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第3部   政府の施策
第5章  科学技術振興基盤の強化
8.  特許行政の推進
(2)  工業所有権制度の国際化への適切な対応



(1) 国際機関との連携

工業所有権の保護に関するパリ条約は,1883年(明治16年)に成立し,我が国は,1899年(明治32年)に同条約に加盟した。同条約は,工業所有権の保護を外国人にも平等に与えるとの原則を樹立し,かつ各国の法律制度に一定限度において同一の内容をもたせることを内容とするもので,1987年(昭和62年)1月1日現在,97か国が加盟している。

工業所有権制度は,国際的性格の強いものであり,特に近年における経済の国際化,技術交流の国際化などに伴い,工業所有権制度の国際化への機運は益々高まっており,世界知的所有権機関(WIPO)を中心として検討が進められている。

WIPOにおいては,パリ条約の再検討を行うとともに,特許情報問題,発展途上国の工業所有権に関する開発協力問題,コンピュータ・ソフトウェアの法的保護の問題,発明保護に関する法のハーモナイゼーション,不正商品問題等の問題が検討されており,我が国も参加して積極的に取り組んでいる。

昭和61年度においては,発明保護条項ハーモナイゼーション専門家委員会(61年5月及び62年3月),パリ条約改正に関する諮問委員会(62年1月)等が開催された。

また,特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約については,昭和56年5月から工業技術院微生物工業技術研究所が国際寄託当局としての事務を開始し,また昭和62年3月には特許微生物寄託センターの建物が完成し,同年10月からの微生物の寄託範囲の拡大に向けて準備を進める等制度の円滑な利用に努めている。


(2) 国際協力の推進
1) 先進国間協力

日・米・欧の三極先進特許庁間では,三特許庁間の共通の課題を効率的に解決すべく昭和58年以来毎年三極特許庁首脳会合を開催しており,また数回にわたり専門家会合も開いている。

三極間における検討のテーマは,主として特許情報問題と特許制度・運用の問題であり,昭和62年1月ワシントンで開催された第3回三極首脳会合では,特許業務の自動化,特許情報の電子化及びその交換,特許実務のハーモナイゼーション等につき検討を行った。


2) 対開発途上国協力

特許庁ではJICA(国際協力事業団)の協力を得て,中国,アセアン諸国等の開発途上国から多くの研修生の受入れ及び韓国,アセアン諸国等への専門家の派遣を行うと共に,中国に対して特許情報検索システム開発事業に関するプロジェクト方式技術協力を昭和61年11月から4年間の予定で開始した。

また,WIPOの開発途上国に対する技術援助施策に協力し,研修生の受入れ及び専門家の派遣のみならず,59年からは,WIPOを通じて開発途上国から要請のあったテーマについて,技術水準サーチを行っている。

さらに,我が国国民の権利擁護のためのみならず,開発途上国に対する技術援助の一助として,国際調査機関等の審査資料としても高い評価を得ている公開特許公報英文抄録の一層の充実にも努めている。


(2) 特許摩擦に対する積極的対応

近年,我が国企業活動の国際化の進展等に伴い工業所有権を巡る国際的摩擦が多発しているが,この一因として企業等の他国の工業所有権制度や審査体制のあり方についての理解不足が考えられる。そこで特許庁では,これら特許摩擦の解消に向けて昭和59年に引き続き昭和61年11月に米国企業特許部門首脳との会合を開催し,我が国工業所有権制度についての理解の深化に努めた。

また,特許摩擦の他の一因として,特許・実用新案の審査・審判処理の遅延があり,当面の施策として昭和61年2月から早期審査・審理制度を導入し,実施関連出願の早期処理を行うとともに,一層の審査処理の促進に努めている。

さらに,工業所有権制度のハーモナイゼーションを図るために,昭和62年には欧米なみの多項制制度の導入等を内容とした特許法等の改正を行うこととしている。


(3) ガット・ウルグアイ・ラウンドへの対応

各国の知的所有権制度の未整備あるいは不適切な制度又は運用が国際貿易に対する歪曲及び障害となるケースが増え,貿易の観点から見た知的所有権制度及びその運用のあり方についての検討の必要性,あるいは知的所有権の効果的かつ適切な保護の促進の必要性が高まってきたことにより,昭和61年9月のガット閣僚会議において,ガット新ラウンド(ウルグアイ・ラウンド)の中で知的所有権の貿易関連的側面について問題点の検討を行い,必要に応じて国際ルールの形成を目指すこととなった。

このため特許庁では,昭和61年12月に工業所有権審議会に新たに国際部会を設置し,ガット交渉における工業所有権に関する特許庁の基本的対応等について審議を行うなど積極的に対応している。


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