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第1部   平成新時代における我が国科学技術の新たな展開
第2章  国際的な科学技術の状況変化と我が国の対応
2.  諸外国における科学技術への取組
(2)  EC市場統合を契機として技術力を高めつつある欧州



(科学の伝統を守るとともに,技術への傾斜を強める欧州)

欧州は,伝統的に科学研究に,多大な成果を生み出してきている。近年のノーベル賞においても,走査型トンネル顕微鏡(STM),酸化物超電導体の研究成果などにみられるように,なお,独創的な息吹きが感じられるところである。引き続き,フランス,イギリス,西ドイツなどでは,これを発展させるべく,国主導により科学研究の体制の見直し,予算の強化を図りつつある。しかし,技術革新のテンポの加速,高度技術の産業利用の拡大が国際的な潮流となった現在,バランスのとれた科学技術の発展ということが欧州では強く意識されるようになった。特に各国レベルでは十分産業界を中心とした研究開発投資がなされず,相対的に日米などに高度技術で遅れをとり,日米を中心としたハイテク競争にどう対抗していくかがここ数年の大きな課題となってきた。1988年末,EC委員会によりとりまとめられた第一次欧州科学技術状況報告書においても,欧州の技術力の停滞を理由を挙げて分析し,今後,1992年の市場統合を前提に置いた国際競争力の改善,生活の質的向上による社会ニーズへの対応,及び確固たる基礎研究能力の獲得による自在な技術力の展開を図ることを求めている。

このようなことから,欧州においては今,各国政策をその科学技術力の強化に向けてどう展開していくか,また,EC全体としてどう団結し,集合体としての能力を示して行くかが課題となっている。


(科学技術力強化をめざす各国の動き)

ここで各個の動きを簡単に述べてみる。西ドイツにおいては,研究開発費のGNP比率が我が国と並び,主要国では世界最高水準にある。これは我が国に比しうる旺盛な産業界の研究投資と積極的取り組み,大学やマックスプランク協会,フラウンホーファ一研究協会,国立研究センターに代表される公的な研究システムの充実によって支えられている。西ドイツにおいては,基礎研究能力,総合的な基盤技術力においては優れているが,日米に対してハイテクに関して遅れをとったとの見方から,産業界が中心となり政府がこれを支援する形で高度技術分野の技術力の強化に努めている。特に,産業界はここ5年間において実質で年率4%増の研究開発を推進している。その特徴は企業規模の大小,分野を問わない裾野の広い研究開発の展開であり,また宇宙などの大型の研究開発に対する取り組みも近年顕著である。1990年度の政府予算においても科学技術に重点を置き,総額で対前年度比5%増としており,国家的な長期的研究に資金の投入を図っている。

フランスにおいては,研究費の対GNP比は2.3%に過ぎないが,重点的な投資がなされているのが特徴である。産業界の投資は比較的低く,国が大きな役割を担っている。国においては,宇宙,海洋,エネルギーなどの大規模な研究開発プロジェクトにおいて世界をリードする一方,これらを含む基礎研究に対しては,高い比率の研究投資を行い,フランスの科学技術力の確かな裏付けを与えている。その中心を担う研究技術省においては1988年末,基礎研究,大型技術開発プログラム及び技術拡散の推進とそのための体制の見直しを打ち出している。1990年度においては,研究開発に対しては対前年度比7%増の予算を見込んでいる。また,産業界の研究投資を促進し,国全体では1990年代の早い時期に対GDP (国内総生産)比で3%の研究投資を行うことを目標としている。

英国では,ここ10年GNP比でみた研究投資は伸びず,ほぼ2.2〜2.4%の範囲にとどまっている。これは,産業の研究投資の停滞,政府の科学技術振興に対する比較的低い優先度によるものであった。また英国では引き続き多くの研究者が海外へ流出している。その結果,英国の科学技術力は低下し,政府においては,その回復に努力するようになっている。特に研究成果の効率的な産業利用の見地からLINK計画,リサーチパークなどの技術移転,産学官の協カプロジェクトが進められている。一方,政府の基礎研究投資は近年10%余の伸びを示しているが,より成果を求める動きが強まっており,最近では,分散された科学研究の推進態勢にメスを入れ統合化する動きもある。

第1‐2‐17表 ECの科学技術状況(1985年)

第1‐2‐18図 米国,日本及びEC12ケ国の研究費の対GDP比

このように欧州各国では,技術強化の努力が図られているが,一国のみでは十分な成果を挙げ,産業の強化に結実させていくのが難しくなってきているところである (第1‐2‐17表 ,18図)


(ECレベルによる科学技術振興策の推進)

1992年市場統合を控えてECの共同体レベルにおいては,欧州としての科学技術政策の推進と,競争力,技術力強化を図る動きが強くなっている。1985年にフランスのミッテラン大統領の提唱によりスタートしたユーレカ計画はEC加盟国を中心に19ケ国とEC委員会が参加し,総資金規模65億ECU(約9,750億円),プロジェクト数297までに成長した。同プロジェクトにおいては,毎年関係国の閣僚会議が開催され,その運営の検討がなされるが,1989年6月ウィーンにおける会合においてはさらにその拡大を図ることに合意した。

ECにおける科学技術政策の基本は,域内の各国政策の比較評価を行い,これを補完する政策をとることである。すなわち,欧州全休としてみた場合のあるべき構造,重点指向すべき方向などの検討がそれであり,これは第一次欧州科学技術状況報告書にも示された。またその実効をあらしめるため,EC各国の企業,研究機関が参加協力して,情報,バイオテクノロジーなどの研究開発を行うフレームワーク計画を推進している (第1‐2‐19表) 。1987〜91年の同計画においては,54億ECU(約8,000億円)を投入する計画を進めているが,1992年12月末日までに実現されるヒト,モノ,カネ,サービスの移動の自由化という大きな環境変化に対応するため,1990〜94年における新たな計画が現在提案されている。これによれば,ECがよりフリーハンドをもって技術振興を進めていくものとして,77億ECU(約1兆2,000億円)の要求がEC閣僚理事会になされた。同案は,1989年11月現在審議中である。

ECレベルの研究開発投資はEC加盟12ケ国全休の民生研究の3%にすぎず,現在はまだその成果は十分な評価を得るに至っていない。しかし,高度技術分野での重点投資がなされていること,フランス,英国をはじめ各国の期待が大きいこと,競争と協調をベースとした企業参加がなされていることなどから,今後欧州の競争力強化のために有効に作用する可能性が十分あるとみられる。

第1‐2‐19表 ECフレームワーク計画及びユーレカ計画の概要


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