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第1章   我が国科学技術の現状
1  我が国研究開発活動の動向

我が国研究開発活動の動向を概観するため,研究費等の指標等により我が国全体及び組織別の研究開発活動の動向をみるとともに,最近の先端科学技術の主な動向について記述する。

(我が国研究開発の水準)

研究開発のインプット系指標については研究費と研究者数を,またアウトプット系指標については種々の指標が考えられるが,ここでは代表的なものとして技術貿易輸出額,ハイテク製品輸出額及び論文数を取り上げ,我が国の研究開発動向を概観する。

まず,インプットについてみると,1)昭和63年度の我が国研究費総額は約9兆8,000億円(名目,人文・社会科学を含むと約10兆6,000億円)に達しており,この5年間で46%増加(実質)した。2)平成元年4月1日現在の研究者数は46.2万人(人文・社会科学を含むと53.5万人)で,この5年間で25%増加した( 第1-1図 及び 第1-2図 )。

第1-1図 我が国研究費の5年間の伸び

第1-2図 我が国研究者数の5年間の伸び

次に,アウトプットについてみると,1)平成元年の技術貿易輸出額は約2,800億円であり,この5年間で190%増加した。2)昭和61年のハイテク製品輸出額は約11兆6,000億円であり,この4年間で93%増加した。3)昭和61年に世界の主要な学会誌等に発表された我が国研究者の論文数は3万件であり,この5年間で19%増加した( 第1-3図 )。

第1-3図 技術貿易輸出額,ハイテク製品輸出額,論文発表数の伸び

以上,この5年間程度の我が国における研究開発のインプットとアウトプットの推移をみてきたが,いずれの指標においても大幅に伸びている。

一方,これらの指標について主要国のおおよその研究開発活動状況をみると,米国の活動が最も活発であるが,我が国はほぼ米国と西ドイツの間に位置している( 第1-4図 )。これらの国の中で,我が国研究費総額及び研究者数は米国に次いでいるが,我が国研究費の政府負担割合でみると他国と比較して低く,対国民総生産(GNP)比は0.6%(人文・社会科学を含む)で欧米諸国(米,独,仏)の約半分である。また,ハイテク製品輸出額については,我が国は製造面での技術の強さを反映してトップになっている。

第1-4図 主要国の研究費,研究者数,技術輸出額,ハイテク製品輸出額,論文数の概況

(組織別研究開発活動)

―国公立試験研究機関及び特殊法人―

昭和63年度の国公立試験研究機関の研究費は約4,700億円,特殊法人の研究費は約4,300億円であり,この5年間でそれぞれ20%,46%増加した。平成元年の研究者数は,国公立試験研究機関2.4万人,特殊法人約3,000人で,この5年間で国公立試験研究機関は1%減少し,特殊法人は19%増加した。

これらの研究機関は,社会から要請される新たなニーズに的確に対応していくため,絶えず必要な事業内容,機構等の見直しを進めている。

例えば,国立試験研究機関については,地球環境問題に対応した研究を強化するため,昭和62年度には気象庁気象研究所を改組し,また,平成2年度には環境庁国立公害研究所を環境庁国立環境研究所に,科学技術庁国立防災科学技術センターを科学技術庁防災科学技術研究所にそれぞれ改組するなど必要な機構の改革を進めているほか,特殊法人については,平成元年度に新技術開発事業団において,新技術に関する基礎的研究等の事業に国際研究交流促進事業を加えて実施させることとし,新技術事業団に改組した。また,昭和63年度に改組された新エネルギー・産業技術総合開発機構においては,石油代替エネルギーの研究開発に加えて,産業技術の研究開発の充実を図っている。

―大学等―

昭和63年度の研究費は約1兆2,000億円であり,この5年間で12%増加した。平成元年の研究者数は13万人であり,この5年間で15%増加した。

大学等は,科学技術発展の基盤である学術研究の中心的機関である。

具体的組織は,大学の学部・大学院,大学共同利用機関,大学附置の研究所等であり,学術研究の発展や学際的領域の拡大等に対応して,研究組織の整備充実,弾力化,活性化が図られている。例えば,平成元年度には,大学等における核融合研究の推進を図るために「核融合科学研究所」(大学共同利用機関)を,平成2年度には,地球環境問題への対応をも考慮し,名古屋大学に「太陽地球環境研究所」を設置するなど,重要な基礎研究の推進を図っている。

また,国立大学等の主体性の下に,可能な限り社会的要請に対応するという観点から,産業界等との研究協力を推進するため,民間等との共同研究の拡充,受託研究,受託研究員の受入れ等の促進を図るほか,これらの推進の場として,昭和62年度から国立大学に「共同研究センター」の整備を進めている。

―民間企業―

昭和63年度の研究費は約7兆6,000億円であり,この5年間で56%増加し,また,平成元年の研究者数は30万人であり,この5年間で32%増加しており,国公立試験研究機関,特殊法人,大学等と比較して研究費,研究者数とも高い伸びを示している。研究費の業種別シェアをみると,通信・電子・電気計測器分野が著しい伸びを示しており,産業のエレクトロニクス分野への研究投資の集中化が進んでいる。

民間企業は,研究開発,特に将来のビジネスの糧となる革新技術の芽を育成するための基礎研究を重視しており,近年,基礎研究所等が設置されている。また,国際化の動きに対応して,製造部門のみならず,研究所を海外に立地する動きが出てきている。

(先端科学技術の主な動向)

現在の技術革新は情報・電子系科学技術,物質・材料系科学技術,ライフサイエンスの分野を中心にして展開されている。

情報・電子系科学技術分野をみると,ハードウェアの代表的技術である集積回路技術については,微細加工技術等の進歩に支えられて,最近,世界最高の集積度である64メガビットDRAMの超LSIの試作品が民間企業において作られている。処理速度を飛躍的に向上させる将来のLSIをめざして,ジョセフソン素子,三次元構造のLSI等の開発も進められている。また,コンピュータや高度情報通信網の有効谷活用をめざして,ヒューマン・インターフエース,人工知能,通信ネットワーク等の研究開発が進展している。

物質・材料系科学技術分野をみると,近年の最大の進歩は超電導物質の分野で起こった。昭和61年1月,スイスIBMチューリッヒ研究所において高温超伝導物質が発見されて以降,昭和63年1月の我が国におけるピスマス系超電導体の発見等酸化物系の超電導物質が相次いで発見されており,現在,超伝導現象の理論的研究,線材化研究等を含めた超電導に関する研究が内外の多くの研究機関で推進されている。このほか,ファインセラミックス,高機能性高分子材料,複合材料等の研究開発が推進されており,また,環境に応じて機能や形状を変化させる,いわゆる知能材料等の研究開発が脚光を浴びており,政府においてこの研究開発の取組みのための検討を進めている。

ライフサイエンス分野では,組換えDNA,細胞融合,組織培養等の先端技術を基礎として,エイズ,がん等の免疫系の研究,脳機能の研究,発生・老化等の研究が進められている。これらの成果は成長ホルモン等の希少医薬品の大量製造,新種植物の開発,品種改良等に有効な技術として,今後の利用の拡大が期待されている。


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