ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
第4章  我が国科学技術政策の展開
第3節  研究活動の推進
1  重要研究開発分野の推進
2.  経済の活性化のための科学技術の推進


国際的に経済の再活性化が進められている中で,国内においても内需を中心とした活力ある経済の維持発展を図り,我が国の立国基盤をより強固なものにしていくため,科学技術政策大綱において,「天然資源の開発及び管理」,「エネルギーの開発及び利用」,「生産技術及び流通システムの高度化」,「資源の再生及び活用」,「社会,生活へのサービスの向上」の各分野を,経済の活性化のための科学技術と位置付け,その積極的な振興を図っている。

特にこのうち資源・エネルギーの開発,利用等は資源を持たない我が国にとって,経済発展の基盤ともなる重要な技術であり,積極的な推進が図られている。


(1) 天然資源の開発及び管理

天然資源の開発及び管理に関する研究開発としては,通商産業省の大型工業技術研究開発制度において,深海底に多量に賦存するニッケル,銅,コバルト,マンガン等の重要金属を含有するマンガン団塊を採鉱するためのマンガン団塊採鉱システムの研究開発が推進されている。また,農林水産省のバイオテクノロジー先端技術開発研究制度では,植物DNAの塩基配列の解明や動物遺伝子の解析と利用技術の開発が進められている。


(2) 原子力エネルギー等エネルギーの開発及び利用

エネルギー研究開発は,広範な分野を対象とし,長期にわたり膨大な研究開発のための資金及び人材を必要とするため,研究開発全般を計画的・重点的・効率的に推進することが重要である。このため,政府が中心となって推進するエネルギー研究開発について,昭和53年8月に「エネルギー研究開発に関する基本計画」を定め,その着実な推進を図っている。なお,本基本計画は,研究開発の進捗に応じて見直すこととなっており,最近では平成元年11月に改定している。

1) 原子力開発利用の推進

原子力は,供給安定性,経済性の面のみならず,二酸化炭素,窒素酸化物等を排出しない等地球環境負荷の面でも優れており,我が国のエネルギー供給構造の脆弱性の克服に貢献する主要なエネルギー源の一つとして着実に開発利用を進めることが必要である。

我が国では原子力の開発利用を原子力委員会の策定した原子力開発利用長期計画(昭和62年6月策定)に沿って,総合的かつ計画的に推進している。

(1)安全性の確保及び核不拡散対策

原子力開発利用は,開発当初から,放射性物質を確実に管理する対策を講じるなど,安全注の確保を最重点にして行われてきており,他の産業分野には見られない国による厳しい安全規制を始め,環境放射能調査や,万一の事故の際の備えとしての防災対策を含めた各般の安全確保対策が講じられている。

安全規制の一層の充実及び原子力施設の安全性の向上に資するために,原子力安全委員会が策定する安全研究年次計画に沿って,原子力安全研究が推進されている。

軽水炉施設の安全研究については,日本原子力研究所を中心に,原子炉の反応度事故及び冷却材喪失事故に関する研究等を行っている。

新型転換炉施設,高速増殖炉施設,核燃料施設,放射性廃棄物の処理処分等については,動力炉・核燃料開発事業団を中心に各種安全研究を行っているほか,放射性物質輸送時の安全性,原子力施設の耐震安全性については,国立試験研究機関を中心に研究を行っている。その他,原子力施設の安全性,信頼性及びリスクを確率論的に評価する手法等については,日本原子力研究所及び動力炉・核燃料開発事業団において研究を行っている。

放射線医学総合研究所では,低線量及び低線量率被ばくの人体に対する影響を推定する上で重要な晩発性の身体的影響,遺伝的影響及び被ばく形式の特異性を考慮した内部被ばくの障害評価並びに環境放射線の被ばく評価を中心に研究を実施している。

また,我が国は,原子力基本法の下に平和目的に限って原子力開発利用を推進しており,その推進に際しては核不拡散の確保を前提としている。このため,国内保障措置を行うほか,保障措置技術の研究開発等を行っている。

(2)原子力発電の現状

我が国の商業用の原子力発電は,平成2年7月現在,38基が運転中で,発電設備容量は3038万kWであり,主力電源として平成元年度実績で総発電電力量の25.5%を賄っている。

現在の我が国の主流の原子炉である軽水炉については,政府,電気事業者,原子力機器メーカー等が一体となって自主技術による軽水炉の信頼性,稼働率の向上及び従業員の被ばく低減を目指し,技術開発が行われてきたところであるが,現在の軽水炉の技術水準に満足することなく,さらなる経済性,信頼性,安全性の向上を目指しつつ高度化を図っていくための検討が進められている。

原子炉の廃止措置に関する技術開発については,昭和56年度から,日本原子力研究所が動力試験炉(JPDR)をモデルとしてその研究開発に取り組んでいる。昭和61年度からは,JPDRの解体実地試験を行っており,平成2年5月からは原子炉圧力容器の解体作業に着手している。また,(財)原子力工学試験センターにおいても昭和57年度から廃炉技術の確証試験を進めている。

(3)核燃料サイクルの確立

我が国の原子力発電を今後とも円滑に推進していくためには,核燃料の安定的供給の確保とウラン資源の有効利用などを目指した核燃料サイクルの確立がますます重要な政策課題となっている。

原子力発電の燃料である濃縮ウランの安定確保は重要な課題であり,遠心分離法によるウラン濃縮技術の開発を積極的に推進している。動力炉・核燃料開発事業団の研究成果に基づき,青森県六ヶ所村において商業プラントの建設が進められている。さらに,今後のウラン濃縮の経済性の向上を図るため新技術の開発を進めている。

使用済燃料については,ウラン資源の有効利用等の観点から再処理を行うことを基本方針としており,現在,動力炉・核燃料開発事業団の東海再処理工場において再処理を行っている。東海再処理工場においては,平成2年3月末までに約442トンの再処理を行っている。

民間再処理工場については,青森県六ヶ所村において年間再処理能力約800トンの再処理工場の計画が進められている。

高速炉燃料の再処理については,動力炉・核燃料開発事業団において,研究開発が進められている。

核燃料サイクルにおいて,放射性廃棄物の処理処分対策の確立は重要な課題であり,次のような施策を進めている。

原子力発電所等から発生する低レベル放射性廃棄物に関しては,発生量の低減化,減容化,固化等の処理を行っている。

陸地処分については,セメント固化等の処理を行い,浅地中に処分することとしている。現在,青森県六ヶ所村において,低レベル放射性固体廃棄物を集中的に処分する計画が進められている。

海洋処分については,国際的な基準にのっとり,深海底に処分することとしているが,関係国の懸念を無視して処分は行わないとの考えの下にその実施については慎重に対処することとしている。

高レベル放射性廃棄物は,安定な形態にガラス固化し30年から50年程度冷却のため貯蔵した後,数百メートルより深い地層中に処分することを基本方針としている。ガラス固化,固化体の貯蔵及び地層処分の技術開発については,動力炉・核燃料開発事業団が中心となり,研究開発を推進しており,地層処分技術を確立するための深地層試験等の研究開発及び高レベル放射性廃棄物等の貯蔵を行う貯蔵工学センター計画の着実な推進を図っている。また,高レベル放射性廃棄物から有用金属等を分離し,さらに長寿命核種を短寿命核種又は非放射性核種に変換する核種分離(群分離)・消滅処理技術の開発も日本原子力研究所,動力炉・核燃料開発事業団を中心に実施している。

(4)プルトニウム利用の展開

我が国は,ウラン資源の有効利用を図り,エネルギーの安定供給に貢献するため,使用済燃料の再処理によって得られるプルトニウムの利用体系の確立を目指すこととしている。その際,高速増殖炉による利用を基本とするが,当面は,プルトニウム利用休系全般の蓄積・確立を図るため,軽水炉及び新型転換炉における利用を進めることとしている。軽水炉におけるプルトニウム利用(プルサーマル)は,現在ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料少数体実証計画が進められており,これに続いて,実用規模の実証計画を進め,その後本格利用に移行することとしている。また,新型転換炉の開発は,これまで動力炉・核燃料開発事業団等において進められてきており,現在原型炉「ふげん」が順調に運転されている。高速増殖炉については,これまでその開発は動力炉・核燃料開発事業団を中心に進められてきており,実験炉「常陽」は現在まで順調に運転されている。この成果を踏まえ,同事業団では,平成4年の臨界達成を目指して原型炉「もんじゅ」の建設を進めている。

英仏よりのプルトニウムの返還輸送については,当面海上輸送により行うこととし,輸送の開始時期は平成4年秋頃としている。

(V)先導的プロジェクト等の推進

核融合の研究開発については,人類の未来を担う恒久的なエネルギー源としてその実現が世界的に期待されているが,我が国では,日本原子力研究所,文部省核融合科学研究所を始め大学,国立試験研究機関等がその研究開発に携わっている。日本原子力研究所は,平成元年10月に終了したトカマク型臨界プラズマ装置(JT-60)の高性能化実験においてプラズマ電流の駆動効率で世界最高記録を達成するなどの成果を得ており,現在,平成2年度末から世界最先端のプラズマ閉じ込め研究を行うための高性能化実験を行うこととしている。また,日本原子力研究所は,日本,米国,EC,ソ連による国際熱核融合実験炉(ITER)の概念設計活動に積極的に参加している。基礎的,独創的研究が期待されている大学等では,文部省核融合科学研究所において,我が国独自のアイデアに基づくヘリカル方式を一段と発展させ,環状磁場系の定常運転及び高温プラズマに関する閉じ込め物理の究明をめざし,超伝導コイルを用いた世界最大の大型ヘリカル装置計画を推進しており,平成元年度から試作開発を開始し,平成2年度から一部製作を開始している。

放射線利用については,医療分野では,X線CT等の診断やX線,ガンマ線等を利用した悪性腫瘍の治療に利用されるとともに,速中性子線,陽子線,重粒子線による治療の研究が行われている。特に,放射線医学総合研究所においては,がん細胞に対する治療効果が高い重粒子によるがん治療の研究が行われており,現在,重粒子線がん治療装置の建設が着実に進められている。また,大学においても,筑波大学陽子線医学利用研究センター等において陽子線等によるがん診断・治療の研究を行っている。農林水産業の分野では,品種改良,害虫防除,食品照射等に放射線が利用されている。工業分野では,非破壊検査,さらに各種高分子材料の改質などにも放射線が用いられている。研究利用では,昭和62年度から6年計画で日本原子力研究所が多目的イオンビーム研究施設を建設中であり,また,日本原子力研究所と理化学研究所が大型放射光施設(SPring-8)を兵庫県播磨科学公園都市に平成10年度の完成を目指し本年度より整備を進めている。さらに,文部省高エネルギー物理学研究所においては,トリスタン入射蓄積リングを用いた大強度放射光実験設備による研究を開始している。

また,高温工学試験研究については,高温の熱供給を図り,将来のエネルギー供給の多様化の可能性を高める高温ガス炉技術の確立及び高温に関する先端的基礎研究を進めることを目的とし,日本原子力研究所において高温工学試験研究炉(HTTR)の建設計画を進めている。

原子力船の研究開発については,日本原子力研究所が中心となって原子力船「むつ」による研究開発等を進めている。原子力船「むつ」は,平成2年3月から出力上昇試験を開始し,関根浜定係港岸壁において約20%までの低出力上昇試験を実施した後,7月から本州東方の海上において高出力上昇試験を段階的に進めており,最終的に出力100%までの試験終了後,海上試運転を経て1年間の実験航海を行う予定である。

さらに,日本原子力研究所,大学,国立試験研究機関等において,炉物理・核物理に関する研究,放射線に関する生理学研究,燃料・材料の照射試験等の基礎研究を幅広く行うとともに,原子力用材料技術,原子力用人工知能技術,原子力用レーザー技術,放射線リスク評価・低減化技術を重点的な技術領域とした基盤技術開発を,日本原子力研究所,動力炉・核燃料開発事業団,理化学研究所及び国立研究機関において進めている。

(6)国際社会への主体的貢献

原子力開発利用は,各国毎に取り組むだけではなく,相互依存関係の中で,国際協力により効率的に研究開発することが重要である。先進国との協力については,情報交換,人材交流,研究協力等の二国間協力の他,条約,協定等に基づく政府レベルの多国間協力や国際機関を通じた協力も積極的に推進している。開発途上国との協力については,地域協力協定を締結し,国際原子力機関(IAEA)の支援を受けて,アジア・太平洋地域との協力を積極的に行っている。平成2年5月には,韓国との間で,日韓原子力協力取極を締結し,平成2年7月には,改正された日仏原子力協力協定が発効した。

(7)国民の理解と協力

原子力開発利用を円滑に進めていくためには,国民の理解と協力を得ることが重要である。このためには,まず安全の確保の実績を着実に積み重ねるとともに,各種メディアを通じた広報の他,各地の勉強会に講師を派遣するなどの対話を重視した草の根的な広報を実施している。

2) 化石エネルギー等の研究開発

(1)化石エネルギーの研究開発

我が国のエネルギーの中核である石油については,新規開発油田の中小規模化等探鉱・開発条件の悪化傾向等に対応し,石油開発技術研究開発の推進を図っている。

石炭は,原子力と並ぶ石油代替エネルギーとして,その利用技術の研究開発が進められている。特に新エネルギー技術研究開発プロジェクト(サンシャイン計画)の中で,石炭液化技術,低カロリーガス化複合発電技術,石炭利用水素製造技術等の研究開発が推進されている。

天然ガスについても主要な石油代替エネルギーの一つであり,かつ,クリーンで相対的に環境負荷が小さいことから,経済的・効率的な利用拡大に資するよう探鉱,液化,輸送及び貯蔵に関する研究開発が推進されている。

(2)  自然エネルギーの研究開発

太陽エネルギー,地熱エネルギー,海洋エネルギー,風力エネルギー,バイオマスエネルギー等は,その資源特性から見て解決すべきいくつかの問題があるが,二酸化炭素等を排出しないクリーンなエネルギーであるため,その利用は地球温暖化問題の主要な対策の一つとなる。このため,前述のサンシャイン計画をはじめ,理化学研究所,海洋科学技術センター等で積極的な研究開発が進められている。

太陽エネルギーについては,給湯用,冷暖房用,太陽光発電等の利用が考えられ,既に民生用給湯及び冷暖房システムについてはほとんど実用化段階に入っている。このため,産業用ソーラシステム等の技術開発を積極的に推進するとともに,太陽光発電については,電池・システムの一層の低コスト化,効率化等を目指した研究開発を進めている。

海洋エネルギーは,海域特性を活かした利用が可能であり,高効率波力エネルギー利用システム,海洋温度差発電等についての研究開発が進められており,さらに消波や深層水利用等との複合システムの研究開発を進めている。

地熱エネルギーは,豊富で技術開発も他の自然エネルギーに比較して進んでおり,地域社会に密着したエネルギーとしての利用が考えられる。このため,地熱資源包蔵量を評価する手法や地熱資源の探査,開発技術の研究開発,熱水を利用したバイナリーサイクル発電システム,高温岩体システムの開発等を推進するとともに,地熱エネルギーの多目的利用技術や環境保全技術の開発を進めている。

生物又は生物の光合成機能を利用したエネルギー技術は,エネルギー密度,輸送,貯蔵等の面に解決すべき問題が多いが,環境への負荷が小さく,再生可能なエネルギー資源として期待されており,基礎的研究開発が進められている。

風力エネルギーについては,大型風力発電の研究開発及び風力エネルギーの熱変換・蓄熱技術等の開発が推進されている。

(3)省エネルギー技術の研究開発

省エネルギーは,産業部門,民生部門,輸送部門等それぞれの部門においてプロセス,機器の開発や廃熱の回収等により行われるものであり,短期的観点のみならず中長期的観点からも着実に推進される必要がある。また,経済的な観点だけでなく,大気中の二酸化炭素量の増大による地球温暖化問題の主要な対策の一つであるといった観点からも,一層の研究開発が望まれている。

このため政府では,産業・民生分野の省エネルギー技術研究開発(ムーンライト計画),運輸部門の省エネルギー技術研究開発,建築物の省エネルギー技術研究開発等を積極的に推進している。

このうちムーンライト計画においては,熱効率が高く,コージェネレーションの普及拡大に資するセラミックガスタービンの研究開発,発電効率が高くクリーンな燃料電池発電技術,超電導材料及びこれを応用した超電導発電技術・システム化技術,エネルギーの高効率・高密度貯蔵を実現するスーパーヒートポンプエネルギー集積システム,新型電池等の研究開発を推進している。

また,輸送分野におけるエネルギーの多様化技術として,セラミック・ガスタービン・エンジン,スターリングエンジン,水素エンジン,アルコールエンジン,天然ガスエンジン,流動床ボイラ等の新型推進機関の研究開発を推進している。

その他,工場,発電所,都市等の廃熱利用システム技術,農林水産資源からの燃料用アルコールの開発・利用技術,地域の特性に応じたエネルギーの供給を図るための技術等の研究開発が推進されている。


(3) 生産技術及び流通システムの高度化

生産技術及び流通システムの高度化に関する研究開発としては,食料等の生産に資する研究開発として,各種の生産基盤の整備,栽培,出荷等の研究開発が進められるとともに,中小企業の高度化に資する研究開発として,大型工業技術研究開発制度により,自動縫製システムの研究開発が進められている。


(4) 資源の再生及び活用

資源の再生及び活用に関する研究開発としては,大型工業技術研究開発制度により,工業排水等の再生利用に資する水総合再生利用システムの研究開発が,また,農林水産省では生物資源の効率的利用技術の開発に関する総合研究等が推進されている。


(5) 社会,生活へのサービスの向上

社会,生活へのサービスの向上に関する研究開発としては,マンマシンインタフェースの高度化研究,人間感覚計測応用技術,新交通システムの研究開発等が推進されている。


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ