請求権の放棄を可能にする措置等が講じられた。

研究交流促進法により研究公務員に任用された外国人の数は,1991年7月現在で9人となっている。また,職務専念義務の免除による研究集会参加(所属する試験研究機関等の研究業務の運営に支障がないこと等の要件を満たす場合,科学技術に関する研究集会への参加が認められる)は累計(1991年1月1日現在)で11,568人(外国2,867人,国内8,701人)となっている。


(2) 国際共同研究

1) 我が国の主唱する国際共同研究プログラム

(ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム)

これからの科学技術の発展に向け,多くの可能性が期待できる生体の持つ優れた機能の解明のための基礎研究を,国際的な枠組の下に推進しようとするヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム(HFSP)は,1987年のベネチア・サミットにおいて我が国が提唱したものであり,1989年にはフランスに実施主体である国際HFSP推進機構(HFSPO)が設立されている。

本プログラムでは,研究グラント事業(国際共同研究チームへの研究費の助成),フェローシップ事業(国外で研究を行うための旅費,滞在費の助成),ワークショップ事業(国際的な研究集会開催の助成),を行っている。本年3月のHFSPOの発表によると第2事業年度(1990会計年度)助成対象者は,研究グラント事業では32件139人,長期フェローシップでは90人となっている。長期フェローシップによる日・米・欧での助成対象研究者の地域分布をみると,欧州から米・加での研究を希望する研究者が32名と最も多く,次いで日本から米・加へが20名,米・加から欧州が13名と欧州と米・加の間での交流が中心となっており,日本への研究者は欧州からの2名のみとなっている( 第1-1-36図 )。

第1-1-36図 HFSP長期フェローシップの助成対象者

(新技術事業団国際共同研究事業)

我が国の産学官の研究機関と海外の研究機関がそれぞれの研究能力を結集して行う国際共同研究は,個々の研究機関による単独の研究では実現しえない高度な成果が期待でき,我が国にとっても,相手国にとっても,極めて有意義なものである。新技術事業団の国際共同研究は,我が国の得意な研究分野と外国の得意な研究分野とをそれぞれ持ち寄って一体的に国際共同研究を実施するものであり,両国の高い研究活力を融合し,革新的な科学技術の芽を創出し,得られた新たな知見を広く世界に公表することにより国際的に貢献し,また,両国の研究交流を促進し,科学技術の発展を図るものである。

(知的生産システム(IMS)国際共同研究)

通商産業省では,知能化された機械と人間の融合を図りながら,受注から設計,生産,販売までの企業活動全体を柔軟に統合・運用し,生産性を向上させる次世代の高度生産システムの構築を,日・米・欧等の先進工業国の産学官による国際共同研究によって推進することとしており,1991年度には,世界各国の指導的研究者等により国際的にフィージビリティ・スタディが実施されることになっている。

2) 国立試験研究機関,大学等における国際共同研究

我が国の科学技術に関する最高の審議機関である科学技術会議の方針に沿って科学技術の振興に必要な重要研究業務の総合推進調整をするための経費として1981年度に科学技術振興調整費が創設され,総合研究,省際基礎研究,個別重要国際共同研究などにより国際共同研究が国立試験研究機関を中心として行われている。また,1991年度には重点国際交流制度が創設され,我が国と海外の研究者が特定の分野において直接意見交換を行うワークショップが開催されることとなっている( 第1-1-37表 )。

また,各省庁においても,厚生省を中心としたアジア地域にまん延している疾病に関する日米共同研究,農林水産省熱帯農業研究センターでの熱帯・亜熱帯地域における農林畜産業に係る試験研究,通商産業省での国際産業技術研究事業(ITIT事業)による鉱工業技術分野での開発途上国との技術移転を目的とした研究,郵政省通信総合研究所でのVLBI(超長基線電波干渉計)観測システムによる地殻プレートの運動解析の研究など数多くの国際共同研究が行われている。

第1-1-37表 科学技術振興調整費による国際研究交流

一方,大学等における国際共同研究には,政府間協力協定等に基づく国際共同研究,国際学術連合会議(ICSU)提唱による国際共同研究,ユネスコを通じた国際共同研究,科学研究費補助金「国際学術研究」による国際共同研究,日本学術振興会を通じた国際共同研究などが活発に行われている( 第1-1-38表 )。

第1-1-38表 大学等における主な国際共同研究

3) 我が国の基礎研究制度への外国人研究者の参加

新技術事業団の創造科学技術推進制度は,産学官及び海外から参加した優れた研究者の発想を生かし,基礎的な研究から今後の科学技術の源流となる新しい思想を生み出しつつ,技術革新の芽を生み出すことを目的とする「人」中心の新しいシステムである。また,この制度への外国人研究者の参加は数多く,1991年7月現在,延べ21カ国から76人の外国人研究者が参加しており,参加研究者全体の14%に上っている。

フロンティア研究システムは,従来の研究組織・体制を超えて多分野の研究者を結集し,国際的に開かれた体制により21世紀の技術革新の根幹となるような新たな知見の積極的な発掘を目指して,1986年に理化学研究所に設けられたものである。1991年7月現在,4研究分野,14研究チーム体制で研究を実施,15カ国から34名の外国人研究者が参加しており,総参加研究者の16%になっている。

また,新エネルギー・産業技術総合開発機構においては,国際共同研究助成事業として複数国籍の4名以上の研究者から構成される国際共同研究チームに対して,その研究活動にかかる資金の助成等を行っている。この事業が開始された1988年度から1990年度までに18の研究テーマが助成対象となっており,参加研究者は延べ93名(うち外国人研究者は7カ国50名)となっている。

4) 我が国の研究プロジェクトへの海外民間企業の参加

通商産業省の次世代産業基盤技術研究開発は,次世代産業の確立に必要不可欠な基盤技術分野において,革新的・基盤的であり,研究開発リスクが高く,かつ我が国として研究開発に早期に着手する必要があるテーマを取り上げ,産学官の連携の下に研究開発を行っている。このうち,「非線形光電子材料」及び「機能性蛋白質集合体応用技術」研究開発プロジェクトには海外の民間企業が参加している。

また,同じく通商産業省の大型工業技術研究開発制度(大型プロジェクト)は,国民経済上重要かつ緊急に必要とされる革新的かつ先端的な大型工業技術に対し国が所要資金を負担し,産学官の連携の下に研究開発を実施するものである。このうち,「超音速輸送機用推進システムの研究開発」に海外民間企業4社が参加している。

今後,このような海外民間企業の我が国の研究プロジェクトへの参加は増加するものと思われる。


(3) 研究拠点の海外設立

海外に設立された研究拠点としては,古くは1957年に設置された南極昭和基地があり,オーロラの観測,海洋生物の生態系の解明のための研究などが行われてきている。

最近では,文部省の国立天文台が,米国ハワイ島に大型光学赤外線望遠鏡を設置することとしており,1991年度からその建設を進めている。

また,新技術事業団の国際研究交流促進事業の国際共同研究では,1989年度から開始された「新素材の原子配列設計制御」のプロジェクト,イギリスのケンブリッジ大学及びロン・ドン大学インペリアルカレッジで行われており,1990年度に開始された「微生物進化」のプロジェクトは,米国ミシガン州立大学で研究が行われている。


(4) 国際機関への協力

国際エネルギー機関(IEA)が実施している国際協力への主要国の参加状況では,我が国は米国,スウェーデン,カナダ等とともに多くなっている( 第1-1-39表 )。これは,エネルギー問題が我が国にとって死活問題であるということが背景にはあるものの,積極的な国際交流によりエネルギー関連技術の開発を行うという姿勢がうかがわれる。

第1-1-39表 国際エネルギー機関(IEA)の研究開発協力実施協定への主要 国の参加状況

また,我が国は,国連教育科学文化機関(ユネスコ)への予算分担が世界,最大になっているなど,国際機関への資金協力には積極的であるが,人材面での協力は遅れている( 第1-1-40表 )。例えば,国際原子力機関(IAEA)への貢献については,我が国の予算分担率は12%で第3位であるが,人材協力では3%程度で第8位にとどまっている。この原因としては,言葉の問題の面もあるが,国際機関での勤務年数が比較的長く,日本国内の勤務ローテーションとかみ合わない点が大きい。今後の我が国の国際貢献が本格的になっていくには,派遣職員の処遇についても検討し,国際機関への人的貢献を果たしていかなければならない。

第1-1-40表 国際機関における資金協力及び人材協力


(5) 政府開発援助による開発途上国協力

我が国は,政府開発援助(ODA)の充実を図るために1988年6月に,ODAの対GNP比の着実な改善を図ること,後発開発途上国へ)の援助の一層の無償化を図ること,技術協力を拡充すること等を骨子とした第4次中期目標を閣議決定している。

我が国は,この中期目標に向けてODAの拡充等に着実に努めており,供与額では1989年に世界第1位となるなど,トップクラスの援助国となり( 第1-1-41図 ),資金援助を除いた技術協力でみても世界第4位となっている( 1-1-42図 )。

第1-1-41図 OECD開発援助委員会加盟国の政府開発援助額

第1-1-42図 政府開発援助における技術協力費


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