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第1部   平成新時代における我が国科学技術の新たな展開
第1章  わが国科学技術の推移と新たな展開
1.  我が国科学技術の背景と現状
(1)  経済社会の発展を支え,さらに飛躍する我が国科学技術



(経済社会の環境変化への対応)

我が国は,これまで経済発展の段階に応じて経済構造を大きく変化させてきた。重化学工業化と輸出拡大による欧米諸国への急速なキャッチアップの時代を経て,国際化,高齢化,価値観の多様化などの新しい時代の流れの中で,国際協調を図るとともに,経済成長の成果を国民生活の質の向上に振り向けるような経済構造への転換を図るべき時代を今日迎えている。このような,それぞれの構造変革において我が国は的確に対応しており,産業界においても適応能力の高さを示してきた。産業構造の変革は,産業を取り巻く国際的,社会的諸条件へ企業が適座した結果であるが,その過程で科学技術とこれをベースとした技術革新が果たした役割は大きかった。

第1-1-1表 我が国科学技術の推移

第1次石油危機を契機に,素材・エネルギー関連産業が相対的に縮小する一方,電気機械を中心とする加工組立型産業と産業の知識集約化・情報化を支えるサービス産業が拡大した。このような背景のもとで,それまでのエネルギー多消費,大型資本設備中心の重化学工業を軸とする技術革新から,知識集約化・技術集約化を進めるエレクトロニクスを軸とする技術革新へと技術の流れが変化した。また,輸出志向の産業構造から内需主導型の産業構造への転換に当たっても,高付加価値化をはじめとする多様な消費者二一ズへの的確な対応が要請され,この面でマイクロエレクトロニクスや新素材による各種の市場性の高いハイテク製品の開発などを通じて科学技術は大きく貢献しつつある (第1-1-1表)


(科学技術を一つの軸とした経済発展)

このような産業レベルの技術を中心とした科学技術の振興について,我が国は国際的に高い評価を得ている。我が国においては産業における技術革新が比較的高い経済成長に大きな役割を果たしてきたことに特徴があり,この中にあって科学技術はその裏付けとして機能してきた。技術進歩の付加価値成長に対する寄与は,技術進歩を反映する全要素生産性の増加率 (注)1 でみることが行われている。製造業における全要素生産性の推移を国際的に比較すると,我が国は高い水準で推移しており,我が国産業経済の発展に資する優れた技術力の存在とこれらによる比較的高い成長の達成をうかがうことができる (第1-1-2図) 。このような傾向は再び近年強くなっており,科学技術主導の成長の様相を帯びてきた。

第1-1-2図 技術進歩の成長への寄与度 (各国の製造業の全要素生産性の増加率)

我が国の研究費及び国民総生産の推移をみると,昭和50年代前半までは同程度の伸びを示していたが,50年代後半に入り研究費が国民総生産の伸びを大幅に上回り,推移に明らかな違いをみせるようになった (第1-1-3図) 。これは,産業界における旺盛な研究開発意欲によるものであり,高付加価値化等 への積極的な対応をみることができる。企業自ら技術シーズを求め積極的な研究開発活動を展開していることをうかがわせる。

また,製造業の研究費及び設備投資額の推移をみても,研究費は昭和55年度には設備投資額の約3割であったが,昭和62年度には5割の水準に達している (第1-1-4図) 。企業においてはこれまで技術を休化した設備投資がその成長のために重視されてきたが,最近ではこれに加えてその先行投資として位置づけられる研究開発が重視されてきたことを示している。このようなことはまた,我が国が海外の技術の消化・吸収によるキャッチアップを図った時代から,長期的な成長の源泉を自ら見いだす自立型の科学技術構造に移ったことを強くうかがわせる。


注)1.付加価値成長率から資本の増加率,労働の増加率を引いたもので,技術進歩を示す(資本や労働の質の変化その他の要素を含む)。

第1-1-3図 研究費(実質)と国民総生産(実質)の推移

第1-1-4図 製造業の研究費と設備投資


(企業経営と研究開発)

科学技術庁が平成元年8月に民間企業1,263社(回答879社)に対して行った「平成元年度民間企業の研究活動に関する調査」(以下「民間動向調査」という)によれば,民間企業ではその経営方針において重視するものとして,「研究開発の強化」(66.7%)を挙げる企業が多くなっており, 「既存事業分野での高付加価値化」(45.3%)がそれに続いている。経済構造調整の進展の中で研究開発あるいはそれに関連した事項の重要性が強く認識されてきているところである (第1-1-5図) 。こうした研究開発重視の傾向は,設備投資や雇用においても研究開発部門を最重要視するとの企業の考え方にもあらわれている(経済企画庁「昭和63年度企業行動に関するアンケート調査」(平成元年1月))。このようなことから,ほとんどの企業において引き続き,研究開発の資金及び人材を強化していくとの見通しを有している状況にある。

第1-1-5図 企業経営において重視する方針


(国の役割の変化と的確な対応)

経済社会,国際環境あるいは国民二一ズの時代による変化に伴い,国においても科学技術面で政策の立案,研究開発の推進,規制の実施など必要な対応を図ってきた。産業において幅広い技術振興が必要といれた時代には,関係行政機関においてそのための支援制度を設け,技術育成に努めた。エネルギー,資源,食糧の安定供給,医療や安全性の向上といった課題への科学技術による対応には高い優先度が与えられ,目標達成に寄与してきた。また,厳しい環境規制を図るとともに,中・長期的な規制目標を示すことにより,これに対応する技術開発を促進するなどして公害問題に対処してきた。さらに,基礎研究の強化や宇宙,海洋など我が国として必要な高度な技術分野の自主開発を推進してきた。

近年においては,産業界における研究開発活動が飛躍的に拡大し,国あるいは公的部門の実施する研究開発活動の比重は相対的に低下したとされる。

しかし,高齢化,価値観の多様化,情報化,国際化,都市集積化など,社会構造が大きな変化を遂げる一方,世界における主要国として我が国に国際的な責務の遂行が求められる今日,国として科学技術面においても果たすべき役割には大きなものがあり,また,新たな二一ズも発生している。長期的なリスクの高い基礎研究や我が国の科学技術の発展の基盤である大学における学術研究,研究・技術人材の育成・確保,高度な研究環境の整備,行政目的遂行のための研究などについてもこれまでと同様,国が主たる役割を担う分野であり,その要請は強まっている。このようなことから・,国においても新しい時代における環境変化に対応した一層大きな役割の遂行が求められている。


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