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第1部   創造的研究環境の確立をめざして
第2章  国際的視野に立った創造的研究環境の整備の推進
3.  科学技術情報活動の新たな展開
(4)  知的所有権等をめぐる国際情勢と科学技術情報


1) 知的所有権と科学技術情報

知的所有権は,科学技術活動を含め,人間の知的,創造的活動の成果を財産として保護するための権利であり,長い歴史を有する。今日,人類共通の財産であるべき基礎科学の成果や広範なソフトウェアの分野まで含めて,その権利の在り方について討議がなされるようになった。技術の高度化,多様化に伴い,その問題は一層重要性とともに複雑さを増してきており,知的所有権問題への適切な対応が重要となってきた。今日,知的所有権により保護されるものには,計算機プログラム,データベース等の著作物,ICのチップレイアウト,バイオテクノロジー関連技術などが含まれており,中には基礎的研究分野とも深く関連する内容が含まれている。

科学技術活動の振興と知的所有権との係わりについては,次の二つの側面がある。

第一には,研究開発を活発化する環境作りである。研究成果の適切な保護を行うことにより,他人が無断で商業的に使用することを防止し,研究開発へのインセンティブを付与している。

第二には,成果の公開と利用を促進することにより,科学技術知識を広く普及させ,また,新たな科学技術の発展を促すという公益性の確保である。

これら両面とも科学技術の振興には重要な要素であり,一方が充分に行われなければ,研究開発活動を阻害する結果となりかねない。これらの側面を,調和を図りながら進めることによって,研究開発と科学技術情報流通の促進に効果的に寄与しうるものと言えよう。

2) 国際的な動向

科学技術の発達等によりエレクトロニクス,バイオテクノロジー等の領域で技術革新が急速に進み,産業全体の知識集約化が一層進展するにつれ,知的所有権問題等に関する動きが先進国において激しくなっている。今日,通商という観点のみならず,科学技術に関する国際交流の推進を積極的に図っていく観点からも,知的所有権等について国際的コンセンサスを形成していくことが肝要である。

特に,米国においては1985年のレーガン大統領の通商政策アクションプログラム,1986年の米国通商代表部(USTR)の知的所有権保護政策を始めとし,「1988年包括貿易・競争力法」においても知的所有権保護を大きな柱に据えるなど積極的な対処を図っている。今後,多国間を中心とした調和,調整が求められよう。以下に最近の多国間の国際的な活動を掲げてみる。

(関税と貿易に関する一般協定(GATT)ウルグアイラウンド)

1986年,ウルグアイで開催されたGATT閣僚会議において,「不正商品貿易を含む知的所有権の貿易関連側面」が新交渉項目とされた。以後,知的所有権の不適切な保護から生じる貿易上の障害の軽減のための知的所有権に関する国際的ルール作りをめざしており,知的所有権の保護規範,エンフォースメント(行政・司法の執行)等について検討している。

(世界知的所有権機構(WIPO))

WIPO設立の目的は,世界的な知的所有権の保護を促進し,諸同盟間の行政的協力の確保を図ることである。現在,WIPOにおいては,工業所有権の保護に関する基本的な国際条約であるパリ条約の改正につき検討を行うとともに,特許制度の国際的なハーモナイゼーション,先端技術等の新保護領域の検討,不正商品の防止に関する問題の検討,工業所有権に関する情報の標準化等の活動が行われている。また,バイオテクノロジー発明を工業所有権でより適切に保護することについて検討が進められている。

(OECD)

科学技術の国際協力のための共通原則の一般的フレームワークにおいて,加盟国は経済成長及び社会開発のための科学技術における国際協力促進のための努力を図ることとし,その中で,「知的及び工業所有権の普遍的な保護の改善を促進すること」について勧告を行っている。

(植物の新品種保護に関する国際同盟(UPOV))

UPOVは,植物新品種の育成者の権利を保護すること等を目的とした国際的同盟組織であり,先端技術の品種保護制度に対する影響,審査事務効率化のための協力等について検討が進められている。

(三極特許庁会合)

日本,米国及び欧州の三極特許庁は共通の課題を効率的に解決すべく協力を行っており,特許制度・運用の調和,特許情報の交換等について検討している。また,日本,米国に加え欧州特許条約加盟国(13か国)を含めた会合(クラブ15)においても同様の議論がなされている。

(日米欧民間三極会議)

GATTウルグアイラウンドに対応して,三極の民間レベルでの合意をG ATT及び各国政府に働きかけるため,日本の経済団体連合会,米国知的所有権委員会(IPC)及び欧州産業連盟(UNICE)からなる会合で,G ATTの知的所有権協定に盛り込むべき基本原則を産業界の立場から検討し,1988年6月に共同文書をとりまとめた。

知的所有権の保護は研究成果の流通を促進し国際的な公共財としての蓄積を増大させる上での一つの基本的な条件となってきているが,また一方では,発明者,著作者に財産権を付与することにより創造的活動を奨励し,ひいては産業の競争力を向上させるための手段ともなっている。このため,科学と技術が接近していると言われている今日の科学技術活動においては,知的所有権の扱いは重要な課題となっており,調和のとれた知的所有権等の保護制度が期待されている。

以上見てきたように,今後ますます科学技術活動の活発化,高度化さらにまた国際化が進むのに伴い,広い見地に立って科学技術情報活動を振興していくことが期待されるところである。


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