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第1部   平成新時代における我が国科学技術の新たな展開
第2章  国際的な科学技術の状況変化と我が国の対応
1.  進む技術のグローバル化
(1)  国際的な技術の拡散・普及とその要因



(技術のグローバル化の要因)

科学技術は,本来国際的に流通する性格を有している。しかし,今日,技術の流通を更に加速し,広くそれが拡散・普及する条件が整い,技術のグローバル化が一層進んでいる。

特に,高度の国際的な通信手段,輸送ネットワークの整備は,科学技術の情報流通,研究者・技術者の往来を容易にしている。また,通信・輸送網の整備,経済活動の自由化などにより経済のボーダーレス化が進み,国境を越えた技術移転を伴う事業展開が拡大している。

一方,近年,特定国だけでなく各国において,研究開発に積極的に取り組まれるようになり,そこにおいてより高度な技術を受け入れる素地ができるとともに,共同事業や共同研究,研究所の海外立地が進められ,技術の交流が増した。

このような状況は,国際的な関わりの深化とともに相乗的な拡大をみせており,技術のグローバル化を促進している。

以下においては,技術のグローバル化の状況を技術貿易及びハイテク製品貿易,水平分業の進展等に見てみる。


(技術貿易及びハイテク製品貿易の推移)
‐技術貿易の動向‐

我が国及び米国を中心とした技術貿易の動向を述べる。近年,企業の国際的な事業展開,開発途上国における工業化のための技術獲得の努力などを反映して国際的な技術貿易は拡大を続けている。我が国についてみた場合,その技術力はさらに上昇しつつあるが,同時に今なおこれは技術導入の拡大を伴ったものであった。他方,技術輸出は技術力向上の結果,輸入より高い伸び率を示し,ここ1〜2年為替変動により単純な比較はできないものの,米国,西欧,アジアNIEs向けのいずれについても相当の拡大を続けている。特に,米国への技術輸出の急速な拡大,高い経済成長が続くNIEsへの技術移転の増加が目立っている (第1‐2‐1図)

一方,米国は,圧倒的な技術貿易大国であり,その優れた技術貿易パフォーマンスはまさしく米国の科学技術力の象徴といえる。その技術貿易規模も着実な増加を示しており,欧州との間において安定的な太いきずなが築かれている。また,その他の地域に対しては,日本を中心に引き続き相当の輸出増加がみられるところである (第1‐2‐2図)

第1‐2‐1図 我が国の地域別技術貿易額の推移

第1‐2‐2図 米国の地域別技術貿易額

この両国を含め,OECD諸国全体としての動きを追うと,いずれの国及び地域の技術貿易の収支もほぼ拡大基調にある (第1‐2‐3図)

このように,先進国を中心とした技術貿易は,拡大を続けており,世界的な技術の拡散・普及に寄与している。


-ハイテク製品貿易の推移-

国際的な技術の拡散・普及は,製品貿易,特にハイテク製品貿易の拡大をもたらし,また,その拡大が,技術の拡散・普及を呼んでいる。世界のハイテク製品買易輸出は,1980年の1,122億ドルから1986年の2,002億ドルへと年平均10.1%の高い伸びを示した (第1‐2‐4図) 。この結果,世界貿易に占める比率もほぼ10%にまで高まった。

各国及び地域のハイテク製品輸出額はそれぞれ拡大する一方,そのシェアには変化が見られる。米国及びECのシェアは低下したが,我が国は世界全体の16%を占めるに至っている。また,近年特にアジアNIEs諸国も大きなハイテク製品輸出国として登場してきた。その製品の多くは,未だ技術難易度のやや低いハイテク製品であるが,既に米国などの市場では大きなシェアを占め,米国のハイテク製品貿易悪化の要因との評価もなされるようになっている。このように,バランスの変化はあるが,技術の拡散・普及が進み,日米欧三極,さらにはアジアNIEsを中心にハイテク製品貿易が拡大している。

第1‐2‐3図 OECD諸国の技術貿易

第1‐2‐4図 ハイテク製品輸出の著しい拡大とシェア変化

各国における貿易志向,世界的な製品貿易の拡大に伴い,技術貿易,あるいはハイテク製品貿易も,今後引き続き高い伸び率で拡大を続けることとなろう。これを支える技術開発力の確保と地域間の円滑な技術の交流が今後一層求められるところである。


(水平分業の拡大と技術移転)

国際間の技術交流を増加させている要因の一つに,アジア諸国の技術のキャッチアップ努力とともに,従来の先進国と開発途上国との間における垂直分業の関係から水平的な分業の関係への移行がある。米国企業は比較的早くから事業活動のグローバル化を図ってきたが,我が国の場合,近年,企業活動の国際化につれて,製造業の海外直接投資も飛躍的に拡大している。海外への工場立地の増大に伴い,特に米国への投資が増加しているほか,アジア諸国への直接投資増加にも急激なものがある (第1‐2‐5図) 。こうした海外への高度技術を伴う事業展開や各国自らの工業化努力により,技術の移転が図られ,現地の技術力が向上するとともに,そこでの産業発展,民生の向上に寄与するようになった。これらにより,各国においては,水平分業度が非常に高まった。特に,アジアNIEs,ASEAN諸国は海外の直接投資を受け,生産技術のキャッチアップによって次第に付加価値の高い製品の生産能力を高め,VTRや半導体といった技術集約的製品の製造能力を有するようになった。

第1‐2‐5図 我が国製造業の海外直接投資の推移


(研究開発拠点の海外立地と研究者交流の拡大)
‐研究開発拠点の海外立地‐

海外における製造事業活動の展開とともに研究開発活動の国際展開も技術のグローバル化,拡散・普及を拡大させる要素となっている。欧米の多国籍企業は,その経営を国際的に展開し,早くからその研究機能も各地に設置し,それぞれの市場ニーズへの適応,各地における優れた研究能力の活用を図ってきた。

このような研究機能の展開は,我が国でも科学技術力の飛躍的な向上,アジアNIEsなどの技術発展により,新たな段階を迎えている。特に近年,研究機能の国際進出がかなり見られるようになった。民間動向調査によれば,我が国企業は,海外に,188か所の研究開発拠点を設置しており,4,378人の研究者を擁している。地域別では,北米が過半を占め,欧州がそれに次いでいる。業種別では,輸送用機械工業(46か所,1,700人),電気機械工業(43か所,757人),医薬品工業(11か所,175人),精密機械工業(11か所,88人)の海外進出が多い。また,通商産業省の調べでは,海外における研究投資額も1987年には436億円に達した (第1‐2‐6表)

第1‐2‐6表 我が国企業の海外拠点における研究開発費(製造業:1987年)

資本金100億円以上の我が国企業では,規模,内容にはいろいろ差異はあるが,約30%が海外に何らかの研究開発機能を既に設置又は計画中としている (第1‐2‐7図) 。進出の理由としては,海外事業活動の強化拡大に伴い,「海外の現地市場ニーズに対応した研究開発強化のため」及び「企業活動の多国籍化の一環として研究開発拠点の海外立地が不可欠」とするケースが多い (第1‐2‐8図) 。進出先での研究人材については,将来は当該国在住の外国人の比率が増す見込みである。民間動向調査によれば,「主に外国人研究者を採用」が現在,今後を通じほぼ半数を占め,日本人及び外国人研究者を概ね半々で配置または採用」する企業は現在は6.9%であるが,今後は36.4%へと急増し,将来は8割強の企業が外国人研究者を半数以上とする見込みである。このようなことから,研究の技術シーズを海外に求めるためではなく,現地での市場ニーズへの対応を中心とした研究開発拠点の立地が通例となっている。

しかし一方では,約半数の企業が海外進出について方針未定としている。

我が国の国内における高い研究開発力への信頼,国内の高度な生産技術能力と一体となった研究開発力の確保,海外研究機能のあるべき役割といった点についての様々な見方から,慎重な考え方をとっている企業も多いと言えよう。一般的には,今後海外における製造業の生産活動が拡大するのに伴い,市場ニーズへの対応を主とした研究機能の海外への設置は増し,現地への寄与が図られることとなろう。

第1‐2‐7図 我が国企業の海外研究開発拠点に関する方針

第1‐2‐8図 海外研究開発拠点立地の理由

なお,これとは逆に,我が国の市場拡大への技術的対処やその高い科学技術力の活用のために外資系企業の我が国への研究所設置が進んでいる (第1‐2‐9表) 。特に最近におけるこのような動きは,研究開発機会の相互性確保の見地からも歓迎されるところである。

第1‐2‐9表 外資系企業の研究所設置状況(製造業)


-増加する研究者の交流-

民間動向調査によると,平成元年度に我が国企業が受け入れ予定の外国人研究者は642人で,昭和62年度の410人,63年度の480人から順調に増加してきている。この3年間でみるなら,増加率は年平均25%であり,企業の受け入れが本格化していることを示している (第1‐2‐10図) 。受け入れの方法としては研修がほぼ半数を占めているが,「正規職員として」あるいは「招へい・フェローシップの非正規職員として」とを併せると,平成元年度は我が国企業は外国人研究者の約4割を雇用形態で受け入れようとしており,我が国企業において外国人研究者の研究活動に対する期待が強まってきている。

一方,我が国の民間企業が海外に派遣している研究者数は,昭和62年度667人,63年度743人,平成元年度には868人で,受け入れ数との比較において,我が国企業レベルでの研究者の交流は均衡の方向に進みつつある。

また,国立試験研究機関の研究者交流は,63年度には,派遣2,132人,受け入れ641人で,相互に拡大しており,特に近年受け入れでの伸びが大きい。

さらに,法務省在留外国人統計によれば,63年12月末現在に学術研究機関又は教育機関で研究の指導又は教育を行う者(短期大学以上の教育・研究機関で,専任の講師,助教授又は教授の職にある者)として我が国に在留する外国人は,1,322人で近年大幅に増加している。

以上みてきたような技術移転,研究所立地あるいは研究者交流による相互交流の拡大は今後とも増加するとともに,それぞれの国のニーズに対応する技術力の向上,ひいては産業発展,国民生活の向上に寄与することが期待されるところである。

第1‐2‐10図 民間企業の海外との研究交流状況


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