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第3部   政府の施策
第3章  政府機関などにおける研究活動の推進
6.  多分野の協力による研究開発の推進
(9)  地球科学技術



(1) 地球的規模の諸現象の解明に係る研究開発等

近年,リモートセンシング,深海潜水調査船等先端技術の目覚ましい発展により,大気,海洋等の大規模な変動や人間活動の環境に与える影響等に関する知見が増大している。また,異常気象,フロン等によるオゾン層破壊,炭酸ガス等による地球温暖化,砂漠化等の地球的規模の諸現象は,我々人類の社会活動と極めて密接なつながりを持っており,将来にわたり大きな係り合いを有することから,これらの諸現象の解明等が強く要望されている。特にオゾン層保護,地球温暖化対策など地球環境保全問題については,最近各種国際会議が開催されるなど国際的にも関心が高まっている。

地球的規模の諸現象への対応は,気圏,水圏,地圏,生物圏にわたる学際的取り組みを必要とするものである。また,近年の我が国の国際的立場を踏まえ,この分野において積極的な国際貢献を行う必要がある。

このため,科学技術庁長官の諮問機関である航空・電子等技術審議会地球科学技術部会は,昭和63年10月,地球科学技術に関する調査研究の総合的推進の重要性等をうたった報告を取りまとめた。

また,文部省測地学審議会では,広範多岐にわたる地球科学諸分野の研究動向等について審議し,将来に向けた我が国の推進すべき研究課題等を示すとともに,それらの推進のための方策についてとりまとめ,平成元年3月内閣総理大臣はじめ関係各大臣に建議した。

さらに,内閣総理大臣の諮問機関である科学技術会議は,諮問第17号「地球科学技術に関する研究開発基本計画について」に対する答申の策定について,鋭意調査・審議を行っているところである。

一方,地球科学技術は,対象となる事象の時間的・空間的広がり,その多様性等から国際的取り組みを必要とするものであり,欧米諸国を中心に国際共同研究計画が策定・実施されている。我が国としては,我が国に蓄積された科学技術ポテンシャルを活用し,特に国際学術連合(ICSU)等が提案し,1990年から開始される地球圏・生物圏国際共同研究計画(IGBP),海洋大循環実験計画(WOCE)等に積極的に参加する必要がある。

政府においては,当該分野の研究は国が積極的に取り組むべきものであるとの認識の下に,関係省庁がそれぞれの立場で研究開発を進めている。

これらに関する調査研究については,関係省庁において実施されているが,その主なものは以下のとおり。


(イ) 科学技術庁

関係機関の参加・協力の下に,海洋開発及地球科学技術調査研究促進費により,黒潮に関する日中共同調査研究,アジアモンスーン機構に関する研究,深部地殻に関する研究等を実施し,科学技術振興調整費により,太平洋における大気・海洋変動と気候変動に関する国際共同研究,アセアン諸国とのリモートセンシング技術の高度化とその応用に関する共同研究等を実施している。

また,国立防災科学技術センターにおいて,プレート構造の解明等地震予知に資する研究等を実施している。


(ロ) 環境庁

国立公害研究所において,地球温暖化に係る大気成分の環境動態の解明,成層圏オゾン層の変動とその環境影響等の研究を行っているほか,関係機関の参加・協力の下に,国立機関公害防止等試験研究費により不活性化学物質の不均一系光反応による変換・分解,二酸化炭素の大気・海洋間交換等に関する研究を行っている。

また,環境保全総合調査研究促進調整費により,IPCCへの対応を目的とする地球温暖化に関する調査研究,オゾン層観測システムの高度化に関する研究等を実施している。


(ハ) 文部省

大学において,国際リソスフェア探査開発計画(DELP),国際深海掘削計画(ODP),気候変動国際共同研究計画(WCRP)等の国際共同研究計画の一環としての学術研究,地震・火山噴火予知に関する学術研究,超高層大気変動,気候変動の物理的機構に関する学術研究,プレートテクトニクスに関する学術研究,地球内部における物質移動と変化に関する学術研究等を実施している。

また,国立極地研究所において,極地に関する科学の総合研究及び極地観測を実施している。


(ニ) 農林水産省

農業環境技術研究所,森林総合研究所,水産研究所等において,地球的規模のものを含む環境,自然生態系の長期的変化の計測技術及び保全・管理技術の開発,自然エネルギーの効率的利用技術に関する総合研究,リモートセンシングによる農林水産資源の観測・評価技術の開発等を行っている。


(ホ) 通商産業省

化学技術研究所,公害資源研究所,微生物工業技術研究所,地質調査所等において,地球温暖化の原因物質である二酸化炭素について人工光合成,藻類,珊瑚による固定化等の研究を実施している。

また,地質調査所において,地震予知に関する地質学・地球化学的研究,活火山の地質及び地下構造に関する研究,西南日本周辺大陸棚の海底地質に関する研究等地球並びに資源探査を目的とする地質調査研究を実施している。


(ヘ) 海上保安庁

水路業務の一環として,管轄海域における海洋総合調査,測地衛星による海洋測地,地震・火山噴火予知のための海底地形・地下構造の調査,西太平洋海域における水温,海流,波浪などの調査等を実施するとともに,日本海洋データセンターを設置し,国際海洋データ交換システムの日本代表機関として海底地形,地質及び地球物理的資料並びに海洋大循環に係わる海流,水温等の海洋情報の収集・管理・提供を実施している。


(ト) 気象庁

気象業務の一環として,1)雲の放射過程の研究,気象衛星による大気・海洋変動の研究,大気大循環並びに海洋大循環モデルの研究等気候変動機構の解明・予測に関する研究,2)台風の進路予報モデルの研究,中小規模現象の力学的・数値的研究等各気象現象の基礎的物理過程に関する研究,3)直下型地震予知の実用化に関する総合研究等の地震・火山噴火に関する研究など,気象,地象,水象等に関する研究を総合的に実施している。


(チ) 郵政省

通信総合研究所において,中層大気国際共同観測計画(MAP)期間の強化観測,長期的地震予知のための超長基線電波干渉計(VLBI)によるプレート運動の測定,電波・光による地球環境のリモートセンシングに関する研究,宇宙天気予報システムの研究開発を実施している。


(リ) 建設省

国土地理院において,国際リソスフェア探査開発計画(DELP)の一環としてのVLBIによるプレート運動に関する観測・研究及び地震予知のための地殻変動の観測・研究を実施している。

この他科学技術庁長官の諮問機関である航空・電子等技術審議会では,国際的状況を勘案しつつ地球科学技術の振興という観点から,今後取組むべき諸問題について検討を行うこととされた。


(2) 地球観測技術等の研究開発

地球的規模の諸現象の解明を図る上で必要な情報を蓄積するに当たり,人工衛星は,地球的規模での体系的・連続的な観測が可能であり,また,場を乱さずに観測できるなど,極めて有効な観測手段である。

このため,我が国でも,科学技術庁,宇宙開発事業団を中心に関係各機関において人工衛星を用いた地球観測に積極的に取り組んでいる。

地球観測衛星については,宇宙開発事業団において,昭和62年2月に我が国初の地球観測衛星である海洋観測衛星1号(MOS-1)を打ち上げ,運用している他,平成元年度冬期の打ち上げをめざし海洋観測衛星1号b(M OS-1b)の開発を,平成3年度冬期の打ち上げをめざし通商産業省とともに地球資源衛星1号(ERS-1)の開発を進めている。さらに,地球観測技術の維持発展,地球環境監視への貢献,搭載センサの国際公募による地球観測分野での協力の推進等を目的として,平成6年度頃の打ち上げをめざし地球観測プラットフォーム技術衛星(ADEOS)の開発研究を進めている。また,現在,我が国のMOS-1,米国のランドサット,仏国のSPO Tの直接受信を行っている。

文部省においては,科学研究費補助金による重点領域研究として衛星を用いた地球環境の計測と処理手法を確立することを目的に「衛星による地球環境の解明」が計画的に進められている。

地球観測衛星データの有効利用を図るための技術の研究開発については,科学技術庁において,関係省庁等の協力の下,海洋遠隔探査技術の開発研究や科学技術振興調整費による課題を推進している。

また,地球表面の約70%を占める海洋は,地球規模の諸現象に大きくかがわっており,海洋の変動機構の調査・研究を行うことは重要であるため,海洋科学技術センターにおいて,深海潜水調査船「しんかい6500」の建造や海洋観測音響トモグラフィー等海洋褐測技術の研究開発を推進している。


(3) 防災科学技術
(イ) 防災に関する研究開発基本計画の策定

地震災害,風水害,雪害等の各種災害を受けやすい自然環境下にある我が国にとって,災害の原因の解明,災害の未然防止,被害の軽減等を目的とする防災科学技術の推進は極めて重要な課題である。

このため,政府においては,科学技術会議の答申を受け,昭和56年7月「防災に関する研究開発基本計画」を策定し,地震,地すべり,火山噴火,豪雨,豪雪等自然現象に起因する災害及びこれに伴う二次的災害を対象として,長期にわたって推進すべき研究開発の分野と目標を示した。これら諸分野の研究開発を進めるに当たっては,産・学・官の有機的連携,基礎的研究の振興,大型実験施設の整備等に配慮しつつ,その効率的実施に務めている。

また,昭和59年11月「新たな情勢変化に対応し,長期的展望に立った科学技術振興の総合的基本方策について」の答申が科学技術会議からなされた。

この中で今後の防災安全対策の高度化及び総合的,計画的防災対策の推進等が提言され,これら基本方策に対応して行くこととしている。


(ロ)防災科学技術の推進
1) 地震予知

防災科学技術の推進のうち,特に地震予知は,世界有数の地震国である我が国にとって緊急の課題となっている。

我が国の地震予知観測・研究の実施に当たっては,文部省測地学審議会が建議した地震予知計画の趣旨に沿い,「防災に関する研究開発基本計画」に基づき,政府関係機関及び国立大学の連携・協力の下に進められてきている。

これらの観測・研究の成果については,「地震予知連絡会」(事務局:国土地理院)において評価・検討及び総合的判断が行なわれている。

さらに,東海地震発生の可能性が指摘されたのを契機として,昭和51年10月に内閣に地震予知推進本部(本部長:科学技術庁長官)が設置された。同本部においては,関係機関の緊密な連携・協力の下に,東海地域を中心として観測・研究の強化,観測データの集中,常時監視体制及び判定組織の整備等を図ってきた。

これらを背景に,地震予知に対する強い社会的要請を踏まえ,昭和53年6月「大規模地震対策特別措置法」が制定された。続いて昭和54年8月には同法に基づき東海地域を中心とする地域が「地震防災対策強化地域」として指定され,また気象庁には「地震防災対策強化地域判定会」が設置された。

地震予知推進本部においては,昭和63年7月に文部省測地学審議会が建議した第6次地震予知計画を円滑に推進し,「大規模地震対策特別措置法」を実効あるものとするために,関係機関の連携・協力の下に,観測・研究の拡充強化等地震予知の一層の推進を図っている。

さらに,科学技術会議の方針に沿い,政府関係機関の連携・協力の下に科学技術振興調整費による「中部日本活構造地域の地震テクドニクスに関する研究」及び「マグニチュード7級の内陸地震の予知に関する研究」を引き続き実施した。


2) 地震防災対策

地震防災対策研究については,国立防災科学技術センター,港湾技術研究所,土木研究所,建築研究所,消防研究所等において,建築・土木構造物等の耐震研究,大型耐震実験施設を用いた研究,港湾構造物の耐震研究,大震火災対策の研究等を行った。強震観測については,国立防災科学技術センターに設置された強震観測事業推進連絡会議において関係機関の観測データの交換,連絡等を行った。

第3-3-24表 防災科学技術関係予算の概要 3.科学技術振興調整費による「中部日本活構造地域の地震テクトニクスに関する研 究」, 「土砂災害危険度予測システムの開発に関する研究」等を除く。 資料:科学技術庁調ベ


3) 火山噴火予知

火山噴火予知研究については,昭和63年7月に文部省測地学審議会が建議した第4次火山噴火予知計画の趣旨に沿い,国立防災科学技術センター,地質調査所,海上保安庁,気象庁,国土地理院,国立大学が観測・研究体制を整備するとともに,各種観測・研究を推進している。これらの観測・研究の成果については,「火山噴火予知連絡会」(事務局:気象庁)において,評価,検討及び総合的判断が行われている。


4) 気象・水象災害対策等

気象・水象災害対策研究については,国立防災科学技術センター,港湾技術研究所,気象研究所,土木研究所,建築研究所等において,大気大循環,台風,豪雨及びそれに関連するじょう乱等の気象現象の解明に関する研究,家屋周辺の雪処理技術,屋根雪処理技術,雪崩発生機構の研究等生活関連雪害防止技術の開発研究,地吹雪の発生機構の解明等の雪害対策研究,高潮,波浪,河川災害,風害の防除に関する研究等を実施した。また,科学技術振興調整費により「降積雪対策技術の高度化に関する研究」を実施した。

地表変動災害対策研究については,国立防災科学技術センター,土木研究所等において,土砂災害に関する研究,大型降雨実験施設を用いた研究等を実施した。

火災・爆発災害対策研究については,警察庁,化学技術研究所,公害資源研究所,建築研究所,消防研究所等において,都市火災対策の研究,火薬,高圧ガス,可燃性ガス等の爆発災害防止のための研究等を行った。

なお, 第3-3-24表 に防災科学技術関係予算を, 第3-3-25表 に地震予知関係予算を示す。

第3-3-25表 地震予知関係予算の概要



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