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第2部   科学技術活動の動向
第4章  国際交流の動向
5.  主要先進国の科学技術政策
(1)  米国


 米国の科学技術政策は,戦後一貫して国防研究及び基礎研究を重視してきたが,1981年にレーガン政権になって「強い米国」を目指して,国防研究費を大幅に増やし,1985年からはSDI研究を開始した。その結果,1986年度から1987年度の間に国防研究費は,151億ドルから399億ドルへと2.6倍にも増大し,政府負担研究費全体に占める割合も50.7%から69.3%へと大幅に増えた。

 一方,米国では,より一層の優秀性の探求を目指して,科学技術競争力の強化を指向しており,1987年1月に発表された「一般教書」においてレーガン大統領は,以下の6本柱から成る米国の競争力強化構想を打ち出した。

・人的,知的資源に対する投資の増大
・科学技術開発の推進
・知的所有権保護の強化
・米国の競争力を妨げている法規の改革
・よりよき国際環境の形成
・連邦予算の改革

(研究開発推進体制)

 科学技術に関連する個々の計画の企画,立案及び実施はそれぞれ国防省,厚生省,航空宇宙局,エネルギー省等各省庁が分担している。米国には我が国の科学技術会議のような総合的に科学技術政策を審議する機関はなく,米国の科学技術全般にわたる総合的調整は,大統領直属の大統領府にある科学技術政策局(OSTP:Office of Science and Technology Policy)が行っており,科学技術政策総合推進機関として以下の権限を有している。

・経済,国家の安全,健康,外交及び環境を含め,国家的関心の深い科学技術上の考慮すべき事項について,大統領に助言する。
・科学技術における政府の取組みの規模,質及び有効性を評価し,適切な行動について,大統領に助言する。
・政策予算に関して科学技術上考慮すべき事項について大統領に助言し,全省庁の研究開発予算提案に関する行政管理予算局(OMB)の年次見直し,分析を援助するとともにOMB及び各省庁に対し予算の編成の全過程において補佐する。
・大統領の政府の研究開発における全般的指導性の発揮と調整を援助する。
第2-4-4図 米国の科学技術行政機構


(基本方針)

 米国には,我が国の「科学技術政策大綱」のようなものはなく,米国の科学技術に関する基本方針は,主に,毎年大統領が議会に提出する「一般教書」及び「予算教書」等からうかがうことができる。

 過去を振り返ると,戦後はほぼ一貫して,国防研究と基礎研究が重視されており,その流れの中で各大統領に特徴的な施策には,ケネディの宇宙開発,ニクソンの対がん戦略10か年計画等がある。

 レーガン政権では,「強い米国」を標榜して,国防研究費の大幅増による総合安全保障力の強化及び基礎研究の強化の面に力を入れ,国家的プロジェクトとしてSDI,宇宙ステーション等の推進を図る他,政府は,技術革新の環境整備及び民間部門の研究開発奨励に力を入れることとし,税制,独禁法緩和,産・学連携の促進,エネルギー研究の民間シフト等の施策等を打ち出している。

 1987年1月の「一般教書」に示された「科学技術開発推進の重要事項」は次のとおりである。


・学際科学技術センター(University-based Interdisciplinary Scienceand Technology Center)の設立

 大学に多くの科学技術センターを設立する。これは,民間で行われない,大学及び研究機関で得られた成果の情報交換を促進するもので,ロボティックス,FA,マイクロエレクトロニクス,新材料,バイオテクノロジーといった分野を取り扱う。


・NSF予算の増額

 NSFの予算を5年間で倍増する。基礎研究の重視の具体化として,NSFが大学等の基礎研究に対し補助金を交付したり,多数の工学研究センターを大学に設置して大学研究に対する支援強化を図る。


・技術共有計画(new technology share program)の開始

 米国政府で開発された成果を,産業に移転することを主目的として,農務省,エネルギー省,厚生省及び航空宇宙局が新たな技術共有計画を開始する。


・産・学・官の研究者交流

 極めて競争的な分野の研究を行っている政府研究機関及び大学と民間の間での研究者の交流を行う。


・産業からの政府の科学技術事業へのアクセス

 産業が政府のすべての科学技術事業ヘアクセスすることを促進するための大統領命令(executive order)を発令する。その一例として,各国の研究状況を調査できるよう,国務省が研究者を雇い,各国の大使館に派遣する。


・企業の研究開発活動の安定化

 これまで,研究開発に関する規則(研究開発関係税制を定めた税法861節)が頻繁に変わってきたために企業の状態が安定しなかった。企業が適応できるようにこの規則を安定なものとする。すなわち,研究開発投資とそれに対する税制措置の安定性を増す。


・科学教育の振興

 NSFをはじめ連邦政府の全機関は,教育省,国務省,地方自治体と協力して,米国の生徒たちに21世紀における競争に必要な基礎的科学知識をしっかりと身につけさせる。


・研究予算の増額

 連邦政府の研究開発予算を12%増額する。この中で,基礎研究を4%増加させる。


・国防省の技術の民間への転用

 国防省の研究開発成果の企業への移転を促進させる。

(研究費・研究人材の現状)

 1986年度の米国の総研究費は,118,600百万ドルで対前年度比ドルベースで9.O%の増加となっている。なお,国防研究費は,総研究費に比べ伸びが著しく高くなっている。

 米国の研究費のうち,政府負担の占める比率は46.6%,政府負担研究費のうち6割を国防研究費が占めている。

 研究者数は1985年で79万人となっており,対全年度比では5.2%の増となっている。

 このうち,産業が57万人と全体の75%を占めて最も多く,ついで大学,連邦政府,民営研究機関と続いている。

 近年の傾向をみると,産業においては,増加傾向にあるものの他については,現状維持または微増にとどまっている。


(科学技術振興施策)

1988年度「予算教書」においては,科学技術関連で,次のような重点項目が指摘されている。


1) 優先度の高いものへの重点配分

 具体的には,AIDS研究,国立衛生院(NIH)の基礎的な生物医学研究,国立科学財団(NSF)の基礎研究,教育,酸性雨対策,宇宙ステーション,大気圏外旅客機(ニューオリエントエクスプレス)等への重点配分


2) 民間活力の導入
3) 過剰な規制の緩和
4) 政府の研究成果,技術の民間への移転

 このような重点項目の設定に伴い,1988年度予算においては,国防研究費の増加のほかに,NASAの研究開発予算及びNSFの基礎研究予算等が大幅に増加している。このうち,基礎研究の強化については,大学における強化と政府を主体とした展開の重要性が指摘されており,特にNSFにおいては,教育及び研究人材の確保,工学研究センター,科学計算コンピュータセンターの充実,基礎科学技術センター設立,基礎研究助成の強化等が推進されている。

 このうち,基礎科学技術センターは,現在の工学研究センターをモデルに,生物学,材料科学,情報工学等の基礎的,学際的な分野を推進し,大学をベースに民間,地方政府が参加して研究を行うほか,将来の研究者の訓練も目的としている。1988年度には15のセンターが設立される予定となっている。


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