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第1部   我が国科学技術の国際化に向けて
第2章  世界の科学技術を巡る新しい潮流
1.  多極化傾向の中で相互依存性を高めつつある世界の科学技術
(3)  欧州における産業技術力向上への努力


欧州には,国によって差異は有るものの,一般的に社会の伝統,あるいは思潮として根付いた基礎科学重視の伝統があり,ノーベル賞受賞者を多数輩出していることからもわかるように,アカデミズムの分野では世界をリードしつづけてきた。一方,産業技術の面では,第1章でみたように,一般的に米,日に次ぐ位置にあるものと考えられており,最近の顕在化しつつある貿易摩擦の拡大等を背景にして,欧州各国あるいはECのまとまりの中で,欧州産業技術力の向上を目指した努力が行われてきている。


〈欧州の科学技術動向〉

貿易収支の面で最近の欧州の動向を見ると,西ドイツで黒字幅の拡大,フランスでは1985年までの赤字が1986年には解消され,また,イギリスでは1983年以来の赤字基調の下,1986年には赤字幅が一段と拡大している等,国毎に様々な様相を呈している。

科学技術活動の面では,研究費については,西ドイツ,フランス,イギリスとも総額では我が国の1/3〜1/2の規模であり,そのうち4〜5割を政府が担している。

また,産業技術の研究開発能力については,第1章で見てきたように,ライフサイエンスでは欧州優位とされているものの,エレクトロニクス,生産・加工技術を中心に,一般的には,欧州よりも日本の方が優位と考えられていることが民間動向調査の結果等からうかがえる。

技術貿易収支で欧州の科学技術力をみると,英国が若干の輸出超,西ドイツ,フランスは輸入超であるが,日本ほど輸入の比率が高いわけではなく,総体的に米国と日本の中間程度にあると考えられる ( 第2-3-8図参照 )。

このような状況の中で,欧州では各国が科学技術の振興を目指した施策を展開している一方で,ECを中心としたまとまりの意識が強化されている。


〈欧州主要国における科学技術振興策〉

西ドイツでは,基礎研究重視の政策が展開されており,BMFT(研究技術省)の予算のうち35%が基礎研究に投資されている。この基礎研究投資分の3/4がマックス・プランク研究所,国内の大型研究所,CERN(欧州合同原子核研究機関),ESA(欧州宇宙機関)等に,残りの1/4が大学に充当されている。また,応用研究面でも,大学での基礎研究成果を政府の補助を受けたベンチャービジネスが製品開発に結びつける協力体制が急速に整備されており,基礎・応用面でバランスのとれた科学技術の振興が図られている。

一方,フランスでも,研究開発費を歳出の優先項目に掲げた政策を展開しており,国際競争力の低下を技術開発の推進で克服しようという姿勢をうかがうことができる。

また,フランスではビッグプロジェクトの面で,第一級の成果を指向する欧州の伝統が根強く生きており,原子力の分野では,自主開発を進めてきた高速増殖炉実証炉「スーパーフェニックス」が世界にさきがけて臨界に達しており,宇宙開発分野ではESAの中心的役割を果たしているほか,海洋開発の分野でも6000m級潜水調査船「ノチール」を有し,米国と並んで世界のトップレベルにある。

イギリスでは,大学を中心として伝統的に基礎研究部門が強いものの,その優れた成果が産業界にうまく移転されていないとの問題点が強く認識されており,産学連携の強化が指向されている。


〈科学技術面における欧州内結束の強化〉

産業技術の面での日本優位の傾向等に直面して,EC(ヨーロッパ共同体)で団結して科学技術の強化を図ろうとの意識が最近高まっており,このような観点から従来の基礎研究の伝統に加えて,その成果をいかに産業技術につなげていくかに焦点があてられているほか,その産業技術面でのEC域内での国境を越えた協力体制の確立・強化の必要性が指摘されはじめている。

ECとしての技術開発の基本的考え方は,加盟各国がそれぞれ実施するのではなく,一企業,一国家の枠を越えて多額の費用を要する技術開発を共同体ベースでかつ加盟国の研究者,研究所等を効果的に利用し,必要に応じて域外諸国とも協力して実施しようとするものである。現在,ECでは,直轄の研究所における研究の実施,加盟国の独自の研究のサポートを目的とした情報交換,調整等を行っており,さらに,科学技術力強化策の一環として,広範囲な技術開発のためのフレームワークプログラムの第1期計画を,1984年から1987年にかけて行っているところである。

また,情報技術分野で日米に対し遅れをとっているとの認識の下に1984年からESPRIT計画(欧州情報技術開発戦略計画)をスタートさせており,マイクロエレクトロニクス,高度情報処理システムの展開,情報技術応用システムの結合等現在219プロジェクトを推進しているところである。

一方,ECを含めた欧州各国が協力して自主的先端技術開発を進め,産業技術力の向上を図ることを目的としたものにユーレカ(Eureka)計画があり,現在112のプロジェクトが推進されている。

この他,CERN,ESA,ILL(欧州原子炉研究機関),EMBO(欧州分子生物学機構)等の共同研究体制も機能しており,幅広い分野で欧州内科学技術活動の結束の強化が進んでいる姿をうかがうことができる。


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