ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
第2章   豊かな生活を創造する科学技術への期待
第2節  生活者の視点からみた科学技術
3.  人間の活動能力の拡大
(1)  移動能力の拡大


陸,海,空の輸送システムは,高速化と大量輸送化等により我々の移動能力を高めてきた。今後とも,超伝導等の物質・材料系科学技術,宇宙科学技術等の研究成果により,その高速性等を高めた交通技術が開発されていくものと期待される。

一方,交通技術の基盤となる道路,鉄道,港湾,空港等の施設の耐久年数は非常に長く,その設置場所が地域に与える影響は大きい。このため,都市,交通,生活環境等の人文社会要素を含む社会システムを統合的に取り扱うような科学技術の発展による新たな知見により,社会システムへの影響,環境への影響等の知見をさらに増大させ,安全性を高めるなどの社会的要求に応える方向で,交通システム全体の設計能力を高めていく必要があると考えられる( 第2-20図 )。

(人の移動)

国内旅客は,昭和62年度の乗用車輸送がほぼ6割弱のシェア(輸送人キロベース)を占め,鉄道輸送がほぼ3割でこれに続いている。乗用車の性能向上と高速道路網をはじめとする道路整備等の結果,これによる移動能力の拡大が図られたものと考えられる。鉄道では,昭和39年の東海道新幹線開通により,人々の移動能力の大幅な拡大が図られた。

移動を日常生活からみると通勤通学が大きな比重を占めている。都市圏においては,その周辺部では自動車による通勤が増加する傾向にあるが,都市中心部においては,道路の交通渋滞の深刻化とともに鉄道による通勤通学が重要となっている。一方,遠距離からの通勤をみると,新幹線による移動が増加している。都心から100km以上離れた地方都市からの新幹線の通勤利用者数が,昭和63年度に5,000人を超えた。超電導等材料技術の発展により,リニアモーターカーが実用化されると期待されるが,この実用化の社会的インパクトは大きなものとなると考えられる。

国際旅客は航空機によるものがほぼ100%を占めている。国際旅客はこの5年間で年平均8.7%増と大幅に増加しているが,これには輸送における大型航空機の使用比率が高くなったことが大きく寄与しているものと思われる。長距離の移動は,国際化の進展とともにその重要性を増し,航空機の高速化及び大量輸送化が重要な課題となっている。東京・ニューヨーク間を一時間で結ぶ超高速旅客機が実用化されれば,世界の主要都市は一日の活動圏となるなどそのインパクトは非常に大きく,この実現には宇宙科学技術の進展が期待されている。

第2-20図 移動技術の多様化と交通システム

(物の移動)

物流は,国内では高速道路の整備等に伴い自動車輸送が主となってきた。自動車のシェア(輸送トンキロベース)は約半分であり,海運がこれに続いている。近年道路の交通渋滞が深刻化しているが,自動車輸送が物流の主流を占めていることには変わりがない。特に,物流の端末部分である集配は網羅性が要求され,自動車に大きく依存している。このため,道路の交通渋滞の緩和が大きな社会的な課題となっている。道路や交通の情報を的確に運転者に伝えるシステムが,情報・通信技術の発展により整備されることが期待されている。

コンピュータ管理による流通システムの発展により宅配便が生み出され,生活に多大な利便性をもたらした。1つ1つの宅配物の流通状態がコンピュータにより全て把握され,所要日数等のデータが全て把握できるようになったことにより,配達日を保証できるようになるなど流通の質が飛躍的に向上した。通信とコンピュータの結合により,物流はますます合理的で利便性が高くなるものと期待されている。

国際物流は貿易の増大とともに重要性が増している。近年航空輸送に対する需要が高まっているが,輸送時間の短縮により生鮮品,生花の輸入が増加している。大量輸送に適した海上輸送では高速化が課題となっており,新形式超高速船等の研究開発が開始されている。


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ