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第1章   我が国科学技術の現状
3  我が国科学技術をめぐる最近の変化

(拡大する技術貿易とハイテク製品貿易)

1987年の主要5カ国の技術貿易額(特許,実用新案,技術上のノウハウの権利譲渡,実施許諾等の国際的取引)の合計は241億ドル(3兆4,800億円)で,この5年間に94%増加しており,技術貿易は拡大傾向にある( 第1-7図 )。

また,研究開発成果を活かしたハイテク製品の貿易動向をみると,世界のハイテク製品貿易輸出額は,1980年の1,122億ドルから1986年の2,002億ドルへと6年間で78%増加し,世界の貿易輸出額の同期間の伸び率5%を大幅に上回って拡大している( 第1-8図 )。

このように,近年国際取引の中で技術の持つ役割が大きくなってきている。

第1-7図 技術貿易額(受取+支払)の拡大

第1-8図 ハイテク製品輸出の拡大

(科学技術面での国際貢献への期待)

我が国は,科学技術の発展にも支えられて,GNPでみた経済規模が世界経済の14%を占めるなど国際社会における地位が著しく向上している。このような国際的な立場に対応し,今後我が国は,「世界とともに生きる日本」として世界に貢献していくことが望まれている。

科学技術面における国際貢献という褐点からみると,我が国は,基礎研究の成果等人類共通の知的ストックの蓄積には,必ずしも十分貢献してきたとは言えず,欧米諸国から我が国の基礎研究ただ乗り論が出されている。このような状況の中で,昭和63年9月に,科学技術会議政策委員会国際問題懇談会において,「基礎研究の成果を国際公共財として世界で共有するといったグローバリズム的立場をとるべきであり,基礎研究の強化を図るとともに,世界的視野に立った科学技術の振興を図るため,我が国が主導的,主体的役割を発揮することが必要である」との意見がまとめられた。

1987年のOECD閣僚理事会コミュニケにおいて,科学技術の経済及び社会に対する影響を包括的かつ総合的に把握する必要が確認され,1988年,「技術・経済プログラム」(TEP)が発足した。1990年3月,東京で開催されたTEPのシンポジウムでは,国際的なレベルで科学技術の成果の流通を促進することの必要性等が確認された。

我が国は,全地球的見地に立った科学技術の振興を図り,優秀な国内外の研究者をひきつける研究環境の整備等による基礎研究の強化,科学技術における国際協力・交流の促進のための研究者の交流等に積極的に取り組むことが求められている。

(大型国際共同研究の動き)

宇宙ステーション,核融合,粒子加速器等の例にみられるように,科学技術はその高度化に伴い,研究施設の整備等に莫大な資金が必要であるのみならず,人材,技術の観点からも,一国のみで行うことが困難なプロジェクトが増加してきている。このため,国際協力によってその建設・運営を推進しようという動きが高まっている。

具体的な国際共同研究としては,本格的な宇宙環境利用,有人宇宙活動の展開のための基盤の整備をめざす宇宙ステーション計画が,日本,米国,欧州及びカナダの国際協力により進められている。また,核融合については,国際原子力機関(IAEA)の後援の下で,日本,米国,欧州共同休(EC),ソ連の4極共同による国際熱核融合実験炉(ITER)の概念設計が行われている。

米国では,物質の根源的な構成要素である素粒子の性質等の解明に役立つと期待されている超伝導超大型衝突型加速器(SSC)計画を国際協力により推進しようという動きがある。

また,ヒトの遺伝子の全解析を目的とするヒトゲノム解析計画は,米国で5カ年計画がスタートするほか,欧州,ソ連等においても実施する動きがある。我が国では,科学技術会議等の場において,ヒトゲノム解析の今後の研究のあり方等について検討が行われている。

(地球環境問題への対応)

近年,人類の生存基盤を脅かすものとして地球環境問題が解決すべき大きな課題となっており,サミット,各国首脳会議等でも議題として取り上げられ,早急な対応策が検討されている。将来の発展基盤である環境を損なうことなく開発を進める「持続可能な開発」の考え方に基づき世界経済の安定的発展を図りつつ地球環境保全に努めることが重要になっており,科学技術による積極的な対応に大きな期待が寄せられている。

平成2年6月,地球環境保全に関する関係閣僚会議が,「地球環境保全に関する調査研究,観測・監視及び技術開発の総合的推進について」(平成元年10月,同閣僚会議申合せ)に基づき,平成2年度地球環境保全調査研究等総合推進計画をまとめ,地球環境問題に関連する地球の諸現象及び人の活動と地球環境との相互作用の解明並びに施策の立案に関する調査研究,人工衛星,航空機等を活用した観測・監視,環境負荷因子の抑制や省資源・省エネルギー等の技術開発を総合的に推進する必要性を示した。

また,同月,科学技術会議においても,諮問第17号「地球科学技術に関する研究開発基本計画について」に対する答申が行われ,科学技術の側面から我が国が地球環境問題等に取り組むべき基本的考え方,重要研究開発課題及び推進方策が示され,これを受けて同年8月,「地球科学技術に関する研究開発基本計画」が内閣総理大臣により決定された。

これらの基本方針等を踏まえ,我が国を含め先進諸国においては,人工衛星等を活用した地球観測,温暖化の機構解明,影響予測,防止対策の立案等に関する調査研究,オゾン層を破壊しないフロン代替物質の開発等を推進するなど地球環境問題への科学技術面における対応を図っている。

(社会環境の変化)

近年の我が国の持続的な経済成長は,今まで述べてきたように国際社会における我が国の地位を向上させてきたばかりでなく,国内における国民の意識の変化を促してきた。すなわち,日常生活において個々人が単に経済的豊かさを追求するばかりでなく,個性に合ったゆとりある豊かな生活を志向する傾向が強くなってきていることが挙げられる。

これまで,科学技術は経済成長の牽引力としての役割を担ってきたが,このような意識の変化に伴って,科学技術に対しても,ゆとりと充実を基本とした豊かな生活の創造への寄与が期待されている。


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