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第1部  科学技術活動のグローバリゼーションの進展と我が国の課題
第1章  グローバリゼーションの進展
第2節  科学技術活動の地球規模化
1.  我が国の科学技術の位置付けと指標でみる国際交流



(1) 科学技術レベルの国際比較

最近,各国政府は科学技術の重要性を認識し,科学技術政策を重点的に推進しており,この一環として,科学技術レベルの国際比較への関心が高まっている。米国においては,商務省や国防省が今後の有望と考えられる技術や国防関連の重要技術の国際比較を行い,これらの結果を科学技術政策に反映しようという動きがある。

ここでは,科学技術活動のグローバリゼーションの現状について分析する前に,基礎研究及び技術のそれぞれにおいて,各国がどの程度のレベルを有しているかを比較検討する。

1) 基礎研究レベルの国際比較

基礎研究レベルの国際比較としてしばしば引き合いに出されるのは,ノーベル賞の受賞者数である。ノーベル賞受賞者数が最も多いのは米国で,全体の4割を占める。次いで,イギリス,ドイツ,フランスと欧州諸国が続くが,日本は第12位で受賞者数はわずか5名にとどまっており( 付属資料20参照 ),これを基に日本人には独創性が乏しく,基礎研究も弱いとの議論がなされてきた。ノーベル賞受賞者数は,基礎研究レベルの一つの比較指標ではあるが,過去の業績について授与されるため,現在における基礎研究レベルを比較する指標としては必ずしも適当でない。

現在の基礎研究レベルを客観的に評価することは困難であるので,ここでは,研究者に対する意識調査という形で基礎研究レベルの国際比較を行う。日本人研究者を対象として,基礎研究レベルの日米欧の比較調査を行った。科学技術庁が1991年5月にライフサイエンス,物質・材料,情報・電子及び海洋・地球科学の各分野における産学官の研究者1,012人(回答531人)に対して実施した「平成3年度先端科学技術研究者に対する調査」(以下,「先端科学技術研究者調査」という。)によれば,ライフサイエンス,物質・材料,情報・電子及び海洋・地球科学の全ての研究分野において,米国が優位と認識されている。これらの基礎研究分野の中で,特にライフサイエンス分野及び海洋・地球科学分野で米国が優位と認識している研究者が多い。3年前の調査では,1課題が同等である他は全ての課題で米国が優位であったが,今回は3課題では同等,他は米国優位となってきており,この3年間で日本の基礎研究レベルは若干上昇しているといえよう( 第1-1-4表 )。

第1-1-4表 基礎研究レベルの日米及び日欧比較

西欧との比較においては,3年前の調査では,日本が優位なものは4課題で,西欧が優位なものは6課題,同程度のものは2課題であったが,今回は日本優位2課題,西欧優位2課題,同等8課題となり,全般的にみると,3年前に西欧が若干優位であったが,現在では互角に転じたといえる。研究分野別では,ライフサイエンス分野で西欧優位,物質・材料分野及び情報・電子系分野で日本やや優位,海洋・地球科学分野で同等という結果になっている。

3年の間に日本の基礎研究のレベルは国際的にやや向上しているといえる。この要因は,我が国の研究者の努力に負うところが大である。「先端科学技術研究者調査」において,「我が国は基礎研究を通じて,新しいコンセプトや新しい研究分野を創出するようになると思いますか」との質問に対して,「なると思う」と回答した研究者は63%であり,「あまり期待できない」及び「できないと思う」の合計32%を大きく上回った( 第1-1-5図 )。日本人研究者の基礎研究への意欲の高さがうかがわれる。

第1-1-5図 我が国は新しいコンセプトや新しい研究分野の創出が可能が

2) 技術レベルの日米比較

技術の日米比較では,日本の実力はどうであろうか。

1990年春,米国商務省は,今後重要となってくると考えられる新規有望技術として12の技術を選び,米国の専門家にインタビューし,現在の技術レベルと2000年に向けての動向について日本及び西欧と比較した結果を発表している。これらの新規有望技術の国際比較について,日本人研究者はどのように判断しているのであろうか。「先端科学技術研究者調査」において,米国商務省の調査と同じ技術項目について日米の比較調査を行った( 第1-1-6表 )。

米国商務省の調査では,現在において日本が優位なもの5課題,米国が優位なもの6課題,同等が1課題である。一方,今回の科学技術庁の調査では,日本の技術レベルが優位なもの3課題,米国が優位なもの4課題,同等が5課題となっている。両省庁の調査結果をみると,米国の方がどちらか一方の国が優位とした答えが多くなっているが,全般的には両者とも現在の両国の技術レベルは,ほぼ拮抗しているとの結果になっている。技術別にみると,両調査ともに,ライフサイエンス分野では,米国が優勢,今後経済社会に大きなインパクトを与えると考えられる「超電導」は同等,情報・電子系技術では,「高機能性単導体デバイス」と「高密度データ保存」で日本の優位を指摘しているが,「高機能コンピュータ」と「人工知能」では米国の優位を指摘している。両調査の主な違いは,「柔軟なコンピュータ統合生産システム」について,米国商務省の調査では米国優位,科学技術庁の調査では日本優位と逆の結果が得られていることである。

第1-1-6表 新規有望技術レベルの日米比較

では,今後の両国の新規有望技術のレベルはどのように変化するのであろうか。米国商務省の調査による今後の動向は,「人工知能」及び「柔軟なコンピュータ統合生産システム」において現状維持(米国優位)としているが,他の技術については,相対的に日本のレベルが上昇すると予測している。科学技術庁の調査では,「高機能半導体デバイス」,「高密度データ保存」及び「柔軟なコンピュータ統合生産システム」において,現状維持(日本優位)としているが,他の技術については,日本のレベルが相対的に上昇すると予測している。両調査ともに,現状維持と予測する技術項目に差があるものの,全般的に日本の技術は米国と比較して上昇傾向にあると予測している。ただし,我が国においては,国立試験研究機関や大学における研究施設等研究環境の面での質の低下,若年層の絶対数の急激な減少と若者の科学技術離れが懸念されている。

どの国にとっても,自国ばかりでなく他の諸国の科学技術レベルを的確に把握していくことは,科学技術政策の立案に当たって不可欠である。例えば,今回の調査によれば,日本の研究者と米国の研究者は,両国の技術レベルについて比較的共通の認識を持っていることが明らかになったが,このような共通の認識が研究者の間だけでなく,それぞれの国の政策立案担当者をはじめとする多くの人々に十分に得られていることが,国際間での不要な摩擦を回避していく上で有効なものと考えられる。そのような意味で,各国が自国の科学技術レベルを客観的に認識することが重要であり,そのためには,場合によっては共同で調査を行うとともに,得られた情報を交換することも大切であろう。いずれにせよ,我が国の科学技術レベルは相対的に上昇しつつあるという認識を十分に持って我が国の科学技術政策を遂行していく必要がある。


(2) 指標でみる国際交流

科学技術の発展のためには,国際交流が大きな役割を担うことはいうまでもない。国際交流のうち,最も基本である研究者と情報の交流の現状について,日本人研究者を対象に行った調査では,日本人研究者は,海外研究者との間の国際交流は3年前と比較して増加しているものの,欧米間との比較では,研究者の交流,情報の交流の双方においてひどく遅れているという回答となった。

次に,研究者交流,情報交流等の項目について,国際交流の阻害要因を調査してみた。[研究者交流]の阻害要因については,「国際交流のためのコストが高い・予算が少ない」が4割近くの回答を占め,「研究者の国際的ネットワークに入れないため」を上回った( 第1-1-7図 )。しかし,[情報交流]については,「研究者の国際的ネットワークに入れないため」が最も多く,経費面の理由を上回った。[国際共著論文]を投稿する場合の阻害要因でも,「研究者の人的国際ネットワークに入れないため」が最も多く,経費面の理由を上回っている。[共同研究]では,経費面の理由が3割を越すが,研究者の国際的ネットワークの欠如を指摘する研究者の方がさらに多かった。全般的にみると,日本人研究者は,人的な国際ネットワークに入り込んでいないと認識しており,本質的な問題を指摘した形になっている。

第1-1-7図 国際交流の阻害要因

1) 人材

(研究技術者 注) 交流)

研究技術者の国際交流は,科学技術面における各種指標の中で科学技術活動の国際化を最も端的に表す指標である。

まず,研究技術者の出入国動向をみると,過去20年間に日本から出国した研究技術者は73万人(出国日本人の0.9%),海外から入国した外国人研究技術者は46万人で,出国数が入国数を上回っている。近年,出国数と入国数は,ともに増加しており,1989年では,出国数15万人,入国数8万人となっている( 第1-1-8図 )。出国,入国ともに1986年頃から急激に増加しているが,出国の伸びが大きく両者の差は拡大している。また,科学技術の人材面での国際交流は,海外出入国者総数の伸びを上回って急激に増加している。


注)研究技術者とは,学術研究調査,留学,技術習得を目的として出国した者,及び留学,研修,教授活動,芸術・学術活動,高度の技術提供のために入国した者をいう。

第1-1-8図 日本における研究技術者の出国と入国の推移

第1-1-9図 日本における研究技術者の出入国数の内訳

また,地域別の研究技術者交流をみると,出国先は米国が7万人(48%)と最も多く,次いでイギリス1.4万人(9%),フランス6千人(4%)の順で,入国は韓国からの2万人(24%)が最も多く,台湾1.5万人(18%),中国1.2万人(14%)が続いている( 第1-1-9図 )。先進国との間については,出入国比(出国者数/入国者数)は1986年で6であったが,3年後の1989年には出国数11.2万人,入国数1.0万人で両者の出入国比は11となっており,出国数と入国数の不均衡は急激に拡大している。先進国から入国した研究技術者数は漸増しているが,それを上回って先進国への出国が増大しているためである。また,開発途上国との間では,1986年における研究技術者の出入国比は0.5であったものが,3年後の1989年には出国3.5万人,入国7.4万人と出入国比は0.5で変化はないが,研究技術者の交流は,出国,入国ともに急激に増大している( 第1-1-10図 )。また,日本における研究技術者の出入国は,入国は開発途上国からが多く,出国は先進国へが多いのが特徴となっている。

「先端科学技術研究者調査」によれば,開発途上国から研究者や研修生等を受け入れた研究者は,受入れの効果について,「技術移転を通じて開発途上国の発展に役立った」との回答が多い反面で,「取得した知識が高度すぎる」,「現地のニーズに合わない」などの理由により現地の発展に役立たないという回答も見られた( 第1-1-11図 )。

第1-1-10図 研究技術者の国際交流(1989年)

第1-1-11図 途上国研究者等の受入れと技術移転

2) 論文 注)

(論文生産数)

世界各国の主要な科学論文誌に掲載された論文生産数の国際比較を見てみよう。


注)ここで使用したデータベースは,世界の主要な科学論文誌に掲載された論文を対象にしており,世界全体の論文を対象にしていないこと,また,データベースが海外のものであり,日本の科学論文誌のデータが比較的少ないことに留意する必要がある。

世界全体の論文生産数は,最近10年間で45%も増加しているが,この間に日本人研究者の論文数は2倍になり,ほとんどの研究分野で世界の平均伸び率を上回っている。論文全般の生産数でみると,日本人研究者の論文生産の世界に占めるシェアは1986年に7.7%まで上昇し,この10年間で1.3倍になっている( 第1-1-12図 )。国別では,1973年以降一貫して米国が世界の3割以上を占めているが,そのシェアは減少気味である。日本は,1973〜75年には世界第6位であったが,1986年に米国,イギリスに次いで第3位までになった。日本人研究者数は,イギリス,ドイツ,フランスの研究者数の合計を上回っており,かつ伸び率も高いことが,論文生産数の増加の牽引力の一つとなっていると考えられる。

第1-1-12図 論文生産数の国別シェアの推移

しかしながら,1986年の1年間における研究者一人当たりの論文生産数をみると,本分析のもととなっているデータベースが英文雑誌を中心としていることなどの言語上の問題や日本の研究者は諸外国と比較して民間企業の研究者が多いことなどもあり,日本は0.08で主要国5カ国で最も少なくなっており,最も生産数の多いイギリスと比べて3分の1以下となっている( 第1-1-13図 )。

ライフサイエンス分野をみると,ヒト遺伝子に関連するデータは生体機能の解明研究の基礎と考えられるが,各国の研究者から論文に公表されたヒト遺伝子データの各国比較を行うと,米国が遺伝子データの公表量でトップ,次いで,イギリス,フランス,日本の順となっており,日本の国際的な貢献度は高いとはいえない。ヒトゲノム解析の国際協力が求められており,日本においてもそのための条件の整備が重要である( 第1-1-14図 )。

第1-1-13図 研究者一人当たりの論文生産数の国際比較(1986年)

第1-1-14図 公表されたヒト遺伝子情報の各国シェア

(論文の引用動向)

研究開発成果を示す指標としては,論文の生産量だけでなく質的な把握が欠かせない。論文の他の論文への影響度を示すものとしてよく用いられるのは,他の論文により引用された回数(被引用回数)である。そこで,論文生産数のシェアと被引用回数のシェアの関係をみるための相対被引用度数(被引用回数のシェアを論文生産数のシェアで割ったもの)が表れる図を作成した( 第1-1-15図 )。図中の傾き45度の線上にプロットされれば,その国の論文生産数に見合った回数だけ論文が引用されているといえる。

第1-1-15図 主要国の論文の相対被引用度数の推移

論文の被引用回数の最も大きい米国の場合,近年,被引用回数シェアは減少してきており,しかも論文生産数のシェアもそれに見合って減少しているため,相対被引用度数はほぼ横ばいになっている。イギリスは,被引用回数のシェアが論文生産数のシェアを上回っており,一論文当たりの影響度は大きいと言えるが,相対引用度数は低下している。また,日本は,被引用回数のシェアにおいても,ドイツやフランスを上回り,世界第3位の座を占めているが,論文生産数に比べて論文被引用回数が少なく,一論文当たりの影響度は米国,ドイツ,イギリスのレベルを下回っている。しかし,日本人研究者の被引用回数の増加は著しく,相対被引用度数は1986年には1に近づいており,改善の傾向にある。一方,ソ連は論文生産数に比べて被引用回数が極めて少ない。

次に,各国が自国の論文を引用する回数と海外の論文を引用する回数を比べてみる。米国は自国の論文を引用することが多く,その他の国は自国の論文より他国の論文を引用することが多い。これは米国が研究開発活動の中心地であることから当然の結果であると思われる( 第1-1-16図 左側)。さらに,各国の論文は引用の対象として国際的にどのような位置を占めているかを示すものとして,外国の論文から引用された回数と国内論文から引用された回数を調べた。この場合,外国の論文からの被引用回数が重要である。国際的に引用の対象として最も大きな位置を占めているのは,当然ながら米国であり,これに次ぐのがイギリスである。それに続く国として,日本とドイツを比べてみると,被引用回数では日本の方が大きいが,自国以外の国からの被引用回数ではドイツの方が大きい( 第1-1-16図 右側)。海外の科学論文誌への投稿論文数では日本がドイツより多いことを考えると,一般論としては日本人研究者の論文の外国への影響度はそれ程高くないといえよう。

日本人研究者が引用した論文の国別の内訳の推移をみると,1981年には8割近くが日本人研究者の論文を対象としていたのに対して,1986年にはその比率が4割程度に減少しており,外国論文を引用する比率が短期間に増加している。

第1-1-16図 論文の引用回数シェアと被引用回数シェア

また,被引用回数の世界的状況を見てみよう。世界中の被引用回数を100%とすると,米国・カナダの地域内においては全休の37.0%を占めており,次いで,EC諸国内の13.8%となっている。また,地域間でみると,米国・カナダがEC諸国から引用したものが10.0%,逆にEC諸国が米国・カナダから引用したものが7.1%となっており,両地域間の引用は活発であるといえる。また,日本については,地理的,言語的な面で欧米と異なっており,世界における被引用シェアが低くなっている( 第1-1-17図 )。

第1-1-17図 世界における論文の被引用状況

一方,1988年から90年の間に公表された論文の中で,世界で最も引用回数の多い論文900件を調べると,それに占める日本人研究者の論文は42件(全体の4.7%)で,全分野の論文の被引用回数のシエアを下回っており,超一流の研究ではまだ日本人研究者の論文の影響度は少ないといえよう。ただし,ライフサイエンス分野では,上記42件中25件もあり,この分野の研究者の健闘が目立っている。また,1989年9月から10月にかけて世界で引用された回数の多いベスト10を調べてみると,物理学分野の第1位と第3位及び生物学分野の第2位と第3位に国内研究機関に所属する日本人研究者の名前がそれぞれ2人上がっている。さらに,1980年代に公表された論文の中で世界で引用された回数の多いベスト10には,日本人研究者によるものが2件ある。このことは,個別にみれば,日本人研究者の優秀な論文の存在を明らかにしている。

(国際共著論文)

国際共著論文の状況を見てみると,世界的に国際共著論文の比率は増加の一途をたどっている。日本人研究者による国際共著論文の割合も近年増加しているものの,先進諸国の中で最低である( 第1-1-18図 )。

第1-1-18図 各国における国際共著論文の推移

国際共著論文の世界的な状況をみると,米国が世界の中心に位置しており,米国との共著論文が多いことがうかがえる( 第1-1-19図 )。これは,米国が生産論文数,被引用回数とも世界最大であることを反映していると言えよう。また,北欧や東欧の地域内で共著論文が比較的多いことは,地理的,政治的,文化的な要因が研究者の交流を促し,その結果,共著論文数に影響しているのであろう。日本は,国際共著論文について米国との関係が強い。

第1-1-19図 国際共著論文にみる各国間のつながり

また,論文生産数と共著論文割合の関係をみると,各国の論文の国際性をうかがうことができる。欧州諸国では,論文生産数にかかわらず共著論文の割合は概ね一定であるが,日本,ソ連,インドは,論文生産数に比べて国際共著論文の割合が少なくなっている。これらの国々は地理的,言語的,社会制度的な面で欧州と異なっているためであろう。米国について,欧州諸国より共著論文の割合が少なくなっているのは,地理的条件や論文生産数が多いこと,また,米国国内で論文の共著者となりうる研究者が大勢いることが原因と考えられる( 第1-1-20図 )。日本の国際共著論文を増加させていくには,前述したように研究者の人的な国際ネットワークへの参画を促進させていくことが必須の前提条件であろう。

第1-1-20図 国際共著論文と論文生産数の関係

3) 情報流通

日本科学技術情報センター,米国のケミカル・アブストラクツ・サービス及びドイツのカールスルーエ専門情報センターの3機関間の国際科学技術情報ネットワーク(STN)のアクセス状況をみると,米国のデータベースへのアクセスが圧倒的に多くなっている。欧州諸国の米国への情報依存度は6割強であるが,日本は9割の情報を米国に依存している。日本と欧州の間のデータベースのアクセスは現在のところ非常に少ない( 第1-1-21図 )。日本科学技術情報センターの英語のデ一タベースに対する海外からのアクセス件数は,最近,増加傾向にあるものの,海外が日本から受信する情報量は,日本が海外から受信する情報量に比べて極めて少ない。なお,学術情報センターは,ワシントンの米国国立科学財団,米国議会図書館及びロンドンの英国図書館の情報システムを通じ海外の研究者への情報提供を開始している。

第1-1-21図 国際科学技術情報ネットワーク(STN)の利用状況

4) 特許

(出願件数と登録件数)

日本人の世界全体への特許出願件数は世界で最も多いが,特許登録件数は米国に次いで世界第2位である。日本の特許庁に出願された特許出願件数及び特許登録件数の推移をみると,特許出願件数はとりわけ1980年代に急激な増大を示しているが,登録件数は出願件数と比ベると,ほとんど増加していない( 第1-1-22図 )。1980年から89年にかけて,産業界の日本人研究者は75%増加し,国内への特許出願件数は92%増加していることから,一人当たりの特許出願件数が増加していることがうかがえる。外国人による特許出願件数は横ばいであるが,全体に対する外国人の割合は漸減している。

しかしながら,バイオテクノロジー関連の特許の出願件数をみると,外国人によるものは日本人によるものと件数で拮抗している。バイオテクノロジーは,将来飛躍的な技術革新が起こり,社会に大きな変革をもたらすものと期待されており,今後の特許動向が注目される。

(国内外における特許出願件数と登録件数)

第1-1-22図 日本特許庁における特許出願件数・特許登録件数の推移

主要国の国内と国外における特許出願件数と登録件数をみると,日本の特徴は,他の先進国に比べて,国内への出願件数が際立って多いことと,出願件数に対し登録件数が非常に少ないことである( 第1-1-23図 )。日本は,世界一の特許出願大国であるが,外国での特許出願件数と登録件数では,米国,ドイツに次いで第3位である。

日本人の海外への特許出願件数と登録件数をみると,米国への出願が最も多く,次いで,ドイツ,イギリス,フランス,韓国と続いている。韓国に対する出願件数では,韓国人からの出願件数を日本人の出願件数が上回っている。

また,主要特許出願先における国別の特許登録件数では,自国からのものが最も多いが,日本においては9割近くに迫り他の国や地域に比べて際立って多くなっている( 第1-1-24図 )。なお,米国における特許登録件数の推移をみると,日本人のシエアは年々増加しており,また,1990年の企業別の特許登録数では,上位10社の内5社を日本企業が占めている。

第1-1-23図 主要国の国内・国外における特許出願件数・特許登録件数

第1-1-24図 主要特許出願先における国別の特許登録数の割合

登録された特許の被引用回数(それ以降の新たな特許の審査時に引用される回数)は,その特許の影響度を反映している。米国での登録特許の被引用回数のシェアと特許登録件数のシェアの関係を図に表すと,米国は被引用回数のシェア,特許登録件数のシェアが最大であるが,相対被引用度数(被引用回数のシェアを特許登録件数のシェアで割ったもの)は,近年減少しつつある。一方,日本の相対被引用度数は上昇を続けており,特許の影響度が高くなりつつあることを示している( 第1-1-25図 )。

日本人の海外への特許出願件数・登録件数と比べると,海外から日本国内への特許出願件数・登録件数は極端に少なく,不均衡が大きくなっているといえよう。

第1-1-25図 米国での登録特許の相対被引用度数の推移

5) 技術貿易とハイテク製品貿易

(技術貿易)

OECD諸国全体としての技術貿易の動き(権利譲渡,実施許諾等という形で国際的に取り引きされるもの)を追うと,いずれの国及び地域でもほぼ拡大基調にある( 第1-1-26図 )。技術貿易では,米国のみが出超で他の国は入超であるが,日本の収支比(輸出/輸入)は均衡しつつある( 付属資料14 参照)。

また,主要国間の技術貿易収支比をみると,米国が各国に対して圧倒的に出超となっている。日本はイギリスに対してのみ出超となっている( 第1-1-27表 )。

第1-1-26図 日米欧間の技術貿易の拡大

第1-1-27表 主要国の相手国別技術貿易収支比

日本の技術貿易を地域別にみると,北米,欧州に対しては入超で,アジア,オセアニアには出超になっている。業種別に分析すると,各国・地域の技術力の特徴が見られる。日本から北米への技術輸出は,自動車工業,通信・電子・電気計測器工業,医薬工業の順であり,北米から日本への技術輸出は,通信・電子・電気計測器工業,輸送用機械工業,機械工業の順になっている。また,日欧間については,日本からの輸出は,通信・電子・電気計測器工業,鉄鋼業)医薬品工業の順で,欧州からの輸出は,通信・電子・電気計測器工業,医薬品工業,電気機械器具の順である。日本から先進国へ輸出されている技術はエレクトロニクスなどの先端技術が多いが,開発途上国への輸出は鉄鋼技術や化学・繊維技術が多くなっているのが特徴となっている( 第1-1-28図 )。

第1-1-28図 技術貿易の世界状況(1989年度)

(ハイテク製品貿易)

世界におけるハイテク製品貿易額は増加傾向にあり,日本の輸出額は製造技術を背景として欧米を上回りトップに位置している。ここで注目されるのは,日本のシェアが伸びている反面で,米国のシエアは低下していることである( 第1-1-29図 )。また,ハイテク製品の主要国の貿易収支比をみると,1987年に日本は収支比5.1と主要国の中では最も高い。ドイツはわずかに出超であり,フランス,イギリス,米国はほぼ均衡となっている( 第1-1-30図 )。貿易に占めるハイテク製品の割合が増加しているため,このような動向は技術の国際的な流通に寄与すると同時に国際的な緊張の原因ともなりうるので,今後の動きが注目される。

第1-1-29図 主要国のハイテク製品輸出シェア

第1-1-30図 技術の強度別製品貿易収支比


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