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第1章   我が国科学技術の現状
2  我が国科学技術政策の展開

我が国科学技術政策は,経済の持続的発展とより豊かな社会及び国民生活の創造に向けて多様なニーズに対して的確な対応を図り,また未来に対する新たな可能性を開拓するため,科学技術政策大綱(昭和61年3月,閣議決定)に示された,創造性豊かな科学技術の振興,国際性を重視した科学技術の展開,科学技術と人間・社会との調和の3つの柱を重点に展開されている。ここでは,政府が近年積極的に推進している基礎研究の強化,国際協力・交流の推進,大型研究プロジェクトへの取組み及び科学技術振興基盤の強化を取り上げ,それらに関連する主な施策について記述する。

(基礎研究の強化)

次の時代の科学技術をはぐくむ基本的土壌を培うという重要な役割を担う基礎研究については,これを振興するため,各省庁の目的に応じた諸施策の展開を通じてその強化を図っている( 第1-5表 )。

以下に政府が推進している代表的な基礎研究推進制度について示す。

まず,科学技術庁に計上されている科学技術振興調整費は,科学技術会議の方針に沿って,先端的・基礎的研究等の科学技術の振興に必要な重要研究業務の総合推進調整を実施することを目的としている。昭和56年度の発足当時から進められている産学官の多分野に及ぶ研究者の連携による総合研究に加えて,昭和60年度には,国立試験研究機関における基礎研究を充実するための重点基礎研究を,昭和63年度には,省庁の枠を越え,かつ海外からも研究者を結集して基礎的・先導的研究を推進するため省際基礎研究を,平成2年度には,国内の独創性豊かな若手研究者を国立試験研究機関に受け入れる科学技術特別研究員制度をそれぞれ発足させ,基礎研究の一層の充実を図っている。

このほか,科学技術庁は,新技術事業団の創造科学技術推進制度により,独創的な研究リーダーの下に内外の研究者を組織化し,独創的な科学技術のシーズの創出のための研究を推進するとともに,理化学研究所のフロンティア研究システムにより,国際的に開かれた体制の下で,21世紀の技術革新の根幹となるような新たな知見の発掘をめざした研究を推進している。また,平成元年度には,理化学研究所において,若手研究者が自発的かつ主休的に研究できる場を設けることにより,創造的・基礎的研究を推進する基礎科学特別研究員制度を発足させ,平成2年度には,フロンティア研究システムの地域展開として,地域の研究者集団と理化学研究所の研究者による共同研究を開始することとしている。

第1-5表 主な基礎的研究推進制度と予算

通商産業省は次世代産業基盤技術研究開発制度により,次世代産業の基盤技術の研究開発を推進し,厚生省は厚生科学研究費補助金により,食品衛生,新薬開発等に関する基礎的研究を推進し,農林水産省はバイオテクノロジー先端技術開発研究等により,遺伝情報の解明,生体情報の解明と制御等の基礎的・先導的研究を推進し,郵政省は電気通信フロンティア研究開発により,電気通信の高度化をめざした基礎研究をそれぞれ推進している。文部省は,研究者の自由な発想と研究意欲を源泉として,大学等における独創性豊かな学術研究を推進すべく,重点領域研究の推進,国際学術研究の推進,若手研究者の優れた研究の奨励など科学研究費補助金等の拡充を行うとともに,学術審議会の建議に基づき,平成2年度より「学術の新しい展開のためのプログラム」(新プログラム方式)により,大学等を中心とした基礎研究の推進を図っている。

また,科学技術庁と通商産業省は,生体機能の解明に係る基礎研究を国際協力により実施するため,「ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム」を推進している。

(国際協力・交流の推進)

我が国の国際化の進展に伴って,科学技術の国際協力・交流は,政府に期待される重要な施策となっており,我が国は,原子力等のエネルギー開発,天然資源開発,宇宙開発,海洋開発,ライフサイエンス,環境保全,農林水産等の分野について,科学技術協力協定,原子力平和的利用協力協定等に基づき,情報の交換,研究者の交流,共同研究等の協力活動を進めている。代表的な例として,以下に外国人研究者の我が国への受入れ制度の拡充と「ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム」を示す。

国際的な研究者の交流は,国際的な科学技術の振興を図るなどのため極めて重要であり,外国人研究者を我が国の国立試験研究機関,大学等へ受け入れることを目的とした科学技術庁フェローシップ制度,日本学術振興会外国人特別研究員制度及び通商産業省工業技術院国際研究交流事業制度が63年度に発足し,充実されてきている。平成元年度においては,30カ国以上から約300人の研究者を新たに受け入れている( 第1-6表 )。

第1-6表 主なフェローシップ制度による外国人受入れ人数枠

昭和62年6月,我が国がベネチア・サミットで提唱し,フィージビリティ・スタディを実施しつつ構想の具体化を進めてきた「ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム」は,生体の持つ優れた機能の解明に係る基礎研究を国際協力により推進することを目的としたものである。平成元年7月に実施体制等本プログラムの実施の枠組みについて関係国間で最終的な合意がなされ,同年10月に国際ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム推進機構がフランスのストラスブールに設立され,本計画がスタートした。第1事業年度助成対象者は,平成2年3月に決定され,24カ国249名の研究者の研究に対して助成金が交付されることとなった。

(大型研究プロジェクトへの取組み)

原子力,宇宙,海洋等の分野の大型研究プロジェクトについては,多額の資金と多数の人材を必要とし,かつ,開発にも長期間を要することから,総合的かつ計画的に,国立試験研究機関,特殊法人,大学共同利用機関等において推進されている。

原子力の開発利用については,原子力を我が国の基軸エネルギーとして位置付け,安全確保対策を一層充実強化するとともに,軽水炉の高度化,核燃料サイクルの確立,高速増殖炉原型炉「もんじゅ」等の新型動力炉,JT60等の核融合の研究開発を進めているほか,重粒子線がん治療装置の開発等の放射線利用に関する研究を推進している。また,原子力は,二酸化炭素,亜硝酸ガス等を発生しないことから,安全性の確保を前提として,地球温暖化等の問題に対応する有効なエネルギー源の一つとして上げられている。なお,核融合については,大学等では,大型ヘリカル装置の製作を進めている。

人類の新たな活動領域である宇宙の開発利用については,技術基盤の確立を基本とし,科学衛星,静止気象衛星,海洋観測衛星,通信・放送衛星等の人工衛星及びそれらの打ち上げ用M-V,H-11ロケット等の宇宙輸送技術の開発を推進するとともに,本格的な宇宙環境利用,有人宇宙活動の展開のための基盤の整備をめざして,国際協カプロジェクトである宇宙ステーション計画に参加している。

海洋開発については,深海潜水調査船「しんかい6500」等の開発・運用,深海生物の特異な生態系の解明等をめざした研究,地球規模の環境変化に大きな影響を与えている海洋の変動現象の解明に資する海洋観測技術の研究開発を推進している。

先導的大型工業技術については,通商産業省は大型工業技術研究開発制度において,超先端加エシステム,極限作業ロボット,電子計算機相互運用データベースシステム等の技術開発を進めている。また,同省は新エネルギー技術研究開発制度(サンシャイン計画)及び省エネルギー技術研究開発制度(ムーンライト計画)により,太陽光発電,地熱発電,石炭のガス化・液化,水素エネルギー利用,燃料電池発電,新型電池,セラミックガスタービン,スーパーヒートポンプ,超電導利用等の研究開発を進めている。

(科学技術振興基盤の強化)

広範な分野にわたる科学技術を振興するためには,これを支える機器・設備,情報流通体制,遺伝子資源等の科学技術振興基盤が不可欠である。

機器・設備の整備については,文部省高エネルギー物理学研究所においては,素粒子研究の推進のため,大型の電子・陽電子衝突型加速器「トリスタン」による実験研究を拡充するとともに,トリスタン入射蓄積リングを用いた大強度放射光実験設備の増強を進めている。また,科学技術庁では,物質・材料系科学技術,ライフサイエンス,光科学技術等の幅広い分野の基礎研究に利用が期待される大型放射光施設(S Pring-8)の整備を兵庫県播磨科学公園都市において推進している。

一方,国立試験研究所,大学・大学共同利用機関等における機器・設備の陳腐化・老朽化対応,最先端の機器・設備の開発,整備等が進められている。

情報流通体制の整備については,日本科学技術情報センターにおいて,科学技術文献データベース,ファクトデータベース,英文デ一タベース等の拡充が図られているほか,昭和62年11月には日本科学技術情報センター,米国のケミカル・アブストラクツ・サービス(CAS)及び西ドイツのFIZ-カールスルーエ(カールスルーエ専門情報センター)の3機関間で国際科学技術情報ネットワークが開設されるとともに,文部省の学術情報センターにおいては,平成元年1月から米国国立科学財団(N S F)との間で,10月には米国議会図書館との間で,また,平成2年2月からは英国図書館との間で学術情報ネットワークの国際接続が開始され,科学技術情報の国際流通の充実が図られている。また,地域内及び地域と筑波研究学園都市との科学技術情報等の流通を図るため,情報ネットワークづくりが推進されている。

遺伝子資源等の整備については,動植物の培養細胞,遺伝子,実験動物,ジーンバンク等の整備がライフサイエンスの研究に不可欠であり,関係省庁において,これらの基盤の充実に取り組んでいる。

(新世紀に向けた科学技術政策の検討)

国際社会においては,人類の生存を脅かしている地球規模の環境問題,急激な人口増加に伴う食糧問題,エネルギー問題等の全人類的な問題が発生してきており,一方国内では,内需拡大による経済成長と経済構造の改革が図られつつあるとともに,豊かな生活を志向する国民意識の高まり,急速に進みつつある人口の高齢化等が起きており,科学技術を取りまく環境は大きく変化してきている。

これらの課題に対応するため,科学技術への期待は従来にも増して大きくなっている。

このような状況の下,政府は,平成2年6月,科学技術会議に対して諮問第18号「新世紀に向けてとるべき科学技術の総合的基本方策について」を諮問し,10年後に迫った21世紀における我が国のあるべき姿を念頭に置きつつ,今後推進すべき科学技術の総合的な基本方策の策定を行うべく検討を進めている。


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