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第1部   我が国科学技術の国際化に向けて
第2章  世界の科学技術を巡る新しい潮流
2.  国際社会の中で重要性を高めつつある科学技術
(1)  国際経済社会の舞台で重要性を増しつつある科学技術


これまでの歴史が示すように,科学技術は常に人間の生活と密接な関連を有し人類の繁栄,経済・社会の発展を支え続けてきた。

特に最近では,経済発展の原動力としての科学技術の役割が増大しつつあるとともに,科学技術が国民生活のすみずみにまで深く浸透した結果,人は科学技術を特別のものとしては意識せず,様々な生活行動の中の一部としてとらえるようになってきており,社会そのものも科学技術への依存度をますます高めてきている。

一方,ベルサイユ・サミット以降,経済問題を扱うサミットの中で,科学技術が重要なテーマの1つとして取り上げられてきているほか,欧州のユーレカ計画,米国のSDI,ハイテク技術のココム規制等,科学技術が国際政治の重要案件となり,外交上のツールにもなりつつある。また,近年,技術革新のスピードはますます加速されてきており,民生用技術の高度化に伴い,軍事用技術との技術的要求度の差が縮小しつつある。

このような世界的な科学技術の重要性の高まりに加え,とりわけ我が国では,急速な科学技術力の向上に伴い,国際的な立場が重視されるようになってきている。


〈経済・社会生活とのかかわりが深化した科学技術〉

科学技術と経済社会とのかかわりの深さを見るために,我が国のGNP成長率に対する技術進歩の寄与度の推移をみてみると ( 第1-2-4図 ), 各年度とも技術進歩の寄与度は大きく,特にオイルショック後は,GNP成長率に対する寄与度が常に50%を越えていることがわかる。米国においては,技術進歩の寄与度がGNP成長率の10〜20%にとどまっていると分析されており,特に我が国においては,積極的な研究開発活動に伴う技術進歩が我が国の経済成長に大きな影響を及ぼし,オイルショック後はさらにその傾向が強まっているものと思われる。

このような研究開発投資は,まず,直接的効果として,公共投資等と等しく,需要創出効果や雇用拡大効果がみられる他に,将来にわたり,長く産業,社会基盤の創製に寄与しうるような知的資産の拡大にも効果があり,さらにこの知的資産の拡大を通して,間接的効果として,産業の活性化,新製品の出現による利便性の増大,新技術による生産性の向上,新しい市場の開拓,新しいニーズの創出,技術革新関連設備投資の拡大等が期待できる。

一方,あらゆる分野で,今後の科学技術に対する期待は大きいが,とりわけ宇宙や海洋への人間の活動領域の拡大,がん等疾病の克服,長期的な食糧問題への対応,地球環境の保全等,世界各国が共同して解決を図っていくベき世界共通の課題が多くなってきており,このような全地球的問題の解決のために科学技術に寄せられている期待は大きい。

第1-2-4図 我が国の技術進歩と成長力 Tecnological progress and growth rates of Japan

さらに,情報科学技術の進展は,世界の経済社会の発展に極めて大きな影響を与えており,一国の枠を越えた世界的な視点が不可避となってきている。

また,現在,身の回りのOA機器,家電製品等の生産技術分野や,輸送,通信等の科学技術分野にハイテクの成果がふんだんに取り込まれ,生活の中で普通に使われるようになっており,気象情報,自然災害防止技術等の人々の活動環境の面でも,その技術が普通のものとして社会に定着化してきている。

反面,このような科学技術の発展,特に,ライフサイエンスの急速な展開は,従来あまり触れられなかった人間をはじめとする高等動物の生命の改変に立ち至る可能性を拡大しつつあり,人間の尊厳,倫理にかかわる各種の問題を引き起こしつつある。これらの問題の顕在化も,科学技術と社会生活とのかかわりの深化を浮き彫りにしていると言えよう。


〈サミット等科学技術を巡る外交問題等〉

サミットは本来,経済問題を中心に議論する場として設けられたが,既述のように科学技術が国際的な広がりの中で経済・社会とのかかわりを増大させつつある中で,1982年のベルサイユ・サミット (第8回)からは,科学技術が重要なテーマの1つとして取りあげられてきている。

大まかな流れを振り返ると,ベルサイユ・サミットでは,科学技術は世界経済再活性化の鍵であるとの認識の下に,サミット参加国が共同して研究を行っていくこととされ,18の国際共同研究プロジェクトが発足し,1986年の東京サミットでは宇宙ステーション計画等が,また,1987年のベネチア・サミットでは,我が国からのヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム(HFSP)に関するイニシアティブが歓迎されるとともに,エイズ問題が取りあげられる等,科学技術上の問題が大きく取りあげられており,このことはまた,科学技術と経済・社会とが切り離せなくなりつつあることの証左といえよう。

国際政治の場における科学技術の重要性は,国際会議への科学技術担当大臣の出席機会が増加しているという面からもとらえることができ,例えば,日中,日韓及び日-ECの定期閣僚会議において, 1〜2年前から新しく科学技術担当大臣の参加が要請されるようになってきている。

また,科学技術が国際社会の舞台で重要性を増しつつあることについては,経済構造調整をテーマとした各種報告書からもその傾向をうかがうことができる。このような報告書の一例とし,て,昭和62年4月に出された「経済審議会経済構造調整特別部会報告」(新前川レポート)では,全体を通して経済構造調整のための方策の一つとして,科学・技術の世界的な進歩・発展を目指した国際的な基礎研究,国際的な公共プロジェクトへの積極的貢献を図ることが指摘されている。このように,経済構造調整という枠組みからも,最近では,基礎的な科学技術面での国際貢献が重要な柱としてとらえられるようになってきている。


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