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第1部   創造的研究環境の確立をめざして
第2章  国際的視野に立った創造的研究環境の整備の推進
1.  創造的研究開発のための体制と研究人材
(2)  創造的研究人材の確保


基礎的研究の強化,技術重視の企業経営などから我が国では,創造的な研究人材の重要性がますます高まっている。これに対して現実の姿はどうであろうか。ここでは,我が国の研究人材の動向と対外比較,研究人材の確保状況などについて見てみる。

1) 我が国の研究人材の構造と国際比較

(1)研究者数

研究開発活動は,研究者を中心に研究補助者,技能者及び研究事務その他の関係者の支援により実施されている。総務庁統計局の科学技術研究調査報告によると,昭和62年4月1日現在で,我が国の自然科学部門における研究関係従事者数は,69.2万人となっており,そのうち,研究者数は41.8万人となっている。

我が国の研究者数の推移を見ると,昭和40年以降経済情勢に左右されることなく増加の一途をたどっている。1987年におけるその規模は,自然科学部門において1965年の3.6倍(人文・社会を含むと3.3倍)と諸外国に比較して大幅な伸びを示し,我が国の科学技術水準の著しい向上に寄与した( 第1-2-18図 )。

OECD加盟各国の研究者数のOECD全体に占める比率を見ると,米国が最も多く,全体の42%を占め,次いで日本が25%を占めている。我が国のシェアは,西ドイツ,フランス,イギリス及びイタリアの合計をも上回るものとなっており,研究者数から見ても,我が国は極めて大きな地位を占めるに至っている( 第1-2-19図 )。

第1-2-18図 主要国における研究者数の推移

第1-2-19図 OECD諸国における研究者数の構成比

(我が国における民間を中心とした研究人材の順調な伸び)

我が国の研究者数の内訳を見ると,研究者全体の6割強に当たる26,1万人を民間企業が占めており,その著しい伸びの結果,研究者数は,大学(12.4万人)の2倍余の規模になっている。近年の円高などの厳しさの中にも順調な経済活動を反映し,また,今後,さらに激化する国際的な技術競争への対応と産業のグローバル化や異業種進出等の戦略のため民間企業は研究開発を重視する傾向にある( 第1-2-20図 )。このような民間における旺盛な研究開発努力を反映して,我が国において民間の比重がますます高まってきており,昭和62年の企業の研究者数の全体に対する比率は62.4%となった。さらに,この研究者数を5年前と比較すると,35.2%増(6.8万人)と著しく高い伸びとなっている。

近年の研究者数の増加により,我が国の主な民間企業の研究組織の規模も拡大してきている。民間動向調査によれば,回答のあった民間企業のうち,昭和54年においては,研究者数1,000人以上の企業が12社にすぎなかっかたが,昭和62年現在では33社に上っている( 第1-2-21図 )。1万人近い研究者を擁する企業も4社に及び,これらを中心に我が国の民間企業の研究組織も欧米の主要な企業のそれとほぼ肩を並べるまでに至っている。

(国立試験研究機関における研究人材)

昭和62年における国立試験研究機関の研究者数は,10,106人であり,5年前の昭和57年と比較して39人増加している。国全体の研究者数に占める比率は,昭和57年の3.1%から昭和62年の2.4%に減少している。科学技術会議第13号答申では,国立試験研究機関の役割として,新たなシーズの創出等を目指した基礎的・先導的研究強化及び国際面での十分な対応がとりわけ重要であると指摘されているところであるが,基礎的研究への重点化を図り,その研究体制の一層の整備を行う必要がある。

(2)研究人材の専門別組織別構成

我が国の研究者数は,毎年順調な伸びを示しているが,研究者全体の専門別構成比を見ると,工学系のシェアが10年間で44.1%から46.6%に増加したのに対し,理学系の研究者数は,昭和52年の6.6万人から昭和62年の9.1万人へ,また,農学系の研究者数は2.3万人から2.8万人へとそれぞれ10年間で2.5万人及び0.5万人増えているものの,そのシェアは,工学系のそれと逆に理学系が24.3%から21.8%に,また,農学系が8.5%から6.7%にそれぞれ減少している。このように,我が国においては,民間における技術系人材の需要の増大等に対応するため,工学系の研究者を中心に増え,相対的に工学系に比べて理学系及び農学系の研究者が少ない構造となっている( 第1-2-22図 )。

第1-2-20図 自然科学部門における研究者数の推移(昭和57年=100)

第1-2-21図 研究者規模別の民間企業数の推移

主要国における研究者の組織別構成比の10年間の推移を見ると,日本,米国及び西ドイツでは,民間の活発な研究開発活動の結果,民間の比重が著しく増加している。これに対し,政府研究機関の比重は減少している。

一方,フランスにおいては,基礎研究の伝統もあり,その主たる担い手たる政府機関の占める比率が日本,米国及び西ドイツに比べて高い( 第1-2-23図 )。

我が国の国立試験研究機関は,革新的技術シーズの創出等を目指した基礎的・先導的研究の強化や国際的な面での十分な対応が求められ,その重要性が増している。

政府研究機関(日本及び欧州は特殊法人の研究者を含む)の研究人材について見てみると,西ドイツ及びイギリスは日本の研究者数とその規模が同程度であるが,米国及びフランスの研究者数は日本のそれぞれ約5倍及び2倍となっている( 第1-2-24図 )。なお,主要国においては,米国の国立衛生院(NIH),西ドイツのマックスプランク科学振興協会,フランスの国立科学研究センター(CNRS)などを始めとして国際的にも有力な政府研究機関を有している。これらの政府研究機関においては,基礎研究の推進とともに人材養成,国際協力においても大きな役割を果たしている。

第1-2-22図 専門別研究者の構成比の推移

第1-2-23図 主要国の組織別研究者数の構成比

第1-2-24図 主要国の政府研究機関における研究者数の比較

(3)研究者の年令構成

研究者の年令構成については,民間企業では,一定年令以上の研究者を他部門に転職,または外部研究関係組織へ移す等( 第1-2-9図 参照),研究者の処遇システムが確立しているとみられることもあり,研究者の53%(昭和62年)を35才未満の若手研究者が占めている。一方,国立試験研究機関においては,研究者のわずか23.9%(昭和61年)が35才未満であり,民間企業に比べて,年令が著しく高く,人事院の調査によると平均年令が42.8才(昭和63年)となっている。

先端科学技術研究者に対する調査によれば,基礎的研究については,研究者は30才代前半を中心とする年令層において最も成果が期待できるとしており,民間企業の研究機関においては,創造的ポテンシャルは高いとみられる( 第1-2-25図 )。

第1-2-25図 基礎的研究に成果が期待できる年齢層

第1-2-26図 主要国における研究者の年齢構成(大学を除く)

主要国における研究者(大学を除く)の年令構成を見ると,調査年次に若干の相違はあるものの,米国,西ドイツ及びフランスの各国においては研究者の平均年令が相対的に高い。これは,研究における組織より個人を重視する研究運営などの結果,平均年令が高くなっているとみられる。我が国は,民間における若年の研究人材の著しい増加により35才未満の研究者が約半分を占めるに至っている。これが我が国の民間を中心とした技術レベルの向上と国際競争力の強化に寄与しているとも言えよう ( 第1-2-26図 )。

(4)学位取得者数

学位(修士及び博士号)取得者数は,産業構造の変化,学令人口の変化,高学歴化等への対応等の種々の社会的要因やニーズに基づき推移してきている。 我が国の自然科学系における学位(修士及び博士号)取得者数の推移を見ると,特に,研究職につく割合が高いと考えられる修士及び搏士号取得者数は,昭和61年度において,それぞれ15,058人及び7,688人であり,過去10年間で,それぞれ,6,164人(69.O%増)及び3,270人(74.0%増)の増加を示している。

また,この10年間において,基礎研究に従事する傾向が高いとみられる理学系の学位取得者数は,修士及び博士号を合わせて2,158人から2,993人へと835人(約39%増)の増加をみた。

理学系,工学系及び農学系の学位取得者数(修士及び博士号)を,日本,米国,西ドイツ及びイギリスの4カ国で比較してみると,米国が56,741人と日本の約3倍で最も多く,次いで日本の17,042人,イギリスの10,100人,西ドイツの4,658人がそれぞれ続いている。各国の特徴を見ると,米国は,農学系を除き,各国を圧倒している。日本は,工学系が最も多く,理学系が農学系ときっ抗しているものの最も少なく,西ドイツは理学系が最も多くなっている。さらにイギリスをみると,理学系が最も多く工学系がこれに続いている( 第1-2-27図 )。

第1-2-27図 主要国における学位取得者数の推移(理学,工学及び農学系)

さらに,日米の理工系の博士号取得者数を比較すると,理学系では,日本の860人に対し米国7,438人,工学系は,日本の1,404人に対し米国3,236人と,日本は米国のそれぞれ約9分の1及び約3分の1である。また,理学系の人文・社会科学を含む全学位取得者に占める割合を見ると,米国は22.4%と学位取得者の約4人に1人が理学系となっており,その比重が非常に高いのに対して,日本は10.8%である。

2) 創造的人材の確保・育成

これまで見てきたように研究者数は着実な伸びを示しているが,独創的な研究開発,特に基礎的研究の強化の傾向が高まるにつれ,我が国においても,これまでの組織を主体とした研究開発とともに,個々の研究者の独創性の発揮をベースとした人中心の研究開発が一層重要となってきている。これに伴い,それぞれの部門において,多様な優れた人材の適切な確保,育成が求められている。

(1)今後の研究者の需要

学術審議会答申(昭和59年2月)によれば,昭和75年においては,会社等38.9万人,研究機関5万人,大学15,7万人の総計59.6万人の研究者の需要が見込まれている。

一方,研究者の充足状況を見てみると,研究者の伸びが著しい民間企業においても,近年の研究開発重視の傾向を反映して,研究人材の質・量両面での不足が現れている。民間動向調査によれば,回答のあった民間企業の4社に3社は,人材の量的な不足を訴えており,質的な不足も含めるとほとんどの民間企業が研究人材の不足を訴えている状況にある( 第1-2-28図 )。特に,この傾向は,資本金規模が小さい企業において著しく,研究者の確保が深刻な問題となっている。また,先端科学技術研究者に対する調査においても,ほぼ同様に回答者の8割強(やや不足を含む)が,研究現場において研究者が不足しているとの意識を有している。特に,国立試験研究機関及び民間企業に属する研究者にあっては,それぞれ,92%及び88%と著しく高い比率を示した。

このような技術重視の企業経営などのすう勢をかんがみれば,研究者の需要は,前述の見込みをもさらに上回る可能性があると思われる。

第1-2-28図 企業における研究人材の充足状況

(2)研究人材の確保

民間企業を中心とした採用状況を見ると,研究者については,特に大企業ではその50%以上が修士課程修了以上というように,高学歴者の採用が目立っている( 第1-2-29図 )。また,採用形態は,全体の比率で見ると,新規採用者が多いものの,ここ数年の間に研究者を中途採用(昭和60年において約11%)により求める傾向も出始めた。

さらに,先端科学技術研究者に対する調査によれば,今後の創造的研究人材の確保の方法としては,新規採用試験の他に,国内他機関からのスカウトを重視している者が5割近くあり,また,外国人研究者や外国の大卒者の採用も重視するとの意識が強い( 第1-2-30図 )。このように,創造的基礎的研究のための人材については,有能な人材をこれまでの枠にとらわれず各方面から人物本位で採用しようとする考え方がうかがえる。

なお,近年,理工系大学生等若年層の製造業離れの傾向が指摘されている。しかし,今後,基礎的研究の本格的推進に伴い,一段と優秀な能力を有する研究人材の確保が期待されるところである。このような研究人材を十分確保していくためには,処遇面での改善や魅力ある研究現場の確保といった環境作りも併せて行っていく必要がある。

(3)研究人材の育成

研究人材の育成に当たっては大学に期待すべきところが極めて大きい。先に見たように,研究の主たる担い手である学位取得者も産業界のニーズ等にこたえるべく着実な増加が図られている。また,特に,我が国の学術研究の将来を担う創造性豊かな優れた若手研究者の育成を目的として,昭和60年度から本格的なフェローシップ制度である「特別研究員制度」が日本学術振興会の事業として設けられた。本制度に対する期待は非常に大きく,年々その拡充が図られている。

民間動向調査によると,企業が研究人材育成のために講じている措置としては,「国内外の学会等への出席の機会増」が全体の52%と最も多く,これに大学を中心とした「外部研究機関(国内)への派遣」(同49%),「社内外の研修制度の充実及び利用」(同41%)等が続いている。大部分の企業では,急速な科学技術の進展に対応するため,何らかの形で研究人材の資質向上を図っており,特別の措置を講じていない企業は,わずか全体の8%にすぎず,企業の研究人材の育成に対する積極的姿勢をうかがうことができる( 第1-2-31図 )。

一方,国立試験研究機関における研究者に対する資質向上等を図る制度としては,外国への派遣,国内の大学への留学制度等があるが,さらに,研究交流促進法の積極的活用による人材の派遣など,国立試験研究機関の研究活動の活性化が期待される中にあって研究人材の資質向上のための要請は極めて大きい。

第1-2-29図 企業における研究人材の資格(1985年)

第1-2-30図 創造的基礎的研究のための人材確保の方法

第1-2-31図 企業における研究人材の資質向上のための措置

3) 外国人研究者の受入れ

主要国においては,従来から公的研究機関を中心に研究開発部門において外国人を広く受け入れてきている。我が国においても,技術のグローバリゼーションの時代にあって国際的な立場で研究の協力を進め,また,基礎的研究強化を図る見地から,外国人研究者を積極的に受け入れようとする傾向が見られる。また,近時,諸外国から我が国の民間企業を含む研究機関への研究者受入れ要請も出てきている。このような状況を踏まえ,我が国でも,研究開発を実施している各方面において,外国人研究者の研究員としての受入れが多くなってきた。

試験研究機関等においては,昭和61年11月に施行された「研究交流促進法」により,外国人を研究公務員として任用することが可能となり,まだ人数は少ないものの,昭和63年10月現在において3人の外国人研究者が採用されている。また,昭和62年度には,半年以上滞在する外国人研究者を約80人受け入れた。

また,民間においても,外国人研究者の受入れの機運は盛り上がりつつある。民間動向調査によると,回答のあった企業において,約170人の採用による外国人研究者がいる。外国人研究者の採用は,特に,技術進歩が著しく海外との技術交流の多い「通信・電子・電気計測器工業」,「医薬品工業」,「機械工業」等のハイテク分野において多い( 第1-2-32図 )。また,民間企業の規模別に見ると,比較的大企業における受入れが目立っている。

先端科学技術研究者に対する調査によれば,50%以上の研究者が今後における外国人の研究要員としての受入れに積極的である。国立試験研究機関(58%)及び民間企業(48%)のそれぞれにおいて( 第1-2-33図 ),また,情報・電子(58%),物質材料(56%),ライフサイエンス(51%)などの各分野において,一様に外国人研究者の積極的な受け入れの姿勢を示している。このようなことから,今後,研究の推進及び交流の重要性からより一層それぞれの部門において外国人研究者の受け入れが進むものと考えられる。

なお,これを側面から支援するものとして,受入れ研究者の生活環境の充実,語学研修施設や受入れ窓口機能の整備,外国人のための文化施設の設置などが図られる必要がある。また,一方,諸外国の研究者においても,日本に対する理解を一層深める努力を期待したい。

第1-2-32図 民間企業における外国人の研究要員としての採用

第1-2-33図 外国人研究者の採用

4) 研究支援人材の現状

最近の研究開発の手段,手法の高度化,複雑化を踏まえた研究開発の効率的推進を図るうえで,また,研究者をより研究に専念させるという研究運営の観点から,研究補助者,技能者等の研究支援人材がますます重要になっている。しかし,我が国においては,例えば,研究を支援する技能者の数を昭和57年から昭和62年までの伸びで見ると,研究者数の伸びの2分の1以下にとどまっている。

また,先端科学技術研究者に対する調査によれば,回答者の6割以上が技能者の不足を訴えている。( 第1-2-34図 )。

第1-2-34図 技能者の充足状況

さらに,研究支援人材(技能者)の国際比較をすると,研究者1人当たりの技能者数(各国とも1983年)は,日本は0.34人で,その人数はフランスの約5分の1,西ドイツの約3分の1,イギリスの約2分の1となっており,我が国の研究支援人材は,相対的に少ない。

今後,研究運営のあり方を考えるうえで,研究支援人材の不足に対する適切な対処が求められる。

以上にみてきたように,我が国においては,今日,研究人材について産業界を中心に量的には相当充実してきているが,研究開発の高度化,基礎的研究強化,国際的調和を考慮した科学技術活動の展開のために,より創造性の高い研究人材の確保,外国人研究者の受入れ及び研究支援人材の充実などが求められている。


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