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第3部   政府の施策
第3章  政府機関などにおける研究活動の推進
6.  他分野の協力による研究開発の推進
(1)  原子力開発


我が国は,石油代替エネルギーの中核である原子力の研究開発利用を原子力委員会の決定した原子力開発利用長期計画(昭和62年6月改定)に沿って,総合的かつ計画的に推進している。特に基軸エネルギーとしの確立,創造的科学技術の育成,国際社会への貢献を基本目標として開発利用を進めている。

原子力の研究開発利用の推進に当っては,安全の確保が大前提であり,昭和61年4月にソ連チェルノブイリ原子力発電所で発生した事故はこのことを改めて認識させるものであった。国としては,この事故を警鐘として受け止め,今後国内外の事故・故障などの教訓をも踏まえつつ,一層の安全確保に努めていくことが必要である。このため安全研究の強力な推進を始めとする安全確保対策の積極的な推進を図るとともに,万一の事態に備えた防災体制の整備充実に努めている。

我が国の原子力発電については,昭和62年3月末現在,運転中の商業用発電所の規模は33基,約2,568万kW,総発電設備容量の約16%を占め,また,昭和61年度には総発電電力量の約27%を発電し,既に我が国の電力供給にとって不可欠の存在となっている。

また,原子力が将来にわたって安定したエネルギー源として中核的役割を果たしていくためには,自主的な核燃料サイクルを早期に確立する必要があり,海外からの天然ウラン及び濃縮役務の確保等に努めつつ,国内においては,これまでの研究開発の成果を踏まえたウラン濃縮の国産化,国内再処理事業の確立,放射性廃棄物の処理処分方策の確立などを推進しており,さらに,ウラン資源の有効利用を図るため新型転換炉,高速増殖炉等の開発,人類究極のエネルギー源といわれる核融合,並びに高温ガス炉及び原子力船の研究開発を推進しているところである。

一方,国際的には,原子力の研究開発利用は,核不拡散体制強化の観点から各種の厳しい制約が課せられる方向にあるが,原子力の研究開発利用は厳に平和目的に限るという我が国の立場及び原子力平和利用と核不拡散とは両立し得るという立場に立って,従来からの先進国との協力を引き続き進めるとともに,原子力先進国として開発途上国との協力も積極的に推進している (国際協力については 第2部第4章 参照)。

第3-3-13表 に昭和61年度原子力関係予算を, 第3-3-14表 に主要国の原子力関係予算の推移を示す。


(1) 安全性の確保

原子力開発利用は,放射能の危険性を十分に認識し,開発当初から,放射性物質を確実に管理する対策を講じるなど,安全性の確保を最重点にして技術の開発が行われてきており,他の産業分野には見られない厳しい安全確保に対する法的な措置も講じられてきた。

すなわち,原子炉等規制法により製錬の事業の指定,原子炉の設置許可,加工の事業の許可,再処理事業の指定などを行うに当って,各主務大臣は原子力委員会,原子力安全委員会の意見を聴くこととされており,特に国民の関心の深い安全性については,原子力安全委員会が,各行政庁の行った安全審査の結果について調査審議を行っている。

また,原子力安全委員会は,実用発電用原子炉等の設置について,行政庁の行った安全審査結果についての調査審議を行うに当たり,当該原子炉施設等の固有の安全性に関する地元住民等の疑問,意見等を聴取し,これを参酌するため,公開ヒアリング等を実施している。さらに,設置許可等の後の段階においても,行政庁が安全規制を行うとともに,原子力安全委員会においても必要と認める事項について調査審議を行っている。

第3-3-13表 昭和61年度原子力関係予算総表

第3-3-14表 主要国の原子力関係予算の推移

原子炉設置後は,施設内での被ばく管理のほか,環境における放射線量が法令に定める許容被ばく線量を十分下回っていることを確認するため環境放射線モニタリングが事業者及び地方公共団体により実施されており,国は地方公共団体に対し財政的技術的援助を行っている。

軽水炉施設の安全研究については,日本原子力研究所を中心に,原子炉の反応度事故及び冷却材喪失事故に関する研究等を行っており,昭和61年度には,引き続き原子炉安全性研究炉(NSRR:Nuclear Safety Research Reactor)による各種試験を行うとともに,加圧水型軽水炉の小口径破断による冷却材喪失事故を模擬したROSA-IV(ROSA:Rig of Safety Assessment)計画として大型非定常試験装置による実験等を行った。

また,新型転換炉施設,高速増殖炉施設,核燃料施設,核燃料物質の輸送,放射性廃棄物の処理処分等については,動力炉・核燃料開発事業団を中心として各種安全研究を行った。

原子力施設から環境へ放出されるヨウ素等の放射性物質については,放出量の低減化を図るため,核分裂生成物(FP:Fission Product)の挙動解明,回収技術の研究開発,放射性廃液の処理技術の開発等を実施している。

原子力施設から環境へ放出される放射性物質による一般公衆の被ばくは,国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告又は法令の定める限度を十分下回るよう努力がなされている。さらに,放射線医学総合研究所では,低線量及び低線量率被ばくの人体に対する影響を推定する上で重要な晩発性の身体的影響,遺伝的影響及び被ばく形式の特異性を考慮した内部被ばくの障害評価並びに環境放射線の被ばく評価を中心に研究を実施している。

原子力発電所等に係る防災対策については,災害対策基本法に基づく防災計画により所要の措置が講じられることになっているが,米国スリー・マイル・アイランド原子力発電所の事故の教訓を踏まえ,昭和54年の中央防災会議決定に引き続き,昭和55年6月,原子力安全委員会により,防災対策に係る技術的,専門的事項についての検討結果が,「原子力発電所等周辺の防災対策について」として取りまとめられた。国においては,これらの検討結果の具体化に当たり,各種のマニュアル等を作成し,関係地方公共団体に対する指導助言を行うとともに,原子力防災関係施設等の整備のための財政措置を講じている。関係地方公共団体においても,これを踏まえて,緊急時連絡網,緊急医療施設の整備,講習会の開催等原子力防災体制の充実整備を進めている。

なお,昭和61年4月26日,ソ連チェルノブイル原子力発電所において,4号原子炉が損傷し,放射性物質が環境に放出される事故が発生した。我が国においても,この事故に由来するとみられる放射性物質を検出したが,その放射能レベルは,国民の健康に対して影響を及ぼすものではなかった。

また,原子力安全委員会は,本件に関し幅広く調査検討を行い,我が国の原子力安全確保に反映させるべき事項の有無等につき審議することを目的として,ソ連原子力発電所事故調査特別委員会を設置した。


(2) 核燃料サイクルの確立

我が国の原子力発電を今後とも円滑に推進して行くためには,核燃料の安定的供給の確保とウラン資源の有効利用などを目指した核燃料サイクルの確立がますます重要な政策課題となっている。

(イ)ウラン資源の確保に関し,我が国は供給源の多様化にも配慮しつつ長期の購入契約による確保を図るとともに,自主的な探鉱活動,鉱山開発への経営参加等を進めている。昭和61年度においては,動力炉・核燃料開発事業団がオーストラリア,カナダ,アフリカ諸国を重点地域として単独又は海外機関と共同で調査・探鉱を実施した。民間においては,金属鉱業事業団等からの成功払い融資等により海外でのウラン探鉱開発が進められている。
(ロ)原子力発電の主力は濃縮ウランを燃料とする軽水炉であることから,濃縮ウランの安定確保も重要な課題となっている。 このため,我が国は,米国及びフランスから軽水炉の運転に必要な当面のウラン濃縮役務を確保しているが,さらに長期的な濃縮ウランの安定確保の観点から,国のプロジェクトとして遠心分離法によるウラン濃縮技術の開発が積極的に推進されている。昭和61年度においては,動力炉・核燃料開発事業団において,パイロットプラントの運転を継続するとともに,昭和60年11月,岡山県人形峠における原型プラントの建設に着手し,昭和62年度中の部分運転開始をめざし,工事を進めている。 一方,商業プラントについては,青森県六ヶ所村において日本原燃産業(株)により昭和66年頃の操業開始を目途に建設準備が進められた。 さらに,今後のウラン濃縮の経済性の向上を図るため新技術の開発を進めている。遠心分離法技術については,新素材高性能遠心機の実用化の見通しを得るため,その開発を進めている。レーザー法ウラン濃縮技術のうち,原子法については,民間の研究組合方式による集中的開発と日本原子力研究所等による長期的・基盤的な研究開発を補完させつつ進めており,分子法については動力炉・核燃料開発事業団の協力を得て理化学研究所において原理実証研究等を進めている。
(ハ)使用済燃料については,ウラン資源の有効利用等の観点から再処理し,得られるウラン及びプルトニウムの利用を進めることを基本方針としており,現在動力炉・核燃料開発事業団の東海再処理工場において再処理を行うとともに,イギリス及びフランスヘ再処理を委託している。 東海再処理工場では昭和61年度は約69トンを処理し,昭和62年3月末までの累積処理量は約322トンとなった。 民間再処理工場については,日本原燃サービス(株)により青森県六ヶ所村において年間再処理能力約800トンの再処理工場を1990年代半ば頃に操業開始すべく建設準備が進められている。 また,高速炉燃料の再処理については,動力炉・核燃料開発事業団において,東海再処理工場の経験を踏まえつつ,研究開発が進められている。
(ニ)核燃料サイクルの確立にとって,放射性廃棄物の処理処分対策の確立は重要な課題であり,次のような施策を進めている。 原子力発電所等から発生する低レベル放射性廃棄物に関しては,今後,原子力発電規模の増大に伴い発生量の増加が予想されるため,その一層の減容化のための努力を進めるとともに,最終的な処分方法としては,陸地処分及び海洋処分を行うことを基本的な方針としている。 陸地処分については,ドラム缶等につめてセメント固化等の処理を行い,浅地層中に処分することとしている。現在,日本原燃産業(株)により青森県六ヶ所村において,昭和66年頃の操業を目途に低レベル放射性廃棄物を集中的に処分する計画が進められている。 政府としては,放射性廃棄物の処理処分に関する法制面の一層の整備を図るため,放射性廃棄物の廃棄の事業に関する規制を創設し,その安全規制の充実強化を図ることなどを目的とした原子炉等規制法の改正案を第104回国会に提出し,同法案は,昭和61年5月,国会において可決成立し,同年11月,施行された。 海洋処分については,「廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約」(以下「ロンドン条約」という)において実施されることとなるが,昭和60年9月の第9回ロンドン条約締約国協議会議において,それまでの科学的な検討に引き続き,海洋処分に関する政治的,社会的検討を含む広範な調査研究が終了するまで海洋処分を一時停止するとの決議がされ,昭和61年10月の第10回ロンドン条約締約国際協議会において,上記検討のためのパネルの設置が決議された。 海洋処分については,国際的な基準にのっとり,深海底に処分するとの方針の下に,今後とも所要の調査を行うとともに,内外の関係者の理解を得ることに努め,関係国の懸念を無視して処分は行わないとの考え方の下にその実施については慎重に対処することとしている。 高レベル放射性廃棄物については,現在,廃液の形で動力炉・核燃料開発事業団の東海再処理工場内のタンクに安全に貯蔵されている。 高レベル放射性廃棄物は,安定な形態にガラス固化し,30年から50年程度冷却のため貯蔵した後,数百メートルより深い地層中に処分することを基本方針としている。ガラス固化,固化体の貯蔵及び地層処分の技術開発については動力炉・核燃料開発事業団が中心となり,また,それらの安全性の研究については,日本原子力研究所が中心となって研究開発を推進している。動力炉・核燃料開発事業団は,昭和65年頃の運転開始を目途にガラス固化プラントを建設するとともに,この計画と整合性を図りつつ,ガラス固化体の貯蔵プラントを建設することとしている。また,動力炉・核燃料開発事業団は,地層処分技術を確立するための深地層試験等の研究開発と,高レベル放射性廃棄物等の貯蔵を行う貯蔵工学センターを建設する計画を進めている。なお,今後とも,地層処分技術の確立を目指した研究開発等を,動力炉・核燃料開発事業団を中核推進機関として計画的に進めていいくこととしている。

(3) 新型動力炉とプルトニウム利用

我が国は,ウラン資源を有効に利用し,原子力発電の供給安定性を高めるため,長期的に,安全性及び経済性の観点を含め軽水炉によるウラン利用に勝るプルトニウム利用体系の確立を目指している。すなわち,再処理によって得られるプルトニウムは,ウラン資源の利用効率で圧倒的に優れる高速増殖炉での利用を基本としており,高速増殖炉の研究開発を着実に進めるとともに,その実用化までの間においては,プルトニウム利用に係る広範な技術体系の確立等を図っていくため軽水炉及び新型転換炉においてプルトニウムの利用を進めることとしている。これらに必要なMOX燃料の加工技術については,動力炉・核燃料開発事業団において研究開発が進められてきている。

軽水炉でのプルトニウムの利用については,現在,少数体規模による実証計画が進められているところである。

高速増殖炉は,発電しながら消費した以上の核燃料を生成する画期的なものであり,ウラン資源を最大限に利用し得るので,核燃料の資源問題を基本的に解決でき,将来の原子力発電の主流となるものと考えられている。我が国では,昭和43年以来動力炉・核燃料開発事業団を中心に,自主技術による開発が進められている。

すなわち,実験炉「常陽」が熱出力7.5万kWでの運転を昭和56年12月に終了し,昭和58年3月に熱出力10万kWの照射用炉心への改造を行い,昭和58年8月より定格運転に入り,高速増殖炉用燃料・材料の照射試験が行われている。

また,原子炉「もんじゅ」(電気出力約28万kW)については,昭和57年5月,福井県知事の同意を得て,福井県敦賀市白木地区に建設することが閣議にて了解され,さらに昭和58年5月27日内閣総理大臣は,「もんじゅ」の設置を許可した。これに先立ち,昭和58年1月より建設準備工事が開始されたが,昭和60年10月に本体工事に着手し,昭和67年度臨界を目指して建設工事が進められている。

実験炉の開発については,原子力利用長期計画において1990年代後半に着工することを目標に計画を進めることとし,その設計・建設・運転に主体的役割を果たす電気事業者と研究開発等に重要な役割を果たす動燃力炉・核燃料開発事業団との密接な連携の下に推進していくこととしている。このめた原子力委員会は高速増殖炉開発計画専門部会を設置し,高速増殖炉開発の長期的推進方策等について検討を進めている。

新型転換炉については,福井県敦賀市において原型炉「ふげん」(重水減渚沸騰軽水冷却型,電気出力16.5万kW)が,昭和54年3月から本格運転を開始して以来おおむね順調な運転を行っており,実証炉設計等へ反映するための研究開発並びに運転経験及びデータの蓄積・評価を進めている。

また,実証炉(電気出力約60万kW)については,昭和55年2月から原子力委員会に設置された新型転換炉実証炉評価検討専門部会において技術的,経済的評価検討が進められ,昭和56年8月,新型転換炉の意義,実証炉の建設の妥当性について原子力委員会に報告がなされた。この結果を踏まえ,原子力委員会,電気事業連合会等において実証炉の建設,運転を行う実施主体等についての検討が行われ,昭和57年8月,原子力委員会は,実証炉計画については,電源開発株式会社が建設,運転の実施主体となり,官民協力の下に推進するとの基本方針を決定した。これを受け,電源開発株式会社は,建設予定地である青森県大間町において立地環境調査を実施するとともに,昭和59年1月には,基本設計に着手した。この立地環境調査及び基本設計の進展等を踏まえ,昭和60年6月電源開発株式会社は,地元に対し実証炉建設に対する協力要請を行った。今後,同社は,動力炉・核燃料開発事業団及び電気事業者からの所要の協力を得つつ,昭和71年度末の運転開始を目標に実証炉の建設を進めることとしている。


(4) 高温工学試験研究

高温工学試験研究の今後の進め方等については,原子力委員会の下に高温ガス炉研究開発計画専門部会を昭和61年3月に設置し,審議,検討を行い,同年8月に中間報告,同年12月に報告書をとりまとめた。高温ガス炉は高温熱供給,高い固有の安全比,燃料の高熱焼度等優れた特性を有しており安全の確保の下に経済性の向上,利用分野の拡大等原子力開発上の重要な課題の解決に寄与し得るなどその研究開発は大きな意義を有するとともに,高温領域における照射試験等は特に材料系科学技術分野を中心として将来の技術革新の契機となる各種の新技術の萌芽の創出に大きな貢献が期待できる。このため,高温ガス炉技術の基盤確立及び高度化並びに高温工学に関する先端的基礎研究を大いに推進することが必要であり,従来の実用化への一ステップとして位置付けられる実験炉計画を見直し,高温・大型照射機能等所要の機能を有する試験研究炉を早急に建設するのが適当であると提言している。このため,日本原子力研究所において,既に蓄積されている技術,知見を活用して昭和62年度には高温工学試験研究炉の設計研究を行うこととしている。


(5) 核融合

核融合エネルギーは,その主体となる燃料を海水から取得することができ,これが実用化された場合は,豊富なエネルギーの供給を可能とするものである。

このため,核融合エネルギーは,人類の未来を担う有力なエネルギー源の一つとして役立つものと広く期待されており,特に,エネルギー資源に乏しい我が国としては,その研究開発を推進する必要がある。

核融合の研究開発については,昭和50年7月に原子力委員会が策定した「第二段階核融合研究開発基本計画」に基づいて推進されている。

この基本計画では,核融合動力炉実現の前提となる臨界プラズマ条件の達成に重点を置き,トカマク型の「臨界プラズマ試験装置(JT-60)」(プラズマ温度数千万度から1億度程度,プラズマ密度と閉じ込め時間の積2〜6×1010 sec/m3 を目標)を開発することを中心として,非円形断面トーラス磁場装置の研究開発,高ベータプラズマに関する研究開発,プラズマの診断に関する技術開発等の核融合炉心技術に関する研究開発を進め,併せて,核融合炉工学技術等の研究開発を推進することとしている。これらの研究開発は,日本原子力研究所を中心として,電子技術総合研究所,金属材料技術研究所等において実施されている。JT-60は昭和60年4月に本体が完成し,ファーストプラズマの点火に成功したのち,昭和61年3月までに加熱装置の据付けが完了した。その後,本格的プラズマ実験に向けて調整が行われ,昭和61年8月より昭和62年3月まで加熱結合試験を実施した。

以上のほか,大学関係においては,1)核燃料を指向した研究の推進,2)トカマクに代わる方式に関する研究の推進,3)炉材料等広範な関連分野における研究の推進,の三つの推進方策に沿って,名古屋大学(トカマク等),京都大学(ヘリオトロン),大阪大学(レーザー核融合),筑波大学(複合ミラー),九州大学(強磁場トカマク)等において,プラズマ物理及び関連分野の研究が幅広く実施されている。国際協力に関しては,IAEA,OECD/IE Aにおいて研究者交流,情報交換等の協力,共同研究開発への参加が進められている。なお,新たに日,EC,米,ソによる国際熱核融合実験炉(IT ER)の概念設計に関する技術作業の検討が昭和62年3月より開始された。

また,日米間において,昭和54年5月に締結された日米エネルギー等研究開発協力協定に基づいて同年8月から米国の核融合実験装置「ダブレットーIII」による共同研究並びにHFIR/ORR,FNS,TSTA及びRTN S-II装置による共同研究を実施しているほか,昭和58年からは「日米核融合研究開発協力取決め」に基づく研究者の交流,情報交換,共同計画等を積極的に実施している。


(6) 原子力船

原子力船の研究開発については,政府が昭和60年3月に定めた「日本原子力研究所の原子力船の開発のために必要な研究に関する基本計画」に基づき我が国における原子力船に関する技術,知見,経験等の蓄積,かん養を図るため,段階的,着実に進めるものとし,当面,原子力船「むつ」により海上における実験データ,知見を得るとともに,その成果を十分活用しつつ船用炉の改良研究を進めることとしている。

原子力船「むつ」による研究開発については,出力上昇試験及び海上試運転により性能を確認した後,海洋環境下における振動,動揺,負荷変動等が原子炉に与える影響等に関する知見を得るため,概ね1年を目途とする実験航海を行った後,解役することとされており,昭和61年度は前年度に引き続き関根浜新定係港の建設等を実施した。

なお,原子力船「むつ」は,佐世保港における遮蔽改修安全比総点検補修工事完了後,昭和57年9月青森県むつ市大湊港に回航され,現在同港に係留されている。


(7) 放射線利用

放射線利用は,基礎科学の分野から医療,農業,工業等の応用分野まで広範な分野において重要な地位を占めるに至り,放射性同位元素や各種放射線発生装置を使用する事業所は,医療,農業,工業等の各分野において逐年増加しており,昭和61年3月末現在では,放射線障害防止法の規定により許可を受け又は届け出ている使用事業所数は4,542にのぼっている。

医療分野における放射線利用は,エックス線を用いる診断,治療用高エネルギー放射線発生装置(治療用リニアック等)や診療用放射線照射装置・器具(コバルト60等)を用いる治療及び放射性同位元素を用いる診断(核医学)の3分野にわたって行われている。特に,放射線治療の主たる対象である悪性腫瘍(がん)に関しては,従来の治療法に加え,サイクロトロンを用いた方法が注目され,放射線医学総合研究所の医療用サイクロトロンにおいては,速中性子線及び陽子線によるがん治療が進められており,悪性黒色腫等に著しい治療効果をあげている。さらに,より治療効果の優れた重粒子線によるがん治療の研究開発も行われている。また,大学においても,筑波大学粒子線医学センター等において陽子線等によるがん診断・治療の研究を行っている。

一方,放射線を用いた診断の分野においてもポジトロン放出核種を用いた診断(ポジトロンCTによる診断)が注目されており,放射線医学総合研究所,大学,国立療養所等において装置の開発,画像の処理法等の研究等が実施されている。

工業利用分野では,その利用は広範な業種に及び,ゲージング,非破壊検査,各種エックス線分析,放射化分析等多岐にわたっている。また,農業利用分野についても,作物の品種改良,農林水産生物の生理機構の研究におけるトレーサー利用,放射化分析,害虫防除等広い分野にわたって放射線利用技術の普及をみている。

放射線による食品照射の研究については,原子力委員会の定める「食品照射研究開発基本計画」に基づき馬鈴薯,玉葱,米,小麦,ウィンナーソーセージ水産ねり製品,みかんの7品目を対象に国立試験研究機関,日本原子力研究所等の協力の下に実用化のための研究が進められ,このうち馬鈴薯については,北海道土幌町農業協同組合において実用照射が行われている。

害虫防除については,ガンマ線照射による不妊虫を大量に放飼し,沖縄諸島,奄美諸島等においてウリミバエ等の害虫の根絶を図っている。

以上のような放射線の利用の拡大に加え,最近,加速器技術,ビーム制御技術,新しい放射線の発生技術等放射線の高度利用のための研究開発が注目されており,高エネルギー物理学研究所の陽子線,放射光(SOR)等を利用した原子核素粒子研究等,理化学研究所の重イオンを用いた原子核物理,材料・生物学研究,日本原子力研究所の重粒子線等の広範な利用を目指した研究,電子技術総合研究所における小型SOR,自由電子レーザー等の発生技術の研究等が進められている。

このような放射線利用の進展とともに,放射性同位元素の需要も毎年増加してきている。これら放射性同位元素の供給については,外国からの輸入のほか,日本原子力研究所を中心として,需要の多い核種に重点を置いて国産化を進めており,特に,海外に依存することの困難な短寿命核種については,放射線医学総合研究所等で積極的に製造の研究開発を進めている。

昭和62年2月,原子力委員会放射線利用専門部会は,放射線利用の今後の進め方について報告書をとりまとめた。本報告書には,放射線利用の実用化,高度利用のための研究開発及び国際協力に関し,具体的な推進方策が示されており,今後これに沿って研究開発を進めてゆく方針である。


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