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第1部   平成新時代における我が国科学技術の新たな展開
第1章  わが国科学技術の推移と新たな展開
4.  厳しさを増す研究・技術人材の確保と活用
(3)  人材の流動化と多様化


我が国では,終身雇用制度が定着しており,国際的にもこの制度には一定の評価がある。一方,昨今,研究者に関しては外部組織等からのスカウトのような形での流動化現象が起こりつつあり,変化の兆しもみられ,企業における研究開発活動の充実,活性化に寄与しているとの見方がある。引き続き見込まれる高い人材需要に対しては,第一には新卒者の採用が大きな割合を占めようが,第三次産業における理工系人材の需要が拡大していることから,研究人材を広く確保するためには今後種々の対応が必要となってこよう。


(研究人材の流動化)

研究開発の高度化や複合化,研究機関の機能強化などに伴い,部門間,組織間等における人材の移動の必要性が高まっている。国においては,昭和61年度に,産学官の研究人材の移動を容易にするため,研究交流促進法を制定した。「先端科学技術研究者に対する調査」により,産学官の部門間の研究の交流についての評価を試みたところ,各部門間での人材の移動の必要度が高いとする見解が非常に多くなっている。このようなことから,引き続きその改善に資するような対策の立案・実施が必要とされよう。続いて,産業界を中心とした人材の流動化の典型である中途採用について見てみる。昨今の内需拡大,事業のリストラクチャリング,高品質を求める需要構造の変化などを背景に,企業における研究開発は,質・量の両面で厚みを増す必要に迫られている。このため企業では,既存の陣容のみでは対応できない研究人材の需要が生じている。多くの企業においては,能力ある人材を外部からスカウトするいわゆる中途採用が相当の規模で行われるようになってきている。中途採用については,我が国の社会的風土等から,主要な雇用形態の一つとして広く定着するか否か等今後の推移を注視する必要があるが,民間動向調査によれば,検討中も含め中途採用を正式の採用方式としている企業は74%にも達している。正規の採用方式として,中途採用を取り入れている企業を業種別にみると,精密機械工業,通信・電子・電気計測器工業,自動車工業のようなハイテク関連の業種に多くみられ,また,資本金規模別では,それが大きい企業ほど中途採用に積極的な姿勢がみられる。さらに,このような中途採用の理由をみると,即戦力になる人材の確保を目的としたものが非常に多く(60%),企業が具体的な事業の展開に役立つ人材を強く求めていることを示している (第1‐1‐62図)

第1‐1‐62図 研究者の中途採用の有無及び理由


(研究人材の多様化)

高齢化など人口構造の変化や学齢人口の低下による学生数の減少に伴い,長期的に研究者・技術者の不足が見込まれる。このため,今後,優れた研究者の長期研究従事,女性研究者及び外国人研究者などを含む人材の多様化が必要と考えられる。

このような研究者不足と,産業界の研究者需要の大幅な増加に対応するため,,一つには,比較的近い将来において,年齢層は高くとも優れた研究者を有効に活用していく必要性が生じてくる。このようなことから,我が国の産業界においても,研究者が研究者としてより長期的に処遇されるような体制の整備が一部においては進められており,いわゆる「冠研究室」や研究者としての昇格の構造を設けて企業における研究機能の拡充を図っているところもある。また,国研においてもそのような運用は図られつつある。経験ある優れた研究者には,引き続き独創的研究意欲を持ち続けている者,応用開発面で効率的な研究推進に優れた月を持っている者が多い。このような比較的長期に渡り研究に参加するシステムの確立は,今後,我が国の研究人材の幅広い確保という観点から必要とされよう。

また,従来,我が国では研究者全体に占める女性の比率は高くなかったが,欧米においては既に女性の研究者への進出は多くみられ定着している。我が国においても,高等教育機関への進学率の上昇と相まって,学校基本調査報告書によれば女性の理科系学部入学者もここ5年間において年率3.2%の増加を示し,学部卒で就職した女性技術者数も63年に1万9千人,また,新規学卒技術者数に占める比率も12.5%へと増加している。このように,我が国における女性の理科系人材に占める比率は高まりつつあり,今後,各方面における人材不足の深刻化とも相まって,研究・技術部門においても女性の活躍が期待される。

国立試験研究機関,大学においては,既に外国人を研究者として採用する途が開かれており,また,フェローシップ制度の拡大により外国人研究者の受入れも増加している。産業界でも,既にここ数年,外国人研究者の採用が増えている。民間動向調査によれば,我が国産業界での外国人研究者(雇用)総数は,昭和62年の169人から平成元年の213人べと増加している。業種別では,通信・電子・電気計測器工業,機械工業,医薬品工業等ハイテク分野での採用が多い (第1‐1‐63図) 。多くの優れた外国人研究者の採用は,研究者の海外派遣数が外国人研究者の受け入れ数より多いという,いわゆる研究者の交流インバランスの解消にも有効な策となろう。

第1‐1‐63図 民間企業における外国人研究者の採用状況(業種別)

このように,我が国においては,当面のみならず長期的にも研究者・技術者の不足が見込まれることから,研究者・技術者の円滑な確保が図り得るような施策を推進するとともに,併せて人材確保の多様化など柔軟な対応が必要となっている。


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