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第1部   創造的研究環境の確立をめざして
第1章  創造的研究開発推進のための研究環境整備の必要性
1.  国際的な科学技術動向と国際的視野に立った我が国科学技術政策の展開
(2)  国際的視野に立った我が国科学技術政策の展開


(基本方針)

最近の我が国の科学技術水準の向上と科学技術活動の規模拡大に伴い,我が国の科学技術に関する国際的地位と影響力は著しく高まっている。このため,昭和61年3月閣議決定された科学技術政策大綱においては,今後の科学技術政策の運営に当たっての基本的方向の一つとして国際性を重視した展開が示され,国際化時代にふさわしい科学技術推進体制の確立を図っていくことの重要性が指摘された。

また,本年5月閣議決定された「世界とともに生きる日本」(経済運営5ヵ年計画)は,世界の繁栄と日本の発展は密接不可分であり,あらゆる課題について,このテーマの視点に立って政策運営を行っていくことが重要であり,科学技術を含む多方面にわたって諸外国との交流,世界への貢献を増大させ,我が国経済社会の持つ潜在的活力の新たな発揮・展開をもたらすべきであるとした。また,基礎研究への積極的取組,国際的に必要性の高い研究設備の充実,科学技術情報の対外提供の促進,政府系研究機関における組織,制度の改善等研究開発環境の整備の方針を示した。

一方,科学技術会議政策委員会の下に開催された国際問題懇談会は当面の科学技術をめぐる国際問題に関する取りまとめを行い,本年10月科学技術会議本会議に報告した。この中で,今後の我が国の科学技術政策の展開方向として,

(1)国際共同研究等の主導的展開
(2)先進諸国間の科学技術政策等における共同歩調の推進
(3)国際社会に対応していくための体質改善,特に,基礎研究の強化を中心とした魅力ある研究環境の整備充実と国際的に開かれた研究体制の整備を提示した。

このように,我が国の科学技術に関して国際的視野から見た政策の運営のあり方が提示され,今後,従来にも増してその具体化が期待されるところである。

(日米科学技術協力協定の改定)

-背景及び経緯-

新しい日米科学技術協力協定が,昭和63年6月,竹下総理とレーガン大統領との間で署名され発効した。従来の日米科学技術協力協定は,昭和55年5月に締結され,以来,宇宙科学,基礎物理,ライフサイエンス等の幅広い分野において協力が行われてきたが,昭和60年5月に2年間延長を行って以来,米側における協定見直しの気運を背景に,協定は4回の短期間の暫定延長を重ねたが,昨年秋に至り,協定を改定して,新たな協力の枠組みを構築したいという米国側の提案が行われ,日本側がこれを受けて交渉が開始されたものである。

このような米国の提案の背景には,(1)経済分野のみならず科学技術分野においても日本が米国にとって対等の競争相手として意識されてきたこと,(2)日本に対するいわゆる「基礎研究ただ乗り」論を背景として広く日米間の科学技術全体の交流のバランスが問題とされるようになってきたこと,また,(3)米国において国際競争力強化が国の基本的政策目標として設定され,そのため科学技術力の強化,知的所有権の保護強化が中心的課題として位置付けられたこと,(4)日本の科学技術力の向上に伴い安全保障の観点からの科学技術情報の取扱いに関し,西側諸国の一員として,日本も応分の責任を求められるようになったこと等,日米の科学技術を巡る環境が大きく変化しつつあることが挙げられる。

今回の交渉は,このような新しい状況変化を反映し,米国が極めて強い問題意識をもって臨んできたため,厳しい交渉となり,数次の協議を経て昭和63年3月大筋合意に至り,先般のトロント・サミットの機会をとらえて署名に至ったものである。

-新日米科学技術協力協定の概要-

新協定は,このような背景,経緯を反映した結果,旧協定の内容を大幅に変更したものとなっている。新協定の概要は以下のとおりである。なお,協定の有効期間は,署名日(昭和63年6月20日)から5年である。

○前文

世界の繁栄及び福祉に対する両国の科学技術面の責任分担による貢献の必要性を認め,両国政府間の全般的科学技術関係を進めるための政策的枠組みを設定し,かつ平和目的のために関係を強化することを宣言した。

○両国の科学技術関係の原則

日米両国政府間の全般的な科学技術関係を律する以下の5項目の原則を設定した。

(1)両国それぞれの科学技術面における能力及び資源に応じた責任の分担並びに相互のかつ衡平な貢献及び利益
(2)科学技術研究開発の分野における主要な政府支援計画及び施設の研究者による利用のための相応な機会並びに同分野における情報の利用のための相応な機会及び同情報の交換
(3)協力の過程で生ずる知的所有権の十分かつ効果的な保護及び衡平な配分並びに協力の過程で導入される知的所有権の十分かつ効果的な保護
(4)適用可能な国内法令(安全保障に関連するものを含む。)に合致した,情報の可能な限り広範な普及
(5)それぞれの危険負担,利益及び管理分担を考慮した,協力に関する費用の分担

○協力の主要な分野 本協定に基づく協力活動の主要な分野として7分野(バイオテクノロジーを含むライフサイエンス,情報科学技術,製造工学,自動化及びプロセス制御,地球科学及び地球環境,共同データベース開発,超伝導体を含む先端材料)を設定している。
○民間の取扱い 本協定における,民間の研究者及び組織の参加については,適当な場合には,これを認めることができることとし,また,民間の研究計画であっても主要な政府支援計画とされるものについては,これを協定に基づく協力活動に含めることができることとなった。
○アクセス等の相応性 米国内には,自国の研究開発活動の開放性に比べて日本のそれは必ずしも開放されておらず,その結果,研究者の交流及び情報の相互利用等が日米間において数量的に不均衡となっており (米国で研究を行う日本人研究者の数は,日本で研究を行う米国人研究者の数に比べ圧倒的に多く,また,情報についても米国から日本への出超となっている),また,米国で生み出された知識が日本へ流れて企業化されることにより日本が一方的に利益を得ているとの意見がある。このような状況を踏まえ,両国の研究活動への相手国研究者の参加及び情報へのアクセスのあり方について協議が行われ,両国が相応なアクセスを確保するとの原則が確認された。 具体的には,両国が国際的に開かれた研究開発体系の確保を継続すること,及び相手国の研究者のための語学研修プログラムの改善,受入れ機会・政府フェローシップの提供あるいは相手国への情報提供の円滑化等に努力することを確認している。
○両国の科学技術に関する協議の場 ハイレベルで日米政府が科学技術の重要事項につき協議するための合同高級委員会,その準備を行う合同実務級委員会及び学界,産業界等の有識者からなる合同高級諮問協議会等を設け両国間の対話を促進することとしている。
○知的所有権の取扱い 米国より,知的所有権の保護強化の立場から,従来,協力活動毎にケース・バイ・ケースで取り決められていた知的所有権の取扱いについて,協定に包括的な規定を設けるとの提案がなされた。協議の結果,協定においては,知的所有権の十分かつ効果的な保護及び衡平な配分の原則が確認された。また,協力活動の過程で生じる知的所有権の取扱いについては,従来どおり協力当事者が個別の実施取極等によりケース・バイ・ケースでその取扱いについて合意できることとしつつ,新たに,取極等がない場合の基本的考え方として,情報交換,研究者交流等のみの協力活動について,その中で生じた知的所有権の保護と配分に関する規定を設け,これに従うこととなった。特に,研究者交流のみによる協力の結果生ずる発明等の取扱いについては,受入れ側が主要かつ実質的な貢献をする場合(この場合,すべての権利をすべての地域において受入れ側が取得可能)以外にあっては,受入れ側が受入れ国及び第三国において,派遣側が自国において権利をそれぞれ取得できることとされている。また,共同プロジェクト等については,衡平の原則に基づき,ケース・バイ・ケースで取り決めていくこととなった。
○安全保障の観点からの情報の取扱い 本協定に基づく協力活動は,平和目的のためとされており,両国政府は,その過程で創出される情報及び機材の可能な限り広範な普及を支援することとされた。また,開かれた基礎研究環境を維持するとの原則を推進するため,国防上の理由で秘密とされた情報及び機材は取り扱われないことになっている。なお,協力活動の過程で提供され,または,創出される輸出管理を受ける情報または機材の移転については適用可能な国内法令に従って必要な措置をとることが確認されている。

-その運用-

新協定には,両国政府が今後その実施に当たり取り組むべき課題が多く盛り込まれている。協定下の協力活動についても,日米という経済大国・科学技術大国が協力として行うのにふさわしいものであり,両国にとって重要な分野を反映するとともに世界の知識及び技術基盤に貢献する可能性を有するものとされていることから,我が国としても,適当な場合は広く大学,民間の研究機関の協力も得るなど積極的な対応が必要となっている。また,アクセス等の相応性の問題については,政府として科学技術情報の流通の円滑化あるいは米国人研究者受入れのための機会の増加,フェローシップ制度の拡充強化,その他受入れ環境の整備等に努力する必要がある。

いずれにせよ,新日米科学技術協力協定の締結は,日米の科学技術関係の新しい時代へのステップとなるものであり,今後は,本協定を基軸としてその強化が図られることは確実であり,円滑な実施のため広く関係者の理解と協力が期待される。

なお,本協定に基づく合同高級委員会の第1回会合が昭和63年10月東京で開催され,合同高級諮問協議会メンバーの人選等,協定の実施のための仕組みが設けられるとともに,アクセス問題の検討,協カテーマの提案などに必要な方向づけが行われた。


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