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第1部   平成新時代における我が国科学技術の新たな展開
第1章  わが国科学技術の推移と新たな展開
3.  公的部門の役割と新たな展開
(3)  国立試験研究機関等の役割と活性化策の展開


産業界の研究開発活動が著しく充実する一方,公的研究機関の国全体に占める研究開発の比重,特に研究費の比重は相対的に低下している。しかしながら,より長期的な研究開発への取組み,本格的な基礎研究成果への期待,新しい学問分野の創設など公的研究機関の役割は重要である。ここでは,特に国立試験研究機関の状況を中心に述べる。

国立試験研究機関は,これまで技術試験,標準化,特定分野の検査など主として行政ニーズに直結した研究を実施してきた。近年はこれとともに,所要の設備を擁し,より高次の研究開発を展開し,その活動を活性化することが求められている。とりわけ新たな技術シーズの創出等を目指した基礎的・先導的研究の強化を図ることが要請されている。このような状況を踏まえ,ここ数年国立試験研究機関のあり方がいくつか示され,またそれに沿った施策が講じられている (第1‐1‐48表) 。内閣総理大臣が科学技術会議第13号答申を踏まえ昭和62年10月に定めた「国立試験研究機関の中長期的在り方の基本」では,国立試験研究機関が新たな技術シーズ等を目指した基礎的,先導的な研究を推進すること及び国立試験研究機関が国際化し科学技術の面から国際的に貢献することがとりわけ重要な政策課題であるとし,今後の政策展開の基本方針を示している。科学技術会議が行ったこれらの政策の実施状況調査によると,人材確保等短期的には解決困難なものも多いが,総じて政策の実現に向けての努力が鋭意行われている。

第1‐1‐48表 国立試験研究機関の機能強化関連施策の展開(昭和56年以降)


(研究リソースの現状)

国立試験研究機関の使用研究費は,過去5年間において年率8.7%の伸びを示し,昭和62年度で2,974億円に上っている (第1-1-49図) 。また,63年の研究関係従事者数は18,538人であり,このうち研究者が56.5%,補助者・技能者が16.4%を占めている。研究者1人当たり研究費(国防研究費を除く)は,1,680万円(会社は2,325万円),また研究者1人当たりの補助者・技能者は0.29人(会社は0.57人)であり,国立試験研究機関の水準は相対的に低く,産業界の研究投資が著しい伸びを示していることから官民格差はさらに大きくなるものとみられる。

先にも述べたように,国立試験研究機関の研究者を含め,多くの第一線の研究者は我が国の研究開発構造には何らかの課題があるとしており,特にその内容として研究構成(基礎と応用・開発のバランス),資金面(不足),研究体制(国,大学,民間)を挙げている。また,資金面の課題では,基礎研究費が不十分,政府投資額が不十分,配分方法が不適当などの内容が高い (第1‐1‐44図) 。このようなことから研究者の立場からは,基礎研究とそのための政府による資金が強く求められており,その実施の任を担う国立試験研究機関の充実への要請は非常に高いといえよう。

第1‐1‐49図 国立試験研究機関の使用研究費の推移

他方,国立試験研究機関の成果面をみるとこのような意識の高まりを反映して充実しつつある。JICSTの抄録でみた論文発表件数でも昭和55年度約2,700件,60年度約4,900件,63年度約7,200件と大幅に増加している。しかし,英文論文についてはまだ少なく,国際的な対応の面ではなお不十分である。特許の出願件数は,55年度の617件から61年度の986件へと増加しており,成果を積極的に公表していく姿勢が顕著になっている。


(弾力的かつ開放型の研究システムの充実)

国研等においてより基礎的な研究に取り組むにつれ,弾力的な組織運営が求められる。従来の行政ニーズに基づく試験あるいはプロジェクトタイプの研究開発においては期間を明確にして的確な研究管理が行われた。しかし基礎研究においては個人の独創性に委ねられるため研究運営をゆるやかにする一方で,適切なテーマ選定から成果の産出までの競争環境を整備するとともに,研究評価を的確に行うことが必要となってくる。

第一線の研究者の立場からも我が国における基礎研究強化策としては,資金面の課題への対処とともに自由度の高い研究制度の拡充,組織運営の弾力化,的確な研究評価が重要とされているところである。このようなことから,公的研究機関においても内なる自由化として,自らの手で極力研究者の自由度を高め,また,一方で適切な評価を行いうるようにする必要がある。国全体としても研究交流促進法のような弾力化の措置を引き続き講じていく必要があろう。

また,外部との交流に関しても要請は強い。これまで関係省庁において民間との共同研究の拡大を図り,あるいは,技術研修などによる研究者の受入れを進めているが,引き続き,その努力を図っていく必要がある。

先端科学技術研究者に対する調査によれば,民間研究者の50%余が官産間の交流は不十分あるいは改善が必要としており,特に人的交流,情報交流を含む全般的関係強化を求めている。一方,大学研究者の60%余が官学問の交流について同様としており,人的交流などが望まれている。

以上のようなことから弾力的な開放型の研究システムを充実し,研究機能の向上に役立てていく必要がある。


(特殊法人機能の充実)

研究開発を目的とする特殊法人は,国立試験研究機関とともに政府の研究活動の一翼を担い,大きな役割を果たしている。特殊法人は,国又は民間などから広く人材を結集し得ること,自主的,弾力的な運営が可能であること,国家資金以外に民間資金の導入が可能であることなど,研究開発を実施する上ですぐれた特徴を有している。

例えば,理化学研究所は,科学技術に関する試験研究を総合的に行い,その成果を普及することを目的とした特殊法人であるが,すべての研究活動の基本は人にあるとして,それぞれの研究分野についてすぐれた研究者に独創性のある研究を展開させるなど人本位の研究運営を行っている。また,研究領域について,広範囲の科学技術の分野をカバーする水平的な広がりと基礎研究を実用化に発展させる垂直的な広がりを持っており,研究成果については,文献資料の発表,シンポジウム等の開催,特許実施許諾,研究生及び研修生の受入れ等によりその普及を図っている。これらの活動により,広く学界・産業界の発展に寄与している。

昭和61年10月,理化学研究所は,国際的に開かれ,かつ流動的な体制のもとに研究者を結集し,長期的な観点に立って先端的な基礎研究(フロンティア研究)を実施することを目的として,国際フロンティア研究システムを発足させた。このシステムでは,国際的に開かれた体制を実現するために,研究チームのリーダー及びメンバーに相当数の外国人研究者を任命し,また運営委員会及びアドバイザーにも数名の著名な外国人研究者を委嘱している。

この制度では,柔軟な組織の弾力的な運営が可能であり,我が国の基礎研究を強化していく上で,この制度が一つのモデルとして先導役を果たしていくことが期待される。また,このような動きは理化学研究所だけではなく新技術事業団における創造科学技術推進事業,あるいは日本原子力研究所などによる原子力基盤技術研究等においてもその特徴を最大限に活かした研究の強化,実施が図られつつあるところである。

我が国における基礎研究を中心とした創造的研究を強化するため,今後も,特殊法人が持つ優れた特徴を有効に活用し,研究者の自由と適切な研究評価を基調とした研究システムの育成に努めていくことが必要となっている。

以上みてきたように,公的部門は経済社会からの要請の変化への対応が求められており,とりわけ,基礎研究強化及び国際貢献において国が果たすべき役割には大きなものがある。公的部門のリソースは相対的に弱体であり,機能充実策は逐次実施されてきてはいるが,今後施策の一層の充実強化を図っていく必要がある。


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