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第1部   我が国科学技術の国際化に向けて
第2章  世界の科学技術を巡る新しい潮流
2.  国際社会の中で重要性を高めつつある科学技術
(2)  科学技術の国際社会における重要性の高まりに伴う問題の増大


前項でみたような科学技術の国際的な重要性の高まりは,最近の貿易摩擦の背景としてもとらえておく必要がある。

日米,日欧間等で発生している貿易摩擦の問題を考えると,急激な日本の国力の向上に伴うあつれきの増大がその背景となっている。我が国の高度経済成長の背景には,海外で開発された基本的技術の導入が大きな役割を果たしてきたが,今や,その国際的地位にふさわしい国際的貢献が求められている。基本的技術の開発は,国際社会への貢献という観点のみならず,産業のニューフロンティア拡大を通じた国際協調型産業構造への転換による貿易摩擦の未然回避という視点からも求められている。また,貿易摩擦の拡大等に伴い,最近,米国を中心として,自国で行った基礎研究成果は,自国内で積極的に応用・開発していこうとする動きが目立ってきているとともに,他国への情報の提供に歯止めをかける法規制も提案されている。

このような状況の中,科学技術面で知的所有権,科学技術の互恵主義等を巡る問題が出てきており,これらに対する適切な対応をしていくことが必要となってきている。


〈知的所有権保護の強化〉

近年,科学技術の進歩,国際交流の活発化等に伴い,知的所有権の問題がクローズアップされてきており,コンピュータソフトウェア,バイオテクノロジー等の先端科学技術分野で国際的なトラブルが発生してきている。

民間動向調査によると,昭和61年4月から昭和62年3月までの1年間に海外の民間企業との間で知的所有権に関するトラブルのあった企業は全体の21%,また,知的所有権に関するトラブルの推移については,5年前に比べて現在の方が増加したと答えた企業が20%に過ぎなかったのに対し,今後増加するであろうと予想している企業は49%に達しており,知的所有権に関するトラブルが最近になって顕著になり,今後増加傾向にあると考えている企業が多いことがわかる ( 第1-2-5図 )。

第1-2-5図 海外の民間企業との知的所有権に関するトラブルの動向 Trends in the rate of disputes or ″troubles" experienced with foreign private companies concerning inte11ectual property rights

知的所有権とりわけ工業所有権の保護は,当該知的創造活動へのインセンティブを付与することにより,それを奨励し,利用の促進を図ることを目的としたものであり,本来,研究開発を促進するための施策である。

米国における知的所有権の保護を巡る動向をみると,米国産業の国際競争力を高めるためには知的所有権の国際的な保護強化を図るべきとの意見が大きくなってきており,特に,最近のハイテク製品に関する黒字の減少等の影響もあって,1988年の「一般教書」では知的所有権保護の強化が述べられるに至っている。また,1987年7月米上院本会議で可決された「1987年包括通商・競争力法案」には,他国が米国の技術を侵害すると米政府が判断すれば,被害を立証できなくても外国製品の輸入を差し止めることができるようにすること等を内容とした,知的所有権保護の強化策がもりこまれている。

一方,欧州の一部でも,例えば英国で保護期間の延長等により,国際競争力の強化を目指す等の知的所有権の保護強化の動きが見られる。

こうした状況の中で,我が国でも,特許戦略を中心に知的所有権を巡る取り組みへの積極性が増しつつある傾向もうかがえる。

なお,民間企業では,海外との知的所有権に関するトラブルを避けるための努力も行われており,前出の民間動向調査によると「現地法制度及び関連情報の収集」や「専門担当部局の設置」等の措置が主としてとられていることがわかる。

また,WIPO(世界知的所有権機関),GATT等においても,知的所有権のあり方について国際的な検討が行われているところである。

一方,最近の科学技術は,バイオテクノロジーによる新しい生物等,従来のものさしでは量れない新しい知的所有権の保護対象を生み出しているが,これらの保護の仕方について国際的に検討が続けられているものの,まだ結論が出ていない点も多い。また,オーディオ技術では,雑音を排して本物に非常に近い音が再生できるディジタル・オーディオ・テープ(DAT)が最近開発され,雑音のない優れたコピーを簡単につくることが可能となりつつあり,著作権保護の上から大きな問題となっている。

今後も,科学技術の進展に伴い,これまで想定されていないような新しい知的所有権保護の対象が出現する可能性は高く,知的所有権問題への継続的な取組みが必要であろう。


〈科学技術分野における互恵主義〉

最近,日米の貿易アンバランスの原因の1つを,米国がこれまでに蓄積した基礎研究の成果を日本が生産技術面でうまく改良し,これにより国際的にマーケットを拡大したこととする考えが,米国の一部にでている。

このような考えを背景として,最近,欧米から,研究者交流,情報交流等によって,科学技術資源に対するアクセスの程度を同等にすべきとの考えが出ている。

これは我が国が,国際社会での地位の向上,科学技術力の向上等により,その国際的地位にふさわしい貢献をすることが国際的に求められてきたことを背景とするものであり,科学技術分野における互恵主義確立のために,日米欧それぞれが努力していくことが重要である。我が国としては,これまでも研究者交流,情報交流等の促進のための努力を行ってきたところであるが,今後一層,その充実を図っていく必要があると考えられる。

これらの努力を通じ,我が国の研究現場が外国人研究者にとって魅力ある存在になるとともに,科学技術分野における諸外国との交流が一層促進されることが期待される。


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