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第2章   豊かな生活を創造する科学技術への期待
第3節  豊かな生活の創造に向けての課題と展望

第1節及び第2節において,科学技術の経済成長への貢献とは異なった視点に立ち,科学技術が豊かな生活の創造にどのように貢献しているかを分析してきた。本節においては,これらの分析結果をまとめ,それを踏まえて豊かな生活の創造に向けての課題と展望について述べることとする。

1.第1節では,宇宙や生命の起源,物質の本質等のフロンティア領域の解明に挑みつつ得られた科学的知見が,生物や地球等に対する新しい見方を提供するとともに,この過程で得られた研究成果が豊かな生活に有用な技術として結実していることが示された。第2節では,健康な身体,快適で安全な環境,人間活動の能力の拡大の3つの側面から,健康の維持・増進や診断・治療,環境の保全や安全な社会,あるいは移動能力や情報・通信能力の拡大等について事例を上げ,科学技術が生活に多様な技術,すなわち“技術メニュー”を提供してきた具体例と将来への期待を分析してきた。例えば,健康な身体に寄与する技術のうち画像診断技術を取り上げてみると,X線断層画像診断装置,磁気共鳴診断装置,ポジトロン画像診断装置等の技術メニューが提供されている。これらには,情報処理技術,物質・材料技術,ライフサイエンス等の基礎的・先導的研究の成果が結実したものがあり,また,それら技術の最適な選択や利用の際に必要な生体機能,診断手法等に関する科学的知見にも基礎的・先導的研究から得られたものがある。本章で取り上げた豊かな生活の基盤をなすと考えられる他の側面についても,このような分析がなされている。本章では,科学技術と豊かな生活の創造について分析してきたが,その結果は次のようにまとめることができる。

1) 生活のニーズに応えて多様な技術メニューが提供され,豊かな生活に貢献している。このような技術メニューの充実は,今後ともより豊かな生活を創造していく上で大きな期待が持たれている。
2) 技術メニューを構成する多様な技術をみると,物質・材料系科学技術,ライフサイエンス,情報・電子系科学技術等の基礎的・先導的研究の成果が結実した技術が多く含まれている。
3) 技術メニューから最適な技術を選択し,利用する際には,科学的な知見を基礎とすることが重要であり,このような科学的知見も基礎的・先導的研究からもたらされるものである。

2.基礎的・先導的研究は,身近な生活には一見無関係のように見えるが,生活のニーズに応える多様な技術にその成果が結実している例が多く,長期的視点に立てば国民の豊かな生活の糧となるものである。 このような基礎的・先導的研究は,長期間を要したり,リスクが大きいものが多く,民間企業では手掛け難いものが 多いため,公的部門の役割が重要である。
3.開発された多様な技術を豊かな生活に役立たせていくためには,その適正かつ円滑な適用を図っていく必要がある。このため,技術の安全性や環境に及ぼす影響等を考慮して,技術を適用する場合の基準や規則の適正化を図る 施策を実施するとともに,科学技術に関する情報を的確に提供して,国民の理解と協力を得るよう努力していく必要がある。
4.科学技術は,科学的な知見に基づいた新しい見方を提供し,知的な豊かさを高めるとともに,今後とも生活のニーズに応えた技術メニューの拡大を通じて,豊かな生活の創造に貢献していくものと考えられる。

我が国をはじめ世界の人々はより高次元の豊かさへの志向を強めているが,このような要望に応えて,自然や人間に優しい科学技術を基盤として人々が個性に合った豊かさを享受できるような社会,いわば“テクノ・アメニティー社会”ともいうべき社会の構築に向けて,科学技術がその実現に貢献していくことが期待される。


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