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第1部   平成新時代における我が国科学技術の新たな展開
第1章  わが国科学技術の推移と新たな展開
2.  産業界の研究開発活動の推移と展開
(3)  技術をめぐる競争環境の激化


これまで,我が国産業界の研究開発構造と環境変化への対応の推移を述べてきたが,以下においては技術をめぐる競争状況を市場の側から分析してみる。


(激しさを増す競争)

技術的な競争状況を国内市場と海外市場に分けて分析する。国内市場については,円高や貿易摩擦により,我が国企業がこれを一段と重視するようになっている。また,国内市場自体はニーズが高度化しており,技術競争が激化する要因となっている。あわせて,内需拡大により購買力が増加した国内市場に対して海外企業の参入が増加している。

一方,海外市場においても技術競争が激化している。円高により価格競争力を失った我が国産業界は技術力を強め,あるいは現地生産化を進めている。

これに対して欧米は競争力強化の努力をしており,またNIEsの技術的追い上げも顕著である。


‐国内市場‐

国内市場の技術的な競争環境は5社のうち4社が激化しているとの認識を有しており,その率は海外市場よりも高い (第1-1-34図) 。これを業種別にみると,特に通信・電子・電気計測器工業,医薬品工業などの先端技術産業分野において市場激化が著しい。

激化の理由では,ほとんどが「国内同業者間の競争」を挙げており,この他に「国内異業種からの参入」,「海外からの高度技術製品輸入の拡大」などが挙げられている (第1‐1‐35図) 。また,「科学と技術の接近,製品化期間の短縮によりシーズが限られてきていること」と答えた企業が10%に達している。

第1‐1‐34図 国内・海外市場の技術面からみた競争環境

第1‐1‐35図 国内市場の技術競争激化の要因


‐海外市場‐

海外市場では6割の企業が技術競争が激化していると評価している (第1‐1‐34図) 。激化している理由について,「我が国企業間の競争」を挙げるものが39.1%と最も多く,次いで「アジアNIEs・ASEANの技術力向上,追い上げ」36.7%,「米国企業の競争力強化」26.4%,「欧州企業の競争力強化」22.5%となっている (第1‐1‐36図) 。国内市場に比べNIEsなどアジア系企業が激化の要因とする比率が高くなっているとともに,欧米の企業の競争力強化も大きな要因となっている。これは,海外では市場ニーズが国内より高度化されていない事業分野がかなりあることによるのではないかと思われるが,アジア系企業が海外でも激しい技術競争の主役になっていることをうかがわせる。

激化の理由を業種別にみると,「米国の企業の競争力強化」を理由とするのは,医薬品工業が他の業種に比べ多く,米国企業の技術力が強化されていることを示している。「欧州企業の技術力強化」を理由とするのは,総合化学・化学繊維工業,医薬品工業及び機械工業が多くなっている。また,「アジアN IEs・ASEANの技術力向上,追い上げ」を理由とする企業が多いのは,建設業,繊維工業,総合化学・化学繊維工業及び鉄鋼業である。「我が国企業間の競争」を理由とする業種では,機械工業,電気機械器具工業,通信・電子・電気計測器工業,自動車工業など加工組立型産業が多くなっている。

(短くなる商品化までの期間と技術の寿命)技術競争の激化に伴い研究開発から製品化までの期間,技術の平均寿命についてどうなっているか分析する。

第1‐1‐36図 海外市場の技術競争激化の要因


‐商品化までの期間‐

商品化までの期間は自主技術により商品化する場合「短期化している」が41.7%,「ほとんど変化がない」30.2%,「長期化している」23.5%となっている (第1‐1‐37図) 。これは,競争の激化により短期化の傾向がある一方で,自主技術で商品化する場合基礎的な研究開発が必要となって長期化する傾向があることを示している。短期化傾向にある主な業種は,機械工業,電気機械器具工業,通信・電子・電気計測器工業,輸送用機械工業,精密機械工業など加工組立型産業が多い。一方長期化傾向にある業種は,総合化学・化学繊維工業,石油製品・石炭製品工業,非鉄金属など素材型産業及び医薬品工業であり,特に医薬品工業においてその傾向が著しい。

第1‐1‐37図 商品化までの期間

技術を社外から導入して商品を開発する場合は,明らかに商品化までの期間が短期化する傾向にある(第1‐1‐37図)。業種別にみると,食品工業,機械工業,電気機械器具工業,通信・電子・電気計測器工業,自動車工業など主に加工組立型産業において短期化の傾向が強い。競争の激化により商品化までの期間を短縮化するため,あるいは異分野の技術を組み合わせた新製品開発を効率的に進めるため,既に技術を保有している企業から必要な技術を導入する傾向は,競争の激化に伴い今後とも続くと考えられる。


‐技術の平均寿命‐

企業が保有する主な要素技術の平均寿命についても短期化している。社外から特許収入の得られた期間,又は製品・サービスによって収益の得られた期間については「短期化している」と評価する企業が61.2%を占め,短期化の傾向が強く出ている (第1‐1‐38図) 。業種別にみると機械工業,通信・電子・電気計測器工業などで短期化の傾向が強くなっている。さらに主要な要素技術が新規性を保持している期間についても,同様に短期化の傾向が強い (第1‐1‐38図) 。「短期化している」と評価する企業が73.7%を占め,技術の陳腐化の速度が高まっていると思われる。業種別にみると医薬品工業,石油製品・石炭製品工業,電気機械器具工業,通信・電子・電気計測器工業などで短期化の傾向が強くなっている。

激しい技術開発競争の結果,技術の陳腐化の速度が加速され,それによって次の競争が導かれるという循環ができあがっているものとみられる。

第1‐1‐38図 主要素技術の平均寿命


(我が国の技術力)

これまでみてきたように,我が国の企業は環境変化に対応し,激しい市場での技術競争を行い,研究開発にも積極的に投資してきた。その結果,我が国の企業の国際的にみた技術力はどのようになっているか,欧米との比較を行ってみる。

民間動向調査により,我が国企業が自らの技術力を世界の同業他社と比較してどのような水準にあると考えているかを分析した。「欧米(有力会社)の水準とほぼ同等」と答えた企業が60.6%で最も多く,次いで「国際的にほぼ最高水準にある」が23.2%となっている (第1‐1‐39図) 。すなわち,8割以上の企業が欧米の技術水準と同等,あるいはそれ以上と評価している。

業種別では,繊維工業,鉄鋼業,自動車以外の輸送用機械工業で「国際的にほぼ最高水準」と答える比率が平均より高い。しかし,これらの業種は欧米では既に主力ではなくなっている面もある。「欧米の水準とほぼ同等」と答える率が平均より高かった業種は総合化学・化学繊維工業,油脂・塗料工業,石油製品・石炭製品工業,ゴム製品工業,窯業,非鉄金属工業,機械工業,電気機械器具工業,通信・電子・電気計測器工業,自動車工業,精密機械工業などであり,現在研究開発に積極的な業種が多い。反対に建設業,パルプ・紙工業,医薬品工業は「多少欧米水準に及ばない」と答えた率が平均より高く,特に医薬品工業の回答率が高かったことが注目される。医薬品工業は研究開発に積極的に取り組んでおり,研究開発費の対売上高比率をとっても全業種中最も高いが,欧米の有力会社は規模が大きく高い技術展開力を有していることが原因とみられる。

第1‐1‐39図 自社の技術力評価

以上分析してきたように,我が国企業の研究開発に取り組む姿勢は積極的であり,事業を取り巻く諸環境の変化にも自ら研究開発を実施することなどにより積極的に対応してきた。技術競争は激しいものがあるが,我が国の市場ニーズの高度化と相まって我が国産業は高い技術力を有する,ようになった。引き続き,我が国産業の円滑な事業展開が,研究開発を大きな軸として推進されることが期待される。


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