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第1部   創造的研究環境の確立をめざして
第2章  国際的視野に立った創造的研究環境の整備の推進
3.  科学技術情報活動の新たな展開
(2)  創造的研究開発のための科学技術情報活動高度化の現状


今日,論文等の科学技術情報の流通を情報処理,ネットワーク等の手段を用いて高度化することにより,研究開発の効率化に資することが重要となっている。具体的には,データベースやコンピュータネットワークの利用がこれに当たる。

データベースは,中央の計算機に構築され,それをオンライン端末によって利用する形態が多いが,将来的には,CD-ROM(コンパクトディスク型読み出し専用メモリ)等の形で量産されたデータベースを研究者が個別のコンピュータにおいて利用する形態も出現しよう。

ネットワークとしてはパーソナルコンピュータ通信等により研究情報を端末間において直接送受するといった流通活動も増加している。

1) 科学技術情報の入手

先端科学技術研究者に対する調査によれば,68%の研究者が研究情報入手に問題があると考えている。その内容としては主に「時間的余裕を得にくい」,「情報入手のための旅費,資料購入費の不足」及び「情報システム,データベースが不十分」が指摘されている。これを所属別に見ると,国立試験研究機関においては「旅費,資料購入費の不足」,民間企業においては,「情報システム,データベースが不十分」また,一般的には「時間的余裕を得にくい」が多い結果となっている。( 第1-2-60図 )。

第1-2-60図 研究に関する情報入手の問題点

第1-2-61図 現在の研究開発拠点での不便な点

また,民間企業において,現在の研究開発拠点の立地に対する問題点を見てみると,「交通の便が悪い」(34%)に次いで「情報が得難い」(29%)がある( 第1-2-61図 )。前者には学会,会合等における人との交流を通じての情報入手の不便さも含まれていることから,研究開発のため他からの円滑な情報入手が重要となってきていることがわかる。ちなみに,新たに研究開発拠点の設置または移転を行うとした場合にどこを選択するかについて調査したところ,首都圏が59%,筑波研究学園都市が24%となっており,交通,情報入手の便利さを求めた集中傾向が見られる( 第1-2-62図 )。

第1-2-62図 研究開発拠点を設置する場合の候補

第1-2-63図 外部の科学技術データベース利用

科学技術情報流通システムの高度化により,研究者は本来の研究業務により多くの時間を充てられるほか,自分の専門分野にとどまらない学際研究等の広い分野の情報を得やすくなるなど研究業務の効率化に役立つものである。また,距離に関係なく容易に情報交流,利用が可能となるため,情報を求めた研究所の集中傾向も緩和される可能性を持っている。

2) データベースによる情報流通

外部のデータベースも研究者にとっては重要な情報源であり,先端科学技術の研究者はその68%が外部データベースを利用しており,その中でも民間企業の研究者については85%に達している。特にライフサイエンス及び物質・材料分野において利用が多い( 第1-2-63図 )。

(データベースの整備状況)

我が国における科学技術関係のデータベースサービスとしては,日本科学技術情報センター(JICST),学術情報センター等多くの機関により提供されている。JICSTの活動規模を見ると,文献抄録については,昭和63年度には58万件を作成することとしており,作成件数は年々増加してきている。また,文献ファイル(日本語で,科学技術全般にわたるもの)に関しては昭和63年5月現在で560万件が蓄積・提供されている。一方,英文の情報に関しては,米国では化学分野を中心として800万件,英国では物理,電気,コンピュータ分野で300万件といったデータベースがあるのに対して,JICSTの英文ファイルは科学技術全般で50万件(昭和63年5月現在)となっている。

また,国内において一般に利用可能な科学技術データベースの作成元を国別に見ると,米国が257件(全体の57%)と圧倒的に多く,日本は66件(同15%)とかなり少ない( 第1-2-64図 )。

第1-2-64図 我が国で利用可能な科学技術分野のデータベース数の国別比較

このように,日本のデータベース活動は欧米と比較してまだこれからの状況である。部分的には整備の進んでいる分野もあるが,国際的に貢献しているデータベースは少なく,その拡充が大きな課題である。

3) データベース利用の問題点

前述のとおり,我が国のデータベースについては整備の不足が前提としてあるものの,研究者が利用する既存のデータベースに関する問題点としては利用料金と情報の内容等が指摘されている( 第1-2-65図 )。

最も大きな問題点として指摘されているのは「利用料金が高い」である。一般的に,情報に対する価値の評価が不十分であるとも考えられるが,これは研究管理者と利用者の双方に言えることである。また,データベースシステムの構築には多大な初期投資と高度な科学技術知識を必要とするため,諸外国に比較して立ち遅れた現在の整備状況を考慮すると,情報活動に対する官民の支援活動が不可欠となろう。

利用料金に次いで,「情報の質が低く,役立つものが少ない」,「情報の量が少なく,分野が限定されている」というような問題点も指摘されており,情報の質・量に関する充実が大きな課題となっている。

一方,データベースの利用者の利便性のより一層の向上のためにユーザフレンドリーな情報検索,複数データベースの統合検索等を可能とするとともに,アクセス先の明確化等が期待されている。

第1-2-65図 データベースを利用するうえでの問題点

4) 新たな情報流通システム

(ネットワーク)

近年,パーソナルコンピュータと中央の計算機をネットワークを通じて結び,電子メール,電子掲示板等のいわゆるパソコン通信を利用した情報交換が盛んになってきているが,研究者間でもこれを用いた研究成果の発表,情報交換等が増加してきている。米国では1980年代初頭から,研究者間の情報交換のためのネットワークとして発展してきたが,最近は我が国においてもこのような情報流通活動が活発化してきている。

このような情報流通活動は論文の出版,学会での討論といった活動に比較すると,国際回線を用いることにより容易に海外の情報を利用でき,計算機の記憶装置によるため時差の大きな地域とも容易に情報交換でき,また,入力と同時に発表されるため原稿から出版までの時間が不要であるなどの特長がある。

我が国においては,電子メール,電子掲示版等のサービスにより地域内外の産・学・官の研究機関の間で有機的な連携を保つことにより,研究開発ポテンシャルを最大限に活かすことなどを目的とした研究情報ネットワークも筑波研究学園都市などで計画が進められている。また,大学間の情報ネットワーク化の中枢である学術情報センターでは昭和63年4月に電子メールサービスを開始したが,これを米国のネットワークと接続し国際交流を図る計画も進められている。

(CD-ROM)

コンパクトディスクをコンピュータの補助記憶装置として用いるCD-R OMは,小形,大容量,かつ比較的安価という特長を持つため,個人用のデータベースとして利用され始めている。CD-ROMはオンラインのデータベースと異なり,頻繁に変化する情報ではなく,ある程度の期間は更新せずに利用できる内容において利用される。現在では辞書,事典,地図等の一般的な分野を中心に多く出版されているが,今後は,現在普及が進みつつある特許情報に加えてファクトデータ等の科学技術情報流通のためにも利用されていくものと期待されている。


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