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第3章   海外及び我が国の科学技術活動の状況
第2節  科学技術に関する国際比較と我が国の状況
1.  研究費
(2)  研究費の組織別の負担及び使用


(研究費の負担割合及び使用割合)

研究費は,組織別に負担源別と使用側別にみることができる。経済協力開発機構(OECD)は,政府 3) ,産業界,大学,民営研究機関,外国に組織分類している。

組織別に研究費の負担割合をみると,政府負担割合については,国防研究費のウェイト,租税負担率,民間活力などの差異により,単純な比較は困難であるが,おおよその状況を概観すればフランスが54%と大きく,次いで米国47%,イギリス39%であるが,我が国は約18%(人文・社会科学を含めると約20%)と低い値となっており,研究費の多くを民間が負担している。

組織別使用割合では,各主要国とも産業界が約3分の2を占め,研究開発の実施において民間企業が大きな役割を果している。フランス,イギリスは政府の使用割合がそれぞれ25%,15%と我が国及び米国に比べて大きな比率となっている( 第3-7図 )。

政府負担割合の推移をみると,各国とも長期的には漸減傾向にあり,これは産業界の研究開発投資の活発化によるものである。また,我が国と欧米主要国との大きな差異である国防研究費を除いた政府の負担割合は,フランス37%,西ドイツ30%,米国24%であるのに対して,我が国は人文・社会科学を含めると19%,自然科学のみでは18%であり,低い値となっている( 第3-8図 )。

こうした負担源と使用組織間における研究費のフローを国際的に比較すれば,我が国は他の国に比べて全体として各部門間での研究費のやり取りが少ない( 第3-9表 )。我が国研究費の政府から産業界へのフローが少ない点については,これまで我が国では政府,大学,企業それぞれの組織ごとの独自性が強く,どちらかといえば各組織間相互の接触が少なかったこと,諸外国に比べて研究開発を民間活力に委ねるところが大きいこと,また,米国等では国防研究費を通じた部門間のフローが多いこと等の要因を指摘できる。


注)3.本書では,研究費及び研究者数を述べる場合,政府とは中央政府及び地方公共団体を意味する。

第3-7図  主要国の研究費の組織別負担割合及び使用割合

第3-8図  主要国の研究費の政府負担割合の推移

(組織別研究費)

主要国とも研究費の増加傾向が続く中で,こうした増加にどの組織の研究費が大きく寄与しているかを実質研究費の伸びでみると,各国とも産業界の研究費の伸びが大きい。これは,主要国産業界の研究開発が近年活発化してきていることを裏づけている。我が国産業界の伸びは特に大きく,米国は近年やや伸びが鈍化した。また,主要国とも政府研究機関,大学の研究費は産業界ほどの高い伸びではないものの増加傾向が見られ,フランス政府研究機関の伸びが比較的高い( 第3-10図 )。

第3-9表 主要国研究費の産・学・官の資金フローの関係

我が国の実質研究費の対前年度増加率に対する組織別寄与度の推移をみると,我が国は会社等の研究費の動向に大きな影響を受けてきた。昭和40年代前半の高度成長期に産業界の研究費が大きく伸び,研究費総額が急増したが,40年代の後半からかげりがみえ始め,石油危機の影響もあって49年度には実質研究費の対前年度増加率も一時マイナスに転じ,これに伴って研究費総額の対前年度増加率も減少した。50年代前半からは漸次産業界の研究費は伸びを取り戻し,これを軸にして国全体の研究費も再び大きく伸び現在に至っている( 第3-11図 )。

研究費の伸びに大きな影響力をもつ産業界研究費を業種別にみると各国とも電気・電子,化学,機械の割合が比較的大きく,米国,フランス及びイギリスでは航空宇宙,日本,西ドイツ及びフランスは自動車を始めとした輸送の比重が高いことが特色となっている( 第3-12図 )。

第3-10図 主要国の組織別実質研究費の伸び

第3-11図 我が国の研究費(実質)の対前年度増加率に対する組織別寄与度の推移

第3-12図 主要国産業界の業種別研究開発費のシェア(1985年度)

次に,我が国研究費の状況について組織別 4) に述べる。

―会社等―

昭和63年度に研究を実施した会社等の数は1万4,761社で,産業・業種別構成比では,製造業が91.3%と大部分を占め,ついで建設業が7.8%となっている。製造業の中では,機械工業が全体の15.7%,電気機械工業が13.2%,化学工業が12.4%と大きな割合を占めている。

会社等の研究費は,最近の5年間(昭和58〜63年度)に年間実質9.2%増と急速に伸びている。昭和63年度には対前年度比11.2%増(実質8.8%増)の7兆2,193億円に達し,我が国研究費総額の73.9%と大きな比重を占めている。

使用研究費の産業・業種別構成比についてみると,製造業が93.6%と大部分を占め,ついで運輸・通信・公益業の3.9%となっている。製造業の中では,電気機械工業が全体の34.0%,化学工業16.5%,輸送用機械工業15.0%となっており,これら3業種で全産業の使用研究費の65.5%を占めている( 第3-13図 )。なお,この3業種における最近5年間(昭和58〜63年度)の研究費の年間増加率は,電気機械工業が11.6%と大幅な伸びを示し,化学工業の9.0%,輸送用機械工業の8.7%となっている。


注)4.我が国の研究活動は総務庁統計局「科学技術研究調査報告」に従い,「会社等」,「研究機関」,「大学等」に分類して述べることとする。

会社等:法人である会社(昭和49年度以前は資本金100万円以上,50年度以降53年度までは300万円以上,54年度以降は500万円以上のもの)及び営業を主たる業務とする特殊法人をいう。会社等に含まれる特殊法人は,日本放送協会 ,日本道路公団などである。
研究機関:国営,公営,民営(財団法人,社団法人等)の研究機関及び研究開発を主たる業務とする特殊法人をいう。 研究機関に含まれる特殊法人は,宇宙開発事業団,動力炉・核燃料開発事業団,日本原子力研究所,理化学研究所などである。なお,OECD分類での政府研究機関とは国営,公営及び特殊法人を指している。
大学等:大学の学部(大学院の研究科を含む。),短期大学,高等専門学校,大学付属研究所,大学共同利用機関及び大学入試センターである。
第3-13図 会社等の産業,業種別の研究費(昭和63年度)

会社の研究活動に対する重視度を表す一つの指標として,売上高に対する研究費の比率をみると,昭和63年度の我が国の会社の研究費の対売上高比率は,全産業で2.60%と過去最高水準となった。この比率が大きい業種は,電気機械工業(5.53%),精密機械工業(4.85%),化学工業(4.63%)などである( 第3-14図 )。

―研究機関―

我が国の研究機関は,国営,地方公共団体設立の公営,財団等公益法人を中心とした民営及び特殊法人に分類される。特に国営・公営,特殊法人においては,基礎的・先導的研究,原子力開発,宇宙開発等の大型研究,食糧,エネルギー等の資源確保等政策の遂行上必要な研究,中小企業等を支援する研究,地方経済の発展を支えているその地方独特の産業に関する研究,民間で研究開発を進めることが困難な分野の研究等が行われている。

第3-14図 主な業種における研究費の対売上高比の推移

昭和63年度における研究機関の研究費は1兆3,163億円(昭和58〜63年度の実質の伸びは年間6.9%)で,我が国の研究費総額の13.5%を占めている。政府と民間の負担割合では,国営・公営研究機関及び特殊法人研究機関の大部分,民営研究機関の25.6%を政府が負担しているため,政府の負担率は研究機関全体の71.2%となっている。

昭和63年度における研究機関の組織別研究費は,国営2,621億円,公営2,086億円,民営4,115億円,特殊法人4,341億円で,それぞれ研究機関全体の研究費の19.9%,15.8%,31.3%,33.0%を占めている( 第3-15図 )。

学問別の構成比をみると,工学の比率が最も大きく50.4%,以下理学28.7%,農学15.1%,保健5.8%の順となっている( 第3-16図 )。

―大学等―

大学等は,高等教育機関として研究に従事する人材の養成等の重要な使命をもっていると同時に,研究実施機関としても「真理の探求」を旨とする幅広い学術研究を行っており,特に基礎研究において極めて重要な役割を果している。

昭和63年度における大学等の研究費は,1兆2,396億円で対前年度比2.5%(昭和58〜63年度の実質の伸びは年間2.3%)の増加となっている。

これを国・公・私立別にみると,国立が6,753億円(構成比54.5%),公立が619億円(同5.0%),私立が5,023億円(40.5%)で,国立が過半を占めている。対前年度比では,国立が2.3%増,公立がほとんど変化なく,私立が3.0%増加した。

第3-15図 研究機関の研究費の推移

第3-16図 研究機関の研究費の学問別構成比の推移

学問別の研究費は,理学1,792億円,工学4,448億円,農学924億円,保健5,231億円で,それぞれ大学等の14.5%,35.9%,7.5%,42.2%を占め,工学と保健の割合が大きい。

(我が国研究費の費目別構成比)

研究費は,人件費,原材料費,有形固定資産(土地・建物,機械,器具・装置など)購入費,その他の経費から構成されている。我が国研究費のこれら費目別構成割合の推移をみると,人件費が最も大きい。人件費の割合は,昭和40年代後半に増加する傾向にあったが,50年度以降減少傾向を示し,63年度は42.2%であった。

原材料費の割合はここ数年やや増加する傾向がみられ,昭和63年度には18.9%になり,有形固定資産購入費は16.4%となっている。

研究のための研究機器利用,図書,事務,通信等のために要する経費であるその他の経費の割合はここ数年増加の傾向がみられ,昭和63年度は22.5%となった。これは,研究開発に大型電子計算機がさかんに使用されるようになり,そのリース料が増加したものとみられる( 第3-17図 )。

組織別にみると,会社等においては原材料費の割合が,研究機関においては有形固定資産購入費の割合が,大学等においては人件費の割合が比較的大きい。

会社等の研究費に占める人件費の割合は,昭和45年度以降増加傾向を示し51年度には51.9%となったが,それ以降は漸減傾向にあり63年度には40.7%となった。

第3-17図  研究費の費目別構成比の推移

第3-18図 組織別研究費の費目別構成比

研究機関の組織別では,公営における人件費比率が著しく大きいことが特徴となっている。また,特殊法人においては有形固定資産購入費の占める比率が著しく大きく,これは,原子力,宇宙開発などの大型施設・機器を必要とするものが含まれていることによると考えられる。

大学等は会社等,研究機関に比べて人件費の割合が大きく,昭和63年度は61.0%であり,特に公立では78.1%に達している。学問別にみると,大学等の平均に比べ理学は人件費の割合が小さい( 第3-18図 )。


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