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第2章   豊かな生活を創造する科学技術への期待
第2節  生活者の視点からみた科学技術
1.  健康な身休
(1)  健康の維持と増進


健康意識の高まりとともに自ら健康を維持,増進していく傾向が強まっている。日常において健康を維持,増進していくためには,健康状態を自ら判断するための適切な指標,バランスのとれた栄養と休養,適度な運動が必要である。

指標として家庭で一般に用いられているものは,体温,血圧,体重等にすぎないが,増加する慢性疾患等の早期発見や健康状態を正確に把握するため,センサー材料技術等の進展による新しい計測機器の開発が望まれる。

栄養と休養に関しては,ライフサイエンスで得られた知識を広く普及させることにより,人々の健康維持に役立てることができる。栄養については,食品に含まれるエネルギー,栄養素,ビタミン等の成分とその必要摂取量の知識が広く普及している。さらに食品の体内での代謝メカニズムといった基礎的な知見が増えていくことが望まれる。休養にとって重要な要素である睡眠,リラックスは,そのメカニズムに関する知見が拡大し,効果的に休養がとれるような指針や機器が普及することが望まれる。

運動については,スポーツ医学の知見に基づくトレーニング機器が普及してきている。高齢者の運動という観点から,それに適したスポーツ医学の発展も望まれる。運動により健康を維持,増進するためには,人間生理の基礎的な知見が必要であり,宇宙空間,深海といった極限状態での研究も重要である。

(健康の指標)

家庭において,健康の客観的指標として最も一般的に用いられているのは体温であり,体温計でこれを計測し健康状態を判断してきた。このほかに,電子血圧計の普及により血圧も家庭で指標として用いられるようになってきている。また,尿に含まれる糖やタンパク質が計測できる尿試験紙が一般の人でも入手できるようになり,糖尿病や腎臓病等についてもある程度家庭で判断できるようになってきた。

これらの指標の中には,従来医師のみの手で計測され診断に用いられてきたものもある。家庭で用いられるようになるには,指標についての計測値から一般の人でも健康状態を判断できるようになること,及び技術の革新により正確で手軽に計測できるようになることが必要と考えられる。例えば,血圧は指標として一般の人にも普及していたが,その正確な計測は一般の人には困難だった。家庭用の電子血圧計は,エレクトロニクス技術により,一般の人でも正確に血圧の測定ができるように医師用のものを改良したものといえる。最終的には病気の診断は医師によらなければならないが,このような病気の予防となるような指標は,定期的に測定するようにしていくことが望ましい。慢性疾患の増加等疾病構造の変化に応じて,センサー材料等の技術の進展により,家庭で計測可能な指標の種類を増加させていくことが望まれる。情報処理技術等の発達により,継続した測定値や複数の指標を総合的に判断する技術の開発も可能となってくるであろう。

さらに,職域や地域における集団検診や人間ドックによる病気の検診も,病気の予防という観点から重要である。家庭内では判断が困難な,主に自覚症状のないがんや循環器疾患等の検診が重要になっている。集団検診や人間ドックに適した技術をさらに開発することにより,診断内容を充実し,早期発見ができるようにしていく必要がある。

(栄養と休養)

健康を維持するためにはバランスのとれた栄養,十分な休養が必要である。

栄養については,主にエネルギー,栄養素,ビタミン等に関しての食品の成分及びその必要摂取量が指針として一般に広く普及している。最近,食物繊維やオリゴ糖といった機能性食品が注目されているが,エネルギー,栄養素,ビタミン等の成分以外の食品の機能といったものについての知見を拡大していく必要がある。また,食品の体内における代謝機構や健康食品といった食品の質に関しては不明な部分も多く残されており,さらなる研究の進展が望まれる。また,食品の安全比や最近子供の健康問題として注目されている食物アレルギーに関する知見をさらに深め,その知識を適切に普及させていくことが求められる。

休養を構成する重要な要素は,睡眠とリラックスである。ストレスの多い現代社会では,従来以上にこれらの重要性が高まっている。しかし,睡眠の機構,機能といったものは,脳波,睡眠の種類等の面から研究が進められているが,十分解明されているとはいえない。また,睡眠のコントロールについても十分な研究がなされているとは言い難い。リラックスについても同様であり,これらの科学的解明が進み,不眠症,ストレス等の解消が図られていくことが望まれる。

また,成人病対策として,栄養学,基礎医学の成果を踏まえた予防のための科学的な生活の指針が確立されることが必要である。

(運動)

生活水準の向上等により,積極的に健康の維持と増進に取り組む傾向が出てきている。スポーツ医学に基づいたアスレチッククラブがブームとなり,水泳やトレーニング機器による体力の維持増強が図られている。

これからの社会では,特に増加する高齢者の健康増進が課題となろう。

現在のスポーツ医学は健康な若い人々を対象にしたものが大部分であり,高齢者向けのスポーツ医学が発展していくことが望まれる。高齢者は急激な運動はかえって身体的に負担になることが多く,高齢者に適した運動方法を充実することが期待される。このためには,高齢者の生理学が基礎となるので,この分野の知見が増加することが望ましい。

また,運動はレジャーとも結び付き,高原でのトレッキング等多様な場面で展開していくことが予想されるので,海洋,山岳等様々な環境状態での基礎的な医学研究が求められる。宇宙空間,高山,深海といった極限状態での人間生理の研究により,新たな知見が増大している。運動により健康を維持,増進するためには,人間生理の基礎的な知見が必要であり,こういった極限状態での研究をさらに進展させていくことも重要である。


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